カビチーズは、独特の風味と多様な種類で世界中のチーズ愛好家を魅了しています。青カビ、白カビなど、カビの種類によって全く異なる風味や食感が楽しめるのが特徴です。しかし、カビと聞くと安全性について不安を感じる方もいるかもしれません。この記事では、カビチーズの風味の秘密、代表的な種類、そして気になる安全性について詳しく解説します。カビチーズの世界を深く探求し、その魅力を再発見してみましょう。
カビとは?
カビは、湿気を好む微細な菌類であり、その種類は30万を超えると言われています。多くの場合、糸状の多細胞生物として存在し、水、空気、あるいは昆虫などを介して移動します。構造としては、食物に根を張り栄養を吸収するための糸状の組織、そこから立ち上がる茎、そして茎の先端に形成される胞子から構成されています。カビが発生した食品には、リステリア、サルモネラ、大腸菌といった有害な細菌が繁殖している可能性も否定できません。チーズに発生したカビは、必ずしも目で確認できるとは限らず、特に柔らかいチーズでは内部にまで広がっていることがあります。パルミジャーノ・レッジャーノのような硬質チーズの場合、局所的にカビが発生することが一般的です。
チーズの種類:ナチュラルチーズとプロセスチーズ
チーズは大きく「ナチュラルチーズ」と「プロセスチーズ」の2つに分類できます。ナチュラルチーズは、生乳に乳酸菌や酵素を加えて発酵させ、ホエイと呼ばれる水分を取り除いて作られます。さらに、製造方法の違いによって、フレッシュタイプ、白カビタイプ、青カビタイプ、セミハードタイプ、ハードタイプ、ウォッシュタイプ、シェーブルタイプなど、多種多様な種類が存在します。一方、プロセスチーズは、ナチュラルチーズを加熱して溶かし、再び成形したものです。加熱処理を行うため、衛生的に優れており、保存性も高いのが特徴です。スライスチーズやキャンディーチーズなど、様々な形状で販売されています。
チーズにカビが生える理由と安全なカビの種類
特定の種類のチーズは、意図的にカビを生やし、その熟成を促す製法で作られています。ロックフォール、ゴルゴンゾーラ、スティルトンなどのブルーチーズは、ペニシリウム・ロックフォルティという特定の青カビの胞子を利用して製造されます。また、ブリーやカマンベールといったチーズは、表面が白カビで覆われているのが特徴です。これらのチーズに生えているカビは、安全に食べることができます。白カビタイプのチーズには「ペニシリウム・カマンベルティ」、青カビタイプのチーズには「ペニシリウム・ロックフォルティ」という種類のカビが用いられています。「ペニシリウム・カマンベルティ」自体には毒性はありません。一方、「ペニシリウム・ロックフォルティ」は、本来毒性を持つものの、チーズに含まれるタンパク質やアンモニウムなどの成分によって無毒化されます。
意図的にカビが生えたチーズの種類:白カビチーズと青カビチーズ
チーズの風味を豊かにする「白カビ」と「青カビ」について、それぞれのカビを使用したチーズの特徴と種類を詳しく解説します。
白カビチーズの種類
白カビチーズは、その表面が白いカビで覆われているのが特徴で、熟成が進むにつれて内部が柔らかくなる傾向があります。
- カマンベール: クリーミーで優しい風味が人気のチーズです。熟成が進むと、とろりとした食感が楽しめます。
- ブリー: フランスのブリー地方で作られるチーズで、熟成すると滑らかな舌触りになり、奥深いコクと繊細な味わいが堪能できます。白ワインやシャンパンとの相性が抜群です。
- シャウルス: ブルゴーニュ地方の修道士によって生み出されたチーズです。薄い白カビに覆われたチーズは、濃厚な風味を持ち、かすかにフルーティーな香りを感じさせることもあります。
青カビチーズの種類
青カビチーズは、ブルーチーズとも呼ばれており、独特の香りと濃厚な風味、そして強めの塩味が特徴です。
青カビを繁殖させるには空気が必要不可欠です。そのため、生乳に酵素などを加えて水分(ホエイ)を取り除く工程で青カビを混ぜ込み、その後に成形します。この製法によって、チーズ内部にできる隙間で青カビが成長するのです。
- ゴルゴンゾーラ: イタリアを代表するチーズの一つです。カットした断面に見られる青カビの緑色が美しいマーブル模様を描き出しています。
- ロックフォール: 羊乳を熟成させて作られる、青カビの模様が印象的なチーズです。塩味と青カビの風味が際立っており、その個性的な味わいが特徴です。
- スティルトン: 独特の香りとピリッとした刺激、そして豊かなコクが感じられるチーズです。イギリスのエリザベス女王が好んだことでも知られています。
カビが生えたチーズを食べた場合のリスク
カビの種類や、そこに生息している細菌によって、体に現れる症状は異なります。起こりうるリスクは以下の通りです。
- 特に何も起こらない
- 多少味が悪くなったり、軽い腹痛を感じる程度で済む場合があります。
- 中程度のアレルギー反応や食中毒、呼吸器系の問題を引き起こす可能性があります。
- まれに入院や透析が必要になったり、最悪の場合は死亡に至るケースも報告されています。特に免疫機能が低下している場合は、リスクが高まります。
安全のため、特に小さなお子さんや、健康上のリスクを抱えている人がいる場合は、意図せずカビが生えてしまったチーズは廃棄するのが賢明です。特に、ソフトチーズ、シュレッドチーズ、スライスチーズは水分を多く含んでいるため、カビが生えた表面だけでなく、チーズの内部まで汚染されている可能性が高いです。一方、チェダーチーズ、パルミジャーノ・レッジャーノ、スイスチーズのような硬質またはセミハードチーズの場合は、カビが生えた部分をしっかりと切り取れば、残りの部分を食べても問題ないでしょう。カビが生えている部分とその周辺、内部を少なくとも2.5cmは切り落とすようにしましょう。切り落とす際は、ナイフでカビの部分に触れないように注意し、チーズの他の部分を汚染しないように心がけましょう。
チーズを安全に保存する方法
カビの胞子を取り除くために、2~3ヶ月に一度は冷蔵庫の中を清掃しましょう。チーズをラップでしっかりと包み、冷蔵庫から出す際は、一度に2時間以上出さないようにしましょう。ハードチーズ、ソフトチーズに関わらず、使用するたびに新しいクッキングペーパーやワックスペーパーで包み直すことで、新鮮な状態を保つことができます。これらの包装紙は通気性に優れているため、チーズの表面が乾燥するのを防ぎ、カビの原因となる湿気が溜まるのを抑制してくれます。もし、カビが生えたチーズの種類が分からなかったり、対処法に自信がない場合は、廃棄するのが最も安全な選択肢です。
まとめ
この記事では、チーズに発生したカビについて、その原因から対処法、安全に食べられるケース、保存のコツまで詳しくご紹介しました。チーズの種類やカビの種類を理解することで、より安全で美味しくチーズを味わうことができるでしょう。少しでも不安を感じたら、廃棄することも選択肢の一つです。