おはぎ由来

甘さともちもちとした食感が特徴の和菓子、「おはぎ」。皆さんはこのおはぎがどのような由来で生まれ、なぜ春と秋の彼岸に食べられる風習があるのかご存知ですか?今回は、おはぎの豊富な歴史を探求し、その誕生から現代に至るまでの経緯を辿ってみましょう。時代を超えて愛され続けるこの和菓子の深い背景を解き明かすことで、きっとおはぎをより深く理解し、味わうことができるでしょう。
春は「ぼたもち」・秋は「おはぎ」
皆さんがお馴染みの「おはぎ」、実は、春と秋とで名前が異なることをご存知でしょうか。ただし、どちらももち米とあんこを使った美味しい和菓子であることに変わりはありません。春には「ぼたもち」、或いは漢字で表現すれば「牡丹餅」と呼ばれます。一方、秋には「おはぎ」、漢字では「御萩」と称されます。この別名は、本来、それぞれの季節の美しい花から名付けられたものです。
ぼたもちの名前は、春分の頃に咲く見事な牡丹の花に由来しています。この時期、自然が息づき、作物が豊かに収穫されることを神々に感謝する意味が込められています。また、ぼたもちは、新しい命と共に訪れる春を祝う和菓子としても愛されています。
一方、おはぎの名前は、稲穂が実る秋分の時点を象徴する萩の花から由来しています。このおはぎは、祖先に対する敬意と、五穀に対する感謝の気持ちを示しています。
同じ成分で作られ、同じ形状と風味を持ちながらも、「ぼたもち」、「おはぎ」と季節ごとに異なる名前で呼ばれるこの和菓子。名前の背景を知ることで、この菓子が日本の自然と節季の移ろい、そして人々の感謝の心をつなげる象徴としての役割を果たしていることを実感できます。
お彼岸に「おはぎ・ぼたもち」の由来
「お彼岸には『おはぎ・ぼたもち』を欠かせません」という話はよく聞かれますね。しかし、その理由や由来は皆さますべてご承知でしょうか?
春の彼岸には「ぼたもち」、そして秋の彼岸には「おはぎ」が食べられると言われています。この名前の由来はそれぞれの季節の特別な花、すなわち「牡丹(ぼたん)」と「萩(はぎ)」から取られています。
牡丹と萩はそれぞれ春と秋の訪れを告げる花で、また、それぞれの季節の収穫祭で供えられる穀物の形状を模して作られたとも解釈されます。ここで「彼岸」とは仏教でいう「向こう岸」、つまり浄土のイメージを表しています。そうした意味があるため、おはぎやぼたもちは、彼岸中に亡き人々や祖先を思い起こす際に自己犠牲の象徴ともなります。
つまり、おはぎやぼたもちは季節の変わり目とともに収穫を祝う意味があり、私たちの生命の価値を認識し、我々が恒常的に思い続けるべき祖先への感謝の心をくっつけているとも言えます。
一方、「おはぎ・ぼたもち」をお供えする別の理由としては、お供え物として穀物のもち米と魔除けの効果を持つと言われる小豆のあんこを使い、それら2つのものを「合わせる」という名の通り、願い事や祈りを伝えているのだと言われています。さらに昔の人々にとっては砂糖は貴重なものであり、その砂糖を用いて作られる食べ物は非常に尊いものでした。それゆえ、「おはぎ・ぼたもち」を作り、祖先への感謝と共に色々な願いや祈りを捧げてきたと推測できます。時代が変わるものの、祖先を敬う心は今も変わらないでありたいものですね。

「ぼたもち」と「おはぎ」の違い
「ぼたもち」と「おはぎ」の見た目や風味は非常に似ているものの、その違いを深掘りしてみると、日本の風土や季節感が強く反映されています。気づきにくいかもしれませんが、あんこの種類が異なるのです。前者の「ぼたもち」には「こしあん」が用いられ、後者の「おはぎ」には「つぶあん」が用いられます。
これには小豆の収穫時期が大きく関わっています。小豆の種まきは春の4月~6月、収穫は秋の9月~11月です。収穫直後の小豆は柔らかく皮まで食べられるため、秋のお彼岸にはこの新鮮な小豆を用いてつぶあんを作り、「おはぎ」が作られます。一方、春まで保存された小豆の皮は硬くなってしまいます。そのため、皮を取り除いたこしあんが用いられ、「ぼたもち」が作られます。これが「ぼたもち」と「おはぎ」のあんこの違いです。
また一つの見解として、形状の違いも挙げられます。春の彼岸に食べられる「ぼたもち」は、名前の由来である牡丹の花をイメージした大きな丸形、一方で秋のお彼岸に食べられる「おはぎ」は、だんまりした萩の花を連想させる小さく上品な俵型とされています。
見た目や味わいが似ていても、季節感や風俗、文化を映す細部に違いが見られる「ぼたもち」と「おはぎ」。これらの背景を知ることは、日本文化をさらに深く理解し、味わうことに繋がります。
まとめ
「おはぎ」は、飢饉の際に生まれたと言われる優れた保存食で、誰にでも手軽に出来る美味しさが親しまれてきました。彼岸に食べられるのは、精霊を慰めるための供物であり、新旧の米の収穫を祝う意味も込められています。今でもその文化は受け継がれ、私たちの日常に彩りを添えています。