美味しい食パンを作る上で、型のお手入れは欠かせないプロセスです。特に、何も加工されていない食パン型は、最初に「空焼き」と呼ばれる特別な処理を行う必要があります。また、日頃のお手入れ次第で、パンの取り出しやすさや衛生状態も大きく変わってきます。「食パン型は洗うべきかどうか」という疑問はよく聞かれますが、素材によって適切な方法が異なります。この記事では、食パン型の素材ごとの特徴を踏まえ、最初の空焼きの手順、日々のメンテナンス、そして頑固な汚れの落とし方まで、パン作りのプロや経験者のアドバイスを基に詳しく解説します。この記事を読めば、食パン型を長く大切に使い、常に最高の状態でパンを焼き上げるための知識と方法が身につくでしょう。
食パン型のお手入れがパン作りにもたらす影響
食パン型のお手入れは、単に清潔さを保つだけでなく、焼き上がったパンの品質や型からの取り出しやすさに直接影響する、非常に重要な作業です。適切なメンテナンスを行うことで、生地が型にくっつくのを防ぎ、美しい焼き色のパンをスムーズに取り出すことができます。特に、使い始めの空焼きや、日々油をなじませることは、型の状態を良くし、使い込むほどに型離れが向上するという利点があります。これにより、パン作りがより楽しくなり、成功体験も増えるでしょう。反対に、お手入れを怠ると、汚れが蓄積し、パンが型にこびりつきやすくなるだけでなく、衛生上の問題や型の劣化を招く可能性があります。食パン型を長く、気持ちよく使い続けるためには、正しいお手入れ方法を理解し、実践することが非常に大切です。
食パン型の種類とそれぞれの特徴
食パン型には、様々な素材や加工方法で作られたものがあり、それぞれに独自の特徴と最適な手入れ方法があります。お持ちの型、またはこれから購入を検討している型がどのタイプなのかを知ることは、適切なお手入れを行う上で非常に重要です。
コーティングなしの食パン型(アルタイト・アルスター)
アルタイトやアルスター製の食パン型は、鉄にアルミメッキを施したもので、耐久性が高く長持ちするのが特徴です。これらの型は、使い始めに「空焼き」という工程が必須です。空焼きを行うことで、型の表面に薄い油膜を作り、パンが型から離れやすくなるだけでなく、型の寿命を延ばす効果も期待できます。比較的安価に入手できる点も魅力で、プロのパン職人にも広く利用されています。使い込むほどに油がなじみ、型が「育つ」ことで、さらに型離れが良くなるのが特徴です。パン作りを愛する方にとって、長く使い続けることで型の変化を楽しめる、満足度の高い選択肢となるでしょう。
コーティングありの食パン型(テフロン・フッ素加工)
焦げ付き防止を謳うテフロンやフッ素加工の食パン型は、空焼き不要でお手入れが楽、というイメージで購入を検討する方も多いでしょう。初めて食パン型を購入する方にとっては、空焼きの手間がないのは大きな魅力です。しかし、実際に使用してみると、期待した効果が得られないこともあります。例えば、テフロン加工の型を購入したものの、「空焼きなしで本当に大丈夫かな?」という不安から解放されず、結局毎回油を塗る羽目になった、という経験談も耳にします。さらに、使用後の洗浄も必須となり、本来避けたかった手間が増えてしまった、というケースも少なくありません。もちろん、高品質な加工が施された製品も存在しますが、加工の質によっては期待を裏切られる可能性があることを覚えておきましょう。
【使い始めの重要作業】コーティングなし食パン型の「空焼き」
アルタイトやアルスターといった、コーティングのない食パン型を使用する上で、最初の「空焼き」は非常に重要なステップです。この工程を丁寧に行うことで、型のポテンシャルを最大限に引き出し、長く使い続けられる状態にすることができます。
空焼きの目的とメカニズム
空焼きには主に二つの目的があります。一つは、製造時に型に付着した油分や細かな汚れを焼き切ること。これらの不純物が残っていると、パン生地が型に貼り付く原因になります。もう一つは、型の表面に油膜を形成し、パンが型から剥がれやすくするための準備です。加熱によって型の金属が変化し、油が馴染みやすい状態を作り出します。この油膜が、その後のパン焼きを重ねるごとに強固になり、最終的には油を塗らなくてもパンがスムーズに取り出せる、理想的な状態へと導いてくれます。空焼きは、型を「パンを美味しく焼ける状態」に初期設定するための、大切なプロセスと言えるでしょう。
