「なす」と「なすび」の違いとは? 呼び名の由来と歴史的背景を徹底解説
食卓でお馴染みの「なす」と「なすび」。どちらも同じ野菜を指す言葉ですが、なぜ二つの呼び名があるのでしょうか?実はこの違い、単なる方言ではありません。奈良時代に遡る歴史的背景や、地域ごとの文化が深く関わっているのです。この記事では、「なす」と「なすび」の語源、それぞれの呼び名が広まった経緯、そして現代における使われ方を徹底解説。知ればもっと「なす」が好きになる、奥深いストーリーを紐解いていきましょう。

「なす」と「なすび」は同じ野菜!呼び方の違いとルーツを深掘り

「なす」と「なすび」は、見た目も味も同じ、同じ野菜を指す言葉です。品種や栄養に違いはなく、単に呼び方の違いがあるだけ。とはいえ、その違いには日本の歴史や地域性が深く関係しています。
たとえば、「一富士二鷹三茄子」という有名なことわざでは「なすび」と表記されるように、昔から「なすび」という呼び方は親しまれてきました。これは、奈良時代の文献『本草和名』に「奈須比(なすび)」と記されていたことからもわかります。当時のなすは少し酸味があり、「中が酸っぱい実」を意味する「なかすみ」や「なすみ」が変化して「なすび」になったとする説や、「夏に実る実(夏実/なつみ)」から変化したとする説もあります。
このように、古くから西日本では「なすび」という呼び方が定着していました。
一方で、「なす」という呼び方が広がったのは江戸時代以降。徳川家康がなすを「物事を成す(成就する)」という縁起の良い意味で「なす」と呼び、江戸の人々に広めたとされています。そのため、関東や東北など東日本では「なす」という呼び方が主流になったのです。
現在でも、関西では「なすび」、関東では「なす」と呼ばれることが多いものの、世代や地域によって混在して使われています。
つまり、「なす」と「なすび」は、言い方の違いにすぎず、どちらも正しい呼び方。その背景には、日本の歴史や文化、そして地域の言葉の違いが色濃く反映されているのです。

「なす」と「なすび」の境界線?地域差と方言の関係

「なす」と「なすび」は、どちらも同じ野菜を指す呼び方ですが、使われ方には地域差があります。おおまかに言うと、東日本では「なす」、西日本では「なすび」と呼ばれる傾向が強く、まさに“言葉の方言”のような違いです。
例えば、関東や東北では「なす」が一般的で、日常会話や商品名にもよく使われています。一方、近畿地方では「なすび」という呼び名が主流で、大阪や奈良などでは過半数以上の人が「なすび」と呼ぶという調査結果もあります。ただし、京都や中国・九州地方の一部では、「なす」と「なすび」が混在しており、どちらの呼び方も耳にすることができます。また、北海道では全国的には「なす」が多い中、わずかに「なすび」派が上回ったという調査もあり、地域によって傾向が異なるのも面白いところです。

奥深き、なすの世界。特徴とバリエーション豊かな品種

なすは、ナス科ナス属に分類される一年草で、私たちが食べているのはその果実です。原産地はインドですが、現在では高知県をはじめ、日本各地で広く栽培されています。日本の夏の食卓には欠かせない野菜の一つであり、旬の時期は7月から8月頃です。また、夏が終わる頃から秋にかけて収穫される「秋なす」は、夏のなすとは一味違った魅力があります。秋なすは、夏のなすに比べて甘みと旨味が凝縮されており、皮も果肉も柔らかいのが特徴です。一般的ななすは、黒紫色で細長い形をしていますが、品種や栽培地域によって、色や形は実に多様です。例えば、日本国内だけでも、「中長なす」「長なす」「丸なす」といった代表的な品種が存在します。「中長なす」は、別名「長卵形なす」とも呼ばれ、長さ12cmから15cm程度の細長い形状をしています。クセがなく、どんな料理にも合わせやすい万能ななすです。西日本や東北地方の一部で栽培されている「長なす」は、長さが20cmから25cmにもなる細長い品種で、水分が多いのが特徴です。関西地方では、丸くて可愛らしい「丸なす」が有名で、煮崩れしにくい性質を持っています。さらに、なすは日本だけでなく、世界中で栽培されており、その土地ならではのユニークな品種が存在します。東南アジアでは、真っ白な果実を持つ「白なす」が見られます。イタリアやスペインでは、紫色と白色の美しい縦縞模様が特徴的な「ローザビアンカ」や「ゼブラ」といった品種が栽培されています。また、タイでは観賞用としても愛されるほど美しい白色の「マクワポ」などがあります。このように、なすは品種によって見た目も食感も大きく異なるため、料理や用途に合わせて使い分けることで、より一層美味しく楽しむことができるでしょう。

