日本茶 種類
世界中で楽しまれているものの一つに「日本茶」があります。その香り立つ一杯からは日本の深い文化を感じることができます。素朴ながらも優雅、和の心を象徴する日本茶は数多くの種類があり、それぞれ異なる風味や特徴を持っています。この記事では、そんな日本茶の魅力を深く掘り下げ、その多様な種類について紹介してまいります。どんな日本茶があるのか興味がある、日本茶に詳しくなりたいという方はぜひ最後までご覧ください。
「緑茶」としての日本茶
「緑茶」と言えば、多くの方が日本茶の「煎茶」や「抹茶」を思い浮かべることでしょう。しかし、「緑茶」の範囲はそれだけでなく、日本だけでなく中国やインドでも生産されるティーリーフすべてが含まれます。
一方、「緑茶」という言葉が業界で使用されるとき、ほとんどの場合、それは日本茶を指します。その理由は、日本の緑茶が色、味、香りなど、茶の鑑賞における各要素に優れているからです。みずみずしい緑色、甘味と旨味の絶妙なバランス、そして心を落ち着ける気品ある香りが共存し、その一杯から提供されるエネルギーが私たちを癒してくれます。
日本茶は古くから親しまれ、日本人の心をなごませてきました。その歴史に裏打ちされた品質と、新しい試みを通じて絶えず進化し続ける特性から、「緑茶」の代名詞として世界中で認識されています。茶室や家庭で飲まれる習慣が、この日本の緑茶を一層魅力的なものにしています。そのほっとする感覚と深遠な魅力に触れ、この一杯から溢れる文化の魅力を感じてみてください。
でも、一体「日本茶」は何を指すのでしょうか?例外もあるでしょうが、主に「日本で生産された緑茶」と言われています。「日本茶」と言えば緑茶というのが一般的な認識です。もちろん、紅茶や烏龍茶など、日本国内で生産される他の種類のお茶も存在します。それでも、生産量や認知度から言うと、「日本茶」は主に「緑茶」を指します。
それでは、「緑茶」についてもう少し詳しく見てみましょう。具体的には、日本だけでなく、中国やインドでも生産されているお茶全般が含まれます。固有の名前で呼ばれる中国茶などがその例です。
発酵度合いによって定義されるお茶の分類
日本の茶文化は、その複雑な製法や多種多様な種類により、世界中から愛されています。その中でお茶の特性を決定づける重要な要素が「発酵度合い」です。「発酵」とは茶葉内の成分が酸化する過程のことで、これがお茶の風味や色を生み出しているのです。
発酵度合いによって大別できる代表的な3つのお茶が、緑茶、ウーロン茶、紅茶です。特に発酵度合いが最も低い緑茶はその豊かな風味から日本の代表的なお茶とも言えます。
緑茶は蒸して発酵を防ぎ、その後乾燥させることで新鮮な状態を保ちます。その結果として、茶葉の本来の色と風味を最も堪能することができるお茶になります。緑茶には煎茶、玉露、抹茶、かぶせ茶、番茶、ほうじ茶、釜炒り茶、玄米茶など様々な種類があります。
次に発酵度合いが中程度のお茶にはウーロン茶やダージリンがあります。一定時間酸化させることで独特な苦みと香りを引き立て、ウーロン茶の風味が生まれます。
また、発酵度合いが最も高いお茶には紅茶やプーアル茶が挙げられます。これらのお茶では長時間にわたる発酵の結果、深い色味と風味が誕生します。
このように、発酵度合いは3つの大きな分類でお茶を理解するための鍵となります。また、たとえば緑茶でもその種類により風味が異なるため、自分の好みに合ったお茶を探すのも一つの楽しみになります。ぜひ、各お茶の発酵度合いや種類の違いを味わいながら、自分だけのお気に入りを見つけてください。
日本茶の種類①茶葉を「蒸し」て「揉んで」作る【煎茶】
「日本茶」と聞いて思い浮かぶのは、まず「緑茶」であり、緑茶の中でも特に「煎茶」が広く馴染み深い存在でしょう。全国で生産される緑茶の大半はこの煎茶であり、その人気は揺るがないものがあります。
