韓国料理と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?キムチ、ビビンバ、サムギョプサル…数え上げればきりがないほど、私たちの身近には様々な韓国料理があふれています。しかし、その奥深さを知っている人は意外と少ないかもしれません。実は韓国料理は「五味五色」という考え方を大切にし、五つの味と五つの色を組み合わせることで、健康にも配慮したバランスの取れた食文化を築き上げてきたのです。この記事では、知れば知るほど奥深い韓国料理の魅力に迫ります。
韓国料理とは
近年、日本国内ではK-POPや韓国ドラマといった韓流ブームを背景に、韓国料理への関心が一段と高まっています。新大久保や赤坂などは、特に韓国料理レストランが集中するエリアとして知られ、その競争の激しさも注目されています。日常的に親しんでいる韓国料理ですが、その歴史的背景や食文化について理解を深めることで、より一層美味しく味わうことができるでしょう。
韓国料理の特徴と食文化
韓国料理について、その特徴と食文化を掘り下げてみましょう。地理的に日本と近い韓国ですが、食においては独自の発展を遂げてきました。多くの人が連想するであろう唐辛子やキムチに加え、薬食同源という考え方、五味五色を意識した彩り、発酵食品の多様さ、米を中心とした食生活、汁物の重要性、そして食卓を彩るパンチャン(おかず)の存在が、韓国料理を語る上で欠かせない要素です。
薬食同源
韓国の食卓には、「薬食同源」という思想が深く根付いています。これは、日々の食事を通じて病気を未然に防ぎ、健康を促進するという考え方です。つまり、薬と食物は源を同じくするものと捉え、自然界の恵みを活用して身体を整えようとするのです。たとえば、夏場の疲労回復には参鶏湯が用いられ、咳を鎮めるためには五味子茶が飲まれるなど、体調不良時には食事による改善が試みられます。 発酵食品やヤンニョムといった食文化も、この薬食同源の思想を反映していると言えるでしょう。韓国料理は、この思想に基づいて作られたものが多く、バランスの取れた食生活を送ることで、病気の予防に繋がると考えられています。
五味五色
韓国料理の世界では、「五味五食」という考え方が大切にされています。これは、自然界の法則である陰陽五行説に基づいたもので、食を通じて健康を維持しようとする思想です。献立を考える際、五つの色と五つの味を意識的に取り入れ、バランスの取れた食事を目指します。例えば、緑色の食材としては野菜や海藻、赤色なら唐辛子や人参、黄色は卵やカボチャ、白色は魚介類や大根、そして黒色には牛肉や海苔などが挙げられます。これらの食材を使い、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の五味を組み合わせることで、より豊かな食生活を送ることができると信じられています。ナムル、ビビンバ、キムチなどは、まさに五味五食の思想を体現した料理と言えるでしょう。
発酵食品
韓国といえばキムチが広く知られていますが、発酵技術は調味料や酒造りにも深く根付いています。醤油の「カンジャン」、味噌の「テンジャン」、唐辛子味噌の「コチュジャン」、そして米から作る発酵酒「マッコリ」など、数多くの発酵食品が食文化を支えています。特にキムチは、その種類が100を超えると言われ、冬の厳しい寒さを乗り越えるための保存食として発展しました。これらの発酵食品は、美容や健康、腸内環境の改善に良い影響を与えると考えられています。韓国の人々の肌が美しいと言われる背景には、日常的に発酵食品を摂取する食習慣があるのかもしれません。50代、60代の女性でも肌が艶やかな方が多く、実際に韓国を訪れた人が驚くほどです。
主食はコメ
韓国では、日本と同様にお米が食生活の中心です。白米はもちろん、キビやアワ、大麦などを混ぜた雑穀米や、野菜や豆を加えた炊き込みご飯もよく食べられています。特筆すべきは、お粥をよく食べること。日本では体調不良の際に食べることが多いお粥ですが、韓国では朝食の定番として親しまれています。韓国ドラマでもお粥を食べるシーンはよく見られ、早朝から営業しているお粥専門店があるのも、韓国ならではの光景です。様々なトッピングが楽しめるお粥は、韓国の人々の日常に深く根付いています。
スープ
韓国料理では、スープは食文化に深く根付いた存在です。多様なスープ(クク、タン、チゲ、チョンゴルなど)があり、食事の最初にスープや汁物をいただくのが一般的です。食事の際には、スプーンとお箸が必須アイテム。スープとご飯はスプーンで、おかずはお箸で食べるのが基本です。ご飯をスプーンでいただくのは、スープにご飯を入れて食べる習慣があるため。これは、乾燥した気候の中で体を温めるための知恵とも言えるでしょう。スープにご飯を入れる食べ方は、クッパとして親しまれています。日本では行儀が悪いとされることもありますが、韓国では一般的な食べ方なのです。
