砂糖の効果

砂糖は、水に対する溶解度の高さが特徴です。例えば、20℃の水100mlには約200g、100℃のお湯100mlには約500gもの砂糖を溶かすことができます。この性質が、食材から水分を吸い出す脱水作用や、逆に水分を保持する保水作用といった、砂糖ならではの機能に繋がっています。砂糖の持つ様々な機能のうち、これからご紹介する項目は、この「水に溶けやすい性質(親水性)」に由来するものです。

メレンゲの安定性を高める効果

 砂糖の有無でメレンゲの状態を比較実験したところ砂糖を使用しない場合、泡のキメが粗く、すぐに分離してしまう不安定な状態となりました。 一方、砂糖を加えて泡立てると、泡はきめ細かく滑らかで、安定して崩れにくい状態を保ちました。 卵白に砂糖を加えることで、砂糖が卵白中の水分を吸収し、泡の安定性が向上します。これにより気泡が壊れにくくなり、きめ細やかなメレンゲが作れます。 さらに、砂糖を加えることで、焼き上がりのメレンゲはしっとりとした食感になります。

肉や卵などを柔らかく

タンパク質は、肉や卵に豊富に含まれており、加熱すると凝固する性質があります。砂糖は、これらの食品組織に入り込み、水分を保持する働きがあります。砂糖が加わることで、卵のタンパク質の凝固が緩やかになり、また、肉のコラーゲンと水分の結合を促進し、結果として食品を柔らかくします。実際にプリンを作る実験で、砂糖の有無による違いを比較しました。砂糖を使用しない場合、牛乳と卵の割合を10:0で調理すると、硬めのしっかりとしたプリンになりました。一方、砂糖を使用した場合、牛乳と卵の割合を7:3で調理すると、柔らかいプリンに仕上がりました。これは、プリン作りの際に砂糖が卵の水分を保持し、その結果、水分が保たれ、柔らかく滑らかな食感になるためと考えられます。

ジャムなどにとろみをつける

果物を甘く煮詰めると、素材由来のペクチンが溶け出し、砂糖が水分を抱え込んで、独特のプルプルとした食感が生まれます。このゼリーのような変化は、酸性の環境下でより促進されます。ジャムやマーマレードのとろみは、実はゼラチンなどの添加物によるものではありません。果物に含まれるペクチン、糖分、そして酸味が、加熱によって絶妙に作用し合い、あのなめらかな質感が作り出されるのです。

酢飯や餅菓子が固くならない

おにぎりやおはぎが冷めても、ある程度の柔らかさを保っているのは、砂糖が関係しています。米やもち米に多く含まれるでんぷんが持つ水分を、砂糖が保持する働きをするためです。砂糖を加えたお菓子や料理は、時間が経過しても硬くなりにくいという特徴があります。通常、ご飯や餅は時間が経つとでんぷんの性質が変化し、硬くなります。しかし、酢飯や砂糖を使った和菓子などは、砂糖がでんぷんの老化を抑制するため、しっとりとした食感を保つことができるのです。

食品を長持ちさせる

微生物の活動には水が不可欠ですが、砂糖を大量に使うことで、食品中の水分が砂糖に保持され、品質劣化を抑制できます。砂糖が水分を保持する性質が、食品の保存性を高めることに繋がります。ジャムや羊羹といった砂糖を多量に含む食品は、カビなどの微生物が増殖しづらく、長持ちしやすいという利点があります。

油の劣化を防ぐ

揚げ物やお菓子など、油分を含む食品は、時間が経過すると風味が落ちたり、不快な臭いが発生したりすることがあります。これは、油が空気中の酸素と反応して酸化することが原因です。しかし、砂糖には油の酸化を抑制する効果があることが知られています。砂糖を豊富に使用したお菓子は、美味しさが長持ちしやすいという特徴があります。例えば、クッキーやケーキを作る際、バターと砂糖を一緒に混ぜ合わせることで、バターに含まれる水分が砂糖と結合します。これにより、空気中の酸素が油に触れるのを防ぎ、油分の劣化を遅らせ、風味や香りを保つことができるのです。

加熱した時に色がつく

食品を加熱調理する際、糖類とアミノ酸が共存すると、あの食欲を刺激する焼き色が生まれます。これはメイラード反応と呼ばれる現象です。例えば、ホットケーキを焼く実験をしてみましょう。砂糖を全く加えずに作ったホットケーキは、焼き色がほとんどつきません。しかし、砂糖を加えて焼くと、美味しそうな焼き色がしっかりと現れます。このメイラード反応は、パン、ホットケーキ、クッキー、カステラなど、様々な焼き菓子で見られる、美味しさの秘訣の一つです。

砂糖