日本におけるクリスマスの歴史は、意外なほど古く、16世紀半ばにポルトガル人宣教師がキリスト教とともにその習慣を伝えました。しかし当初は宗教色が強く、一般に広く受け入れられるには至りませんでした。

そして明治時代に入ると、洋風文化が流行する中でクリスマスは新しい祝日として認識されるようになりました。特に東京では、デパートのクリスマス売り場が人々を惹きつけ、徐々に商業的なイベントとして定着していきました。

第二次世界大戦後は、アメリカ文化の影響を受けてサンタクロースの概念が浸透し、プレゼント交換の習慣も一般家庭に広まりました。近年では、豪華なイルミネーション演出やケーキ、チキンの需要増加など、クリスマスは日本でも一大イベントと化しています。一方で、その起源であるキリスト降誕祭としての宗教的意義は薄れつつあります。

クリスマスは当初、江戸時代に「偶像崇拝」と見なされ攻撃の対象となりましたが、開国後は軍人や官僚の家庭に広がりました。明治政府がキリスト教の普及を図り、各国大使館でクリスマス行事が開かれるようになりました。

大正時代に入ると、東京・横浜を中心に一般家庭にも浸透し始めます。1900年には明治屋が銀座に出店し、クリスマス商品を販売。木下利玄の歌にも「明治屋のクリスマス飾り灯ともりて煌きらびやかなり」とあり、華やかなイルミネーションが街を彩っていたことがうかがえます。1926年の大正天皇崩御を期に12月25日が休日となり、さらに普及する契機となりました。

戦後は、アメリカ文化の影響を受けてブームが到来します。デパートのクリスマス営業が始まり、ケーキや飾り、カードなどの商品が登場しました。1950年代のベビーブーム世代により、不二家が日本独自のクリスマスケーキを作るなど、商戦が過熱化していきました。

このように、当初は宗教的意義が強かったクリスマスが、経済成長とともに一大イベントへと変容し、イルミネーションなど独自の文化に定着していったのです。クリスチャンが少数派の日本でありながら、人々に広く親しまれている理由が歴史から伺えます。

日本のクリスマスは、伝統と新しさが見事に融合した独自の風情があります。街路樹のイルミネーションや、ケーキやチキン料理を味わう習慣など、西洋のクリスマス文化を取り入れつつ、家族団らんを大切にする日本の心温まる習わしが色濃く残されています。日本人なりのアレンジを加えた、優雅でユニークなクリスマスの姿は、外国人観光客を魅了する一助となっています。