春の訪れを告げるよもぎの香りが恋しい季節。昔ながらの草餅は、よもぎの豊かな香りと、もちもちとした食感が特徴の、どこか懐かしい味わいの和菓子です。一口食べれば、春の野原を駆け抜けるような爽やかな香りが口いっぱいに広がり、心まで温まります。今回は、ご家庭で手軽に作れる草餅のレシピをご紹介。ぜひ、手作りの温かさと、よもぎの香りに包まれる至福のひとときをお楽しみください。
よもぎ餅(草餅)とは?歴史とルーツ
よもぎ餅は、春を告げる和菓子として親しまれている日本の伝統的な味です。その歴史は古く、平安時代に中国から伝わった風習に端を発します。当時、よもぎの香りと薬効が邪気を払うと考えられており、ひな祭りのルーツである3月3日の上巳の節句に、心身の穢れを祓うために食されていました。
かつては「御形(ごぎょう)」が用いられていた
草餅には、元々は母子草(春の七草の一つである「御形」)が使われていたため、「母子餅」と呼ばれていました。しかし、「母子をつく」という語呂から縁起が悪いとされ、江戸時代にはよもぎを使った草餅が広まりました。
よもぎについて
よもぎ餅に使われるよもぎは、日本各地の道端や野原に自生するキク科の多年草です。生命力が強く、春に芽を出し、茎を伸ばして秋には大きく育ちます。漢方薬としても用いられるほどの薬効を持ち、食用、飲用、香りを楽しむ、お灸の材料、入浴剤など、昔から様々な用途で活用されてきました。
旬の時期と選び方のポイント
よもぎ餅には、3月下旬から5月上旬にかけて収穫される若葉を使うのがおすすめです。成長するにつれて苦味が増し、繊維質も硬くなるため、柔らかい新芽を選ぶようにしましょう。生のよもぎが手に入らない場合は、乾燥よもぎやよもぎ粉末を使用することもできます。
生のよもぎの下ごしらえ
風味豊かな草餅を作るには、よもぎの下ごしらえが重要です。まず、よもぎの葉を根元から先端に向かって優しくなでるようにして、硬い葉を取り除きます。次に、茎を丁寧に開き、一番上にある柔らかい新芽を摘み取ります。残りの葉も同様に摘み取り、たっぷりの水を入れたボウルで丁寧に洗い、泥や汚れを落とします。最後に、ザルにあげてしっかりと水気を切ってください。
昔ながらの草餅レシピ:生のよもぎともち米で
このレシピでは、もち米を使用することで、もっちりとした伸びの良い食感に仕上がります。もち米は、よもぎ本来の香りを引き立て、素朴な味わいを楽しめます。生のよもぎの量はお好みで調整し、自分だけの草餅を作ってみましょう。
材料(作りやすい量)
- もち米:2合
- 生のよもぎ:80g(下処理後の重量)
- こしあん:200g
- 砂糖:大さじ2
- 塩:ひとつまみ
- 片栗粉(またはきな粉):適量
準備
- もち米は、研いだ後、蒸し器を使う場合は最低6時間、できれば一晩水に浸けてください。その後、蒸す15分前にザルにあげて水気を切ります。炊飯器で炊く場合は、1時間水に浸し、炊飯直前に水気を切ります。
- こしあんが柔らかすぎる場合は、鍋に移して弱火で加熱し、水分を少し飛ばして丸めやすくします。
作り方
- 摘み取ったよもぎの中から、食用に適した部分を選び分け、丁寧に水洗いします。
- 大きめの鍋にたっぷりの湯を沸かし、重曹(水1リットルに対し小さじ1程度)を加えます。よもぎを入れ、鮮やかな緑色になったら冷水に取り、丁寧にアク抜きをします。
- アク抜きしたよもぎを、フードプロセッサーにかけるか、包丁で細かく刻みます。その後、すり鉢に移し、滑らかなペースト状になるまで丁寧にすり潰します。
- もち米を蒸し器でじっくりと蒸し上げます。炊飯器を使用する場合は、もち米モードで炊飯します。
- 蒸し上がった(または炊き上がった)もち米と、よもぎのペーストを混ぜ合わせ、餅つき機で丹念につきます。
- バットに片栗粉(または餅とり粉)をたっぷりと敷き、つきたての熱い餅を移します。手を水で濡らしながら、餅を均一な厚さにのばし広げます。
- 食べやすい大きさにちぎって丸めるか、そのままの形でも美味しくいただけます。お好みで砂糖を加えたきな粉をたっぷりとまぶし、風味豊かなあんこと共に召し上がってください。
その他の草餅レシピ
基本の作り方に加えて、様々な材料を組み合わせたよもぎ餅のレシピが存在します。
レシピ1:生よもぎ×米の粉(上新粉、もち粉)
ご家庭に餅つき機がない場合でも、生のよもぎを使って風味豊かなよもぎ餅を作ることができるレシピです。生よもぎならではの優しい香りと、コシのある餅生地の絶妙なハーモニーをお楽しみください。
材料(作りやすい分量)
- 上新粉:80g
- もち粉:20g
- 生よもぎ:40g
- 砂糖:20g
- ぬるま湯(50℃):100ml
作り方
- まず、「基本のよもぎ餅の作り方」の手順1~3を参考に、よもぎの下準備を行います。
- 大きめのボウルに上新粉ともち粉を入れ、お好みで砂糖を加えて混ぜ合わせます。50℃程度に温めたお湯を少しずつ加えながら、ゴムベラでざっくりと混ぜていきます。
