柑橘類病気:原因、症状、対策を徹底解説

太陽の恵みをたっぷり浴びて育つ柑橘類。その爽やかな香りと甘酸っぱい味わいは、私たちに元気を与えてくれます。しかし、柑橘類もまた、様々な病気に悩まされることがあります。大切な柑橘を病気から守り、美味しい実を収穫するためには、病気の早期発見と適切な対策が不可欠です。本記事では、柑橘類に発生しやすい病気の原因、症状、そして具体的な対策方法を徹底的に解説します。病気に負けない健康な柑橘を育てましょう。

柑橘類の主要な病害と対策

柑橘類の栽培において注意すべき病害について、その症状、発生要因、および具体的な予防策を詳しく解説します。

黒星病

黒星病は、果実だけでなく葉や枝にも影響を及ぼす病気で、感染すると葉、枝、果実に黒色の小さな斑点が現れます。病原菌の密度が低い場合は、直径0.1~0.5mm程度の黒い円形の小さな点が現れ、密度が高くなると斑点が広範囲に広がります。

発生しやすい条件

黒点病は、6月中旬から7月中旬の梅雨の時期と、8月中旬から9月下旬にかけて、枯れ枝が多いと発生しやすくなります。降雨時の気温が14℃以上で発生しやすく、22℃を超えると感染力が非常に強くなります。剪定後の枝や枯れた枝が病原菌の繁殖場所となるため、園地内に放置すると発生を助長します。

予防と対策

間伐や整枝、剪定を実施し、園地内部への日当たりと風通しを良くします。枯れ枝の原因となる落葉を防ぎ、伝染源となる枯れ枝や剪定枝は園地内や周辺に放置せず、速やかに処分します。6月上旬から中旬、7月上旬から中旬、8月中旬から下旬にかけて、適切な薬剤を使用して防除を行います。

カンキツかいよう病

カンキツかいよう病は、柑橘類の葉、枝、そして果実に発生する病気です。春に展開する新葉に発生した場合、初期には水に浸したような淡黄色の円形斑点として現れます。その後、斑点は徐々に拡大し、中心部がコルク状に変化して表面が粗くなります。葉の裏側の病斑部分もコルク化し、淡褐色の隆起したかさぶたのような状態になります。秋葉においては、ミカンハモグリガの食害や強風による傷口から病原菌が侵入することがあります。

発生しやすい条件

雨が多く、風の強い環境下で発生しやすくなります。特に、新芽の展開時期や幼果の時期に感染リスクが高まります。また、窒素過多の栽培条件下では、植物体が軟弱になり、感染しやすくなる傾向があります。

予防と対策

かいよう病の防除に最適な時期は、発芽前、開花直後、落弁直後、梅雨時期、そして台風の接近前です。新梢に発生した病斑は二次感染源となるため、初期段階での薬剤散布が非常に効果的です。定期的な薬剤散布が重要です。特に、新芽の展開期や幼果期には予防的な散布を心がけましょう。また、風通しを良くするために、適切な剪定を行うことも有効です。発病した枝や葉は速やかに除去し、伝染源を減らすことが大切です。

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炭疽病

炭疽病は、太陽光にさらされた部分に発生することが多く、果実にはサーモンピンク色の胞子の塊が現れます。また、涙が伝ったような模様のさび果が発生することもあります。

発生しやすい条件

柑橘類の病気は、主に春先から秋口(おおよそ4月~11月)にかけて発生リスクが高まります。特に、梅雨時期は多湿な環境が病原菌の繁殖を助長するため、注意が必要です。病気の多くはカビなどの伝染性病原菌によるものなので、降雨や曇天が続く場合は警戒しましょう。

予防と対策

過度な湿気は病気を誘発する大きな要因です。柑橘類を栽培する際は、株間を十分に確保し、日光がよく当たり、風通しの良い場所を選びましょう。予防的な対策として、開花時期、落弁時期、生理落果時期に1~2回の薬剤散布を行うことが効果的です。

青かび病・緑かび病

早生温州などの品種で症状が確認されています。果実の傷口から菌が侵入し、表面に白い糸状の菌糸と胞子が形成されます。接触によって感染が広がり、表面に大量の胞子が作られます。主に樹になっている果実で発生し、病状が進行するにつれて症状がはっきりと現れます。また、一つの果実に青かび病と緑かび病が同時に発生することも珍しくありません。病気が進行する段階によって症状が異なってきます。青かび病と緑かび病が、同じ果実で同時に見られる場合もあります。

予防と対策

柑橘類の傷口から病原菌が侵入しないよう、日頃から注意深く管理し、適切なタイミングで薬剤を散布します。病気に感染した果実は速やかに取り除き、効果のある薬剤を適切に散布することが重要です。病気に侵された果実を丁寧に取り除き、適切な薬剤を散布することが重要です。