一般的な空焼き方法:複数回焼くアプローチ
多くのパン愛好家の間では、空焼きを複数回行う方法が一般的です。例えば、パン教室の生徒さんからよく聞かれるのは、250℃程度のオーブンで、何も塗らずに一度空焼きした後、型を冷ましてからショートニングなどの油脂を丁寧に塗り込み、再度オーブンで焼き付ける、という手順です。この方法の狙いは、油をしっかりと焼き付け、型に油のコーティングを施すことで、型離れを向上させるという考えに基づいています。油を塗って焼き付けることで、型表面に強固な油膜を形成し、焦げ付きを防ぐことを目指します。ただし、後述するように、この方法が常に最良とは限りません。
推奨される「油分なし初回焼き」の詳細
私が実践し、パン生地が型に付着した経験がない方法として推奨するのは、馬嶋屋菓子道具店が推奨する「油分なし初回焼き」です。この方法では、ショートニングなどの油分を一切塗らずに型をオーブンに入れます。家庭用オーブンの最高温度(およそ240度)で15分ほど、型を焼き上げます。この温度と時間は目安であり、オーブン内で煙が勢いよく立ち上り、その煙が見えなくなるまで焼き続けることが重要です。煙が出ている間は、型に付着していた機械油や不純物が焼き切られている状態であり、煙が消えることでそれらが完全に除去されたサインと判断します。この方法で、1.5斤型、2斤型、スリム型食パンのいずれも、型離れがスムーズになっています。
油分不要の理由:型離れの悪化を防ぐ
初回焼きの際にショートニングなどの油分を使用しないことには、重要な利点があります。購入したばかりの型には、製造過程で付着した工業用油や細かな汚れが残っている可能性があります。これらの汚れを完全に焼き切る前に油分を塗布してしまうと、油分が汚れを覆い隠し、型の表面に閉じ込めてしまう可能性があります。この状態では、本来取り除くべき汚れが残ったまま油膜が形成されるため、型離れが悪くなる原因となります。したがって、初回焼きを十分に行い、すべての汚れを焼き切った後に油分を塗ることが推奨されます。熱いうちに薄く油分を塗ることで、型の表面に均一で丈夫な油膜ができ、型離れが向上します。
初回焼き前の準備と私の実践例
推奨されている初回焼きの方法では油分を塗らないことが重要ですが、私は「煙がたくさん出るのは避けたい」と考え、初回焼きの前に中性洗剤で型を丁寧に洗っています。これにより、可能な限り汚れや機械油を事前に除去し、初回焼き時の煙の発生を減らすことができます。洗剤で洗った後は、しっかりと水分を拭き取り、乾燥させてからオーブンに入れます。その後、馬嶋屋菓子道具店が推奨する方法に従い、オーブンの最高温度で煙が出なくなるまで焼き上げます。初回焼きが完了し、型がまだ温かいうちに、ショートニングの代わりにサラダ油を薄く塗って仕上げます。熱いうちに油を塗ることで、油が型によく馴染み、しっかりとした油膜を形成しやすくなります。この手順を踏むことで、私の食パン型は一度もパン生地がこびり付いたことがなく、良好な型離れを維持しています。
食パン型は「洗うべきか、洗わないべきか」?徹底検証
食パン型のお手入れで、よく議論されるのが「型を洗うかどうか」という問題です。この問いに対する明確な答えはなく、パンの種類、使用頻度、個人の衛生観念などによって、最適な方法が変わってきます。ここでは、それぞれの意見と、その理由を詳しく解説し、ご自身の状況に合った方法を見つけるためのヒントをお伝えします。
「洗わない」が基本とされる理由
特にテフロンやフッ素加工のない鉄製の食パン型では、「洗わない」という考え方が一般的です。この背景には、型の内側に塗布された油分が、パンを焼くたびに型になじみ、独自のコーティングを形成するという考えがあります。使い込むほどに油の層が積み重なり、それが天然の離型剤として機能し、最終的には油を塗らなくてもパンがスムーズに取り出せるようになるのです。これにより、日々の手入れが非常に楽になるという利点があります。型を洗ってしまうと、この時間をかけて育てた油膜が失われるため、あえて洗わないという選択をする人が多いのです。
プロの現場における「洗わない」習慣