- 下準備したよもぎを加え、ゴムベラで混ぜ合わせます。ある程度混ざったら、手で揉み込んでいきます。耳たぶくらいの柔らかさになるように、生地の状態を見ながら残りのぬるま湯を少しずつ加えて調整し、最終的にひとまとめにします。
- 生地を8等分にし、それぞれ小判型に丸めて、真ん中を少しへこませます。蒸気の上がった蒸し器に並べ、15~20分ほど蒸します。
- 蒸しあがった餅をすり鉢、またはボウルに移し、すりこぎで丁寧につきます。
- 全体が均一になるようについたら、ひとまとめにして完成です。食べる際は、手に水をつけて適当な大きさにちぎったり、丸めたりして、お好みで餡子やきな粉を添えてお召し上がりください。
レシピ2:乾燥よもぎを使った簡単よもぎ餅
乾燥よもぎを使えば、一年を通して手軽によもぎ餅を作ることができます。乾燥よもぎならではの、凝縮された風味が楽しめます。
材料(作りやすい分量)
- 上新粉:80g
- もち粉:20g
- 乾燥よもぎ:5g
- 砂糖:20g
- ぬるま湯(50℃):100ml
作り方
- 小さめの容器に乾燥よもぎを入れ、分量外の水35mlを加えて、乾燥よもぎをふやかします。
- ボウルに上新粉、もち粉、お好みの量の砂糖を入れ、混ぜ合わせます。そこに50℃に温めたぬるま湯を加え、ゴムベラでざっくりと混ぜ合わせます。
- ふやかしたよもぎを、戻し汁ごとボウルに加え、ゴムベラで混ぜ合わせます。ある程度混ざったら、手でしっかりと揉み込み、全体をひとまとめにします。
- 生地を8等分にし、それぞれ小判型に丸め、中央を少しへこませます。蒸気の上がった蒸し器に並べ、15~20分ほど蒸します。
- 蒸し上がった餅をすり鉢、またはボウルに移し、すりこぎで丁寧につきます。全体が均一になるようについたら、ひとまとめにして完成です。食べる際には、手に水をつけてお好みの大きさにちぎったり丸めたりして、餡子やきな粉など、お好みのトッピングを添えてお召し上がりください。
レシピ3:乾燥よもぎともち米で手軽に
生のよもぎが手に入らない時でも、ご安心ください。乾燥よもぎを使えば、風味豊かなよもぎ餅をご自宅で簡単に作ることができます。出来上がったお餅を薄く伸ばして2日ほど乾燥させれば、香ばしい切り餅としても楽しめます。
材料(作りやすい分量)
- もち米 2合
- 乾燥よもぎ 5g
- 砂糖 大さじ2
- 塩 ひとつまみ
作り方
作り方は簡単。基本的なよもぎ餅のレシピを参考に、生のよもぎの代わりに水でしっかりと戻した乾燥よもぎを使用するだけです。
よもぎ餅を美味しく保存する方法
自家製よもぎ餅の悩みどころは、時間が経つと硬くなってしまうこと。そこで、美味しさをキープするための保存方法をご紹介します。
- 冷蔵保存:当日中にいただく場合は、ラップでしっかりと包み、冷蔵庫で保管してください。
- 冷凍保存:長期保存したい場合は、粗熱を十分に取ってからラップで包み、冷凍保存用の袋に入れて冷凍庫へ。お召し上がりの際は、自然解凍するか、電子レンジで温めてお召し上がりください。
草餅のアレンジレシピ
手作りの草餅は、そのまま味わうのはもちろん、工夫次第で様々なバリエーションを楽しむことができます。
きなこ餅
軽く温めた草餅に、お好みの甘さに調整したきな粉をたっぷりとまぶして召し上がってください。素朴ながらも風味豊かな、昔ながらの味わいです。
あんこ餅
草餅の中にあんこを詰めて、自家製あんこ餅はいかがでしょうか。よもぎの香りと、上品な甘さのあんこが口の中に広がり、至福のひとときを与えてくれます。
おしるこ
温かいおしるこに草餅を添えてみましょう。冷えた体を温めてくれる、冬に嬉しいアレンジです。お餅の緑色が彩りを添え、食欲をそそります。
結び
よもぎの香りが春の息吹を運ぶ草餅は、日本の伝統的な甘味です。生のよもぎを使うのは少し手間かもしれませんが、その芳醇な風味は市販品では決して味わえません。ぜひご自宅で、春の恵みを感じる手作りの草餅をお楽しみください。
質問1:生のよもぎはどこで入手できますか?
回答:生のよもぎは、春先に野山や土手などで採取することができます。また、地元の農産物直売所や道の駅などでも販売されている場合があります。最近では、インターネット通販でも手軽に購入できます。
質問2:乾燥よもぎを使う場合、何か準備は必要ですか?
回答:乾燥よもぎをお使いになる際は、水で戻す作業が必要です。沸騰したお湯で5分ほど茹でた後、水にさらしてアクを取り除くことで、より美味しくお作りいただけます。
質問3:作った草餅が硬くなってしまった場合、美味しく食べる方法はありますか?
回答:硬くなってしまった草餅は、電子レンジで軽く温め直したり、オーブントースターで焼いたりすると、再び柔らかくなります。また、温かいお汁粉やぜんざいに入れても美味しく召し上がれます。