韓国の食文化

韓国料理を語る上で欠かせない「五味五色」。これは単なる味や色の表現に留まらず、自然との調和、健康への配慮、そして人生哲学までをも包含する、奥深い食文化の根幹をなす概念です。辛味、甘味、酸味、苦味、塩味の五つの味覚と、赤、白、黒、緑、黄色の五つの色彩は、それぞれ五臓五行思想と結びつき、バランスの取れた食事を通じて心身の健康を保つという知恵を伝えています。この記事では、五味五色の意味をひも解きながら、韓国料理に込められた先人たちの知恵と、その文化的背景を探ります。

韓国の食文化「薬食同源」とその考え方

韓国料理の根底にあるのは「薬食同源」という思想です。これは、日々の食事こそが健康の源であり、体に良いものを摂ることで病気を予防するという考え方です。中国にルーツを持つこの思想は、韓国の食生活に深く浸透しており、野菜をふんだんに使う食文化を育みました。特に、ご飯や肉を野菜で包んで食べる「サム」という食習慣は、その代表例と言えるでしょう。その結果、韓国は世界でも有数の野菜消費国となっています。

韓国料理の特徴

韓国料理は、野菜を豊富に使い、肉や魚介類、そして発酵食品を巧みに組み合わせた食文化が特徴です。主食として米が一般的ですが、白米だけでなく、雑穀や豆を混ぜて炊くこともよくあります。日本の味噌汁とは異なり、韓国では牛骨や魚介から丁寧にダシを取った「チゲ」や「クク」、「タン」といった多様なスープが食卓に並びます。とりわけキムチは、韓国を象徴する食品であり、伝統的な漬物の一種です。白菜や大根などの野菜を塩漬けした後、「ヤンニョム」と呼ばれる独自の調味料で漬け込みます。ヤンニョムは、塩、唐辛子、ニンニク、生姜などを混ぜ合わせたもので、特に唐辛子を使った辛いキムチは、16世紀に唐辛子が伝来して以降に生まれたものです。発酵食品であるキムチは健康にも良いとされ、地域によって味が異なり、その種類は200近くにも及ぶと言われています。中でも最も一般的なのは、白菜を使った「ペチュキムチ」です。キムチは、2006年にアメリカの健康専門誌「ヘルス」によって、世界五大健康食品の一つとして選ばれました。

韓国料理ならではの食材と調味料

韓国料理を語る上で外せないのが、唐辛子とにんにくという2つの食材です。また、ネギや生姜といった香味野菜を惜しみなく使用することも特徴と言えるでしょう。調味料としては、「ジャン」と呼ばれる韓国独特の味噌や、醤油、ごま油、アミエビの塩辛であるセウジョ、魚醤などが頻繁に用いられます。

キムジャン

キムジャンとは、韓国の伝統的なキムチ作りのことを指します。厳しい冬を乗り越えるため、かつては家族や地域の人々が力を合わせ、大量のキムチを仕込むことが欠かせませんでした。この習慣は17世紀頃から盛んになり、冬の食料確保だけでなく、地域住民の絆を深める大切な役割も担ってきました。現代においても、キムジャンは人々が交流し、親睦を深める機会として受け継がれています。初冬の風物詩とも言えるキムジャンの風景は、2013年にユネスコ無形文化遺産に登録されています。

多様な韓国料理

多彩な味が楽しめる韓国料理。定食スタイルが主流で、ご飯、麺類といった主食に、バラエティ豊かな数々のおかずが並びます。中でも、キムチとスープは食卓に欠かせない存在。野菜や魚介、牛骨などをじっくり煮込んだ滋味深いスープは、具だくさんで満足感があります。また、「ジョン」という韓国風お好み焼きや、魚介を生でいただく「フェ」も人気です。日本では刺身を醤油で食しますが、韓国では酢味噌やコチュジャンで味わうのが一般的です。街には屋台も多く、手軽に楽しめるグルメも豊富です。特に有名なのは「トッポッキ」。もちもちとした棒状の餅を甘辛いタレで煮込んだ定番料理で、街の至る所で目にします。近年日本でも人気の「ハットグ」や、ピリ辛味が食欲をそそる「韓国風おでん」など、バラエティ豊かな味が楽しめます。

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