食卓を豊かに彩る!厳選なすレシピ5選

なすは、その淡白な味わいから、和食、洋食、中華など、様々なジャンルの料理にマッチする万能野菜です。加熱するととろけるような食感になり、ジューシーな味わいを楽しめます。煮浸しや焼きなすといった定番料理はもちろん、グラタンやラタトゥイユなど、ちょっとおしゃれな料理にも挑戦してみるのもおすすめです。ここでは、ご家庭で手軽に作れる、おすすめのなすレシピを5種類ご紹介します。

なすの煮浸し

だしの旨みをじんわりと含ませた、定番の和風おかず。なすを多めの油で炒めてから、めんつゆと水で煮るだけの簡単レシピです。冷蔵庫で冷やしても美味しく、作り置きにもぴったり。薬味にはしょうがや大葉がおすすめです。
材料(2〜3人分)
  • なす:3本
  • めんつゆ(3倍濃縮):大さじ3
  • 水:200ml
  • サラダ油:大さじ2
  • しょうが・大葉:お好みで
作り方
  1. なすは縦半分に切って斜め切りにし、水にさらす。
  2. フライパンに油を熱し、なすを中火で炒める。
  3. めんつゆと水を加え、弱火で5分ほど煮る。
  4. 器に盛り、しょうがや大葉を添える。

焼きなす

シンプルながら素材の旨みが際立つ一品。丸ごとのなすをグリルやフライパンでこんがり焼き、皮をむいてからおろししょうがやかつお節、しょうゆでいただきます。熱々でも冷やしても美味しく、季節を問わず楽しめます。
材料(2人分)
  • なす:2〜3本
  • しょうが(すりおろし):適量
  • かつお節:適量
  • しょうゆ:適量
作り方
  1. なすは皮に数か所穴を開け、丸ごと焼く。
  2. 焼けたら冷まして皮をむき、食べやすく裂く。
  3. しょうが・かつお節をのせて、しょうゆをかける。

なすとひき肉の味噌炒め

ご飯がすすむ、こってり甘辛味のおかず。なすはあらかじめ油で炒めて火を通し、味噌、みりん、砂糖、しょうゆで味付けしたひき肉と合わせます。しっかり味なので、丼にしても◎。
材料(2〜3人分)
  • なす:3本
  • 豚ひき肉:200g
  • 味噌:大さじ1.5
  • みりん:大さじ1
  • 砂糖:大さじ1
  • しょうゆ:小さじ2
  • サラダ油:適量
作り方
  1. なすは乱切りにして水にさらす。
  2. フライパンでなすを炒めて一度取り出す。
  3. 同じフライパンでひき肉を炒め、調味料を加える。
  4. なすを戻して全体を炒め合わせる。

なすのミートグラタン

洋風にアレンジしたボリューム満点レシピ。薄切りにしたなすを炒めて耐熱皿に敷き、ミートソースとチーズを重ねて焼き上げます。とろけるチーズとジューシーななすが絶妙に絡み合い、食べごたえ抜群です。
材料(2人分)
  • なす:2本
  • ミートソース(市販または手作り):200g
  • とろけるチーズ:50g
  • オリーブオイル:大さじ1
作り方
  1. なすを5mm幅に切り、オリーブオイルで両面焼く。
  2. 耐熱皿に、なす→ミートソース→チーズの順で重ねる。
  3. トースターまたはオーブンで焼き、チーズが溶けたら完成。

