びわ:旬の味覚を味わう、初夏の恵み
初夏の訪れを告げる、甘くみずみずしい宝石「びわ」。鮮やかなオレンジ色の果肉は、見た目にも美しく、一口食べれば上品な甘さと爽やかな香りが口いっぱいに広がります。古くから親しまれてきたびわは、そのまま食べるのはもちろん、ジャムやコンポートなど様々な楽しみ方ができるのも魅力。この記事では、旬を迎えたびわの美味しさの秘密や、選び方、保存方法、そしてとっておきのレシピまで、その魅力を余すところなくご紹介します。初夏の味覚を心ゆくまで堪能しましょう。

ビワ

ビワ(枇杷、学名:Rhaphiolepis bibas)は、バラ科に属する常緑樹であり、甘美な果実を実らせることで知られています。その起源は中国南西部とされ、日本へは古い時代に伝来したと考えられています。ビワの葉は深緑色で光沢があり、大きく肉厚な楕円形をしており、裏面には繊細な毛が生えています。初夏には、緑豊かな葉の陰に、一口サイズの愛らしい卵形の果実がたわわに実り、熟すと鮮やかな黄橙色に変わります。日本においては、九州地方を中心に野生化したものが確認されており、生態系への影響を考慮し、農林水産省と環境省によって重点管理外来種に指定されています。分類学上、ビワは長らくEriobotrya属に分類されていましたが、2020年初頭にシャリンバイ属(Rhaphiolepis)への統合が提案されました。しかし、この見解に対しては異論も存在します。この統合は、ゲノムやnrDNAの解析結果に基づくものですが、異なる分子系統解析の結果からは、両属を統合すべきではないという主張も出ています。

名称

ビワという和名は、その果実の形が楽器の琵琶に似ていることに由来すると言われています。中国語では「枇杷」(pípá、広東語: pei4 paa4)と書き表され、別名として「蘆橘」(lú jú、広東語: lou4 gwat1)とも呼ばれます。英語名の「loquat」は、この「蘆橘」の発音に影響を受けて生まれたとされています。

分類

ビワの学名としては、1821年に発表されたEriobotrya japonicaが長年用いられてきました。しかし、2020年、中国科学院植物研究所と米国スミソニアン国立自然史博物館の研究者チームが、ゲノムおよびnrDNAの分析を通じて、ビワ属(Eriobotrya)がシャリンバイ属(Rhaphiolepis)に含まれる単系統群であるという結論に至りました。形態的および地理的な要素も考慮した結果、両属を統合することが適切であると判断されました。命名規約に従い、より早く発表されたシャリンバイ属(1820年)が優先され、ビワ属に分類されていた全ての種がシャリンバイ属に移されることになりました。この再分類は、研究チームの劉彬彬氏とジョン・ウェン氏によって行われました。ビワに関しては、Rhaphiolepis japonicaという学名が、1841年にドイツ人植物学者のフランツ・ジーボルトとヨセフ・ゲルハルト・ツッカリニによって既に別の種に対して使用されていたため、使用することができませんでした。そのため、ビワの英語名であるloquatにちなんだ種小名を用いて、Rhaphiolepis loquata B.B.Liu & J.Wenという新しい学名が与えられました。しかし、この学名には解決すべき点がありました。劉氏らは論文内で、ビワのbasisonym(基となる種小名)として1790年のCrataegus bibasも挙げていましたが、この種小名bibasは既存の種と重複していなかったため、本来はこの学名を使用すべきでした。この問題は、劉氏らの論文発表から3ヶ月後、同じく中国科学院植物研究所に所属する李星冉氏と金秀華氏によって、Rhaphiolepis bibasという組み替え名が発表されたことで解決されました。一方で、近年では異なる分子系統解析の結果から、ビワ属とシャリンバイ属を統合すべきではないとする意見も提起されています。