パン屋さんのようなプロの現場では、食パン型を毎回丁寧に洗うことはほとんどありません。これは単に手間を惜しむだけでなく、長年の経験から導き出された合理的な理由に基づいています。毎日大量のパンを製造するパン屋さんにとって、使用済みの型を一つ一つ洗剤で洗い、完全に乾燥させるという作業は、時間と労力の面で現実的ではありません。それよりも、パンを焼いた直後の熱い状態のうちに、パンくずや余分な油分を丁寧に拭き取り、型自体に油をなじませて「育てる」という考え方を重視します。この方法によって、型の離型性を常に良好な状態に保ち、全体の作業効率を大幅に向上させているのです。もしパン屋さんで働く機会があれば、型の管理方法について確認するか、明らかにひどい汚れがない限り、独断で洗剤を使って洗わない方が良いでしょう。下手に洗ってしまうと、苦労して育てた油膜を剥がしてしまい、型の性能を低下させることになりかねません。
家庭での「洗う派」と「洗わない派」の意見
プロの現場では「洗わない」ことが一般的ですが、家庭で食パン型を使用する場合は、意見が大きく分かれます。「洗う派」と「洗わない派」が存在し、それぞれが納得できる理由を持っています。洗わない派は、先に述べたように油膜を育てて型離れを良くすることを重視し、使用後は熱いうちに拭き取るだけで済む手軽さをメリットとして挙げます。一方、洗う派は、衛生面や油分の酸化による臭いを心配し、定期的に洗浄する必要性を主張します。また、作るパンの種類によっては、どうしても洗わざるを得ない場合もあります。
筆者が「洗う派」である理由と具体的な状況
ここまで「型は洗わない」という考え方について説明してきましたが、筆者は個人的には「洗う派」です。これにはいくつかの具体的な理由があります。まず、筆者はパン教室で食パン型をほぼ毎日使う期間がある一方で、教室がない期間はほとんど使わなくなるという特殊な状況にあります。食パン型に付着した油分は、時間が経つにつれて酸化し、嫌な臭いを放つことがあります。この酸化した油の臭いは非常に不快であり、焼き上がったパンにその臭いが移ってしまう可能性を考えると、洗わずに放置することはできません。また、完全に拭き取ることができなかったパンくずが残っている可能性があり、それを長期間放置することは衛生的に好ましくないと感じます。さらに、普段からシンプルな食パンだけでなく、チーズやチョコレートなど、様々な材料を使ったパンを作る機会が多いです。これらの材料が型にこびりついたり、匂いが移ったりする可能性がある場合は、洗わないという選択肢はありえません。どうせいつか洗うことになるのであれば、常に清潔な状態を保つために毎回洗っておこう、という結論に至りました。
使い込むほどに愛着が湧く型の変化
「きちんと洗う」ことを実践している私自身も、パン型の時間とともに変わる表情や、それに対する愛着は深く理解しているつもりです。型を洗う、洗わないという選択に関わらず、長く使い続けることで、その型には独特の風格が生まれ、数えきれないほどのパン作りの記憶が刻まれていきます。たとえば、10年という歳月を共に過ごした型には、かけがえのない愛着が自然と湧いてくるものです。たとえ洗剤で丁寧に洗ったとしても、使い続けるうちに油分は再び馴染み、型は徐々に理想的な状態へと「成長」していきます。最も大切なのは、型を丁寧に扱い、長く愛用できる状態を維持することです。最終的には、パン作りの頻度、作るパンの種類、そして個々の衛生に対する考え方を考慮し、洗うか洗わないかを柔軟に判断するのがベストな選択と言えるでしょう。
パン型の日常的な手入れと困ったときの解決策

初期の空焼きが終わり、パン型の準備が整ったら、日々のパン作りにおける日常的なメンテナンスが非常に重要になります。適切なお手入れは、型離れを良くし、パン型の寿命を延ばすだけでなく、もし問題が発生した場合の対処法を知っておくことで、安心してパン作りに専念できます。
焼き上がったパンを取り出した後の基本
焼き立ての食パンを型から取り出した後のお手入れは、型がまだ温かいうちに行うのが基本です。なぜなら、温かいうちであれば、型に残った余分な油分や小さなパンくずが柔らかく、簡単にきれいに取り除くことができるからです。キッチンペーパーや清潔な布を使用して、型の内側を丁寧に拭いてください。この際、力を入れすぎず、優しく拭き取ることが大切です。特に、アルタイトやアルスター製の型は、この拭き取り作業を通じて油が馴染み、徐々に型離れが向上する「育つ」過程を促進します。完全に冷めてしまうと、油分やパンくずが固まってしまい、取り除くのが難しくなるため、温かいうちに手入れをする習慣をつけることが重要です。
型への油分塗布:毎回必要?それとも不要?
