ブルーチーズ、それは一度味わうと忘れられない個性的な風味を持つチーズの代名詞です。カビの青い模様が特徴的で、多くの食通たちを魅了し続けています。しかし、初めての方にはその見た目や香りに不安を感じることもあるかもしれません。実は、このカビこそがブルーチーズの風味と香りの秘密を究め、味わい深い存在にしています。この記事では、ブルーチーズの魅力に迫り、そのカビの秘密を解き明かし、安心して楽しむためのポイントを詳しくご紹介します。
ブルーチーズのカビが安全な理由と注意事項
カビが生えたパンやみかんを見つけると、すぐに処分するのが普通ですよね。食べてしまうと健康を害する恐れがあるからです。
それなのに、カビが表面に見えるブルーチーズはなぜ食べられるのでしょうか?
みかんの青カビとブルーチーズに使用される青カビは、どちらも「アオカビ属」ですが、実際には異なる種類です。
ブルーチーズに使われるのは、「ペニシリウム・ロックフォルティ」と呼ばれるカビです。
このロックフォルティは、無害とは言いませんが、特定の環境下で管理されたブルーチーズでは、人に害を及ぼすことはありません。
この記事では、ブルーチーズの青カビの種類やその安全性の理由について詳しく説明します。
さらに、ブルーチーズに別の青カビが付着した場合の対処法や、カビが他の食品に移った場合の安全性についても触れます。
ブルーチーズとカビにまつわる多くの疑問に答え、危険なカビとそうでないカビの見分け方についても解説します。
加えて、安心して美味しく食べるためのブルーチーズの保存方法もご紹介します。
この記事を通して、ブルーチーズに関する疑問を解消し、安全に楽しむ方法を学びましょう。
ぜひ最後までお読みください!

ブルーチーズの青カビを食べても安全な理由とは?
独特の風味と刺激的な味わい、そして豊かなコクが特徴のブルーチーズ。一度出会うとその虜になる人も多く、日本での人気もますます上昇しています。
しかし、初めてブルーチーズを試す方が最も気にするのが「青カビ」です。切り口に広がる青カビを見ると、本当に安全なのかと疑問に思うこともありますよね。
では、このブルーチーズに見られるカビは一体どのようなものなのでしょう?なぜ食用として問題がないのでしょうか?
ブルーチーズに用いられるのは2つの特定の青カビだけ
「ペニシリウム」というのが「青カビ」の正式名称です。
この名前はラテン語の「ペニシリ」から来ており、ブラシのような形状に由来しています。日本では色で分類されますが、実はすべてのペニシリウムが青いわけではありません。
青カビ(ペニシリウム)は総称であり、ペニシリウム属には約300種の仲間が存在します。自然界の空気や土壌中など、様々な場所で繁殖し、それぞれに異なる性質や毒性があります。
ブルーチーズに使われるペニシリウムは、数多くの種類の中から厳選された2種類のみです。
・ペニシリウム・ロックフォルティ(Penicillium.roqueforti)
・ペニシリウム・グラーカム(Penicillium.glaucum)
この2種類のカビが、すべてのブルーチーズ製造に用いられています。
ブルーチーズに用いられる青カビは決して害がないわけではない
青カビの中には、私たちの生活に役立つ特性を持つものも存在します。
例えば、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium.chrysogenum)の青カビは、抗生物質のペニシリンを作ることで有名です。青カビの名前が「ペニシリウム」であることから、気づいた方もいるでしょう。
しかしながら、青カビの中には、高い毒性を持つ物質を生成したり、人に感染する危険性がある種類も見られます。
ブルーチーズに使用されるP.ロックフォルティやP.グラーカムも、全く無害というわけではありません。これらは毒性はそれほど強くありませんが、人にとって有害となる物質を生み出す特性があります。
それでは、P.ロックフォルティを使用したブルーチーズが食べられる理由は何でしょうか?
ロックフォルティの毒をチーズが分解する仕組み
ブルーチーズに用いられる菌であるP.ロックフォルティやP.グラーカムが増殖すると、ロックフォルティンCやPRトキシンと呼ばれる有害な成分を生成することが知られています。しかし、適切な温度と湿度で管理された環境でチーズが熟成される過程では、これらの有害物質はほとんど分解されます。このため、ブルーチーズに含まれている青カビは安全に摂取できるとされています。ただし、これらの菌がチーズ以外で増殖した場合や、他の種類のカビがブルーチーズで発生した場合は、食べるのを避けるべきです。安全に食べられるのは、ブルーチーズ内部で育った青カビのP.ロックフォルティとP.グラーカムだけです。
ブルーチーズ特有の風味と香りは青カビによって生み出される
青カビの一種であるP.ロックフォルティは、チーズの中にいる時だけ安全であることが判明しました。しかし、なぜ危険な可能性があるこの青カビを、わざわざチーズに取り入れようとしたのでしょうか?