なすとトマトのラタトゥイユ

夏野菜をたっぷり使ったフランス風煮込み。なす、トマト、ズッキーニ、パプリカなどをオリーブオイルで炒め、にんにくとハーブで風味豊かに煮込みます。冷やしても美味しく、パンにもよく合うヘルシーな一品です。
材料(2〜3人分)
  • なす:1本
  • トマト:2個
  • ズッキーニ:1本
  • パプリカ:1個
  • にんにく:1片
  • オリーブオイル:大さじ2
  • 塩・こしょう:少々
  • ハーブ(ローリエやバジルなど):あれば適量
作り方
  1. 野菜はすべて一口大に切る。
  2. 鍋にオリーブオイルとにんにくを熱し、香りが立ったら野菜を加える。
  3. 塩・こしょう・ハーブを入れ、蓋をして弱火で15〜20分煮る。
  4. 冷やしてもそのままでも美味しい。

まとめ

この記事では、「なす」と「なすび」という二つの言葉が同じ野菜を指すこと、その呼び方の違いが日本の歴史と地域性に由来すること、そして多様な品種と調理法で楽しめることを解説しました。ぜひ、この記事で紹介したレシピを参考に、色々な調理方法でなすの美味しさを存分に味わい、食卓をより豊かなものにしてください。

「なす」と「なすび」は本当に同じものですか?

はい、間違いなく「なす」と「なすび」は同じ野菜のことです。種類や見た目に違いがあるわけではなく、呼び方が異なるのは、歴史的な経緯と地域的な違いによるものです。縁起の良い言葉として知られる「一富士二鷹三茄子」のように、「なすび」という言葉が使われることもあります。

なぜ「なすび」と「なす」という二つの呼び方があるのでしょうか?

「なすび」という呼び名は、なすが日本に伝わった奈良時代から使われている古い言葉(奈須比)で、当時都があった関西地方を中心に広まりました。名前の由来としては、「中が酸っぱい実(なかすみ)」や「夏の実(なつみ)」が変化したという説が有力です。一方、「なす」という呼び方は、江戸時代に徳川家康公が「物事を成す」という縁起を担いで広めたとされ、江戸(現在の東京)を中心に広がり、関東地方や東北地方でよく使われるようになりました。

なすの旬はいつですか?

なすの旬は、一般的に夏の最盛期である7月から8月頃です。この時期に収穫されるなすは、水分が多く、みずみずしい味わいが特徴です。また、夏の終わりから秋の初めにかけて収穫される「秋なす」は、夏のなすに比べて甘みとうま味が強く、皮や果肉が柔らかいのが特徴です。

ナスにはどのような種類が存在しますか?

ナスは非常に多くの品種が存在します。日本においては、細長い形状で、比較的淡泊な味わいの「長ナス(中長ナス、卵型ナスとも)」、水分を豊富に含んだ「大長ナス」、球状の「丸ナス」などが広く知られています。世界に目を向けると、純白の「白ナス」(東南アジア原産)、紫と白のストライプ模様が美しい「ローザ・ビアンカ」(イタリアやスペイン原産)など、色、形、そして食感に至るまで多様な品種が見られます。

ナスはどのような調理法が最適ですか?

ナスは特有の強い風味がないため、日本の料理、西洋の料理、中華料理など、あらゆるジャンルの料理に活用できます。油で揚げる、直火で焼く、出汁で煮る、フライパンで炒める、蒸し器で蒸すといった様々な調理方法に適合し、ナスを使った煮びたし、麻婆ナス、ナス田楽、パスタの具材、サラダ、グラタン、ラタトゥイユといった、数多くのレシピでその美味しさを引き出すことが可能です。調理方法によって、とろけるような舌触りや、みずみずしい食感を堪能できます。



なすなすび