次にパンを焼く際に、型に油を塗るかどうかは、型の「育ち具合」によって判断が分かれます。馬嶋屋菓子道具店の推奨では「空焼きを十分に行った後に、ショートニングを塗布してください」とあり、空焼き後には油を塗ることが前提とされています。しかし、使い込むうちに型に油が馴染み、油を塗らなくてもスムーズにパンが型から外れるようになることもあります。私自身は、パン生地が型にこびり付いた経験がないため、型離れの良さを維持するために毎回油を塗っています。十分に油が馴染んだ型でも、確実に型離れさせたい場合は、薄く油を塗ることは有効です。また、スプレータイプの離型油は、手軽に均一に塗布できる便利なアイテムとして活用できます。
パン生地のこびり付き・ひどい汚れへの対処法
普段から丁寧にお手入れをしていても、パン生地が型に張り付いてしまったり、チーズを使ったパンを焼いた際に型がひどく汚れてしまうことがあります。そのような時は、食器用の中性洗剤を使って丁寧に型を洗いましょう。洗剤を使うことで、こびりついた生地や落ちにくい汚れをきれいに落とすことができます。ただし、洗剤で洗うと、せっかく型になじんだ油分が失われてしまうため、洗剤を使った後は必ず「再度の空焼き」が必要です。再空焼きの方法は、初回使用時の空焼きと同じ手順で行います。中性洗剤で丁寧に洗って汚れを落とした後、しっかりと水分を拭き取り、オーブンの最高温度で煙が出なくなるまで焼き付けます。その後、型がまだ温かいうちにサラダ油などの油を薄く塗って完了です。この作業をすることで、型は再びパン離れの良い状態に戻り、安心して次のパン作りを楽しめるようになります。
食パン型選びのポイント:失敗しないために
初めて食パン型を買う時や、新しい型への買い替えを検討する際、どんな型を選べば後悔せずに長く使えるのか悩むことは多いはずです。ここでは、空焼きの手間や、型の特性を踏まえた上で、自分に合った型を選ぶためのヒントをご紹介します。
空焼きの手間を省きたい場合の選択肢
もし、空焼きをするのが面倒だと感じるなら、フッ素樹脂加工などのコーティングが施された食パン型も選択肢の一つです。これらの型は、購入後すぐに使うことができ、普段のお手入れも比較的簡単だと言われています。しかし、先述の筆者の体験談にもあるように、コーティングされた型でも、油を塗らないとパンがくっついてしまったり、結局毎回洗剤で洗う必要が出てくることもあります。コーティングの質は商品によって大きく異なるため、購入する前にレビューや製品情報をしっかり確認することが大切です。価格の安いコーティング型よりも、信頼できるメーカーが製造した、質の高い加工がされている製品を選ぶことをおすすめします。
コーティング型の注意点と筆者の体験談
筆者は「空焼きをしてもパンがくっついてしまったらどうしよう!」という不安から、初めての食パン型としてテフロン加工のものを選びました。しかし、このテフロン加工は期待していたほど万能ではありませんでした。油なしで焼くとパンがくっついてしまうため、結局毎回油を塗る必要があったのです。また、一般的なテフロン加工の型は、使用後に洗剤で洗うことが推奨されており、お手入れが楽になるという期待は外れてしまいました。「空焼きは確かに手間ですが、使い終わった後に洗う必要がないので、結果的に楽なんです」と、後から購入したアルタイトの型を使い始めてからは強く感じるようになりました。もちろん、私が購入した商品がたまたまそうだっただけで、使いやすいコーティング型もたくさんあると思います。
費用対効果と丈夫さで選ぶなら「アルタイト・アルスター」
色々な食パン型を試した結果、個人的にはアルタイトやアルスター製の型を自信を持っておすすめします。これらの型は、最初の使用時に空焼きという手間が必要ですが、一度空焼きを終えれば、その後の普段のお手入れはとても簡単になります。パンを焼き終えたら、まだ温かいうちに油を軽く拭くだけでOKで、毎回洗剤で丁寧に洗う必要はありません。そして何より、アルタイトやアルスター製のものは、なんといっても「価格が手頃で、丈夫で長持ち」という点が大きな魅力です。きちんとお手入れをして使い続けることで、型に油が馴染み、パンが取り出しやすくなる変化も楽しめます。長い目で見ると、費用対効果が高く、耐久性に優れており、パン作りの頼れるパートナーとして長く使えるのは、やはりアルタイトやアルスターの食パン型だと思います。