煎茶はその名の示す通り、茶葉を「煎じる」ことで生み出されます。しかしここでの「煎じる」とは、茶葉を「蒸す」、「揉む」という工程を経て製造されるという特徴的な意味合いが含まれています。新芽を摘んだ茶葉をまず釜で蒸し、酵素の働きを止めて発酵を防ぐための熱処理を行います。これにより、鮮やかな緑色と、茶葉本来の香りや旨味が保存されます。
次に茶葉を特別な機械でじっくりと揉みます。これは茶葉を乾燥させつつ形状を整え、保存性を高める目的があると同時に、より鮮烈な風味を生み出す効果もあります。特に「蒸し」工程の深浅によって、浅蒸しの黄金色から深蒸しの濃い緑色まで、様々な色合いと味わいが楽しめます。
そんな豊かな風味と香りを有する煎茶は通常の飲用以外にも、料理のダシとして利用されるなど、日本の食文化に深く根ざしています。四季折々の風情を共感する日本人の心に合うような風味と色彩のある煎茶、ぜひ一度その魅力をご体験いただきたいと思います。その一杯が、日常に異彩と静寂をもたらすでしょう。
日本茶の種類②日光を遮り栽培することで旨味を出す【玉露】
「玉露」は最高級の日本茶として認識され、その華やかな味わいを引き立てる特別な栽培方法が存在します。この栽培方法には「被覆(ひふく)」という工程が含まれており、栽培地によっては20日以上も行います。「被覆」とは茶樹や茶畑全体を覆う作業で、これにより直射日光を遮断するための工程です。この玉露の原点である日陰での育て方は、茶の旨味成分「テアニン」の保全にとって重要な役割を担っています。
直射日光を受けると、茶葉内のテアニンは渋み成分に変わってしまう可能性があります。しかし、「被覆」により日光を遮断することで、この過程を予防し、テアニンを保つことが可能になるのです。それゆえに、玉露は旨味と甘みが豊富で、独特な「覆い香(おおいか)」とも呼ばれる香りを持っています。さらに、日光を遮られた状況で茶葉が育つことで光合成の効率が向上し、その結果、茶葉の緑色が濃く、深い青みがかった色合いを作り出すのです。
しかし、この特別な栽培と加工の手間から、玉露は他の日本茶に比べて価格が高い傾向にあります。特に、淹れ方も細心の注意が必要で、60℃前後のぬるま湯をゆっくりと注ぎ、2〜4分をかけてじっくりと抽出することが推奨されています。この手間と時間こそが、玉露の贅沢さの一部だと言えるでしょう。
また、玉露の栽培方法には地域性も見られます。ほとんどの場所では寒冷紗を覆い材として使いますが、福岡県の八女地方の一部では、藁を用いた伝統的な覆い方が今も受け継がれています。これらの特性と伝統が組み合わさった玉露は、日本のお茶文化の最高峰とも言える逸品で、その味わいは一度は体験すべきものです。
日本茶の種類③被覆を行った茶葉を乾燥、粉末状にした【抹茶】
【抹茶】は、一般的には、日本茶の一種で、被覆という方法で育てられた茶葉を用いて作られます。被覆とは、太陽の直射光を避け、間接的な光の下で茶葉を育てる環境のことを指し、その結果、茶葉にはクロロフィルやアミノ酸が多く含まれ、濃く美しい色合いと甘味の強い品質が生まれます。
抹茶のプロセスは玉露と似ており、ハーベストした茶葉を蒸し酸化を防止し、その後、「揉む」のではなく、「炉」で乾燥させます。次に「碾茶」(てんちゃ)と呼ばれる状態にした茶葉から、葉脈や茎を取り除き、石製の臼と杵で手間をかけて粉砕します。これによって、抹茶特有のきめ細やかな粉末と鮮やかな緑色が生まれるのです。
抹茶の特徴はその製造工程から生まれる独特の風味、香り、そして滑らかさです。一般的には茶道で使われますが、近年では洋菓子やスイーツ、ラテにも使用され、その利用の幅を広げています。
その丁寧に作られた抹茶は、色鮮やかで風味豊かな味わいがあり、日本茶の楽しみ方の一つを提供してくれます。次回は、抹茶以外の日本茶についても触れていきますので、お楽しみに!
