山形県は全国に誇る「さくらんぼ王国」として知られ、その豊かな自然環境と厳しい気候条件が、他に類を見ない美味しさと品質を生み出しています。この地域で栽培されるさくらんぼは、多彩な品種が揃っており、それぞれが独自の魅力を放っています。特に「佐藤錦」は、その上品な甘さとジューシーさで日本国内外で高く評価されています。山形のさくらんぼはどのようにしてその地位を築いたのか、品種ごとの特徴を踏まえながら、その魅力に迫ります。
あなたはいくつ知っている?山形のさくらんぼ品種リスト 期待の新品種「やまがた紅王」も紹介
ひと口にさくらんぼと言っても、その品種は多岐にわたりますね。トルコで誕生したさくらんぼは、世界中で育てられ、その数はなんと1000種類以上と言われています!日本では約30種が栽培されているそうです。今回は特に山形県で育てられている代表的なさくらんぼの品種を、その特徴や収穫時期とともにご紹介いたします。
山形県を代表するさくらんぼ「佐藤錦」
山形を代表する特産品として知られる高級さくらんぼ です。「ナポレオン」と「黄玉」の交配種で、収穫時期は6月中旬から下旬(中生種)です。 「佐藤錦(さとうにしき)」は、山形県の名品として広く認知されています。その名を一度は耳にしたことがある方も多いでしょう。佐藤錦は、1912年に山形県東根市の佐藤栄助氏により交配が行われ、1928年に市場に登場しました。元々は「出羽錦」と名付ける予定でしたが、「佐藤さんが作った」ことと「砂糖のように甘い」ことを掛け合わせて「佐藤錦」と命名されたとされています。県内での栽培面積は約75%を占めるほどの人気で、一粒の重さはおおよそ7g程度で、果肉がやわらかく甘みと酸味のバランスが絶妙な点で好評です。
甘さと大粒で人気の晩生品種「紅秀峰」
糖度の高さで注目される晩成品種「紅秀峰」です。親品種は「佐藤錦」と「天香錦」で、収穫時期は6月末~7月上旬(晩生種)です。 山形のさくらんぼとして人気を集めている「紅秀峰」は、1979年に山形県園芸試験場で交配され、1991年に品種登録されました。鮮やかな赤色に染まる着色が特徴で、果実は10g前後としっかりとした大きさがあり、2~3Lサイズになることもあります。シャキッとした食感と強い甘み、控えめな酸味が魅力です。 「紅秀峰」は晩生品種のため、天候によっては7月にも収穫可能で、早めのお中元として贈られることが多いです。大粒で見映えが良く、果肉が柔らかい佐藤錦よりも日持ちすることが選ばれる理由の一つ。ファンによる指名買いも多く、根強い人気があります。佐藤錦に次ぐ栽培量を誇り、山形県内でも手に入りやすい品種です。特に甘いさくらんぼをお探しの方にぜひ試していただきたいです。
黒いさくらんぼ!?希少品種「紅さやか」
遅熟するとアメリカンチェリーのような濃い色合いに変化します。親品種は「佐藤錦」 と 「セネカ」で、収穫期は6月上旬(早生種)です。「紅さやか」は、紅秀峰と同じく1979年に山形県の園芸試験場で交配され、1991年に品種登録された山形生まれのさくらんぼです。6月上旬に旬を迎える早生種で、山形で国内シェアの9割以上を誇ります。早生品種は一般に小粒ですが、紅さやかは早生の中では比較的大きく、5~7g程度の重さです。色付きが良く、果皮は朱紅色で、熟すと黒紫色となりアメリカンチェリーのように見えます。果肉も赤く染まるのが特徴です。酸味は佐藤錦より強めですが、甘さとのバランスが良く、色が濃いほど甘くて美味しいとされています。初夏にふさわしい爽やかさで人気があります。
実はアメリカ発祥!伝統的なさくらんぼ「高砂」
山梨県で盛んに栽培される 由来はアメリカにあるさくらんぼ です。収穫時期は6月初旬から中旬(早生品種)です。アメリカを原産国とする「高砂(たかさご)」は、「ナポレオン」や「黄玉」と並んで1872年(明治5年)に日本に紹介された古い品種のさくらんぼです。アメリカでは当初「ロックポートピガロー」と呼ばれていましたが、日本では「高砂」という名に変更され、現在に至っています。1粒の大きさはおおよそ5~6gとやや小さめで、種が大きいのが特徴です。果肉は柔らかく、保存性には欠けますが、果汁たっぷりの甘酸っぱさと爽やかな味が好まれます。果皮は黄色からオレンジ、赤へと続くグラデーションを呈し、「高砂」という縁起の良い名前や、ハート形の可愛らしい姿から、贈り物にも人気があります。温暖な地域での栽培に適しており、国内シェアは山梨県が一位を誇ります。また、山形県では「佐藤錦」の受粉樹として一部栽培されていますが、生産量は全体の1%程度であり、山形では希少なさくらんぼとされています。