分布・生育地

ビワは中国南西部(四川省および湖北省)を原産地とし、日本へは古代に伝来したと考えられています。日本国内では、主に太平洋側の関東・東海地方の沿岸部、石川県以西の日本海側、四国、九州北部などに自生しています。また、世界各地の温暖な地域、例えばインドや地中海沿岸などにも分布を広げ、ビワを用いた様々な民間療法が生まれました。中国系移民によってハワイへ、そして日本からカリフォルニア州やブラジルへと伝播しました。現在では、ポルトガル、スペイン、イタリア南部、トルコ南部、イスラエル北部、ギリシャなど、様々な国で栽培されています。日本では江戸時代にビワの栽培が普及し、寺の僧侶が檀家の人々に中国から伝わったビワの葉療法を施したことから、寺院にビワの木が多く見られるようになったと言われています。千葉県以南の地域では、庭木としても親しまれています。特に、年間を通して温暖な長崎県、鹿児島県、香川県など、比較的温暖な地域で盛んに栽培されており、高い収穫量を誇っています。

植物学的特徴

ビワは、高さ5~10mに成長する常緑高木です。年間に3回、春・夏・秋に枝葉を伸ばすのが特徴で、若い枝は薄茶色の細かい毛で覆われています。
葉は互い違いに生え、葉柄は短いです。葉の形は、長さ15~20cmほどの広倒披針形、長楕円形、または狭倒卵形で、先端は尖り、基部は次第に細くなり葉柄につながります。葉は厚くて硬く、表面は凸凹していて、葉脈に沿って波打っています。葉の縁には波状の鋸歯があります。葉の表面は最初は毛がありますが、成長するにつれてなくなり、光沢が出てきます。葉の裏面は、薄茶色の綿毛で覆われたままです。
花芽は主に春に伸びた枝の先端につき、これは純正花芽です。花期は晩秋から冬(11月~2月)で、甘い香りのする白い5弁の花を密集して咲かせます。花の直径は約1cmで、クリームがかった白い花弁は、茶色の短い軟毛が密生した萼に包まれており、開花時には花弁を外側に開きます。子房にも毛が密に生えています。ビワは長い花期に多くの花蜜を蓄え、甘い香りを放って昆虫や小鳥を誘い、受粉を助けてもらいます。
自家受粉も可能で、果実は最初は緑色ですが、初夏(5月~6月)になると黄橙色に熟します。果実は子房が肥大したもので、直径3~4cm、長さ6cm前後の球形、卵形、または広楕円形になり、全体が薄い産毛で覆われています。果実1個の重さは50g前後で、果皮は薄く、果肉は厚いです。果実の中には大きな赤褐色の種子が数個あり、食用となる甘い果肉部分は全体の約3割程度です。ビワには多くの品種があり、大粒のものから果汁が多いものまで、好みの食感を選べるのが魅力です。
ビワは、房総半島、四国、九州などの温暖な地域で多く栽培されていますが、ある程度の耐寒性も持ち合わせており、寒冷地でも冬の最低気温が-10℃程度であれば生育し、実をつけることが可能です。

栽培

ビワは日陰にも比較的強く、温暖な気候の場所での生育に適しています。土壌は水はけの良い砂壌土が理想的で、根は深く張る性質があります。果実を収穫する目的で栽培されることが多いですが、庭木としても利用され、葉が濃く茂るため目隠しにしたり、工夫次第でエキゾチックな雰囲気の庭を演出することもできます。種から育てた場合、実がなるまでには7~8年かかります。自家結実性があるので、異なる品種を一緒に植える必要はありません。増やし方は、種まき、接ぎ木が一般的ですが、挿し木も可能です。植え付けの適期は3月下旬、6月~7月上旬、9月中旬~10月中旬で、新しく植えることは可能ですが、大きく成長した株を移植するのは難しいとされています。剪定は3月下旬~4月、および9月に行うのが適しています。露地栽培で良質な果実を収穫するためには、10月に摘房・摘蕾を行い、開花は11月~2月の間に行われます。摘果と袋かけは3月下旬~4月上旬に同時に行います。果実が大きくなると、モモチョッキリ(ゾウムシの一種)による食害を受けることがあります。
ビワは花の数が多く受粉率も高いため、花芽が出たら摘蕾や摘房を行わないと、実がたくさんなりすぎて果実が小さくなってしまいます。食用として大きな果実を育てるためには、さらに摘果が必要不可欠です。
ビワは寒さに弱いため、主な産地は温暖な地域に限られており、九州、四国、淡路島、和歌山、房総半島などで栽培が盛んです。また、開花時期が冬であるため寒波の影響を受けやすく、生産量が年によって大きく変動しやすい傾向があります。