日本茶の種類④玉露と煎茶のいいとこどり【かぶせ茶】
日本はその様々な種類の茶で知られています。中でも異彩を放っているのが、豊富な香りと深い味が特長の「玉露」と、お手軽さと馴染みの深さで人気の「煎茶」です。この二つの特色を兼ね備えた茶が、「かぶせ茶」であると言われています。
「玉露」はその甘さと独特の香りが魅力であり、日本茶の中でも格別の存在と認識されています。一方、「煎茶」は日本人にとってお馴染みのもので、どこでも簡単に楽しむことができる日常茶として親しまれています。
新たな進化を遂げた「かぶせ茶」は、「玉露」と「煎茶」の魅力を絶妙に融合させたお茶です。それは玉露同様の洗練された香り・旨味と煎茶のさっぱりさを味わうことができます。それは新芽の成長を途中で抑制して蒸す製法から、香りが際立ち、味わいは深みを増しています。
玉露と同じく被覆栽培を1週間程度実施し、その後は煎茶のように加工します。この被覆栽培期間が玉露より短いため、かぶせ茶は玉露と煎茶の板挟みのような風味を持っています。また、茶葉の色合いは玉露の邃深な緑色を保ちつつ鮮やかさを併せ持っています。
一度、「かぶせ茶」のユニークな香りと味わいに触れると、その魅力に惹きつけられることは間違いありません。日常的な「煎茶」と高級な「玉露」が合わさった新たな魅力、「かぶせ茶」で日本茶の新たな吸引力を感じてみてはいかがでしょうか。
日本茶の種類⑤成熟した茶葉を原料とする【番茶】
さまざまな種類を持つ日本茶の中に、「番茶」という歴史と伝統を持つ一品が存在します。主に成熟した茶葉を原料として使用し、そのフルーティな風味と香りが一般的な緑茶とは一線を画す特徴を持っています。
新芽や初めて摘む茶葉から作られる新茶とは対照的に、番茶の材料は成熟した硬い葉や、選別後に残った大きな茶葉を使用します。これは、新芽の摘むタイミングが過ぎてから育った茶葉または、摘む周期が第二回、第三回と続いた後の茶葉を指します。これらを総称して番茶と呼び、さまざまな種類が存在します。
番茶の成熟した茶葉は、新芽に比べてカフェイン含有量が低いため、体に優しく、深夜でも安心して飲むことができます。また、旨味や甘み成分が少なく、さっぱりとした味わいで日常的に飲むことに向いています。気取らない風味は、安価でありながら多くの人々に愛されています。
特に京都での番茶は、「京番茶」と呼ばれ、茎や枝までを使用し強火で炒ることによる特別なスモーキーな香りが特徴となっています。
さて、「阿波晩茶(あわばんちゃ)」といわれるものは、四国山地で生産され、番茶と暗示されることがありますが、実際は乳酸菌による発酵を促すために、茶葉を樽で漬け込むという独特の製法で製造される全く別のお茶です。
全体として、番茶は日本のお茶文化の一部であり、その素朴さと深さ、そして和やかさといった特性から非常に人気があります。その一杯を、いつでもどこでも楽しむことができることから、日本独特の伝統と美味しさを体験するのに最適なお茶です。
日本茶の種類⑥焙煎で香ばしい香りを引き出した【ほうじ茶】
「ほうじ茶」という特異な存在は、我が日本茶の中核を成す一種であり、数多の茶葉の中でもその抜きん出た個性が注目を浴びています。ほうじ茶の個性とは、なんと言ってもその焙煎による独特の香りによるものです。この香り、鼻腔を刺激して心地よい落ち着きと休息感を齎します。
ほうじ茶という名前は焙煎という名工芸に由来します。緑の煌めきを放つ新鮮な茶葉が採れたら、焙煎という手法で火元に置かれます。この一連の工程において茶葉が独特な味わいをもつ要素を生成し、香ばしい匂いを放つ結果となります。その香りの強烈な個性は、少なくとも一度は嗅いでみてください。