まとめ
食パン型のお手入れは、美味しいパンを作り続けるために欠かせない工程です。特に、アルタイトやアルスターのようなコーティングされていない型では、最初の「空焼き」が型のポテンシャルを最大限に引き出すための重要なステップとなります。空焼きとは、製造時に付着した油分や汚れを取り除き、型に油の層を作るための準備であり、油を使わずにオーブンの最高温度で、煙が出なくなるまで焼き付ける「馬嶋屋菓子道具店推奨の初回空焼き」が効果的です。日々のお手入れは、焼き上がったパンを型から取り出したら、熱いうちに油分を拭き取るのが基本です。型が馴染み、油分が馴染めば油を塗らなくてもパンが綺麗に剥がれると言われますが、私のように毎回油を薄く塗ることで、確実にパンが型から離れるようにする方法もあります。「型を洗うかどうか」については、パン作りの現場では洗わないのが一般的ですが、家庭では使用頻度や衛生観念、作るパンの種類によって臨機応変に対応すべきです。個人的には油分の酸化や衛生面を考慮して「洗う派」ですが、洗ったとしても型の変化を楽しむことはできます。もし、パンがこびりついたり、ひどく汚れてしまった場合は、中性洗剤で洗った後、必ず再度空焼きを行うことで元の状態に戻すことができます。型を選ぶ際には、空焼きの手間を省きたい場合はコーティングされた型も選択肢に入りますが、私の経験からすると、アルタイトやアルスターの型が、価格、耐久性、そしてお手入れのしやすさの点で最もおすすめです。正しい知識と愛情を持って手入れをすることで、お気に入りの食パン型を長く大切に使い、パン作りを思う存分楽しんでください。
食パン型の空焼きはなぜ必要なのでしょうか?
食パン型の空焼きには、主に二つの理由があります。一つは、製造過程で型に付いた機械油や細かな汚れを完全に除去することです。これらの不純物が残っていると、パン生地が型にくっつきやすくなります。もう一つは、型の表面に油の層を作り、パンが取り出しやすくなるように準備することです。熱を加えることで型の金属の性質が変わり、油分が馴染みやすい状態を作り出し、使い込むほどにパン離れが良くなる下地を作ります。
食パン型の空焼きはショートニングなどの油なしでも良いですか?
はい、ショートニングなどの油を塗らずに空焼きする方法が推奨されています。特に、馬嶋屋菓子道具店が推奨する方法では、購入したばかりの型に付いている機械油や汚れを完全に焼き切るために、油を塗らない状態でオーブンの最高温度(240℃程度)で15分ほど、煙が出なくなるまで空焼きします。汚れの上から油を塗ってしまうと、汚れが焼き切れずにパン離れが悪くなる原因になるため、最初に油なしで焼き切ることが大切です。空焼きが終わった後、まだ熱いうちに薄く油を塗ると効果的です。
食パン型は使用後、洗うべきか否か?
一般的に、テフロンやフッ素といった加工が施されていない、昔ながらの鉄製の食パン型は「洗わない」のが良いとされています。その理由は、使い込むほどに油が型に馴染み、パンが型からスムーズに取り出せるようになる、いわゆる「油膜」を育成するためです。しかしながら、ご家庭での使用においては、油分の酸化による気になる臭いや、衛生的な側面を考慮して、洗剤を使って丁寧に洗う方もいらっしゃいます。特に、長期間にわたって使用しない場合や、チーズや具材を多く使用したパンを焼いた際には、洗剤でしっかりと洗浄することが推奨されます。結局のところ、洗うか洗わないかは、食パン型の使用頻度、焼くパンの種類、そして個々の衛生観念に基づいて判断するのが賢明です。もし洗剤で洗った場合には、必ず再度空焼きを行い、油膜を新たに作り直すようにしましょう。