パンチャン
韓国料理店では、ご飯とスープに加え、パンチャンと呼ばれる多様なおかずが供されるのが一般的です。これは、多くの料理を出すことが客に対するもてなしとされており、おかわり自由な小皿料理がテーブルを彩ります。食卓には主菜、ご飯、汁物の他に、キムチを筆頭とする様々な常備菜が並びます。パンチャンの数は奇数にするのが伝統で、通常3種、5種、7種とされ、それぞれの調理法や材料が重複しないように工夫されています。これらの小皿料理は、煮物、炒め物、和え物、漬物といった野菜を主体としたものが中心で、キムチは必ず提供されます。また、パンチャンの種類は、その豊かさを示す指標とも考えられており、庶民の食卓では3~5種類、上流階級では7~9種類が並び、宮廷料理においては原則偶数の12種類とされていました。
唐辛子の鮮烈な辛味と、薬味野菜の爽やかな香り
韓国料理に欠かせない存在である唐辛子「コチュ」は、その鮮やかな色合いと刺激的な辛さで料理に深みを与えます。日本の唐辛子と比較して辛味が強く、発酵食品との相性が抜群です。生のまま、または乾燥させて粉末状にしたものが、料理の種類に応じて使い分けられています。韓国料理において、ニンニク、生姜、ネギなどの香味野菜と唐辛子は不可欠な要素であり、これらの材料は、合わせ調味料であるヤンニョムにも使用されます。特に、韓国はニンニクの消費量が世界トップクラスであり、様々な料理に活用されています。さらに、唐辛子だけでなく、ニンニク、生姜、ネギなどの薬味野菜も頻繁に使用されます。これらの食材は体を温める効果があり、時に-20℃を下回る韓国の厳しい冬を乗り越えるための知恵として、食文化に根付いています。
サム文化
韓国の食卓には、肉を新鮮な葉野菜で包んで味わう「サム」という独自の食文化が根付いています。サンチュやレタスに、キムチ、特製ダレ、味噌などを添えて一緒に包むのが定番です。このサム文化のおかげで、こってりとした肉もさっぱりと食べられ、自然と野菜をたくさん摂取できるため、韓国の野菜消費量は世界でも有数です。葉野菜以外にも、韓国のりやわかめなどが使われることもあり、多様な食材で楽しむことができます。
ヤンニム
韓国料理に欠かせない味の決め手、それはヤンニョムと呼ばれる合わせ調味料です。ヤンニョムとは、様々な調味料、香辛料、そして香味野菜を組み合わせたもので、「薬念」という漢字が示す通り、「薬となるように」との願いが込められています。その材料は多岐にわたり、塩、砂糖、醤油、味噌といった基本調味料から、コチュジャン、ごま油、粉唐辛子、にんにく、生姜、ネギなどが用いられます。ヤンニョムは、単に料理の風味を豊かにするだけでなく、健康を支え、肉や魚の臭みを消し、食品の保存性を高めるなど、多様な役割を果たす万能な存在と言えるでしょう。
山菜、魚介類、海藻
変化に富んだ地形と豊かな自然に恵まれた韓国では、多種多様な野菜が育ち、三方を海に囲まれた地理的条件から、海産物も豊富です。そのため、韓国料理には山の恵みである山菜や、海の幸である魚介類、海藻がふんだんに用いられます。中でもナムルは、山菜料理の代表格と言えるでしょう。大根やもやしといった定番に加え、旬の野菜や山菜を使ったナムルが日常的に食されています。数種類のナムルを常備菜として用意しておき、そのまま食卓に並べたり、ご飯に混ぜてビビンバとして楽しむのも一般的です。韓国では、旬の食材を活かした料理が愛されており、春にはヨモギやセリ、タケノコ、フキなどが、夏にはエゴマの葉や韓国カボチャなどがナムルとして食卓を彩ります。また、かつての韓国の家庭料理では、肉よりも魚介類がメインだった時代もあり、魚介類は韓国料理に欠かせない食材の一つです。意外に思われるかもしれませんが、キムチにも魚介の塩辛が使用されています。ワカメや海苔、ヒジキ、昆布といった海藻も、韓国料理には頻繁に登場します。韓国は海に囲まれているため、新鮮な魚介類や豊富な海藻を日常的に食卓に取り入れています。世界的に見ると珍しいですが、韓国ではタコもよく食べられており、鍋料理や炒め物など、様々な調理法で親しまれています。韓国料理の起源は、神話の時代にまで遡ります。檀君神話には、檀君王儉が人々に五穀と麻を教えたという記述があり、このことから穀物が韓国人の食生活において重要な位置を占めてきたことがわかります。
まとめ
韓国料理は、唐辛子の辛味、薬味の香り、発酵食品の深み、そして多彩なスープが織りなす、情熱的で奥深い味わいが特徴です。日本と地理的に近い韓国は、主食が米であり、食材も共通する部分が多いことから、日本の食文化と重なる部分があります。しかし、韓国独自の食に対する考え方や歴史的背景から、独自の食文化が発展してきました。世界中で愛される韓国料理の食文化を深く知ることで、より身近に感じられるでしょう。