ベーグル発祥
ベーグルの発祥は今のポーランドのあたり
ベーグルは、古くからその独特な形状と風味で世界中の人々を魅了してきた伝統的なペストリーです。その起源については様々な説がありますが、14世紀頃にポーランド周辺で生まれ、ユダヤ人の焼き菓子職人によって発展を遂げたことは確かなようです。
ベーグルの原型となったのは、ポーランド皇室の文書に記録された「オブヴァジャネック」と呼ばれるパンです。この時代は日本では室町時代の初期に当たり、ベーグルは醤油や出汁と同じくらいの歴史を持つ古い食べ物だったことがうかがえます。
一方で、ベーグルの発祥に関してはドラマチックな伝説も語り継がれています。有名なのは、1683年にウィーンを守ったジョン・ソヴィエスキー王子に、馬の手綱の環状の形を模してパン屋がベーグルを焼いたという物語です。江戸時代初期の出来事を描いたこの言い伝えは、ベーグルの歴史に味わい深い物語性を加えています。
現代に至るまで、ベーグルはポーランドを起源に世界各地に広まり、人々に親しまれる代表的な食べ物となりました。長い歴史に裏打ちされた味わいと、物語性豊かな伝承が、ベーグルの魅力を一層高めているのです。
ベーグルと宗教
ベーグルとニューヨーカー
今やニューヨーカーにとってベーグルは欠かせない食べ物ですが、その普及には長い時間がかかりました。ニューヨークに移住したユダヤ人たちは、最初からベーグルを広めることはできませんでした。
ベーグルが広まるのには、ニューヨークに存在する見えない壁が大きな障害となっていました。ニューヨークでは、文化や宗教の違いが人種間の壁となり、簡単に越えられない一線を感じることがあります。毎日一緒に仕事をし、休日に過ごしても、文化的な違いがコミュニケーションの障害となることがあります。
特に敬虔なユダヤ教徒は、その風貌や生活習慣の違いから、他のコミュニティとの交流が少なく、社会に溶け込むのに時間がかかりました。そのため、宗教的な意味を持つベーグルが他の宗教の人々の目に触れることはほとんどありませんでした。
しかし、1960年代に入ると、ベーグルの工業化と大量生産が始まりました。これにより、これまでユダヤ教信者の間でしか見られなかったベーグルが、広く一般の店頭に並ぶようになりました。こうして、ベーグルは次第にニューヨークの一般的な食べ物となり、多くの人々に親しまれるようになったのです。
日本で生まれ変わるベーグル
日本におけるベーグルの歴史は浅く、1980年代に入ってから市場に登場しました。ベーグルを日本で初めて販売したのは、ジャーナリストのライル・B・フォックスさんです。日本での生活でベーグルが食べられないことを残念に思い、1982年に「フォックス・ベーグル」をオープンしました。その後、1992年にはBagel Kがベーグルの輸入を開始し、徐々に知名度が高まっていきました。
しかし、本場のニューヨークスタイルのベーグルは、日本人の味覚に合わないと感じられたようです。そこで日本のベーグル店は、独自のアレンジを加え、ジャパニーズ・ベーグルを生み出しました。代表的なベーグル専門店「ベーグル&ベーグル」は、しっとりとしたモチモチ食感を実現。さらにクリームを練り込んだり、クロワッサン生地と合わせるなど、日本人好みの新しいベーグルを提案しています。
本場の伝統を大切にする意見もありますが、アンパンのように、日本流にアレンジされたベーグルが人気を呼び、ベーグル文化の定着につながるかもしれません。日本発のジャパニーズ・ベーグルが、世界で愛される新しいベーグルスタイルになる可能性も秘めているのです。
まとめ
ベーグルはポーランドのクラクフで生まれ、ユダヤ人の伝統的な食文化の一部として世界中に広まりました。その独特の形状は、永遠の輪を表し、人生の循環を象徴しています。今やベーグルは、世界中で愛されるグローバルな食べ物となり、人々の暮らしと食文化の融合を体現する存在となっています。