イギリス 紅茶とは
イギリスと言えば、ロンドンの赤い二階建てバス、ビッグベン、紳士と淑女が闊歩する街並みが思い浮かびますが、その風景に欠かせないものが一杯の紅茶です。"Tea Time"と呼ばれる、日常の一コマに紅茶が刻み込まれているイギリスでは、紅茶はただの飲み物ではなく、文化や伝統、人々のライフスタイルを象徴する存在と言っても過言ではありません。本稿では、そのイギリス紅茶に迫りながら、そこに込められたイギリス人の生活や思考を紐解いていきます。ぜひ一杯の紅茶を片手に、この読み物をお楽しみください。
イギリス 紅茶とは
イギリス 紅茶の歴史:コーヒーハウスの開店
イギリスは紅茶とともに歴史を紡いできました。その起源は17世紀までさかのぼりますが、興味深いことには、これはコーヒーハウスの出現によって始まったのです。コーヒーと比較しても、紅茶の独特の風味と繊細な儀式は、イギリスの文化が息づく様子を見事に描き出しています。
ロンドンの市街地で17世紀半ばに最初のコーヒーハウスが登場しました。それは社会の交流の場として機能し、新たに登場した飲み物であるコーヒーを提供しました。しかし、その後すぐに中国から紅茶が輸入され、その新鮮な風味と鮮やかな色が人々を魅了し、一躍人気の飲み物となりました。
コーヒーハウスは時を経てすぐに紅茶をメニューに追加し、やがて紅茶が主要な飲み物となりました。その結果、紅茶はイギリスの文化と深く結びつき、社会的および文化的シンボルに発展していったのです。現在では、アフタヌーンティーはイギリスの伝統的な習慣となり、紅茶は広く愛される飲み物として日常に根付いています。
コーヒーハウスが紅茶の普及に寄与したのは間違いなく、これは珍しい場合かもしれませんが、それはイギリス人が新しい経験に開放的だったからこそ可能だったと言えます。その環境の中で、我々が今日知る紅茶の文化が育まれました。
紅茶のイギリスの歴史を知ることで、その背景や文化への理解が深まります。一杯の紅茶から感じるのは、美味しさだけでなく、数世紀にわたる歴史と文化の香りなのです。
イギリス 紅茶の歴史:イギリスに紅茶を広めた女王達
1662年、ポルトガル人のキャサリン・オブ・ブラガンザ女王がチャールズ2世との結婚のためイギリスに輿入れすることとなります。嫁入り道具として茶道具を持ち込み、女王自身が茶を飲む習慣をもたらすきっかけを作ったのです。こうして、彼女がイギリスの紅茶文化の始まりを作る原動力となったのです。
続いて18世紀、アン女王が登場します。彼女は大の紅茶好きで、午後のティータイムを定めるなど紅茶の飲用を奨励しました。さらに自身の使っていた美しい紅茶用具が「クイーン・アンスタイル」と呼ばれ、紅茶の様式として定着するきっかけとなっていきます。彼女が始めた豪華な砂糖やミルクをたっぷりと入れた紅茶の飲み方は、当時の富と権力の象徴とされていました。
そして紅茶が一般大衆に普及し、国民飲料となったのはヴィクトリア女王の時代です。彼女自身も紅茶愛好家であり、自らがアルコールよりも紅茶を推奨することで、紅茶は一般市民にも広まりました。ヴィクトリア女王の影響は広範に及び、紅茶飲用の文化が一般大衆にまで浸透するきっかけを作ったのです。
このように、イギリスの紅茶文化には数々の女王たちが関与しており、彼女たちの影響を強く受けて今日まで受け継がれてきました。女王たちが始めた紅茶の飲み方やスタイルが、まさに英国紅茶の魅力と深さを作り上げているのです。
イギリス 紅茶の歴史:紅茶のために起こった戦争
その昔、イギリスでは紅茶の消費が非常に盛んで、清から大量の茶葉が輸入されていました。ところが、イギリスからの輸出品は限られており、赤字の増大は避けられませんでした。
当初は銀を支払って清との貿易を成り立たせていましたが、その財源も底をつき次に見つけ出したのがアヘンでした。
中国では当然ながらアヘンの輸入は禁じられていましたが、それをものともせずにイギリス商人は大量のアヘンを中国に持ち込みました。
その結果、アヘンの使用による中毒者が急増し、中国国内は社会経済的な混乱に陥りました。これに対し、中国はイギリスからのすべての輸入品を禁止し、それに対してイギリスは中国に侵攻しました。
こうして、そこから「アヘン戦争」が開始されました。
戦争はイギリスの圧倒的な武力により勝利し、その結果、香港を占領し、さらに中国からの紅茶の輸出量を増やすことに成功しました。
これにより、イギリスは紅茶の安定的な供給源を手に入れました。そして、価格の低下によりイギリス国内での紅茶の消費がさらに促進され、紅茶文化が一層普及することとなりました。
まとめ
イギリス紅茶は深い文化の象徴であり、その一杯からはイギリス人の落ち着きや洗練されたライフスタイルが伺えます。歴史と伝統を受け継ぐ一杯の紅茶からは、時間を大切にし、人々に対するふるまい、社会的な交流の重要性といったイギリス人の繊細な思考が見えてくるでしょう。それは、まるでティータイムのように、一息つく時間と、人々とのつながりの大切さを教えてくれます。