銅の栄養:健康を支える必須ミネラルの効果と摂取方法

銅は、人類が古くから利用してきた金属であり、私たちの体にも欠かせない必須ミネラルの一つです。成人の体内には約70~100mgの銅が含まれ、主に骨や肝臓、筋肉に存在し、血液や脳などにも分布しています。銅はたんぱく質と結びつき、生命活動において重要な酵素の構成要素として機能します。鉄の代謝やエネルギー産生、免疫機能の維持など、多岐にわたる役割を担っており、健康の維持に欠かせない栄養素です。本記事では、銅の働きや摂取方法、不足や過剰摂取のリスクについて詳しく解説します。

銅とは?

銅は、古代から人類に利用されてきた金属であり、人体にも不可欠な必須ミネラルの一つです。成人の体内には約70~100mgの銅が含まれ、その約50%は骨や骨格筋、約10%は肝臓に存在し、血液や脳にも分布しています。銅はたんぱく質と結合し、さまざまな生体内反応の触媒として重要な役割を果たします。通常の食生活を送っていれば、銅の欠乏はほとんど起こりません。

銅の化学的性質としては、元素記号Cu、原子番号29、原子量63.546を持ち、1価と2価の2種類の酸化状態を取ります。乾燥した空気中では安定しているため、日常的にさまざまな用途で利用されています。

銅の吸収と働き

銅は主に小腸や十二指腸で吸収され、門脈を通じて肝臓へ送られます。肝臓ではアポセルロプラスミンというたんぱく質と結合し、セルロプラスミンの形で全身に運ばれます。銅は約10種類の酵素の活性中心として働き、以下のような重要な役割を果たします。

  • 貧血予防:ヘモグロビン合成に関与し、赤血球の形成を助ける。

  • 免疫力の向上:マクロファージなどの免疫細胞のエネルギー代謝を支える。

  • 動脈硬化の予防:赤血球中のSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)酵素を含み、活性酸素を除去。

  • エネルギー生成と鉄代謝:鉄の代謝や輸送に関与し、細胞のエネルギー生成を助ける。

  • 神経伝達の維持:神経伝達物質の合成に関与し、神経機能を正常に保つ。

銅の吸収率は、摂取量が少ないほど高くなり、多く摂取すると低下する性質があります。亜鉛は銅の吸収を抑制するため、ウィルソン病(銅が体内に蓄積する遺伝性疾患)の治療に利用されます。また、大量の2価の鉄やスズイオンも銅の吸収を妨げることが知られています。

銅の1日推奨摂取量

日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、1日の銅の推奨摂取量は以下の通りです。

  • 18~74歳の男性:0.9mg

  • 75歳以上の男性:0.8mg

  • 18歳以上の女性:0.7mg

  • 耐容上限量(18歳以上の男女):7mg

令和元年の国民健康・栄養調査によると、日本人の平均的な銅の摂取量は、男性で1.20mg/日、女性で1.04mg/日となっています。食品群別では、穀類が最も多くの銅を供給し、次いで豆類、野菜類、魚介類の順に摂取されています。

銅が不足するとどうなるか

日常の食生活では銅の欠乏は稀ですが、長期間にわたる経腸栄養や、銅含有量の少ないミルクを主な栄養源としている乳児や未熟児では欠乏症が発生することがあります。

銅欠乏の主な症状には以下のようなものがあります。

  • 鉄投与に反応しない貧血

  • 骨異常や骨粗しょう症

  • 毛髪異常(もろくなる、色が薄くなる)

  • 白血球減少、好中球減少

  • 心血管系や神経系の異常

  • 成長障害

また、遺伝性の銅代謝異常であるメンケス病では、血液や脳、肝臓の銅濃度が低下し、知能低下や発育遅延、中枢神経障害などの症状が現れます。

銅の過剰摂取による影響

通常の食品からの慢性的な過剰摂取による健康被害はほとんど報告されていません。ただし、化学薬品の誤飲や遺伝性のウィルソン病などが原因で、銅過剰症が発生することがあります。

  • ウィルソン病:銅が胆汁中に排泄されず、肝臓に蓄積する遺伝性疾患で、神経障害や肝機能障害を引き起こす。

  • 急性中毒:酢などの酸性食品を銅製の調理器具で調理すると、銅が溶出し、過剰摂取の原因となることがある。

  • その他の影響:化学薬品の誤飲や人工透析時の混入事故などにより、消化器障害、肝障害、溶血性貧血を引き起こすことがある。

銅を多く含む食品

銅は、魚介類、肉類、豆類などに豊富に含まれています。特に、イカやタコなどの軟体動物やエビなどの甲殻類は、銅を多く含むヘモシアニンを利用して酸素を運搬するため、銅含有量が高くなっています。

  • 動物性食品:レバー(牛・豚・鶏)、干しエビ、牡蠣

  • 植物性食品:カシューナッツ、アーモンド、ココア、大豆製品(納豆、豆腐)

これらの食品をバランスよく摂取することで、銅不足を防ぐことができます。

まとめ

銅は、骨や肝臓をはじめとする体内のさまざまな部位に存在し、生体内反応の触媒として重要な役割を果たす必須ミネラルです。血液や神経伝達物質の生成、免疫力の向上、鉄代謝の促進などに関与し、健康維持に欠かせません。

通常の食生活では銅の欠乏は起こりにくいものの、特定の栄養状態や疾患では欠乏症が現れることがあります。銅不足は貧血や骨異常、成長障害を引き起こす可能性があるため、バランスの取れた食事で適切に摂取することが重要です。過剰摂取による健康リスクは少ないですが、遺伝的疾患や化学薬品の誤飲などに注意が必要です。