ブルーチーズの豊かな風味とクリーミーな食感は、多くのチーズ愛好者に愛されていますが、その独特の青カビは一見すると食用に不向きと思われることもあります。しかし、ブルーチーズの青カビは食べても全く問題ありません。むしろ、この青カビこそがブルーチーズを他のチーズと一線を画す要因であり、その独特の味わいを生み出しています。この記事では、その理由と青カビがどのようにチーズ製造に寄与しているのかを詳しく解説します。
ブルーチーズの青カビは食べられる
力強い風味と独特の刺激があり、豊かな味わいと深いコクを兼ね備えたブルーチーズ。初めてその味に触れて夢中になる人も多いようで、日本での人気も年々上昇中です。
しかし、ブルーチーズ初心者が気にするのが、「青カビ」の存在です。びっしりと断面に広がる青カビを目にすると、「本当に食べても安全なの?」と疑問に思うこともあるでしょう。
そもそも、ブルーチーズに見られるカビは一体どのような性質を持っているのでしょうか。そして、なぜ私たちはそれを食べることができるのでしょうか。
ブルーチーズの青カビについて
「青カビ」は正式には「ペニシリウム(Penicillium)」という名前で知られています。
この名称は、ラテン語でブラシを意味する「ペニシリ」に由来しており、その形態がまるでブラシのようであることから名付けられました。日本では色で分類されることが多いですが、ペニシリウム属のすべてが青色というわけではありません。
青カビとはペニシリウム属全体を指すもので、この属には約300種の異なるカビがあります。これらは空気中や土壌など、自然界の多様な場所で繁殖し、それぞれの種によって特性や毒性が異なります。
ペニシリウム属の多くの種の中で、ブルーチーズの製造に用いられるのはわずか2種類です。
・ペニシリウム・ロックフォルティ(Penicillium roqueforti)
・ペニシリウム・グラーカム(Penicillium glaucum)
これらの2種類のカビを利用することで、ブルーチーズが作られています。
ブルーチーズのリスク
青カビには、人の生活に役立つ特性を持つものがあります。
たとえば、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium.chrysogenum)は、抗生物質ペニシリンを生産することで有名です。この青カビの名を聞いて何かピンときたかもしれません。
一方で、青カビの中には毒性の強い物質を生成する種や、人に感染する危険性を持つものも存在します。
ブルーチーズに使われるP.ロックフォルティ(P.グラーカムも同様)も全く無害ではありません。この青カビは、低い毒性ながら人に有害な物質をつくる可能性があります。
それでは、なぜP.ロックフォルティを使用したブルーチーズを安全に食べられるのでしょうか?
青カビの一種であるロックフォルティの毒をチーズが分解する
ブルーチーズで使われる菌種であるP.ロックフォルティやP.グラーカムは、ロックフォルティンCやPRトキシンという物質を生成することが知られています。これらの物質は、人間の健康に有害です。
しかし、チーズが適切に管理された温度と湿度の環境で熟成されると、これらの有害な成分はほとんどが分解されます。
これが、「ブルーチーズの青カビは食べても問題ない」とされる理由です。
ただし、これらの菌がチーズ以外の食べ物で増殖した場合は摂取しない方がよいです。また、それ以外の種類のカビがブルーチーズで成長している場合も危険です。
ブルーチーズではP.ロックフォルティやP.グラーカムだけが安全に摂取できる青カビです。

青カビがブルーチーズの美味しさを引き立てる理由
青カビが豊富に成長したチーズがどうしておいしいのでしょうか?
