わらび餅が日持ちしない理由は、原材料に多く含まれる水分とでんぷん質にあります。わらび餅の主原料である本蕨粉は、山菜の蕨から精製されたもので、ほとんどがでんぷん質で構成されています。しかし、本蕨粉は希少で高価なため、市販のわらび餅には安価な加工でんぷんも使用されることが多いです。ただし、本蕨粉のみを使ったわらび餅も、加工でんぷんを混ぜたものも、でんぷん量に大差はなく、日持ちしないという特性に変わりはありません。

一方、コンビニやスーパーで販売されているわらび餅の中には、低温殺菌処理により賞味期限を20日程度に設定しているものもあります。通販で購入できる冷凍わらび餅は、解凍後に食べることを前提としています。これらの商品は賞味期間が比較的長いものの、販売元が指定する保存方法を確認し、賞味期限を守ることが肝要です。

わらび餅をどうしても食べきれない場合、やむを得ず冷蔵保存することもあります。賞味期限内であれば、2〜3日は冷蔵庫で保管できます。ただし、空気に触れないよう密閉容器に入れることが重要です。

しかしながら、冷蔵保存したわらび餅は、透明感を失い、ナタデココのように硬い食感になってしまいます。食べられないわけではありませんが、本来の美味しさは損なわれてしまいます。これは、わらび餅に含まれるでんぷんの劣化が原因です。でんぷんは加熱によって美味しく食べられる状態になる一方、温度が下がると固くなり、旨みが失われてしまいます。この現象は、でんぷんの老化現象とも呼ばれています。冷蔵保存は、このようなでんぷんの老化を引き起こすため、わらび餅の保存方法としては適切とは言えません。

わらび餅は、冷蔵保存には向かない和菓子ですが、冷凍保存なら可能です。密閉容器に入れて冷凍すると、約1ヶ月ほど保存できます。ただし、わらび餅の種類によっては、解凍後にボソボソとした食感になり、美味しく食べられない場合があります。これは、冷凍時に水分が凍結により膨張し、わらび餅の微細な組織がダメージを受けるためです。解凍時には、破壊された組織から水分が抜けてしまい、食感が損なわれてしまうのです。

冷凍保存に適していないわらび餅と、解凍後もぷるぷるとした食感を保つわらび餅の違いは、砂糖の量にあります。砂糖には水分を保持する力があるため、わらび餅に練り込むことで、冷凍しても柔らかな状態を維持しやすくなります。さらに、通常の砂糖だけでなく、甘味料のトレハロースを使用するのもおすすめです。トレハロースは、糖類の中でも特に保湿性が高いため、冷凍したわらび餅でもより良い食感をキープできるでしょう。

冷凍わらび餅を美味しく味わうには、正しい解凍方法が鍵となります。自然解凍が最も推奨される方法です。冷蔵庫ではなく、常温の部屋に並べて解凍するのがポイントです。気温によって多少の差はありますが、およそ2時間ほどで解凍が完了します。冷蔵庫での解凍も可能ですが、わらび餅を冷やしすぎると食感が硬くなり、本来の美味しさを損ねてしまう恐れがあります。和菓子職人の間では、「わらび餅は冷やしすぎないのが美味しく食べる秘訣」と言われているほどです。この方法を心得ておけば、冷凍わらび餅をより一層堪能できるはずです。

わらび餅は、本来その日のうちに食べるのが最も美味しいと言われてきました。しかし、冷凍保存することで、少し日持ちをさせることも可能です。ただし、冷凍中であってもわらび餅の品質は徐々に劣化していくのが現状です。

冷凍したわらび餅は、できるだけ早めに食べ切ることが大切で、一度解凍したものを再び冷凍するのは避けましょう。独特のもちもちとした食感と上品な甘さを最大限に楽しむためにも、冷凍庫から出したわらび餅はその食感が失われる前に、美味しくいただくのがおすすめです。