目の中にある水晶体が濁ってしまう白内障は、視力低下の原因となる代表的な病気の一つです。残念ながら、濁った水晶体は自然には元に戻らないため、根本的な治療には手術が選択されます。しかし、初期の白内障と診断された場合、すぐに手術とはならず、経過観察となることが一般的です。そのような状況で、「少しでも進行を遅らせたい」と願う方も少なくないでしょう。この記事では、白内障の進行を穏やかにするための対策について解説します。
目薬の点眼
白内障の進行を緩やかにする可能性のある目薬として、主に2種類が知られています。一つは、水晶体の濁りを抑制する効果が期待されるピレノキシン点眼薬、そしてもう一つは、抗酸化作用を持つグルタチオン点眼薬です。これらの目薬は、いずれも医療機関で医師の診察を受けた上で処方されるものであり、ドラッグストア等で直接購入することはできません。重要な点として、これらの目薬は白内障の根本的な治療を目的とするものではなく、あくまで進行を遅らせる効果が期待されるものであるということをご理解ください。点眼したからといって進行が完全に止まるわけではなく、進行の速度を緩めるための補助的な手段として捉えることが大切です。
サプリメントによる摂取
水晶体内のタンパク質が酸化し変質することで、白内障は水晶体が濁る病気です。そのため、タンパク質の酸化を抑制する抗酸化作用を持つサプリメントが、白内障の進行を遅らせる目的で使用されます。中でも「ルテイン」配合のサプリメントは、白内障の進行予防に加え、網膜機能の改善効果が期待できるものもあり、眼科で取り扱われている場合があります。この「ルテイン」は、目の黄斑部(網膜の中心部)や水晶体に豊富に存在します。「ルテイン」は抗酸化物質として、目の老化を引き起こす活性酸素を抑制したり、有害な光を吸収して目を保護する働きがあります。したがって、「ルテイン」が不足すると、網膜では加齢黄斑変性、水晶体では白内障といった目の老化が進みやすくなります。サプリメントは点眼薬と同様に、白内障の進行を完全に止めるものではないことを理解した上で、摂取することが大切です。
食事による摂取
サプリメントに抵抗があるなら、日々の食事から必要な栄養素を摂り入れるのがおすすめです。ルテインやアスタキサンチンといった成分は、抗酸化作用に優れ、白内障の進行を緩やかにする効果が期待されています。特にルテインは、ほうれん草、ブロッコリー、パセリ、かぼちゃといった緑黄色野菜に豊富に含まれています。一方、アスタキサンチンは、サケ、エビ、カニ、イクラといった食材に多く含まれています。ルテインの1日推奨摂取量は6mgから20mgとされていますが、20mgをほうれん草で摂ろうとすると約1.3束、ブロッコリーなら約4.2株も必要になります。毎日これだけの量を食べるのは大変かもしれませんが、これらの成分がどのような食品に多く含まれているかを知っておけば、食生活に取り入れやすくなるでしょう。
禁煙のすすめ
喫煙習慣は、科学的な研究により、白内障の発症リスクを高めることが示唆されています。タバコに含まれる成分、特にニコチンは、血管を収縮させる作用があり、結果として血流が悪化する可能性があります。さらに、タバコの煙に含まれる物質は、体内のビタミンCを減少させる働きがあることも知られています。喫煙がもたらす健康への悪影響は、肺がんをはじめとする全身の病気へのリスクがよく知られていますが、目の健康にも様々な影響を及ぼすことがわかっています。眼の病気としては、白内障だけでなく、加齢黄斑変性という、網膜の中心部分に異常が生じる病気のリスクも高まることが指摘されています。
紫外線対策
白内障は、水晶体のタンパク質が酸化することで進行する可能性があります。その酸化を引き起こす要因の一つが、太陽光に含まれる紫外線です。そのため、紫外線が目に入る量を減らすことが、白内障の予防に繋がります。紫外線対策としては、UVカット機能のあるサングラスや眼鏡を使用したり、帽子を被ったりすることが効果的です。特に、屋外での活動時間が長い方は、日頃から意識して対策を行うことをお勧めします。
糖尿病治療・予防
糖尿病患者は、そうでない人と比較して白内障の発症時期が早まることがあります。糖尿病とは、血液中のグルコース濃度が慢性的に高い状態を指します。高血糖状態が継続すると、血液中のブドウ糖が変質し、眼の水晶体にも蓄積されます。水晶体に蓄積されたブドウ糖は、周囲の水分を引き込みます。水晶体の約70%は水分で構成されているため、この水分バランスが崩れることで水晶体が濁り、白内障へと進行します。糖尿病は全身に影響を及ぼす病気ですが、眼への影響も無視できません。定期的な検査が重要です。特に注意すべきは、糖尿病網膜症です。網膜への血流不足から出血などを引き起こし、失明原因の主要なものとなっています。これらのリスクを軽減するためにも、適切な血糖コントロールが不可欠です。