利用

ビワは果実、種子、葉、木材と様々な用途に利用されます。果実は甘く、生で食べたり、缶詰に加工されたりします。茶色い種子は、生薬の杏仁の代用品として利用されることがあります。果樹として広く知られていますが、葉も薬用として古くから珍重されており、ビワ茶として飲んだり、入浴剤として利用されます。ただし、種子や葉には毒性の高いシアン化合物が含まれているため、利用には注意が必要です。

食用

ビワの果実の旬は5月~6月で、果皮にハリがあり、全体に産毛とブルーム(白い粉)が残っているものが新鮮です。果肉は橙黄色で果汁が多く、糖度は12~13度程度で、さっぱりとした甘さがあります。ビワの果肉には、体内でビタミンAに変換されるカロテノイド色素であるβ-カロテンや、骨粗しょう症のリスクを軽減する効果が期待できるβ-クリプトキサンチン、体内の余分な塩分を排出するカリウムなどの豊富な栄養素が含まれています。また、ポリフェノールの一種であるクロロゲン酸も含まれています。中心にある種子が大きいため、廃棄率は30%以上と高めです。生で食べる場合の可食率は65~70%で、リンゴや梨とほぼ同じくらいです。「食べられる部分が少ない」という消費者の声に応え、「種なしビワ」も開発されています。その他、ビワは菓子、アイスクリーム、ワインなどにも加工されます。

生のままで味わう基本と皮について
ビワを味わう最もシンプルな方法は、水洗いしてから皮をむいてそのままいただくことです。ビワの皮はとても薄いので、ナイフなどを使わなくても手で簡単にむけます。どこからむいても構いませんが、お尻の部分からむくと綺麗にむきやすいでしょう。ただし、ビワの中には比較的大きな種があるので、かぶりつく際には注意が必要です。また、ビワは皮ごと食べることも可能です。皮には、血糖値の上昇を穏やかにしたり、老化の原因となる活性酸素の働きを抑える抗酸化作用があるといわれるクロロゲン酸が含まれています。そのため、抵抗がなければ皮ごと食べるのも良いでしょう。農薬の使用を心配される方もいるかもしれませんが、ビワ栽培においては果実に直接農薬がかかるような方法は一般的ではないため、安心していただけます。もし気になる場合は、流水で丁寧に洗えば問題ありません。
冷やしたり、冷凍したりして楽しむ
ビワは、冷蔵庫で冷やして食べるだけでなく、冷凍庫で凍らせて食べるのもおすすめです。冷やして食べる際は、2~3時間程度冷蔵庫に入れるとより美味しくなります。冷凍保存する場合は、皮をむかずに、一つずつキッチンペーパーで包み、ジップ付きの保存袋に入れてください。食べるときは、袋から取り出して自然解凍します。完全に溶ける前に食べれば、シャリシャリとしたシャーベットのような食感を楽しむことができます。ただし、ビワは解凍後に変色しやすい性質があるため、お客様に出す際には冷凍ビワは避けた方が無難でしょう。

加工品と色々なレシピ

ビワは、生のまま食べるだけでなく、ジャムやゼリー、シロップ煮などに加工しても美味しくいただけます。果実酒として楽しむこともでき、ビワと氷砂糖だけでも作れますが、ビワは酸味が少ないため、皮ごと輪切りにしたレモンを加えて漬け込むと、風味のバランスが良くなります。また、果肉を使わず種子のみを使ったビワ種酒は、杏仁豆腐を思わせる独特の芳香があり、好んで飲まれています。その他、ビワを使った手軽なレシピとしては、ビワジャム、ビワヨーグルト、ビワゼリーなどがあり、様々な形でビワの風味を堪能できます。

