白カビチーズは、その名の通り表面を覆う白いカビが特徴的なチーズの仲間です。一口食べれば、とろけるような舌触りと、ミルクの甘み、そしてカビ由来の独特な風味が口いっぱいに広がります。熟成が進むにつれて変化する奥深い味わいは、チーズ好きを虜にしてやみません。この記事では、白カビチーズの魅力に迫り、その多様な世界を探求していきます。
白カビチーズとは?とろける風味の秘密
白カビチーズとは、表面を覆う白いカビが特徴的なチーズの総称です。チーズの表面で白カビを繁殖させながら熟成させることで、独特の風味と、とろけるようなクリーミーな食感が生まれます。カットした断面は白からクリーム色をしており、熟成が進むにつれて表面に赤褐色の斑点が現れ、内部はより柔らかく、とろりとした状態へと変化します。
白カビチーズの一般的な製造工程
白カビチーズの製造工程は、まず加温した牛乳に乳酸菌を加え、レンネット(凝乳酵素)を加えて牛乳中のカゼインを凝固させます。この固まったものを凝乳と呼び、ホエイ(乳清)を取り除いてカードを作ります。カードを専用の道具(ルーシュ)ですくい、型(モールド)に入れて水分を切って成形します。十分に水分が抜けたら型から取り出し、塩水に漬けます。その後、表面に白カビを吹き付け、温度・湿度を管理した熟成庫で熟成させます。白カビの付与方法には、スプレーで吹きかける方法と、牛乳に混ぜる方法があります。伝統的な製法では、牛乳にその土地に生息する乳酸菌が含まれているため添加しませんが、品質を安定させるために乳酸菌を添加することもあります。
代表的な白カビチーズの種類
世界には様々な種類の白カビチーズがあり、それぞれが独自の風味と歴史を持っています。ここでは、代表的な白カビチーズの種類と、その特徴、おすすめの食べ方をご紹介します。
カマンベール:白カビチーズの代名詞
カマンベールは、フランス北部ノルマンディー地方のカマンベール村が原産の、日本でもよく知られた白カビチーズです。内部は淡いクリーム色で、熟成が進むにつれてとろりとした食感が増します。特に「カマンベール・ド・ノルマンディー」は、伝統的な製法で作られており、風味や品質が格段に優れています。香りは芳醇なキノコのような複雑さを持ち、熟成とともに濃厚なバターやリッチなクリームのような奥深い味わいへと変化します。フルーツとの相性が抜群で、りんごやぶどうなどを添えて前菜として楽しむのがおすすめです。お酒は同じノルマンディー産の「シードル」がよく合います。
シャウルス:ブルゴーニュが生んだ、エレガントな円筒チーズ
12世紀頃、フランス、ブルゴーニュ地方の修道士たちが作り始めたとされるシャウルス。その特徴的な円筒形は、チーズプレートに洗練された印象を与えます。塩味と酸味のバランスが取れており、チーズ愛好家の方におすすめです。若い熟成段階では爽やかな風味、熟成が進むにつれて奥深い味わいが楽しめます。様々な料理との相性が良く、特にシャンパンとの組み合わせは格別です。
ヌーシャテル:愛の物語が詰まった、ハート型チーズ
フランス北西部、ノルマンディー地方が故郷のヌーシャテルは、可愛らしいハート型で広く知られています。その背景には、英仏百年戦争の時代、ヌーシャテル村の女性がイギリス兵への愛を込めてハート形のチーズを贈ったという、ロマンチックな逸話が残されています。塩加減は生産者によって異なりますが、比較的しっかりとした塩味が特徴です。熟成が若いと酸味が際立ち、白カビが茶色くなるほど熟成が進むと、コクが増します。若いヌーシャテルには、ジャムやハチミツ、レーズンパンを添えて、熟成が進んだものには、重めの白ワインを合わせるのがおすすめです。
バラカ:幸運の象徴、馬蹄形チーズ
バラカは、フランス語で馬蹄を意味するチーズです。ヨーロッパでは古来より馬の蹄鉄は幸運のシンボルとされ、バラカは贈り物としても喜ばれます。脂肪分は70%と高めで、濃厚で贅沢な味わいが魅力ですが、同時に塩気も強いため、後味は意外とさっぱりしています。酸味のあるぶどうや薄切りりんごと合わせれば、洗練されたオードブルとして楽しめます。ワインやシャンパンとの相性も抜群です。