深いコクとやみつきになる美味しさ「紅てまり」
「紅てまり(べにてまり)」は、山形県の園芸試験場で1980年に交配され、2000年に品種登録された比較的新しい品種のさくらんぼです。この品種は、「ビック」と「佐藤錦」を掛け合わせて生まれました。収穫時期は7月上旬から中旬で、特に成熟の遅い極晩生種として知られています。紅てまりは、その年の天候により収穫時期が多少変動しますが、この時期になると鮮やかな紅色に染まり、10g以上にもなる大粒の実をつけます。果肉はしっかりとしており、多くの果汁を含んでいるため、甘みと酸味のバランスが絶妙で、とてもジューシーです。しかし、さくらんぼの本場である山形県でも生産量がわずか1%未満という希少な存在であり、市場ではあまり見かけません。そのため、お中元の贈り物としても近年注目を集めています。
伝統の風味を持つ、酸味豊かなさくらんぼ「ナポレオン」
ヨーロッパにルーツを持つ歴史あるサクランボの品種「ナポレオン」です。収穫期は、6月後半から7月初頭(晩成種)です。 ヨーロッパ各地で古くから親しまれている「ナポレオン」は、1872年にアメリカから日本に伝えられました。当時から「那翁」として知られ、今もその名で呼ばれています。この品種は縦長のハート型で、果実の重さは約7g、果汁が豊富なうえ、固めの果肉を持っています。生食も可能ですが、強めの酸味があるため、缶詰や菓子材料として加工されることが多いです。また、ナポレオンは「佐藤錦」や「南陽」の親としても知られ、現在も受粉樹として多く栽培されています。紅秀峰に次ぐ晩成種として、山形でのサクランボ栽培には欠かせない品種です。
市場にほとんど登場しない珍しい品種「月山錦」
目を引く鮮やかさ!ユニークな“黄色のさくらんぼです。収穫期は 6月中旬から下旬(晩生種)です。「月山錦(がっさんにしき)」は鮮やかな黄色が最大の特徴で、中国の大連市由来で日本に渡ってきた品種です。粒は12g程度の大きさで食べ応えも抜群。糖度が20度を超えることがあり、酸味が控えめで、甘さが口中に広がります。見た目が美しいため、贈答用として赤いさくらんぼと詰め合わせされることが多い品種です。その独特な黄色が人気ですが、栽培している農園が少ないため市場では滅多に見かけません。 月山錦は樹一本で収穫できる量が限られ、赤くならず判別が難しいため、高度な栽培技術を必要とします。そのため、さくらんぼで名高い山形でも非常に希少で、高値で取引されています。
世界最大級の超大玉!注目の新種「やまがた紅王」
山形さくらんぼの新たな顔、「やまがた紅王」です。親品種は「紅秀峰」 「C-47-70(「レーニア」 「紅さやか」)です。収穫時期は 6月下旬~7月上旬です。山形県の農業総合研究センター園芸農業研究所が開発した「やまがた紅王」は、2020年に品種登録された後、2022年から市場に姿を現し、2023年に本格販売をスタートしました。この注目のさくらんぼは、6月下旬から7月上旬にかけて収穫され、大粒で知られる紅秀峰を凌ぐ3~4Lサイズの大きさが特徴です。500円玉を超える大きさにも育つ「やまがた紅王」は、甘さが際立ち酸味が控えめ。硬めの果肉は日持ちも良く、贈り物にも最適です。今後は収穫量が増えるとともに、佐藤錦や紅秀峰と並ぶ人気を誇ることが期待されています。まだデビュー間もない新品種ですが、その成長が楽しみです。
まとめ
日本では、およそ30種類のさくらんぼが栽培されています。紹介されている品種以外にも、大きな果実をつける「紅ゆたか」や、珍しく自家受粉できる「紅きらり」、北海道での栽培が盛んな「南陽」など、たくさんのバリエーションがあります。それぞれのさくらんぼは収穫期や栽培される地域、果実の大きさや味わいが異なるため、様々な違いを楽しむことができます。自分の好みに合った美味しいさくらんぼを見つけるために食べ比べをするのも楽しい試みです^^ 伝統的な品種である佐藤錦やナポレオン、紅秀峰に加え、令和5年には世界トップクラスの大きさを持つ「やまがた紅王」という新しい品種が登場します。そして、2025年には山形でのさくらんぼ栽培が150周年を迎え、更なる進化を遂げるさくらんぼに注目が集まっています。