羊飼いがパンとチーズを忘れてしまった洞窟には、P.ロックフォルティという種類の天然青カビが存在していました。
P.ロックフォルティはチーズの中で成長する過程で、チーズの成分と融合し様々な働きをします。
その働きの一つが、たんぱく質を分解してアミノ酸という旨味成分を作り出すことです。
さらに、青カビはリパーゼと呼ばれる脂肪分解酵素を分泌し、この酵素が脂肪を分解して独特の風味をチーズに与えます。
分解された脂肪から脂肪酸が生じ、これから生成されたメチルケトンがブルーチーズ特有の香りを作ります。
これは青カビの働きのほんの一例ですが、このようなプロセスがブルーチーズに他のチーズとは異なるユニークな風味と香り、深みのある味わいをもたらしているのです。
ブルーチーズに含まれる青カビの健康効果
ブルーチーズの青カビは、その特有の風味以上の影響を及ぼします。このチーズは、他の食品にはない健康への恩恵があることが注目されており、近年、多くの研究が進行中です。
例えば、ブルーチーズには血管を柔軟に保つ効果があるラクトトリペプチドが豊富に含まれ、血管を若々しく保つ役割を果たします。
さらに、ブルーチーズの脂肪酸は、コレステロールを低下させたり、アンチエイジング効果を促進したり、さらには認知症予防に関与する可能性も示唆されています。
青カビが引き起こすチーズへの潜在的な影響には、大きな関心が寄せられています。

ブルーチーズに生えたカビは食べられる?
「冷蔵庫に置いておいたブルーチーズを食べるつもりが、いつの間にか別のカビが生えていたことに気づいた!」という経験をお持ちの方は、案外多いのではないでしょうか?
ブルーチーズには元々青カビが使われているため、さらに他のカビが発生した時に食べて良いのか悩んでしまいますよね。
このセクションでは、ブルーチーズにカビが発生した場合に食べても安全か?青カビが増えたブルーチーズは大丈夫?など、ブルーチーズに関する様々なカビの疑問について詳しく解説します。
ブルーチーズにさらにカビが発生することもある?
ブルーチーズには元来存在する青カビのおかげで、もうこれ以上カビの発生がないように感じるかもしれません。しかし、それは誤解です。
不適切な環境や冷蔵保存が長く続くと、ブルーチーズに異なる種類の白カビや赤カビ、黒カビ、そして新たな青カビが発生することがあります。
こうした新たに発生したカビは、ブルーチーズ本来の青カビとは異なるものであり、パンや果物がカビてしまうのと同じ状態になります。
後から出たカビが付いたブルーチーズは食べても大丈夫?
ブルーチーズが劣化すると、様々な種類のカビが生えることがあります。これには白いふわふわしたカビや、赤や黄色、黒っぽいもの、さらには青カビなどが含まれます。
こうした場合、元々のブルーチーズに付いていたカビとは異なる色や形のカビが増えてしまった場合には、残念ながらそのチーズを食べるのは避けたほうが良いでしょう。このようなカビを摂取すると、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
青カビと白カビが共存しているチーズの場合でも、白カビが生えているからといって安心せず、安全のために食べないことをお勧めします。そこには、他の有害なカビも発生している可能性があるためです。
ブルーチーズに新たに生えたカビを取り除けば食べられるのか?
ブルーチーズが食べられなくなるのは本当に残念です。カビの部分だけを取り除いて食べることができるのでしょうか?
チーズに後から発生したカビは、実際には微細なカビが集まったものです。カビが見える状態になるということは、それだけカビが広がっている証拠です。この状態では、カビは細い菌糸を内部にまで伸ばしているため、表面を削り取っても完全に取り除くことは不可能です。
見える部分にカビがあるということは、その影響がさらに奥深くまで及んでいる可能性があります。表面のカビを取り除くだけでは、安全に食べることは難しいです。
カビの生えたブルーチーズを加熱すると食べられるのか?
ブルーチーズに少しカビが生えてしまった場合、加熱することで安全に食べられるのか気になるところです。
多くの細菌は熱で死滅するため、加熱で安全になると考えがちですが、実際は違います。カビにはカビ毒と呼ばれる危険な物質を産生するものがあり、それが問題なのです。
カビ毒は食中毒の原因になったり、健康に影響を与える恐れがあります。そして、加熱してもカビ毒は分解されません。ブルーチーズに後から生えたカビがある場合は、摂取しないことをお勧めします。
カビが増殖したブルーチーズは食べても大丈夫?
ブルーチーズは生乳から作られるため、内部に存在する青カビがそのまま生き続けます。このため、冷蔵庫で保管中に青カビが増えてしまうことがあるのです。
もし青カビの成長が進んでも、賞味期限内であれば食べることに問題はありません。
熟成が進むことで、青カビの風味や刺激が強調され、味わいが増すので、それを好む人もいるようです。
しかし、青カビが過剰に増えると、味が変わり、楽しむことが難しくなる場合があるので注意が必要です。