小魚の食べ過ぎは体に悪影響?その真相に迫る!

健康志向の高まりとともに、魚介類の健康効果が注目されていますが、意外にも「小魚の食べ過ぎが体に悪影響を与えるのでは?」という声も挙がっています。小魚はカルシウムやDHA、EPAなどの豊富な栄養素を含み、日常の食事に積極的に取り入れたい食材です。しかし、バランスを欠いた大量摂取は、一体どのようなリスクを我々に及ぼす可能性があるのでしょうか。この記事では、小魚摂取のメリットだけでなく、その過剰摂取に潜むリスクについて掘り下げます。

【栄養士監修】しらすの豊富な栄養素を詳しく解説!食べ過ぎると健康に影響する?

「しらすには栄養価がどれほどあるのでしょうか?」「毎日しらすを食べても健康に問題はありませんか?」

丸ごと食べられる小魚であるしらすは、栄養価が高いことで知られています。しかし、具体的な栄養成分については、あまり知られていないかもしれません。

この記事では、しらすに含まれる具体的な栄養素や、毎日食べ続けることのリスクがあるのかについて詳しく解説します。

しらすの優れた栄養価とその健康効果を成分一覧とともに解説

日本食品標準成分表2020年版(八訂)によれば、しらすの栄養成分は以下の表のように示されています。

成分名

生しらす

釜揚げしらす

しらす干し

エネルギー

67kcal285kJ

84kcal356kJ

187kcal792kJ

水分

81.8g

77.4g

46.0g

たんぱく質

11.6g(13.6)g

15.0g

17.6g

脂質

0.8g(1.1g)

1.3g

1.7g

コレステロール

140mg

170mg

390mg

炭水化物

0.1g Tr g 0.5g

灰分

2.4g

2.9g

9.5g

無機質

ナトリウム

380mg

840mg

2,600mg

カリウム

340mg

120mg

490mg

カルシウム

210mg

190mg

520mg

マグネシウム

67mg

48mg

130mg

リン

340mg

320mg

860mg

しらすは、乾燥の度合いによって名前が変わります。水揚げ後のしらすは「生しらす」と呼ばれ、塩水で煮た後に水分を取り除くと「釜揚げしらす」に、さらに乾燥させると「しらす干し」となり、もっと乾燥させると「ちりめん」と呼ばれます。

しらすの名称

水分量の目安

釜揚げしらす: 約8割

しらす干し: 約7割

ちりめん: 約5割以下

乾燥によりしらすは凝縮され、重量が軽くなります。そのため、同じ重量でもしらすの量は増え、100gあたりの栄養価は高まります。また、乾燥度が増すことで食感も固めになります。

これから、しらすに含まれる主要な栄養素について詳しく見ていきましょう。

骨と歯の形成を担う「カルシウム」

骨や歯の健康維持に欠かせないカルシウムが不足すると、骨がもろくなり、骨折や骨粗しょう症、さらには肩こりや腰痛のリスクが高まります。

参照:厚生労働省「骨粗鬆症の予防のための食生活」

しらす干しはカルシウムを豊富に含む食材で、100gあたり520mgのカルシウムを摂取することができます。生しらすでは100g中に210mgのカルシウムが含まれており、手軽に栄養を取り入れることができます。

以下に、年齢別の1日あたりのカルシウム推奨摂取量について示します。

カルシウムの1日の推奨量

年齢

男性

女性

15~17歳

800mg

650mg

18〜29歳

800mg

650mg

30~49歳

750mg

650mg

50~64歳

750mg

650mg

65~74歳

750mg

650mg

参照:公益財団法人長寿科学振興財団「カルシウムの働きと1日の摂取量」

カルシウムの取り込みを促進する「ビタミンD」

ビタミンDは、体内でカルシウムの吸収を助け、丈夫な骨を保つために欠かせない栄養素です。また、免疫システムの調整も担っています。

ビタミンDが不足すると、カルシウムの取り込みが難しくなり、骨が柔らかくなって生活に支障を来す可能性が高まります。

18歳以上の人々は、1日に8.5μgのビタミンDを摂取することが推奨されています。しらすは、以下の通り、ビタミンDを効率よく摂取できる食品です。

生しらす

6.7μg

釜揚げしらす

4.2μg

しらす干し

61.0μg

参照:健康長寿ネット「ビタミンDの働きと1日の摂取量」

しらす干しであれば、約14g(大さじ3杯)を摂取することで、おおよそ8.5μgのビタミンDを得ることができます。

神経と血液を健やかに保つために欠かせない「ビタミンB12」

ビタミンB12は血液生成に不可欠な栄養素で、特に赤血球の製造やDNAの形成、神経の正常機能を維持し、睡眠をサポートする役割があります。

このビタミンが不足すると、結果として赤血球が効果的に作られず、集中力の減少等の問題が生じる可能性があります。

成人が必要とするビタミンB12の1日の量は約2.0μgです。厚生労働省による「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、18歳以上の男性と女性で1日あたり2.4μgを推奨しています。

