家庭菜園で気軽に楽しめる野菜として人気のキュウリ。中でも、支柱を使わずに地面を這わせて育てる「地這いキュウリ」は、その手軽さから初心者にもおすすめです。特別な技術や手間は不要で、種をまけば自然と育ってくれるのが魅力。この記事では、そんな地這いキュウリ栽培の魅力をたっぷりご紹介します。品種選びから種まき、日々の管理、収穫のコツまで、写真付きで分かりやすく解説。今年の夏は、自家製の新鮮なキュウリを味わってみませんか?
キュウリの地這い栽培とは?特徴と家庭菜園におすすめの理由
現代のキュウリ栽培では、苗から育てて支柱でつるを上へ伸ばす方法が一般的ですが、昔ながらの栽培方法として、畑に直接種をまき、支柱を使わずに地面につるを這わせて育てる「地這い栽培」があります。地這い栽培は、収穫時に腰をかがめる必要があったり、果実が地面に触れることで曲がったキュウリができやすかったりするため、効率や品質が求められる商業的な栽培ではあまり見られなくなりました。しかし、家庭菜園においては、その特性が大きな利点となります。栽培方法が簡単で、特別な支柱や誘引作業が不要なため、手間を大幅に減らせます。また、キュウリの葉が地面を覆うことで、夏の強い日差しや暑さに強く、育てやすいというメリットもあります。そのため、通常よりも遅い7月中旬頃まで種まきができるため、他の夏野菜の収穫時期に合わせて栽培計画を立てることも可能です。腰を曲げての収穫も、家庭菜園では運動の一環として楽しめますし、曲がったキュウリも自家消費する分には問題ありません。手軽に夏野菜を育てたい家庭菜園愛好家にとって、地這い栽培は魅力的な栽培方法と言えるでしょう。
ウリ科の植物は、雌花と雄花が別々に咲き、雌花だけが実をつけるため、雄花は不要な花と言われることがあります。現在主流の「節成りキュウリ」は、支柱栽培されることが多いため「立ちキュウリ」とも呼ばれ、雌花が親づるの低い位置から、葉の出る節ごとに次々とつくように改良された品種です。この改良品種は、場所を取らず、狭いビニールハウス内にたくさん植えることができ、早くから収穫できるため、商業栽培で用いられるキュウリのほとんどがこの節成りキュウリの一代交配種です。さらに、連作への耐性、色や形、日持ちを良くするための品種改良や、特殊なカボチャの台木への接ぎ木が進められており、皮が硬く、本来のキュウリが持つ柔らかさや風味が損なわれる傾向があります。一方、昔ながらの「伝統固定種の地這いキュウリ」は、親づる一本仕立てでは雌花のつきが悪く、雄花が多くなるという特徴があります。そのため、適切な場所(本葉5、6枚から7、8枚)で親づるの先端を切る「摘心」を行い、そこから伸びる子づるを3、4本広げ、子づるや孫づるについた雌花から実を収穫することで、全体の収穫量を増やします。親づるを切って子づる・孫づるを伸ばし、葉が太陽の光をよく浴びるように広げてやる必要があるため、広い場所が必要になりますが、地面を覆うほどに広がった葉が太陽の光を十分に受け、夏の暑さにも負けず、柔らかくて美味しい昔ながらのキュウリをたくさん収穫できます。昔のキュウリは皮が柔らかく、収穫後すぐにしなびてしまうのが難点でしたが、自家用の畑で毎日収穫するからこそ味わえる、柔らかさと風味は格別です。地這いキュウリは、雌花がまばらにつくことから、「飛び節系」や「飛び成り系」とも呼ばれます。また、地面が十分に暖まってから種をまくことが多いため、寒い時期に苗を育ててトンネルやハウスで栽培するキュウリとは対照的に、「余まきキュウリ」や「夏キュウリ」とも呼ばれ、栽培時期と特徴が区別されます。
地這いキュウリ栽培の準備:品種選びと土作りの基本
