ヨーロッパは、その豊かな歴史と多様な文化に支えられて、世界中の人々を魅了する数々のお菓子を生み出してきました。フランスのマカロンからイタリアのティラミス、オーストリアのザッハトルテまで、そのどれもが訪れる人々に特別な甘い体験を提供します。これらのスイーツは、単なる食べ物以上にその地方の伝統や技術を反映した芸術品とも言えるでしょう。さあ、ヨーロッパを代表する魅惑のお菓子たちの世界へとご案内します。
西欧地域
西欧地域のお菓子を見ていきましょう。
フランス:フィナンシエ
発祥はパリで、名前は「お金持ち」や「金融家」を示すフランスの有名な焼き菓子です。外はサクサク、中はしっとりとした食感が特徴で、焦がしバターとアーモンドの豊かな味わいが魅力的です。焦がしバター、薄力粉、砂糖、卵白、アーモンドパウダーが基本の材料となっており、バターを焦がしてから生地に加え、オーブンで焼き上げています。
イギリス:ショートブレッド
スコットランドの伝統的なスイーツ。これは、クッキーというよりも、長く保存できるようにケーキを固くしたような、バターが豊富に使用された焼き菓子です。ショートブレットの「ショート」は、「サクサクしている、ホロホロする」という性質を指しています。日本のスーパーでも、Walkers(ウォーカー社)のショートブレッドを簡単に手に入れることができます。
アイルランド:アイリッシュティーブラックケーキ
ハロウィンの起源であるアイルランドからは、アイリッシュウイスキーがたっぷりと使用された伝統的なケーキが登場します。このケーキには、ウイスキーがしみ込んだレーズンがふんだんに盛り込まれています。そのほか、シナモンやナツメグなどのスパイス、紅茶も加えられています。また、中に指輪などを入れて何が出てくるかで運勢を占う習慣も存在するようです。
ベルギー:ワッフル
多くの人に親しまれているベルギーワッフルには、「リエージュワッフル」と「ブリュッセルワッフル」の二つの種類があります。
リエージュワッフルは、多くの場合丸い形をしており、外側は少しカリッとしつつも中はふわふわとした食感が特徴です。日本では、マネケンなどでこのスタイルのワッフルがよく知られています。
一方、ブリュッセルワッフルは四角い形をしており、たくさんの生クリームやフルーツ、チョコレートをトッピングした贅沢なスタイルがブリュッセルで人気を集めています。
ドイツ:バウムクーヘン
バウムクーヘンはドイツ語で「木のケーキ」という意味を持ち、ドイツを起源とするスイーツです。日本ではポピュラーなお菓子として広く愛されていますが、意外にもドイツではそれほど知られていないと言われています。このケーキは、特別なオーブンを使用して層を重ねながら丁寧に焼き上げていきます。その見た目はまるで木の年輪のようです。生地が密に詰まっており、しっとりとした食感が人気の秘密です。
オランダ:ストロープワッフル
ベルギーとは異なり、オランダでは薄くて平たいワッフルが主流です。地元のスーパーマーケットで手軽に購入可能で、ストロープワッフルと呼ばれるこのワッフルは、薄い生地の間にキャラメルが挟まれています。温かいコーヒーカップの上に置くことで、ワッフルが柔らかくなると同時に、中のキャラメルもとろけて一段と美味しさが増します。
南欧地域
南ヨーロッパのスイーツは、明るい雰囲気と温かい気候を連想させます。
スペイン:チュロス
実際にはスペイン語で正式名称は「チュロ」です。チュロスはその複数形となります。日本では、テーマパークやドーナツ店で人気の一品として親しまれています。特にテーマパークでは、長く曲がったチュロスを食べた楽しい思い出がありますね。本場スペインでは、短めに切られたチュロが新鮮な状態で提供され、ホットチョコレートにディップして味わうのが一般的です。
イタリア:スフォリアテッラ
スフォリアテッラは、「重なったひだ」を意味するイタリア語で、ナポリ発祥の特産焼き菓子です。貝殻の形を模した幾重ものパイ生地の中に、リコッタやカスタード、アーモンドクリームなどが詰められ、オーブンで焼かれます。そのパリパリとした独特の食感が魅力で、日本でも注目を集めています。さまざまなベーカリーで見かける機会が増え、美味しさが話題です。
ポルトガル:エッグタルト
エッグタルトは、マカオを経由して香港から日本へと伝わったスイーツです。かつて日本でもブームになりましたが、その本名は「パステルデナタ」と言います。リスボンのジェロニモス修道院では、卵白を洗濯糊として使用していたため、余った卵黄を使ってお菓子を作り始め、その結果生まれたのがこの卵黄を用いたスイーツです。
マルタ:カンノーロ