常温での保存方法

ビワは非常にデリケートな果物なので、常温で保存した場合はできるだけ早く、購入から1~2日程度で食べきるのがおすすめです。お店で購入したら、なるべく早めに食べるようにしましょう。もし常温で保存する場合は、直射日光を避け、風通しの良い涼しい場所を選びましょう。繰り返しになりますが、日持ちしないため、2~3日を目安に食べきるようにしてください。

冷蔵庫での保存

びわは、冷やしすぎると品質が損なわれることがあります。そのため、長期保存を目的とした冷蔵庫での保管はおすすめできません。冷蔵する場合は、召し上がる直前の2~3時間程度にとどめ、風味を損なわずに冷やすのが良いでしょう。

冷凍庫での保存

びわを冷凍保存することで、約1ヶ月間の保存が可能です。冷凍保存する際は、びわを丁寧に水洗いし、水気をしっかりと拭き取ります。その後、一つずつキッチンペーパーで包み、ジップ付きの保存袋などに入れて冷凍庫へ。この方法で、びわの美味しさを長く楽しむことができます。

漢方と民間療法

びわの葉は「枇杷葉(びわよう)」、種子は「枇杷核(びわかく)」という生薬として知られています。「大薬王樹」とも呼ばれ、古くから咳止めなどの民間薬や健康茶として利用されてきました。ただし、これから記述する利用方法や治療法は、過去の歴史的なものであり、現代において科学的に効果が証明されているものではない点にご留意ください。
びわの葉には、タンニンによる収れん作用や、サポニンによる鎮咳作用があるアミグダリンなどが含まれています。乾燥させた葉はびわ茶として飲用されるほか、患部に直接貼るなど、生薬として用いられてきました。また、びわの葉の上にもぐさを置いて温める温圧療法は、アミグダリンの鎮痛作用により、神経痛に効果があると言い伝えられています。枇杷葉は、9月上旬頃に採取し、葉裏の毛をブラシで丁寧に除去した後、天日干しにします。乾燥させた枇杷葉5~20グラムを、600ミリリットルの水で煮出し、その煮汁を1日に3回に分けてお茶のように飲むと、咳や痰、胃炎、嘔吐、暑気あたりに効果があるとされてきました。また、あせもや湿疹には、冷ました煎じ汁で患部を洗ったり、入浴剤として利用されていました。江戸時代には、夏の暑気あたりを防ぐための枇杷葉湯が人気を博し、葉に含まれるアミグダリンが分解されて生じる安息香酸によって、清涼飲料水のような効果が得られていたと言われています。
びわの果実は、下痢や熱病、喉の渇きなどに効果を発揮すると言われています。また、びわ酒は食欲増進や疲労回復に効果があると言い伝えられています。
びわの種子を砕いたものを、400ccの水で煎じて服用すると、咳や吐血、鼻血に効果があると言われてきました。しかし、アミグダリンは消化器官で分解されると、猛毒のシアン化水素を生成します。そのため、種子などアミグダリンを多く含む部位を経口摂取する際は、誤った方法で使用すると健康を害し、最悪の場合には命を落とす危険性があります。自己判断での摂取は絶対に避けるべきです。