地這いキュウリ栽培を成功させるためには、栽培に適した品種を選び、丁寧に土作りを行うことが大切です。品種選びでは、「青長地這い」や「霜不知地這い」など、地這い栽培に適した品種を選ぶことをおすすめします。より柔らかく風味豊かなキュウリを味わいたい場合は、伝統固定種のキュウリを種から育てるのがおすすめです。市販されている苗には、寒さに強く育てやすい交配品種が使われていることがあり、実がやや硬めなものもありますが、固定種は比較的安価で、昔ながらの美味しさを楽しめます。種まきの1〜2週間前から土作りを始め、まず畝(うね)の設計を行います。畝の間隔は広めに2m、株の間隔は50cm程度を目安とし、つるが自由に伸びるためのスペースを確保します。土作りでは、深さ60cm程度まで深く耕し、完熟堆肥や完熟腐葉土を15〜20cmの深さに混ぜ込み、土を山のように盛り上げる「くらつき(鞍築)」という畝作りが効果的です。この時、肥料は必ず完熟したものを使用してください。未熟な堆肥や速効性の化成肥料を直接根に触れさせると、土の中で発酵して熱を出し、根を傷つけたり、病害虫の侵入を招いたりする原因となるため、注意が必要です。元肥としては、1株あたり完熟堆肥を4~5握りと、有機配合肥料を大さじ3杯程度、株の真下ではなく少し離れた場所に施します。肥料を施したら、その上から約15cmの土を被せて軽く鎮圧します。株の真下に肥料を施すと、水分が不足しやすくなったり、モグラなどの土壌動物が肥料を求めて根を傷つけたりする原因になるため、注意が必要です。適切な元肥は、キュウリの生育を促し、つるの伸長と実の形成を助けるための基礎となります。
種まきと初期管理:嫌光性への配慮、ポリキャップ、間引き、そして最初の追肥
地這いキュウリの種まきは、主に種から直接まく方法で行います。十分に地温が上がってから種をまくのが最適ですが、ポリキャップなどで保護すれば4月下旬頃から種まきも可能です。種まきの際は、くらつきした場所を平らに均し、それぞれの株を育てる場所に3~4粒ずつ、少し間隔を空けて点まきにします。土をかける深さは約1cmが目安です。キュウリの種は、土の温度が十分に上がらない時期には、明るい場所では発芽しにくい性質があるため、しっかりと土で覆ってからたっぷりと水を与えることが大切です。種をまいた後、市販の有孔ポリキャップを被せると良いでしょう。ポリキャップは、全体に細かい穴が開いた三角形のポリ袋で、保温効果があり、小さな苗をウリハムシなどの害虫から守る効果があります。三角形の一辺が45、50、55、60cmの各サイズがありますが、キュウリには45〜50cm程度のものが適しています。設置方法としては、1m程度の長さに切った太めの針金や篠竹を1株あたり2本用意し、両端を土に刺して十字に交差させ、その上にポリキャップを被せて、下部を土で押さえて固定します。もし穴の無いポリ袋などで代用する場合は、キュウリの芽が出たら上部に穴を開けて換気することを忘れないでください。気温が高くなると、内部が高温になりすぎて生育障害を起こす可能性があるため、注意が必要です。本葉が4、5枚になり、苗が密集してきたらポリキャップを取り外し、生育の良い元気な株を1本に間引いて一本立ちにします。畑に余裕があれば、間引いた苗を別の場所に植えても良いですが、大きくなりすぎた苗は根付きにくい可能性があるため、注意が必要です。間引きが終わったら、根から少し離れた場所に発酵油かすや発酵鶏糞、または緩効性化成肥料などを追肥として施します。キュウリのような果菜類は、次々と実がなるため、肥料切れを起こしやすい作物です。最初の追肥を皮切りに、収穫期間中は肥料が切れないように、適宜追肥を行うことが大切です。