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柑橘類によく見られる害虫とその対策

柑橘類を加害する代表的な害虫について、その生態と効果的な対策をご紹介します。

アゲハ

生態:アゲハの幼虫は、特に柑橘類の若葉を好んで食害します。年に3~5回発生し、特に5~6月が最も注意すべき時期です。葉裏に淡黄白色の卵を産み付け、数日後に孵化します。孵化した幼虫は葉を食べ始め、成長するにつれて食害量も増加し、時には数匹で葉を全て食べ尽くしてしまうこともあります。

防除方法

卵や幼虫を発見したら、速やかに除去しましょう。大量発生した場合は、殺虫剤の使用も検討します。発生予防として、防虫ネットを設置することで、アゲハの産卵を効果的に防ぐことができます。

アブラムシ

特徴:主に春から秋にかけて発生が見られます。個体の色は様々で、明るい黄緑色から濃い黒褐色まで存在しますが、一般的には黄緑色の個体が多く見られます。体長はおよそ1.5~4mm程度で、中には翅を持つ個体も確認できます。アブラムシは植物の新芽を好み、野草、園芸植物、果樹など、様々な植物に寄生します。口針を使い、幼枝の先端、茎、根などに針を刺し込み、植物の汁液を吸います。直接的な吸汁だけでは葉が枯れることは稀ですが、アブラムシの排泄物である甘露が原因で、すす病を引き起こすことがあります。すす病は、すす(菌糸)が葉や茎の表面を覆い、植物の光合成を妨げる現象です。

予防と対策

粘着力が弱いテープを使用することで、アブラムシを傷つけずに取り除くことができます。予防策としては、木酢液を散布することでアブラムシが寄り付きにくくなります。大量発生した場合は、適切な薬剤を使用して駆除する必要があります。アブラムシはアミノ酸を好む性質があるため、窒素肥料の与えすぎは発生を助長する可能性があります。また、風通しや日当たりの悪い場所もアブラムシが発生しやすい環境となります。

ハダニ

特徴:春先から秋にかけて発生し、特に梅雨明けから秋にかけての時期に繁殖が活発になります。柑橘ハダニやナミハダニは、温暖な気候であれば一年を通して繁殖する可能性があります。雌一匹でも産卵が可能ですが、その場合、産まれてくるのは雄となります。ハダニは吸汁性の害虫であり、体長が約0.5mmと非常に小さいため、肉眼での確認が難しいのが特徴です。主に葉の裏側に寄生し、葉の汁液を吸います。吸汁されると葉緑素が失われ、葉に白っぽいカスリ状の斑点が現れます。葉が白くなることで光合成が阻害され、植物は十分な栄養を生成できなくなります。通常、卵の状態で越冬しますが、温暖な地域では成虫のまま越冬することもあります。

予防と対策

ハダニは乾燥した環境を好むため、水に弱い性質があります。発生初期であれば、葉の裏側に強めの水圧で水をかけるだけで洗い流すことができます。シャワーでの対策で効果が見られない場合は、適切な薬剤の使用を検討する必要があります。

ミカンハモグリガ

特徴:柑橘類の若葉に産卵します。孵化した幼虫は葉の中に侵入し、表面の組織を食い荒らしながら、葉肉をジグザグに進みます。その食害の跡は、まるで絵を描いたように見えるため、別名エカキムシとも呼ばれます。大量発生すると葉が丸まり、新芽の生育を阻害します。また、本害虫による食害痕は、雨水の侵入を招き、かいよう病の発生を助長する要因となります。葉だけでなく、果実も同様の被害を受けることがあります。特に7月以降の発生が多く、夏から秋にかけて伸びる新梢で多発する傾向があります。

予防と対策

夏から秋にかけて新梢が頻繁に発生する苗木や、隔年結果となっている樹木、かいよう病の発生リスクが高い場合は、防除が必要となります。それ以外の場合は、特に防除の必要はありません。新梢が出始めた直後から、7~10日おきに登録されている薬剤を散布してください。苗木に対しては、粒剤の使用も有効です。

症状別!原因と対策

柑橘類の生育不良について、症状別に考えられる原因と具体的な対策を解説します。柑橘の種類によっては、対策方法が異なる場合がありますのでご注意ください。

葉が枯れる・落ちる原因と対策

1.病気によるもの(白紋羽病など)

柑橘類が発病すると深刻な状態に陥りやすい病気として、白紋羽病が挙げられます。この病気は、根にカビが寄生し、柑橘の木を枯らしてしまう非常に厄介な病気です。根の周りに綿のようなカビが発生している場合、感染が疑われます。感染した木を処分しても、病原菌が土壌に残存するため、同じ場所に新たな苗木を植えることは避けてください。また、柑橘類に発生しやすい黄斑病や疫病、白絹病、白紋羽病などに感染すると、樹勢が衰え始め、葉が落ちる原因となります。それぞれの病気に適した薬剤散布や土壌改良などの対策を講じることが重要です。

