毎年夏が訪れると、桃の香りが市場や果樹園に広がり、私たちは忘れがたい甘さとジューシーさを再び楽しむ季節が到来します。その繊細な果肉と豊かな風味は、多くの人々にとって夏の代名詞とも言えるでしょう。しかし、桃の美味しさを最大限に引き出すためには、タイミングが鍵となります。桃の旬を知り、その魔法のような時期を逃さずに最高の味を堪能するための秘訣を一緒に探ってみましょう。
桃の季節はいつ始まり、いつ終わるのか?
「桃の節句」と言うと、3月3日のひなまつりが思い浮かびます。昔の暦では3月3日が現在の4月3日頃に該当し、この時期に見頃を迎える桃の花がしばしば飾られたそうです。さて、果実の桃はいつごろ旬を迎えるのでしょうか。7月から8月が収穫の最盛期です。日本では桃は主に屋外の圃場で栽培されています。このような露地栽培の桃は、早いものだと6月中旬から収穫が始まり、店頭にお目見えします。7月に入ると、数多くの主要産地からの出荷が本格化し、真夏の7~8月には流通のピークを迎えます。9月になると出荷量は減少し始めますが、一部の産地では10月初旬まで収穫するところもあります。桃の旬は非常に限られており、一つの木から収穫できる期間はおよそ10日間しかありません。このため、様々な収穫時期の品種を栽培することで、次々と品種を切り替えながら、出荷が繰り返し行えるよう工夫されています。
クリスマスに味わう桃!?冬に旬を迎える桃の品種
「季節に関係なく美味しい桃を楽しみたい!」という願いから、新たな風味の桃が誕生しました。通常では考えられない冬に旬を迎えるユニークな桃です。山梨県産の「冬桃(とうとう)」や岡山県産の「冬桃がたり(ふゆももがたり)」といった品種は、11~12月の時期に収穫されることで知られています。これらの桃は、夏のものよりも糖度が高く、特にお歳暮やクリスマスの高級ギフトとして進化を遂げていま。
山梨県|これぞ桃源郷!日本一の大産地
山梨県は、桃の栽培面積と収穫量で日本一の地位を誇ります。特に、笛吹市は4月になると桃の花が咲き誇り、「桃源郷」として広く知られています。この地域で収穫される桃の旬は、6月中旬から9月末頃にかけてです。中でも、「白鳳」という品種は7月中旬から8月初旬にかけてが食べ頃で、紅色の美しい外見と、酸味が少なく上品な味が特徴です。注目すべき品種に「夢みずき」があります。2015年から市場に出回り始めたこの品種は、次世代の山梨の桃をリードする存在として期待されています。
福島県|全国区の「あかつき」を生んだ、日本一の桃好き県
日本で最も桃を消費する福島県は、収穫量でも全国2位を誇り、大規模な産地として名を馳せています。桃の旬は6月下旬から10月初旬で、特に8月前半から後半にかけてが最も多く市場に出回る時期です。この時期は福島発祥の主要品種「あかつき」が最盛期を迎えています。「あかつき」は、その品質の高さから皇室に献上される桃としても知られ、国内で広く栽培される代表的な品種です。さらに、福島県には特大サイズの「はつひめ」や、最高の食味とされる「ゆうぞら」といった独自の品種も豊富にあります。
長野県|桃の王様「川中島白桃」の故郷
日本で桃の収穫量が3番目に多い長野県では、桃を味わえるのは7月上旬から9月下旬にかけてです。なかでも、知名度の高い品種といえば、7月中旬から8月下旬にかけて旬を迎える「川中島白桃(かわなかじまはくとう)」です。この品種は長野県の川中島町で開発され、「桃の王様」と称賛されるほどの迫力ある大きな果実で高い人気を得ており、現在では日本全国で栽培されています。また、長野県生まれの品種には「川中島白鳳(かわなかじまはくほう)」や「黄金桃(おうごんとう)」、「なつっこ」などもよく知られています。
山形県|冷涼な気候が育む美味しさ!北の大産地
山形県は「桃の大産地の北限」として知られています。夏季でも朝晩の気温が涼しく、昼夜の温度変化が大きいため、桃の自然な甘みが一層引き立てられると言われています。収穫時期は他の地域より少し遅く、8月上旬から10月上旬頃が最適です。「川中島白桃」が主要品種ですが、歯ごたえを楽しめる「おどろき」や「美晴白桃(みはるはくとう)」などの硬めの桃も多く生産されています。
和歌山県|有名ブランド桃を擁する西日本最大の産地
和歌山県は西日本で最も多く桃を収穫する地域で、「あら川の桃」という名で全国にその名を知られています。和歌山の桃は、6月中旬から8月中旬にかけて旬を迎え、特に「白鳳」という品種は7月上旬から中旬が最も美味しい時期です。桃は一つずつ袋をかけられて育ち、収穫前に日光を浴びせることで、優しい桃色に染まった愛らしい実が収穫されます。
岡山県|日本の桃のルーツはここにあり!美しき白肌桃
桃太郎の物語で知られる岡山県は、桃との深い関係を持つ地である。この地の桃栽培の歴史は古く、現在日本で栽培される多くの桃の品種は、明治時代に岡山で生まれたものが元となっているとされています。岡山の桃は、光を防ぎながら育てる「袋がけ栽培」で育てられ、透明感ある白さと柔らかい食感が特徴となっています。収穫の最盛期は6月中旬から9月下旬にかけてで、知名度のある白桃「清水白桃」や、独自に開発された「おかやま夢白桃」などが知られています。
美味しい桃を選ぶためのポイント
桃を選ぶ際、スーパーでは以下のポイントを考慮すると良いでしょう。特に、日光をたっぷり浴びたピンク色の桃は、皮が濃い色をしていて、表面に白い斑点があるものが甘く美味しいとされています。
桃の保存方法はまず常温が基本
買ってきた桃をすぐに冷蔵庫に入れることは避けるべきです。低温で長時間保存すると、甘味や風味が損なわれます。桃を保存する際は、直射日光を避けた風通しの良い場所に常温で置くことが理想的です。食べる前の1~2時間だけ冷蔵庫で少し冷やしてから楽しむと良いでしょう。
硬い派?それとも柔らかい派?桃のベストな食べ頃はあなたの好みに合わせて
桃の食べ頃は、食べる人の好み次第で変わります。硬めの食感が好きな方は、できるだけ早く食べてシャキシャキ感を堪能してください。柔らかい食感を好む場合は、購入から2〜3日常温で保存すると良いでしょう。手で触ったときに少しの弾力を感じたら、ちょうど良いタイミングです。中には、長く置いても柔らかくならない品種もあるため、様子をみながら判断しましょう。