その理由は、偶然の出来事に起因しているようです。
洞窟に置き去りにされたパンとチーズが、生まれるきっかけに
チーズは人類の古代からの知恵の結晶であり、紀元前にまでさかのぼる5000年の歴史があります。
その中で、青カビを育成しているものがブルーチーズです。
ブルーチーズの起源は2000年以上前にまでさかのぼりますが、具体的な起点ははっきりしていません。最も広く受け入れられている説は、フランス南部のロックフォールの村で偶然発見されたケースです。
その村の洞窟に、置き去りにされていたパンとチーズが青カビに覆われていました。しかし、このチーズは腐敗しておらず、青カビを除いて食べると、その味は驚くほど素晴らしいものでした。
洞窟に自然に生息していた青カビがチーズ内で増殖し、洞窟の湿度と温度が完璧だったため、非常においしいブルーチーズが出来上がったのです。
ユニークな風味と香りを持った青カビのチーズは、その後、世界のさまざまな地域で生産されるようになりました。
ブルーチーズの風味を引き立てる青カビの秘密
なぜ青カビが広がったチーズは深い味わいを持つのでしょうか?
羊飼いがパンとともに忘れたチーズには、偶然にもP.ロックフォルティという天然の青カビが生息していました。
この青カビはチーズの中で活発に活動し、成分と相互作用することで多くの変化を引き起こします。
そのひとつが、たんぱく質の分解を通して旨味成分であるアミノ酸を生成することです。
さらに、青カビはリパーゼとして知られる脂肪分解酵素を分泌し、この酵素が脂肪を分解することで、チーズに特有の風味が生まれます。
リパーゼにより分解された脂肪は脂肪酸を生成し、そこから生じたメチルケトンがブルーチーズ特有の香りを醸し出します。
これらは青カビの働きの一端にすぎませんが、このような作用によって、ブルーチーズは他のチーズとは一味違う独特の風味と香りを持つようになります。
青カビがブルーチーズの健康効果に寄与する理由
青カビはブルーチーズにただ特異な味わいをもたらすだけではありません。
このチーズには、他の食品には見られない健康効果があることが判明しており、多方面からの研究が行われています。
例えば、ブルーチーズには「ラクトトリペプチド」という成分が多く含まれ、これが血管の柔軟性を高め、食べることで血管の若返りが期待されます。
さらに、このチーズに含まれる脂肪酸はコレステロールを下げる効果や、アンチエイジングそして認知症予防につながるとして注目されています。
このように、青カビがもたらすチーズの可能性について多くの関心が寄せられています。
ブルーチーズに見られるカビは食べても安全か、それとも避けるべきか?
「冷蔵庫の中に入れておいたはずのブルーチーズを取り出したら、予期せぬカビが発生していた!」という経験をお持ちの方、意外に多いのではないでしょうか?
もともと青カビを利用するブルーチーズですが、更にカビが増えてしまった場合、それを口にすることが安全なのか判断に迷いますよね。
この節では、カビが増えたブルーチーズを食べても問題ないのか、青カビが増殖した状態でも食べてよいのかなど、ブルーチーズのカビにまつわる様々な疑問についてお答えしていきます。
ブルーチーズにもカビが発生するのか?
ブルーチーズは初めから青カビがついているため、新たなカビが発生することがないと考えがちです。しかし、それは誤解です。
保存方法が悪かったり、冷蔵庫内で長期間放置すると、白カビや赤カビ、黒カビ、さらには青カビが付着することがあります。
こうしたカビはもともとあった青カビとは異なるものであり、カビの生えたブルーチーズはパンや果物が腐った状態と同様です。
後から発生したカビがあるブルーチーズは食べても大丈夫?
保存環境が適切でないブルーチーズには、通常とは異なる色や形のカビが発生することがあります。具体的には、白いふわふわとしたものや、赤、黄色、黒っぽいもの、そしてミカンによく見られる青いカビなどが挙げられます。
このように、元々のブルーチーズに特徴的なカビ以外のものが発生した場合、その摂取は控えるべきです。これらのカビが体内に入ると健康に悪影響を及ぼす可能性が高いため、食べないことを推奨します。
青カビと白カビが使用されている種類のチーズでは、白カビの増殖を見ても食べられるのではないかと思うかもしれませんが、安全性を考慮して避けた方が無難です。白カビ以外にも有害なカビが繁殖している可能性があるためです。
ブルーチーズに発生したカビを除去すれば食べることは可能?
お気に入りのブルーチーズが食べられなくなるのは本当に惜しいことですよね。カビが生えた部分だけを切り落として食べられるのでしょうか?