さらに、緑茶と比較するとほうじ茶はカフェインが抑えられ、マイルドな口当たりが特徴です。寝る前の一杯や、リラクゼーションタイムに最適な一杯と言えるでしょう。また、ほうじ茶には美味しさだけではなく、美容と健康を手助けしてくれる成分もたっぷり含まれています。
冬の寒い夜にはほうじ茶の温かさが心地よく、夏の暑い日には冷たいほうじ茶が心地よい。その味と香りがあなたの心と体を癒すでしょう。
ひと口味わえばその個性を体験できるほうじ茶、いつもの生活に違った色彩を加えてはいかがでしょうか。多種多様な食事やデザートとのコンビネーションもおすすめですよ。ほうじ茶は、焙煎の技法で煎じた煎茶や番茶から生まれ、その独特な香ばしさがリラックス効果を生むと言われています。
焙煎は178℃以上の高温で行われ、この過程で茶葉内のカフェインが昇華(固体から気体への直接変化)し、カフェイン含有量が減少します。これによりほうじ茶は苦みや渋みが少なく、子供からお年寄りまで安心して楽しむことができます。
日本茶の種類⑦蒸すかわりに、釜で炒る【釜炒り茶】
日本では一般的に、新鮮な茶葉に早急に熱処理を施し、酵素の活動を停止させて発酵を防ぐ方法で緑茶を作ります。その主要な方法は「蒸す」ではありますが、一部では「炒る」製法、すなわち釜炒り茶も存在します。
釜炒り茶の製法は本来中国から伝わったもので、現今でも中国の緑茶の大部分はこの方法で作られています。日本でも、「煎茶」と聞けば多くの人が「蒸し製の煎茶」を思い浮かべるかもしれませんが、九州地域などでは昔ながらの釜炒り茶も楽しまれています。
九州地方の山間部を主な生産地とし、その釜炒り製法が生み出す釜香(かまこう)と名付けられた独特の香りが特徴的な釜炒り茶。その色は萌黄色から金色を帯びており、少し赤みがかっています。
これらは蒸し製法とは一線を画す個性的な特徴であり、日本茶の新たな解釈として日本茶の楽しみ方をさらに広げています。これらの深い風味と香りを、ぜひ一度味わってみてはいかがでしょうか。
日本茶の種類⑧炒った玄米を加えた、香ばしい【玄米茶】
日本の長い歴史をもつお茶の文化では、「玄米茶」が一際異彩を放つ存在と言えます。玄米茶は、緑茶や煎茶に焙煎された玄米を加えた一種のティーで、燻製的な風味と甘みが特徴。この風味の秘密は、玄米の香ばしさと、緑茶特有のさっぱりとした風味とが見事に融合していることにあるのでしょう。
主に使用される茶葉は、「蒸し茶」や「煎茶」。蒸し茶は、茶葉を乾燥させてから高温で急速に加熱し、酸化を防ぐ方法で作られる一方、煎茶は焙煎することでその特性を引き立てます。玄米とこれらの茶葉とが組み合わさることで、それぞれの風味が一体となり、魅力溢れる玄米茶が誕生します。
玄米茶はその風味から、毎日の飲み物として、また料理にも活用できる万能さがあります。寒い季節には少々の塩を加えて体を温め、夏には冷たい飲み物として喉越しの良さを堪能することができます。
玄米茶は、東京茶寮や煎茶堂東京に代表されるようなお店でも、特別な醍醐味として提供されています。それぞれが独自の手法で玄米茶を提供しており、日本のお茶文化が持つ深みを感じることができます。
日本で生まれたこの美味しい玄米茶を是非一度ご賞味いただきたい。その風味から日本のお茶の持つ豊かな調和を感じていただければ幸いです。
まとめ
本記事を通じて、日本茶の多様な魅力や特徴を一杯に詰めて伝えることができれば幸いです。煎茶、抹茶、焙じ茶など、それぞれ異なる風味と文化が息づいています。日本茶の深い世界に触れ、その風味に耳を傾け、香りに身を任せてみてください。一杯の茶から生まれる、心地よい余韻をお楽しみください。