ブリ・ド・ムラン:ブリ三兄弟の中で最もワイルドな個性派
フランス、イル=ド=フランス地方生まれのブリ・ド・ムランは、「ブリ・ド・モー」、「クロミエ」と並び、「ブリ三兄弟」と称されます。三兄弟の中で最も長い歴史を持ち、口当たりはクリーミーながらも、独特の風味が特徴です。濃厚で複雑な味わいは、強い塩味と酸味によって「男性的なチーズ」と評されることもあります。その個性的な風味を最大限に楽しむには、そのまま味わうのが一番です。フルボディの赤ワインとの相性が抜群です。
ブリー・ド・モー:チーズの中の王様
ブリー・ド・モーは、フランスのイル=ド=フランス地方を代表するチーズであり、「ブリー三兄弟」の一角を担っています。1815年のウィーン会議において、チーズコンクールで頂点に立ったことから「チーズの王様」と呼ばれるようになりました。フランス革命で命を落としたルイ16世も、このチーズを愛したと伝えられています。洗練された豊かな風味と奥深いコクが特徴で、熟成が進み、中身がとろりと柔らかくなったら最高の食べ頃です。甘酸っぱいジャムを添えればさらに美味しく、ブルゴーニュ産の赤ワインとの相性はまさに絶品です。
クロミエ:ブリー三兄弟の洗練された末っ子
クロミエは、フランスのイル=ド=フランス地方で生まれた「ブリー三兄弟」の一員で、カマンベールチーズを一回り大きくしたサイズ感が特徴です。AOC(原産地呼称保護)の指定を受けていないため、製造方法に厳格な規制はありません。味わうのであれば、新鮮な生乳を使用して作られる農家製(フェルミエ)のものがおすすめです。深いコクとともに、木の実のような独特の風味が感じられます。工場生産のものは、主に殺菌乳を使用しており、比較的クセのないマイルドな味わいです。フルーツとの相性が抜群で、リンゴのスライスやレーズンなどを添えて、味のアクセントとして楽しむのもおすすめです。
白カビチーズ:熟成と最高の食べ頃
白カビチーズは、熟成の度合いによってその風味が大きく変化します。若い白カビチーズは、表面の白カビが純白で、まるで新鮮なマッシュルームのような爽やかな香りがします。熟成が進むにつれて、表面の白カビの中に赤茶色の模様が現れ始め、チーズの味わいが芳醇な香りとコクのある深い味わいへと変化していきます。ただし、熟成が進みすぎると、アンモニア臭が発生することがあるので注意が必要です。生タイプの白カビチーズは、製造後3~4週間程度が最も美味しい食べ頃とされています。チーズ全体がふっくらと盛り上がり、中心部分も外側と同じように柔らかくなっている状態が理想的です。
白カビチーズ:おすすめの食べ方
白カビチーズは、そのまま味わうのはもちろんのこと、様々な料理にも活用することができます。お好みのフルーツやナッツ、蜂蜜などを添えて、ワインやシャンパンのお供として楽しむのもおすすめです。また、パンに塗ったり、サラダにトッピングとして加えたり、グラタンやピザなどの料理に使用するのも良いでしょう。加熱することで風味が変化し、より一層クリーミーな味わいを楽しむことができます。
チーズ選びの秘訣:乳脂肪分に着目
チーズを選ぶ際、パッケージに記載されている「乳脂肪分」の表示には注意が必要です。ヨーロッパと日本では算出方法に違いがあり、ヨーロッパ式では水分を除いた固形分に対する割合を示す一方、日本では水分を含む全重量に対する割合を示します。乳脂肪分が豊富な白カビチーズは、口当たりが優しく、バターのような風味が特徴で、チーズに慣れていない方でも親しみやすいでしょう。
白カビチーズ、最高の味わい方:温度の魔法
フレッシュチーズは、冷蔵庫から取り出してすぐに、冷えた状態でお召し上がりいただくのがおすすめです。それ以外の種類のチーズは、冷蔵庫から出して20~30分程度、室温に戻してからお召し上がりいただくと、香りがより一層引き立ち、風味豊かな味わいをお楽しみいただけます。
まとめ
白カビチーズは、そのバラエティ豊かな風味と奥深さで、世界中の人々を虜にしています。この記事を参考に、ぜひあなたも、お好みの白カビチーズを見つけて、その魅力的な世界を心ゆくまでお楽しみください。