マルタは、イタリアの食文化に似た豊かなデザートが楽しめる場所です。小麦の生地を巻いて揚げた後、リコッタチーズやチョコレートを詰め込んだカンノーロは、上品な甘さが特徴です。ピスタチオやチョコレートで彩られることもあり、様々なバリエーションが楽しめます。イタリアのシチリアから発祥したこのスイーツは、マルタでも広く親しまれています。
ギリシャ:トリゴナ
ギリシャには、トルコや中東でも親しまれているシロップに漬けたデザートがたくさんあります。ぜひ現地で味わってほしいのは、トリゴナです。三角形のパイの中に冷やしたカスタードクリームが詰められ、その上からシロップがたっぷりとかけられています。作りたてのパイ生地がサクサクして、非常に美味しいです。
ゴマをはちみつで固めたパステリや、クルラキと呼ばれるゴマがちりばめられたサクサクのスティックもシンプルながら味わい深く、お土産としてもぴったりです。
デンマーク:デニッシュ
日本で一般的に知られているデニッシュは、一応食事パンの一種として考えられていますが、デンマークでは実はケーキとして分類されるようです。バターを多く使って作られるこの甘いパンは、フルーツフィリングを包み込んでおり、見た目も可愛らしく、サクサクとした食感がとても魅力的です。興味深いことに、日本では「デニッシュ」と呼ばれていますが、デンマークではその起源がウィーンにあると考慮され、「ヴィナーボズ」、つまり「ウィーンのパン」と称されているそうです。
ノルウェー:ブルノスト
牛乳から生成される副産物であるホエイ(ヨーグルトにも含まれる液体)を、独特の茶色になるまでじっくりと煮詰めて作られるこの塊。砂糖は一切加えられていないにもかかわらず、乳の自然な甘みが凝縮してキャラメルのような風味豊かな甘さを持つチーズです。
4.スウェーデン:セムラ
スウェーデンの伝統的なスイーツであるこのお菓子は、北欧版マリトッツオと呼ばれています。かつて、イースターから45日前の断食が始まる火曜日に食べられていたもので、栄養を補給する役割を果たしていました。このスイーツはカルダモン風味の甘いパン生地に、アーモンドペーストと生クリームが挟まれています。
中欧地域
ヨーロッパの中心部、中央地域のお菓子をご紹介します。
オーストリア:ザッハトルテ
ウィーンに起源を持つ、高級チョコレートケーキの逸品です。リッチなダークチョコレートで覆われたこのケーキは、中にアプリコットジャムが塗り込められています。ビターな味わいのケーキとホイップクリームの組み合わせが絶妙で、ウィーンのホテルザッハーのフランツ・ザッハーによって考案されました。
ハンガリー:チムニーケーキ
このお菓子は、芯となる棒に生地を薄く巻きつけ、回転させながら焼き上げていきます。その作り方は、バームクーヘンやケバブを思わせるスタイルです。実際に、このスイーツは表参道にあるハンガリー料理店で購入できるのも嬉しいポイントです。英語ではチムニーケーキと呼ばれるこのお菓子、ハンガリー語では「クルトシュ」と言い、その名の通り筒状の形をしています。
チェコ:メドヴニーク
このケーキは、ミルフィーユのように何層にも重ねられた生地とフィリングが特徴で、サクサクとした生地とクリーミーで軽やかな口当たり、さらにクルミの独特な食感が魅力です。クリームには、はちみつと練乳、そしてクルミが使われていますが、甘さは比較的控えめで上品です。
ポーランド:ポンチキ
ポーランド発祥のドーナツは中心に穴がなく、ジャムやクリームが詰まっている場合もあります。アメリカではこれをジェリードーナツと称します。私たちにとってもなじみ深い味です。ミスタードーナツのエンゼルクリームとほぼ同等で、同店の創業者も東欧出身のユダヤ系アメリカ人だったとのことで、ポンチキの存在も納得ですね。
ドイツ:バームクーヘン
ドイツで誕生したバウムクーヘンは日本でもよく知られています。「バウムクーヘン」という名前は、ドイツ語で「木のケーキ」を意味し、切り分けた断面が年輪のように見えることから名付けられました。ヨーロッパでは特別な祝いや贈り物として楽しまれる一方で、日本では洋菓子店やコンビニエンスストアなどで手軽に購入できるポピュラーなスイーツとして定着しています。
ロシア:ビートルートケーキ
ロシアと言えばボルシチに欠かせないビーツですが、意外にもビーツを使ったケーキが存在します。酸味のある野菜と思われがちなビーツも、スイーツに活用できるのです。ちなみに、アメリカのレッドベルベットケーキもビーツで色付けされています。
4リトアニア:伝統菓子シャコティス
バームクーヘンの起源とされており、リトアニアでは一般的にスーパーで手に入りますが、クリスマスや結婚式などの特別な場にも欠かせない存在です。このケーキは「シャコティス」と呼ばれ、「枝分かれ」を意味します。その名の通り、木の幹から枝が広がっていく様子を模しているのです。