しらす干しには100gに6.3μgのビタミンB12が含まれており、およそ38g(大さじ7杯強)でこの推奨量を満たすことができます。

しかし、しらす干しだけで必要な全ての栄養素を摂取するのは実際的ではないため、他の食品と組み合わせて摂取することをお勧めします。

参照:厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

身体の構築に欠かせない「プロテイン」

タンパク質は、炭水化物や脂質と並んで重要な三大栄養素の一つです。体内の約15〜20%はタンパク質で作られており、筋肉や髪の毛、爪、臓器など、身体を構成するためになくてはならない成分です。

この栄養素は食事からしか摂取できないため、不足することで筋力の低下や免疫力の衰えを引き起こし、疲れやすく集中力が続かなくなる原因となります。

2020年に策定された日本人の食事摂取基準によれば、日々必要なタンパク質の量は以下のように推奨されています。

男性(18歳〜64歳)

65g

男性(65歳以上)

60g

女性(18歳以上)

50g

引用元:厚生労働省「タンパク質」

しらす100gに含まれるタンパク質量は以下の通りです。

生しらす

15.0g

しらす干し

40.5g

釜揚げしらす

17.6g

引用元:日本食品標準成分表2020年版(八訂)「しらす」「しらす干し」「釜揚げしらす」

しらすには100gあたり15.0gから40.5gのタンパク質が含まれていますが、これのみで推奨摂取量を満たすのは難しいため、他の食材との組み合わせを推奨します。

例えば、卵、納豆、豆腐などはタンパク質が豊富で、しらすとの相性も良いため、調理法を工夫することで、手軽にタンパク質を摂取することが可能です。

オメガ3脂肪酸に含まれる「EPA」と「DHA」

しらすには、オメガ3系脂肪酸であるDHAやEPAが豊富に含まれています。これらの成分は、健康増進を目指すサプリメントなどに広く利用されており、さまざまな健康効果が期待されています。これは、厚生労働省が発表している研究によっても示されています。

参照:厚生労働省eJIM「オメガ3系脂肪酸」「オメガ3脂肪酸について知っておくべき7つのこと」

しらすの過剰摂取は健康に悪影響?押さえておきたい3つの重要な視点

しかし、栄養価が高いシラスは適量を心掛けるべきです。過剰摂取が体にもたらす可能性のある影響は、次の3点です。

以下に詳細を説明します。

コレステロールやプリン体の数値が上昇している

しらすは栄養豊富な食材ですが、高いコレステロールやプリン体を含んでいます。

コレステロールには、LDL(悪玉)とHDL(善玉)の2つの種類があります。

種類

働き

LDL-コレステロール(悪玉)

肝臓から全身へコレステロールを運ぶ

HDL-コレステロール(善玉)

余分なコレステロールを肝臓に戻す役割を担っています。

これら2種類のコレステロールをバランスよく維持することが大切です。

コレステロールや尿酸の数値が高めの方は、食事に注意してください。

#文章:

塩分含有量が高い

しらすを食べる際には、塩分を多く含んでいるため適量を心がけるのが重要です。

成人男性の1日の塩分摂取目安は7.5g未満、成人女性は6.5g未満とされています。(日本人の食事摂取基準2020年版)

データ:厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」

しらすの種類ごとに塩分の含有量は以下のようになります。

しらすの食塩相当量(100gあたり)

生しらす

1.0g

釜揚げしらす

2.1g

しらす干し

6.6g

情報源:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

特にしらす干しは他の種類と比べて塩分が高めです。塩分をセーブしたい場合は、生しらすまたは釜揚げしらすが良い選択です。

日常の食事で塩分は他の食品や調味料からも摂取されるため、しらすを食べ過ぎないように注意しましょう。

生しらすには寄生虫のリスクや食中毒の危険性が潜んでいる

生のしらすを味わう際には、寄生虫や食中毒のリスクが伴います。

これは、水揚げ直後のしらすにはアニサキスのような寄生虫や腸炎ビブリオといった細菌が存在する可能性があるからです。

そのため、生しらすに限らず、生魚介を食する際には、これらのリスクを十分に理解しておくことが大切です。

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