チーズの表面に出現するカビは、実は微細なカビの集合体です。目に見えるカビは、すでに大規模に増殖した結果であることが多いのです。このような状態になると、カビは内部まで細かい菌糸を伸ばしているため、表面を削っても完全に除去するのは難しいです。
もし、表面にカビが見えるのであれば、すでに内部深くまで浸透している可能性があります。表面を削り取っても安全に食べることはできません。
カビが発生したブルーチーズは加熱すれば食べられるのか?
ブルーチーズに少しでも新しいカビが生えている場合は、加熱することで安全に食べられるのでしょうか?
一般的に、カビや細菌は熱に弱いと考えられがちですが、すべての場合において安全とは限りません。特定の種類のカビは、カビ毒と呼ばれる危険性のある物質を生成します。
このカビ毒は、食中毒の原因となったり健康に悪影響を与える可能性があり、加熱しても分解されない特性があります。したがって、ブルーチーズに新たにカビが生えた場合は、食べないことが無難です。
カビの繁殖が進んだブルーチーズは食べても大丈夫?
ブルーチーズは熱を通さずに作られるナチュラルチーズであるため、青カビが生きたままの状態です。そのため冷蔵保存中に青カビが増殖する場合があります。
青カビが多くなっても、期限内であれば食べることに問題はありません。
この増殖が進んだブルーチーズは、カビの風味や刺激が強まり、より深いコクが楽しめるためそれを好む人もいます。
しかし、過剰に青カビが広がると味が変わることがあり、美味しく食べられなくなることもあるので注意が必要です。
ブルーチーズの保管方法と消費期限
選び抜かれたブルーチーズを無駄にせず、最後まで楽しみたいものです。適切な保存方法をマスターすれば、ブルーチーズの風味を最高のままで堪能できます。
食べかけのブルーチーズは密閉容器で冷蔵庫へ保管
チーズは通常、冷蔵保存が必要です。購入したチーズは、開封していない場合でもすぐに冷蔵庫に入れるよう心がけましょう。
■開封済みブルーチーズの密閉保管の必要性
冷蔵庫は空気が乾燥しているため、ブルーチーズをしっかりと密閉しないと表面が乾燥し、変色したり質感が変わることがあります。
さらに、冷蔵庫内のカビや雑菌が付着しないようにすること、そして、ブルーチーズの青カビが他の食品に移らないようにするためにも、開封後のブルーチーズは必ず密閉して保存する必要があります。
ブルーチーズの保存にはオーブンペーパーが最適
ブルーチーズを保存するとき、多くの人はラップで包んでから、チャック付きのポリ袋やタッパーに入れる方法を選んでいるかもしれません。
開封したブルーチーズは、オイルペーパーやオーブンペーパー、またはキッチンペーパーとアルミホイルを重ねたもので包むのが理想的です。ラップで包む際には、2~3日ごとに新しいものに交換することを心掛けましょう。
このようにブルーチーズを包んだ後、密閉容器や袋に入れ、冷蔵庫で保存してください。容器内に水滴がついたら、キッチンペーパーなどでこまめに拭くことも忘れずに。
保存方法はパルミジャーノレッジャーノと同じ要領で行うことができます。より詳しい情報は、関連の記事をご覧ください。
ブルーチーズの保存可能期間は約10日間
ブルーチーズの賞味期限は多くの場合、未開封の状態でおよそ2週間から10日程度であることが一般的です。ただし、これは種類やメーカーによって若干異なることがあります。
チーズは長持ちするというイメージがありますが、ブルーチーズは日持ちがしない「ナチュラルチーズ」に分類されるため、プロセスチーズと比べ賞味期限がかなり短いです。購入したら、できるだけ早く食べきるよう心掛けましょう。
購入時には、一度に多くを買うのではなく、食べきれる量を選ぶことも重要です。
結論
ブルーチーズとカビについて様々な視点から見てきました。
一般に、カビは体に有害ですが、ブルーチーズに使用される青カビがなぜ安全なのか疑問に思うところです。
ブルーチーズに使用されるカビ、特にP・ロックフォルティやP・グラーカムは、毒性が比較的少ない種類ではあるものの、全く無害というわけではありません。
しかし、チーズ内ではチーズの成分が毒素を分解するため、通常の状態では食べても心配はありません。
ただし、他の種類のカビがチーズに付着したり、青カビが他の食品で繁殖した場合は危険性が増します。
さらに、ブルーチーズもパンや柑橘類と同様、後からカビが生えることがあります。
後から生えたカビは非常に危険なので、該当部分を取り除いても食べない方が良いでしょう。加熱しても毒素は残るので、カビが生えたブルーチーズは避けましょう。
状況によっては青カビは危険ですが、ブルーチーズには特有の香りと風味をもたらし、重要な役割を果たしています。
ブルーチーズと青カビの関係を知ることで、その深みをより感じられたのではないでしょうか。
この記事を通じて、ブルーチーズをより堪能していただけることを願っています。