雨上がりの空を見上げると、雲間から光が差し込み、どこか清々しい気持ちになる。そんな情景を彷彿とさせるのが、和菓子「黄身しぐれ」です。しっとりとした黄身餡の奥ゆかしい甘さと、表面に浮かぶ繊細なひび割れ模様は、まるで雨上がりの空模様そのもの。口に運ぶたびに、日本の美しい四季を感じさせてくれる、上品な味わいが魅力です。今回は、そんな黄身しぐれの魅力に迫ります。
黄身しぐれとは何か
黄身しぐれは、和菓子の一種で、黄身餡を主な材料としています。特徴的なのは、黄身餡に山芋などを加えて裏ごしした、そぼろ状の生地(時雨または村雨と呼ばれます)を用いる点です。この生地で別の餡を包み込み、蒸し上げることで作られる饅頭を、特に時雨饅頭と呼びます。黄身餡を使用しているため「黄身しぐれ」と名付けられ、蒸した際に表面に現れるひび割れが、雨上がりの空模様を思わせる、趣のあるお菓子です。
黄身しぐれの作り方
黄身しぐれは、通常、黄身餡と白餡を組み合わせて作られます。多くの場合、白餡を黄身餡で包んだ形が一般的ですが、餡の配置が逆になっているものも存在します。表面に現れる美しいひび割れ模様を作り出すには、材料の配合や蒸し加減など、熟練した職人の技術が不可欠です。この技術によって、雨上がりの光景や、時には雷を連想させるような、独特の風情が表現されます。
黄身しぐれの歴史と由来
黄身しぐれの起源は、桃山時代に朝鮮から伝わったとされています。ただし、当初から「黄身しぐれ」という名称で呼ばれていたわけではありません。菓子の表面のひび割れを雨の情景に見立てるという、日本ならではの繊細な感性によって、この名前が与えられました。三重県鈴鹿市にある老舗和菓子店「小原木本舗大徳屋長久」では、伝統的な銘菓『小原木』に加え、16代目の当主が考案した新しい感覚の和菓子も提供しています。
様々な「しぐれ」菓子
「しぐれ」という名前を持つ和菓子は、黄身しぐれの他にも様々な種類が存在します。棹菓子や、特徴的なひび模様を持つもの、あるいは栗まんじゅうを「しぐれ」と呼ぶお店もあります。この栗まんじゅうの例は、雨のように栗が降り注ぐ様子を表現したものです。このように、和菓子は、その名前や形状を通して、季節の移り変わりや自然の風景を表現する、奥深い文化を持っています。
和菓子の奥深さ
和菓子の素晴らしさは、その繊細な見た目や味わいはもちろんのこと、日本の伝統や歴史が感じられるところにあります。例えば、黄身しぐれのように、自然の景色をヒントにしたり、職人の熟練した技術によって美しい形を作り上げたりすることで、五感全てで堪能できる芸術作品と言えるでしょう。日本の美しい情景をお菓子で表現できることが、和菓子の大きな魅力です。
まとめ
黄身しぐれは、その名前の由来や製法、そして見た目の美しさにおいて、日本の文化と職人の技術が凝縮された和菓子です。雨上がりの空を連想させる独特のひび割れ模様は、口にする人に束の間の安らぎと趣を与えてくれるでしょう。色々な和菓子を通して、日本の豊かな四季や文化に触れてみてください。
黄身しぐれという名前の由来は?
黄身しぐれは、黄身餡を使ったそぼろ状の生地を蒸した時に現れる独特のひび割れ模様を、雨上がりの空模様に見立てて名付けられたと言われています。
黄身しぐれは、どのように作られるのでしょうか?
黄身しぐれは、黄身餡に大和芋などを加えて丁寧に裏ごししたものを、小さく分けて、中に別の餡を包み込み、型に入れて蒸し上げます。蒸し上がった時のひび割れ具合が、このお菓子の特徴となっています。
黄身しぐれ以外にも「しぐれ」と名付けられた和菓子はありますか?
はい、ございます。棹菓子をはじめ、栗饅頭など、多種多様な和菓子に「しぐれ」という名称が用いられています。それら一つ一つに、独自の意味合いやルーツが存在します。