私たちの体にとって欠かせない栄養素の一つである鉄分。しかし、鉄分が不足すると、貧血をはじめとするさまざまな不調が現れることをご存じでしょうか?「最近、疲れやすい」「立ちくらみやめまいが増えた」「動悸や息切れが気になる」――こうした症状があるなら、鉄分不足のサインかもしれません。本記事では、鉄分不足の原因や症状、そして効果的な改善方法について詳しく解説します。自分や家族の健康を守るために、鉄分の大切さを改めて見直してみましょう。
貧血とは?
貧血とは、血液中のヘモグロビンの量が減少した状態を指します。ヘモグロビンは酸素を全身に運ぶ役割を担っており、その量が不足すると、体内の酸素供給が滞り、疲れやすさ、めまい、動悸、息切れ、立ちくらみ、頭痛などの症状が現れます。貧血にはさまざまな原因がありますが、最も一般的なのは鉄分不足による鉄欠乏性貧血です。貧血を指摘されたときには、すでに体内の鉄が長期間不足している可能性が高いため、早めの対策が重要です。
鉄欠乏性貧血とは?
鉄欠乏性貧血は、鉄分の不足によってヘモグロビンが十分に作られなくなることで起こります。鉄は赤血球のヘモグロビンの主要な構成要素であり、その約60~70%が赤血球に存在し、残りは肝臓や脾臓、骨髄に貯蔵されています。鉄が不足すると、貯蔵鉄が先に消費され、その後、ヘモグロビンの生産が低下し、貧血の症状が現れます。
鉄分が不足する原因
鉄不足の原因は主に以下の4つに分類されます。
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鉄分の摂取不足 偏った食生活や過度なダイエットにより、鉄分の摂取量が不足することがあります。特に動物性食品を避ける食生活をしている場合、鉄の吸収率が低下しやすくなります。
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鉄分の吸収障害 鉄は主に十二指腸で吸収されます。胃の手術歴がある人や、消化管の疾患を持っている場合、鉄の吸収がうまくいかず、鉄欠乏性貧血を引き起こすことがあります。
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鉄分の喪失 出血が原因で鉄分が失われ、食事からの補給が追いつかないことがあります。たとえば、月経過多や消化管出血(胃潰瘍、胃がん、大腸がん、大腸ポリープなど)が挙げられます。
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鉄分の需要増加 成長期、妊娠・授乳期には通常よりも多くの鉄が必要になります。そのため、普段通りの食生活をしていても鉄分が不足しやすくなります。
貧血改善のための食生活
貧血を改善するためには、鉄分の摂取を意識した食生活が重要です。鉄には、吸収率の高いヘム鉄(肉類や魚介類に多く含まれる)と、吸収率の低い非ヘム鉄(卵、豆類、緑黄色野菜、海藻類などに含まれる)の2種類があります。鉄の吸収を高めるためには、ビタミンCを含む食品(柑橘類や野菜)を一緒に摂取することが効果的です。
また、食事の際には、以下のポイントに注意すると鉄分の吸収が促進されます。
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ビタミンCを含む食品と一緒に摂る
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動物性たんぱく質を積極的に摂る
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よく噛んで食べ、胃酸の分泌を促す
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食後すぐに緑茶やコーヒーを飲まない(タンニンが鉄の吸収を妨げるため)

鉄剤による貧血の管理
鉄欠乏性貧血が進行している場合、鉄剤の服用が必要になることがあります。しかし、鉄剤の服用によって胃の不快感や吐き気、下痢などの副作用が出ることもあるため、自己判断での服用は避け、医師の指示に従うことが重要です。貧血の改善後も貯蔵鉄が十分に回復するまで鉄剤を継続することが推奨されます。
年代別 貧血対策
思春期:成長期に伴い鉄の需要が増加し、無理なダイエットが原因で鉄分不足になることがあります。栄養バランスを考えた食事が重要です。
成人女性:特に生理のある女性は鉄不足になりやすいため、意識的に鉄分を摂取する必要があります。偏った食事や過度なダイエットを避けましょう。
妊婦:妊娠中は鉄の需要が増加し、不足すると胎児の発育にも影響を及ぼす可能性があります。鉄分が豊富な食品を積極的に摂取し、必要に応じて鉄剤を使用します。
高齢者:胃の粘膜が萎縮し鉄の吸収が低下することがあります。バランスの良い食事を心がけ、不足しがちな鉄分を補いましょう。
ピロリ菌と貧血の関連性
近年、ピロリ菌と鉄欠乏性貧血の関連が注目されています。ピロリ菌に感染すると胃の粘膜が炎症を起こし、鉄の吸収が低下することがあります。鉄剤を服用しても貧血が改善しない場合、ピロリ菌感染の有無を検査し、必要に応じて除菌治療を受けることが推奨されます。
まとめ
貧血、特に鉄欠乏性貧血は、適切な食事や生活習慣の改善によって予防・改善できます。必要に応じて鉄剤を活用しながら、日々の食事で鉄分をしっかり摂取することが大切です。貧血を放置せず、早めの対策を心がけましょう。