生クリーム分離
その名前だけで口の中が甘く柔らかく溶けていくようなイメージを引き寄せる「生クリーム」。しかし、その裏には思いもよらない工程が存在しています。その一つが「生クリームの分離」です。一体何のことを言っているのか疑問に思う方もいるかもしれません。なぜ、生クリームには「分離」というフェーズが必要なのか、そしてそのプロセスが美味しさにどのように影響するのか、その秘密を探ります。
生クリームが分離する原因は?
生クリームの分離は泡立て方で防げる
生クリームが分離するまえにストップ!泡立て具合を把握しよう
生クリームは、その使用目的に応じて泡立ての度合いを調整するのが一番です。使用する泡立て方には、五分立て、七分立て、八分立てがあります。
五分立て
料理やデセルトのソースに適した五分立ての生クリームは、泡立て器で持ち上げた瞬間に、ボウルにトロトロと帯状のクリームが落ちます。ソフトで滑らかなヨーグルトをイメージすると良いでしょう。
七分立て
全体をクリームで覆うケーキのデコレーションには、七分立ての生クリームが最適です。クリームが完全に立つ前の、まだソフトに流れるタイミングが一番です。泡立て器で持ち上げると、ほんの少しだけ跡形が残ります。
八分立て
デコレーション用のホイップクリームとしては、八分立てが最適です。スプーンでクリームをすくうと、しっかりと形が立ち、正確な八分立ては、形がしっかり立った後、わずかに先端が下を見る形になります。
注意すべきは、混ぜ過ぎてしまうと、クリームが分離してしまう可能性があり、正しい形を保つことが難しくなるというポイントです。視覚だけでなく、触感も頼りにして、適切なタイミングで混ぜるのを止める技術が求められます。
生クリームの泡立ては難しいように見えますが、一度や二度の試行錯誤を経て、誰でも完璧にマスターすることができます。次回はこの文章を思い出して、最高の泡立て具合に挑戦してみてください。
分離した生クリームを戻す方法
生クリームはデザートや料理に一役買いますが、調理中にクリームが分離してしまい、その対処に困ってしまった経験がある方は少なくないでしょう。そんな時に実践したい、「ボソついた生クリームを元の状態に戻すアイデア」をお伝えします。
始めに、ボソつきが始まった生クリームは冷蔵庫へ返し、冷やすことから始めましょう。約2〜3時間冷やすことにより、脂肪の固まりが安定化し、後程行う泡立て作業がスムーズになります。その際、泡立てる為のボウルやホイッパーも冷蔵庫で冷やしておくと、より効果的です。
次に、冷やした生クリームを再び泡立てます。ここで大切なのは、力み過ぎず、ゆっくりと空気を含ませるように混ぜること。分離した生クリームは、適度な温度で再結合する性質があります。
ただし、温度が高すぎると再度分離してしまうので、一定のリズムを保ちつつ、早急に手を動かすことが重要です。
それでも元の状態に戻らない場合、新たな生クリームを少量加えて再チャレンジしてみてください。新しいクリームがエマルション化(水と油の安定化)を助け、クリームを滑らかにします。
また、ボソつきが軽度であれば、牛乳を少々加えることでクリームを滑らかにすることができます。更なるリカバリーの手段として、少量のヨーグルトを加えることもお勧めします。ヨーグルトが生クリームの水分と脂肪分をまとめ、滑らかさを取り戻すお手伝いをします。
どんな失敗も諦めず、これらの方法を試すことでボソついた生クリームも再び美味しい一品へと生まれ変わらせることが出来ます。
生クリームが分離したらバターに変える方法も!
生クリームがわずらわしい分離を見せてしまった時、美味しいスイーツ作りの邪魔者と思われがちです。しかしながら、その一見役立たずの素材が、実はスイーツ好きにとっての「秘密の兵器」になることを、ご存じでしょうか?
その答えこそ、「バター」です。分離した生クリームから生まれ変わるホームメイドのバターは、一味も二味も違った特別な風味があります。
その作り方は簡単で、生クリームを鍋に移し、弱火でじっくりと加熱するだけ。その結果、生クリームは更に分離し、透明な液体(バターミルク)と油脂が現れます。ここで火を止め、油脂だけを取り分けるのがポイント。これが新たなバターの誕生です。
この手作りバターは、無塩なので通常のバターより自由に使うことができ、ケーキやマフィンなどのスイーツに使うのはもちろん、自家製ジャムと共にスコーンに塗っても楽しめます。さらに、お好みで塩を加えれば、フライパン料理等にも活躍します。
まさかの生クリームの二次利用。その一手間が、新たな楽しさと美味しさを生み出します。だからこそ、次に生クリームが分離してしまった際は、ぜひバターに変身させてみてください。その結果に、きっと驚きと喜びが待っています。
まとめ
生クリームの分離とは、牛乳から脂肪分を分け出す工程のこと。これにより、クリームの口溶けの良さと風味が向上します。分離が不十分だと生クリームは粗く感じ、適度に行うと滑らかさが増します。したがって、生クリームの美味しさは、この精巧な「分離」工程によって決まるのです。真心で取り組む職人の技が存分に反映される生クリームは、料理に深みと華やかさを添えてくれます。