豊かな甘みとほのかな酸味が絶妙なバランスを保つフルーツ、洋ナシ。その滑らかな食感と芳醇な香りは、多くの人々を惹きつけてやみません。デザートやサラダ、さらには料理のアレンジにも幅広く使われるそのポテンシャルは計り知れず、その華やかな風味は単なる果物の域を超えています。本記事では、そんな洋ナシの魅力に迫り、その魅力的な世界へとご案内します。さあ、一緒に洋ナシの甘美な魅力を探求しましょう。
洋ナシとは
セイヨウナシは、バラ科ナシ属に属し、ヨーロッパ原産の植物です。その果実は洋なしとも呼ばれ、ヨーロッパをはじめ、北アメリカ、オーストラリア、そして日本を含む世界中で広く栽培され、食用として親しまれています。
和なしはほぼ球に近い形状なのに対し、洋なしは縦に長く、独特のびん型をしています。中には、和なしほどではないものの、比較的丸みを帯びたものから、より縦に長いものまでさまざまです。赤や黄色、緑色といった色合いの果皮を持つものもありますが、日本で広く栽培されているものの多くは緑色であり、追熟が進むと黄色に変化します。また、果皮には褐色の斑点、「さび」と呼ばれる模様が特徴的です。
洋なしの熟した実は、芳醇で甘みがあり、まろやかな食感が堪能できます。和なしのしゃりしゃり感とは異なり、香りと甘みが引き立ちます。ただし、収穫直後は果実は硬くて甘さも控えめです。追熟させることで果実は黄色になり、香りが豊かになります。エチレンによる作用でデンプンが糖に変化し、ペクチンが作用して、甘さと滑らかさが増します。なお、低温で保存することで、追熟の進行を遅らせることが可能です。
日本においては、8月下旬から9月にかけて収穫される早生種のバートレットが9月には食べ頃になりますが、多くの品種、特にラ・フランスなどは10月から11月初めにかけて収穫され、11月から12月にかけて食べ頃を迎えます。
流通
セイヨウナシは、小アジアから南東ヨーロッパにかけての地域を原産とする果物です。その起源は和なしと同様に古代中国にあり、西へ移動して異なる形に進化したとされています。この果物は古代ギリシャの時代から栽培されており、共和政ローマでは政治家の大カトが6種類の品種を記述しています。その後、帝政ローマ期には歴史家の大プリニウスが調査し、40種もの品種が認識されていました。古代ローマにおいて洋なしは、生食、焼き料理、または酢や酒の原料として利用されていました。ローマ人の影響により洋なしはヨーロッパ各地に広まり、品種は60種を超えました。その後、ローマ帝国崩壊後には中世ヨーロッパで6種類の品種が残るにとどまりましたが、16世紀には約500種もの品種が育てられるようになりました。現在では、商業的に有用な品種が優先的に流通しており、他の品種は次第に忘れられつつあります。
日本へは明治初期にセイヨウナシが伝来しましたが、国内の気候に適さなかったため、山形県などの限られた地域に定着しました。現在では東北地方や信越地方といった寒冷地で栽培が行われています。また、外見が凸凹しているため、本格的に食用として普及したのは昭和後期のことです。近年では産地以外でも生食用として親しまれるようになり、かつて主に加工用として扱われていた時代から大きく変化しました。
生産地
この品種の多様性は非常に豊かで、ヘドリックの『The Pears of New York』(1921年)には2900もの品種が記録されています。現代では約4000の品種が存在すると推定されていますが、日本で栽培されているのは大変貴重な品種を含む20種類程度に限られています。
ヨーロッパは世界総生産の約50%を占め、イタリアは年間125万トンでトップに立っています。フランスは40万トンで2位につけています。
日本の気候は洋なしの栽培にはあまり適していないため、山形県が国内収穫量の約60%を占め、続く長野、青森、新潟、岩手、福島の計6県が合計で90%以上を生産しています。