健全な生育を促す管理:摘心、継続的な追肥、効果的な敷きわら
地這いキュウリを健康に育て、たくさん収穫するためには、適切な管理が重要です。まず、親づるが本葉5、6枚から7、8枚、または50cm程度に伸びてきたら「摘心(てきしん)」を行います。摘心とは、親づるの先端を摘み取り、代わりに勢いの良い子づるを3~4本、四方八方にバランス良く伸ばすように促す作業です。地這いキュウリでたくさん実を収穫するためには、この摘心が最も重要なポイントです。摘心することで、残された葉の付け根から子づるが伸び、さらに子づるの葉の付け根から孫づるが枝分かれして伸び、雌花がつきやすい子づるや孫づるの発生を促進します。これにより、つる同士が密集するのを防ぎ、株全体の風通しと日当たりを良くする効果があります。ただし、6月下旬以降に種まきを行う「遅まき」の場合には、摘心は行わない方が良いとされています。これは、高温下での栽培においては、つるを早く伸ばすことで、収量が少なくなるのを防ぐためです。次に、キュウリの生育を継続的に支えるために、「追肥(ついひ)」を適切なタイミングで施します。つるが20~30cmに伸び出した頃に1回目の追肥を行い、株の周りに化成肥料を大さじ2~3杯ほどばらまき、軽く土と混ぜ合わせます。さらに、つるが50~60cmにまで成長した頃に、2回目の追肥をつるの先端付近に行います。これも同様に化成肥料大さじ2~3杯を施し、土と軽く混ぜ込むことで、長期間にわたる着果と生育を支えます。また、栽培期間を通して「敷きわら(または干し草)」を施すことも非常に重要です。子づるが3、4本出てきたら、それぞれの葉が重ならないように四方に広げてやりますが、この時、伸びる方向に沿って敷きわらも大きく広げてやりましょう。つるが伸びるにつれて、その先端付近に敷きわらを敷いてやることで、土壌の乾燥を防ぎ、地温の急激な変化を緩和します。さらに、雨水や水やりによって土が跳ね上がり、葉裏にかかって病気が侵入するのを予防する効果もあり、清潔で品質の良いキュウリの収穫に繋がります。稲わらや麦わらを用いることで、根元の土を柔らかく保つ効果も期待できます。ポリマルチも有効ですが、浅根性のキュウリは夏の高温や乾燥の影響を受けやすいため、自然のわらを敷くことが最も適しています。これらの丁寧な管理を実践することで、地這いキュウリは力強く生育し、家庭菜園を豊かな実りで彩ってくれるでしょう。地這いキュウリの収穫:見逃しを防ぐコツと長期収穫の秘訣地這いキュウリならではの収穫の注意点として、地面を這うように広がる性質上、実が葉の陰に隠れてしまい、見落としやすいという点が挙げられます。この見落としは収穫量の減少だけでなく、隠れたキュウリが過熟し、株全体の生育に悪影響を及ぼすこともあります。過熟した実があると、株はそちらに栄養を集中させてしまい、次の実の成長を妨げ、株自体の寿命を縮めてしまう可能性があります。したがって、地這いキュウリの収穫は、表面に見える実だけを採るのではなく、細心の注意を払い、丁寧に行うことが不可欠です。収穫時には、葉を一枚一枚めくり、つる全体をしっかりと確認する習慣をつけましょう。特に、つるの根元付近、葉が密集している場所、他のつるの下になっている場所などに隠れた実がないか、注意深く探すことが重要です。キュウリは成長が非常に速いため、収穫が遅れるとすぐに大きくなりすぎてしまいます。適切な大きさ(一般的には20~25cm程度)になった実から順次収穫し、美味しさを保ち、株への負担を減らすために、毎日、または少なくとも2日に1回は畑をチェックするようにしましょう。また、収穫と並行して追肥を行うことで、株の勢いを維持できます。こうすることで、株を健康に保ちながら、新鮮なキュウリを長期間楽しむことが可能になります。
