南高梅のルーツを探る:紀州が生んだ高級梅の物語
紀州和歌山が生んだ至宝、南高梅。その名は、高級梅干しとして広く知られています。大粒でふっくらとした果肉、口に広がる芳醇な香りは、他の梅とは一線を画します。梅干しはもちろん、ジャムや梅酒など、その用途は多岐にわたり、贈り物としても選ばれることの多い南高梅。この記事では、そのルーツを辿り、紀州の風土が育んだ高級梅の物語を紐解きます。

南高梅とは?紀州が生んだ至高の梅

南高梅は、和歌山県を代表する梅の品種として知られ、特に高品質な梅干しの代名詞とも言える存在です。その特徴は、何と言っても大粒でふっくらとした果肉の柔らかさにあります。梅干しはもちろんのこと、ジャムや芳醇な梅酒など、多岐にわたる加工品に利用され、その上品な味わいは贈答品としても重宝されています。

南高梅の読み方:「なんこううめ」と「なんこうばい」の二通り

南高梅の読み方については、公式には「なんこううめ」とされていますが、一般的には「なんこうばい」という呼び名も広く浸透しています。どちらの読み方が絶対的に正しいというわけではなく、どちらを使用しても差し支えありません。当店、石神邑では「なんこううめ」と呼称しております。

南高梅の名前の由来:地元の高校と発見者の功績

南高梅という名前は、和歌山県みなべ町に位置する南部高校と、明治時代に優れた特性を持つ梅の木を発見した高田貞楠氏の二人の名に由来しています。昭和25年に設立された「梅優良母樹選定会」において、高田氏が育てた梅が最高品質の品種として認められました。この調査に尽力した南部高校の教諭、竹中勝太郎氏が、南部高校の名と高田氏の名を組み合わせ、「南高梅」と命名したとされています。「高」の字が「高校」から取られたのか、「高田氏」から取られたのかについては諸説ありますが、両方に由来すると考えるのが自然でしょう。

南高梅の歴史:江戸時代から連綿と続く梅栽培の結晶

南高梅の歴史は、江戸時代初期、紀伊田辺藩(現在の和歌山県)において、痩せた土地でも生育可能な「藪梅(やぶうめ)」の栽培が奨励されたことに端を発します。藪梅は実は小さいものの、その強靭な生命力から栽培が徐々に拡大していきました。明治時代に入ると、高田貞楠氏が自身の梅畑で、ひときわ大きな実をつける梅の木を発見し、その育成と増殖に尽力しました。この梅は「高田梅」として知られるようになり、後の南高梅の起源となりました。さらに昭和初期、小山貞一氏が高田梅の穂木を受け継ぎ、栽培を続けました。これらの先人たちのたゆまぬ努力こそが、今日の南高梅へと繋がる礎となっているのです。

南高梅の特長:大粒、薄皮、肉厚、小種

南高梅は、他の梅の品種とは一線を画す、いくつかの顕著な特徴を備えています。まず目を引くのは、その実の大きさです。特に、普段小さな梅干ししか目にしない地域の方々にとって、紀州産の南高梅はその大きさに驚かされることでしょう。加えて、皮が非常に薄く、果肉が分厚いことも重要なポイントです。また、種が比較的小さいことも特筆すべき点です。青梅の状態では鮮やかな緑色をしていますが、熟成が進むにつれて黄色みを帯び、太陽の光を浴びた部分からは桃のような美しい紅色が顔をのぞかせます。完熟した南高梅は、その芳醇な香りも魅力の一つです。

南高梅のサイズ:青梅と梅干しで異なる基準

南高梅のサイズ表記は、青梅として販売される場合と、梅干しとして販売される場合で基準が異なります。青梅の場合は直径で、梅干しの場合は重さでサイズが決定されます。一般的に、S、M、L、2L、3L、4Lといったサイズ区分があり、数字が大きくなるほど実も大きくなります。たとえば、石神邑の「うす塩味梅」においては、2Lと3Lが通常サイズ、4Lが特大サイズとして販売されています。
サイズの目安(青梅の場合):
  • S:2.7cm~3.0cm未満
  • M:3.0cm~3.3cm未満
  • L:3.3cm~3.7cm未満
  • 2L:3.7cm~4.1cm未満
  • 3L:4.1cm~4.5cm未満
  • 4L:4.5cm~4.9cm未満

南高梅の旬な時期:収穫時期は6月上旬から約1ヶ月間

南高梅が最も美味しい時期、つまり旬は、収穫期の6月上旬からおよそ1ヶ月間です。この期間中、梅農家の方々は毎日梅林へと足を運び、青梅として収穫できるものや、完熟して自然に落下した梅の実を丁寧に拾い集めます。梅雨時期の降雨量は、実のつき具合や大きさ、そして病害虫の発生状況に大きな影響を与えるため、梅農家にとって梅雨は一年で最も重要な時期と言えるでしょう。

南高梅の産地:和歌山県が生産量日本一

南高梅の主要な産地として知られているのは、和歌山県です。国内の梅生産量の約65%を占めるという圧倒的なシェアを誇っています。中でも、みなべ町や田辺市を中心とした紀中・紀南地域が主な栽培地域となっています。温暖な気候、長い日照時間、豊富な雨量、そしてカルシウムを豊富に含む土壌といった、梅の栽培に理想的な条件が揃っていることが、和歌山県が日本一の産地となった背景にあります。

まとめ

南高梅は、その卓越した風味、受け継がれる歴史、そして生産者のたゆまぬ努力によって、日本を代表する梅のトップブランドとしての地位を確立しました。梅干しとしてはもちろん、様々な料理の素材として、または大切な方への贈り物として、私たちの暮らしに彩りを与えてくれます。ぜひ、南高梅ならではの奥深い味わいをご堪能ください。

質問:南高梅が高価な理由は何ですか?

回答:南高梅は、その実の大きさと肉厚さ、そして皮の薄さと種子の小ささが際立っており、梅干しとして加工した際に極めて優れた品質を生み出します。さらに、栽培には細やかな手間と時間がかかるため、他の品種と比較して価格が高めに設定されることが多いです。

質問:南高梅の梅干しは塩分含有量が多いのでしょうか?

回答:南高梅の梅干しには、さまざまな塩分濃度の製品が存在します。昔ながらの製法で作られた梅干しは塩分濃度が高めであることが多いですが、近年では塩分を抑えた梅干しも広く販売されています。ご購入の際には、塩分表示をよく確認されることを推奨いたします。

質問:南高梅の青梅は生のまま食べても大丈夫ですか?

回答:南高梅の青梅を生で食することはできません。青梅にはアミグダリンという人体に有害な物質が含まれており、加熱や適切な加工を施すことで分解する必要があります。梅酒や梅シロップなど、適切な方法で加工してからお召し上がりください。
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