2.害虫被害

柑橘類の木は、カミキリムシやコガネムシといった害虫によって深刻な被害を受けることがあります。これらの害虫が発生すると、最悪の場合、木が枯れてしまうこともあります。特に、カミキリムシの幼虫は木の幹の内部を食い荒らし、コガネムシの幼虫は根を食害するため、注意が必要です。

もし、柑橘類の木の幹に木くずのようなものが見られる場合は、カミキリムシの幼虫が内部に侵入している可能性が高いと考えられます。そのような場合は、市販の殺虫剤を木くずが出ている穴に直接スプレーして駆除を試みてください。

鉢植えで柑橘類を育てている場合は、植え替えの際に土の中に幼虫がいないか確認することができます。一方、地植えの場合は、葉が枯れていたり、全体的に木に元気がないように感じられたら、枝先の真下あたりを少し掘り返して、幼虫がいないか確認してみましょう。

3.除草剤の影響

柑橘類の木が枯れてしまう原因の一つとして、除草剤の影響が考えられます。特に、空き地や駐車場などに散布された除草剤が、雨水などによって流れ込み、柑橘類の木に悪影響を及ぼすことがあります。ご自身の敷地内だけでなく、隣接する空き地などに散布された除草剤が原因となる場合もあるため、注意が必要です。

4.自然な落葉現象

柑橘類の木は、新しい葉が生えてくる時期になると、古い葉はその役割を終えて自然に落葉することがあります。これは生理現象であり、特に心配する必要はありません。

5.豊作の代償

前年に柑橘類がたくさん実り、豊作だった場合、木が大きく体力を消耗していることがあります。その結果、葉が枯れてしまうなどの症状が現れることがあります。

6.気象条件(木枯らしなど)

冬の冷たい風が吹く時期、柑橘の葉が傷んでしまう主な原因は木枯らしによる乾燥です。気温の低下や霜、そして強い風は、柑橘類が順調に育つことを阻害します。対策としては、防風ネットや保護シートなどを使い、株全体を覆うことで、気温が下がるのを防ぎ、風の影響を和らげることが有効です。風よけの設置が難しい場合は、有機肥料などを根元に施し、地温を上げる工夫も効果的です。

7.乾燥(水不足)

夏の暑い時期に、葉が急に落ち始めた場合は、水不足による乾燥が考えられます。柑橘は乾燥から身を守るために葉を落としますが、枯れた葉が枝に残ったまま落ちない場合は、乾燥状態が深刻です。たっぷりと水を与えることで、再び新しい芽が出てくる可能性があります。

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実がならない原因と対策

1.生育段階の若木

柑橘類の苗木を植えてから数年間は、なかなか実がならないことがあります。これは、まだ木が若いためかもしれません。木を大きくするために栄養を使い果たしてしまうと、実を結ぶために必要な栄養が不足してしまうのです。定期的な剪定を行い、木の生育を促進することが大切です。

2.剪定の失敗(強剪定・剪定不足)

柑橘類のような常緑果樹は、葉を大量に失うような強い剪定には耐えられません。ダメージからの回復にエネルギーを使い果たし、結果として開花不良や結実不良を引き起こす原因となります。剪定を怠り、放置することもまた、実がならない原因となります。枝葉が過密になると、日光が遮られ光合成が阻害されます。さらに、風通しの悪さは病害虫の発生を招きます。適切な時期に、樹齢に合わせた剪定を行うことが重要です。

木が大きくならない原因

柑橘類の木は、植え付け後に手入れをせずに放置すると、十分に成長しません。不要な枝を残したままにすると、養分が効率よく行き渡らず、木の成長が停滞することがあります。適切な時期に剪定を行い、木の生育状況に合わせた手入れを心がけましょう。

まとめ

本記事では、柑橘類の栽培における病気や病害虫対策について詳しく解説しました。病害虫の早期発見と適切な防除は、健康で美味しい柑橘を収穫するために欠かせません。この記事を参考に、日々の観察を徹底し、適切な対策を講じてください。家庭菜園での柑橘栽培を成功させ、豊かな収穫を楽しみましょう。

柑橘類がかかりやすい病気の種類は?

柑橘類には、黒星病、カンキツ瘡痂病、灰色かび病、潰瘍病といった病気がよく見られます。これらの病害は、葉や果実、枝などに様々な兆候が現れ、植物の成長や果実の収穫に悪影響を及ぼすことがあります。

アブラムシが大量に発生してしまった時の対処法は?

アブラムシが大量発生した際は、まずガムテープなどで除去するか、勢いのある水流で洗い落とします。それでも状況が改善しないようであれば、薬剤の使用を検討しましょう。また、アブラムシは窒素過多の環境を好むため、肥料の与えすぎに注意し、風通しと日当たりの良い場所で栽培することが大切です。

柑橘類のハダニ対策として、どのような方法がありますか?

柑橘類のハダニは乾燥した環境を好むため、定期的に葉の裏側に水を散布することで予防効果が期待できます。発生初期であれば、水で洗い流すだけでも十分な効果があります。もし大量発生してしまった場合は、ハダニ専用の薬剤を使用することを検討してください。

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