秋の地這いキュウリ栽培と推奨品種
地這いキュウリは、夏の栽培だけでなく、7月中に種をまき、適切な方法で育てれば、9月から10月にかけて、霜が降りるまで秋の収穫も楽しめます。夏を過ぎて気温が15℃程度になると雌花の発生が増える傾向があるため、ぜひ秋の栽培にも挑戦してみてください。秋の栽培に適した夏まき用の伝統品種としては、「霜不知(しもしらず)」という固定種が古くから知られています。ただし、これはあくまで比較の問題で、本格的な霜には弱いことに変わりありません。「霜不知」が入手困難な場合は、一般的な夏まき栽培用の地這いキュウリでも十分に栽培可能です。むしろ、そちらの方が柔らかく美味しいと感じる方もいるかもしれません。「奥武蔵地這胡瓜」も、家庭菜園におすすめの品種です。この品種は、戦前に日本最大の種苗会社であった帝国種苗殖産が満州で育種していた貴重な原種を、戦後、引き揚げてきた技術者から「会社が無くなってしまったので、自分の代わりに普及させてほしい」と譲り受けたという由緒あるものです。伝統的な固定種である地這いキュウリの美味しさに加え、地這いキュウリには珍しい形の良さと多収性が特徴で、一代交配種が主流になった昭和47年(1972年)には、全国原種コンクールで三位の銅賞を受賞しています。ぜひ、家庭菜園の一角で作ってみてください。さらに、キュウリの育種に興味のある方は、この「奥武蔵地這胡瓜」を素材として、独自の品種開発に挑戦してみるのも良いでしょう。
地這いキュウリの主な病害虫とその対策
キュウリは日本全国で栽培されている主要な野菜であり、それに伴い、各地の病害虫が広がりやすくなっています。地這いキュウリ栽培において注意すべき代表的な病害とその対策を以下に示します。「べと病」は、キュウリの代表的な病害で、梅雨の時期に多発するカビ(胞子)性の病気です。葉に小さな黄色の斑点ができ、次第に角ばった黄褐色の病斑へと変化します。雨水が跳ね返り、葉裏の気孔から侵入するため、敷きわらを敷いて土の跳ね返りを防ぐことが重要です。薬剤としては、ダコニールなどが有効です。「炭疽病」もカビ性の病気で、初期には黄色の斑点ができ、葉、茎、果実に茶褐色の輪紋状の病斑が広がります。雨滴によって胞子が飛散し感染が広がるため、ダコニールなどの薬剤を使用します。「うどんこ病」もカビ性の病気で、梅雨明け後に多く発生します。葉に白いカビが丸く付着し、やがて葉全体がうどん粉をかけたように真っ白になります。ただし、うどんこ病は老化した葉に発生することが多いため、若い葉が元気な場合はそれほど心配する必要はありません。薬剤としてはダコニールなどが効果的です。「疫病」はカビ性の病気で、地際部の根や茎が褐色に腐敗し、最終的に枯れてしまいます。畑の水はけが悪く、根元に水が溜まると発生しやすいため、排水管理が非常に重要です。薬剤としてはジマンダイセンなどがあります。「モザイク病」はウイルス性の病気で、葉が波打ったように縮れ、濃淡のまだら模様が現れます。ウイルス性の病気のため、細胞内に侵入すると治療法はなく、ウイルスを媒介するアブラムシの飛来を防ぐ予防が最も重要になります。「斑点細菌病」は、傷口から侵入する細菌性の病気で、べと病とよく似た症状を示しますが、葉裏にカビ(分生胞子)が見られない点で区別できます。薬剤としては銅水和剤などが有効です。「つる割れ病」は、土壌中の胞子が根から侵入し、初期には日中に葉がしおれ、朝夕には回復する症状を繰り返しますが、やがて地際から褐色に腐敗して枯死します。土壌病害であるため、蔓延した場合は根の丈夫なカボチャなどに接ぎ木した苗を植えるしかありません(ただし、味が落ちる可能性があります)。薬剤としてはベンレートによる潅注などが有効です。「つる枯れ病」は、支柱などに付着して越冬した胞子が茎や葉から侵入し、葉の縁から白く変色し、やがて褐色に変色して三角形のクサビ形に枯れていきます。茎では主に節に発生し、病斑から上は枯死します。薬剤としてはベンレートなどが推奨されます。
次に、地這いキュウリを襲う主な害虫とその対策です。「アブラムシ」は、新芽や葉裏に大量に発生し、樹液を吸って株の勢いを弱らせるだけでなく、モザイク病を媒介する厄介な存在です。予防が重要であり、発芽後早い時期にオルトラン粒剤を株元に施用すると効果的です。「オンシツコナジラミ」は、体長1mm前後の小さな白い羽虫で、葉裏に群生し、近づくと粉を撒いたように飛び回ります。幼虫が皮膚に付くと痒みを引き起こすことからこの名があり、薬剤としてはオルトラン粒剤の初期使用、またはスプラサイド乳剤(劇物)が用いられます。「ハダニ」は、初期には葉が点々と黄色く色抜けし、次第に融合して大きくなり、やがて葉全体がカサカサになり色つやが悪くなります。このような状態の時は、たいてい葉裏にハダニが群生しています。ハダニ駆除には、オサダンなどのダニ専用の薬剤以外は効果が期待できません。ただし、ハダニは寿命が短く、薬剤に対する抵抗性をすぐに獲得し、子孫に遺伝させるため、同じ薬剤を長期間使用しないことが重要です。「ウリハムシ(ウリバエ)」は近年多発傾向にあり、他の虫と違って葉の表面を食べるため、発見しやすい害虫です。特に、苗が小さいうちに新芽を食害されると、その後の生育に大きな影響を与えるため、小さいうちは有孔ポリキャップなどで保護するしかありません。苗が大きくなって大発生してからは、薬剤を散布すると一斉に飛び立ってしまうため防除が難しく、オフナックなどが有効であると言われています。
まとめ
地這いキュウリ栽培は、伝統的な栽培方法でありながら、現代の家庭菜園に多くのメリットをもたらす魅力的な選択肢です。支柱を立てる手間が省け、夏の暑さに強く、特に品種を選べば昔ながらの柔らかく風味豊かなキュウリを味わうことができます。品種選びから土作り、種まきの方法、初期のポリキャップと間引き、最初の追肥、その後の摘心、継続的な追肥、敷きわらの管理、収穫時の注意点まで、本ガイドでご紹介した詳細なポイントを実践することで、誰でも手軽に豊かなキュウリの収穫を楽しむことができます。さらに、7月からの遅まきで秋にも収穫を楽しむことができ、多様な品種選択肢が家庭菜園の幅を広げます。ただし、栽培を成功させるためには、地這いキュウリ特有の病害虫に対する知識と適切な対策が不可欠です。本記事で解説したべと病、モザイク病、アブラムシなどの主要な病害虫に対する予防と対処法を実践し、健康なキュウリが旺盛に育つ環境を整えることで、長期にわたって美味しい実を収穫し続けることができるでしょう。家庭菜園で新鮮な夏野菜を長く楽しみたい方は、ぜひ地這いキュウリ栽培に挑戦してみてください。
地這いキュウリと一般的なキュウリ(節成り胡瓜)の違い
地這いキュウリは、地面に沿って自由に生長し、親ヅルを摘心することで、子ヅル、孫ヅルに多くの実をつけさせます。昔ながらの品種で、皮が薄く、独特の風味があります。一方、一般的なキュウリ(節成りキュウリ、立性キュウリとも)は、支柱を使って栽培されるように品種改良されており、各節に雌花がつきやすいのが特徴です。流通を意識して、日持ちや形が重視され、皮が厚めになる傾向があります。
家庭菜園に地這いキュウリが最適な理由
地這いキュウリは、特別な支柱や誘引の手間が省けるため、手軽に栽培できます。葉が地面を覆うことで、夏の強い日差しや暑さから守られ、遅めの種まきでも育てやすいのが魅力です。家庭菜園では、形が悪くても問題なく、毎日収穫することで、市場ではなかなか手に入らない、みずみずしく風味豊かなキュウリを味わえるのが醍醐味です。
地這いキュウリの品種選びのコツ
地這い栽培に適した品種を選ぶことが大切です。「青長地這」や「霜知らず地這」などがおすすめです。特に、自家消費用として、柔らかくて美味しいキュウリを求めるなら、昔ながらの固定種を種から育てるのがおすすめです。市販の苗は交配種が多く、実が硬めなことがあるので、好みで選びましょう。秋に栽培するなら、「奥武蔵地這胡瓜」のように、収穫量が多く、形が良い固定種も選択肢に入れると良いでしょう。
地這いキュウリの種まきの時期と方法
種まきは、直播きが基本です。地温が十分に上がってから(ポリキャップなどを使えば4月下旬頃から)、固定種の種をまきましょう。畝の間隔を2m程度、株の間隔を50cm程度確保し、1ヶ所に3~4粒ずつ種をまきます。土を被せる深さは1cm程度が目安です。キュウリの種は光を嫌う性質があるので、しっかりと土で覆い、たっぷりと水を与えましょう。7月中に種をまけば、秋にも収穫を楽しめます。
地這いキュウリの摘心は必須?
地這いキュウリを栽培する上で、摘心は収穫量を左右する重要な作業です。一般的に、主となるつるが本葉5、6枚から7、8枚程度、または長さが50cmほどに成長したら、先端を摘み取ります。これにより、子つるの生育が促進され、結果として雌花の数が増加し、収穫量のアップにつながります。ただし、6月下旬以降に種をまく遅まき栽培の場合は、生育期間が短くなるため、摘心を行わずにつるを早く伸ばすことで、収量減を避ける方が良いとされています。
地這いキュウリの土作りにおける「くらつき」とは?
地這いキュウリの栽培における「くらつき」とは、株ごとに肥料を施す特別な畝作りのことを指します。具体的には、約60cm間隔で土を深くまで耕し、完熟堆肥や完熟腐葉土を深さ15〜20cm程度に混ぜ込みます。その後、掘り起こした土を山のように盛り上げることで、キュウリの生育に必要な栄養分と良好な土壌環境を作り出します。この方法によって、キュウリの根が健康に成長し、肥料の吸収効率も向上します。
地這いキュウリの病害虫対策で特に注意すべき点は?
地這いキュウリは、べと病、炭疽病、うどんこ病といったカビ性の病気に感染しやすい傾向があります。これらの病気を予防するためには、敷きわらを敷き、雨水による土の跳ね返りを防ぐことが効果的です。また、モザイク病などのウイルス性の病気はアブラムシによって媒介されるため、アブラムシの発生を予防することが重要となります。さらに、ウリハムシによる幼苗期の食害も大きいため、ポリキャップで苗を保護するなどの初期対策も有効です。病害虫の種類に応じた適切な薬剤の選択と、予防対策を組み合わせることが、地這いキュウリ栽培を成功させるための鍵となります。
「奥武蔵地這胡瓜」の魅力とは?
「奥武蔵地這胡瓜」は、昔ながらの伝統を受け継ぐ固定種であり、その美味しさはもちろんのこと、一般的な地這いキュウリと比べて形が良く、多収性であるという点が大きな特徴です。昭和47年(1972年)には、全国原種コンクールで銅賞を受賞するほどの高い評価を受けており、家庭菜園で手軽に高品質なキュウリをたくさん収穫したい方には特におすすめです。育種家からも注目される、歴史と実力を兼ね備えた優れた品種です。