医学的知見

びわの種子に含まれるアミグダリン(青酸配糖体)は、サプリメントなどに配合され、「がんに効く」などと宣伝されることがありますが、信頼性の高い研究において、人に対するがんの治療、改善、延命効果は確認されていません。むしろ、シアン化水素中毒を引き起こす危険性が指摘されています。かつては、アミグダリンをビタミンB17の一種とする説がありましたが、生体における必須栄養素ではなく、欠乏することも無いため、現在では否定されています。アメリカ食品医薬品局(FDA)は、アミグダリンをがん治療に効果を示さない、非常に毒性の高い製品とみなし、本来の医療を拒否したり、治療開始が遅れることで命が失われる可能性があると警告し、アメリカ国内での販売を禁止しています。
古くから、びわの葉や種子は民間薬として利用されてきましたが、これはアミグダリンの薬効成分をごく少量使用し、その毒性を巧みに利用したものです。薬効を期待して利用する場合は、必ず医師や薬剤師などの医療従事者に相談し、自己判断での摂取は控えるようにしましょう。
日本においては、びわの種子、樹皮、葉は「非医薬品」(専ら医薬品として使用される成分本質)に該当し、医薬品的な効果効能を表示することはできません。ただし、『明らか食品(医薬品に該当しないことが明らかに認識される食品)』であれば、薬機法に抵触しません。しかし、「癌が治る」「血糖値が下がる」「血液を浄化する」といった、誇大な医薬品的効果効能を表示した場合(店頭や説明会での口頭説明も含む)は、薬機法や景品表示法の規制対象となります。
びわを成分とした医薬品は存在しませんが、びわ葉のエキスを機能性関与成分としたびわの葉入り茶が、機能性表示食品として届けられています。機能性表示食品とは、国が個別の審査を行うのではなく、事業者が自らの責任において、科学的根拠に基づき機能性を表示する食品です。

まとめ

ビワは、中国の南西部が原産とされるバラ科の常緑高木で、初夏の訪れとともに甘美な果実を実らせます。遥か昔に日本へ伝来し、温暖な気候に恵まれた長崎県、鹿児島県、香川県などで盛んに栽培されています。学術的な名称はRhaphiolepis bibasですが、近年の遺伝子研究の結果、シャリンバイ属に統合される可能性が示唆されています。植物としての特徴は、肉厚で光沢を帯びた葉、晩秋から冬にかけて咲き誇る芳香を放つ白い花、そして5月から6月にかけて成熟する鮮やかな黄橙色の果実などが挙げられ、その品種は多岐にわたります。栽培においては、日当たりの良い砂壌土が理想的であり、高品質な果実を収穫するためには、丁寧な摘蕾や摘果が欠かせません。
ビワの果実は、そのまま食するだけでなく、ジャムやゼリーといった加工品にも姿を変え、β-カロテン、βクリプトキサンチン、カリウム、クロロゲン酸など、私たちの健康をサポートする様々な栄養素を豊富に含んでいます。生で味わう際には、手で簡単に皮を剥くことができ、皮ごと食することでクロロゲン酸を余すことなく摂取できます。冷蔵庫で冷やしていただくのはもちろん、冷凍保存してシャーベットのように楽しむこともできますが、解凍後の変色には注意が必要です。保存方法としては、常温での長期保存は避け、冷蔵庫での保存も低温障害のリスクがあるため推奨されません。冷凍庫であれば、約1ヶ月程度の保存が可能です。

ビワの果実が最も美味しく味わえる旬の時期はいつでしょうか?

ビワの果実が最も美味しく味わえる旬の時期は、一般的に初夏にあたる5月から6月頃です。この時期に収穫されるビワは、果皮に張りがあり、全体に産毛とブルーム(果粉)が残っているものが新鮮である証拠とされ、果汁が豊富で、甘みが際立っている傾向があります。

ビワの種は食べても大丈夫ですか? 食べると危険なのでしょうか?

ビワの種は、決して食べてはいけません。ビワの種には、青酸配糖体の一種であるアミグダリンが非常に高濃度で含まれており、これが体内で分解されると、猛毒として知られるシアン化水素(青酸)を発生させます。ごく少量であっても、嘔吐、下痢、頭痛などの中枢神経症状を引き起こす可能性があり、多量に摂取すると、意識障害、昏睡状態に陥り、最悪の場合は死に至る危険性があります。厚生労働省も、ビワの種子の摂取について、注意喚起を行っています。

ビワの葉は、どのような用途に活用できますか?

ビワの葉は、古くから民間療法や漢方薬として利用されてきました。乾燥させてビワ茶として飲用したり、生の葉を患部に直接貼る湿布として用いられたりします。また、ビワの葉の上にお灸を置いて温熱刺激を与える温圧療法も行われてきました。これらの利用法は、主に収斂作用や鎮咳作用を期待したものでしたが、科学的にその効果が証明されているわけではないことに注意が必要です。利用する際は、必ず医師や薬剤師などの医療従事者に相談するようにしましょう。

「ビワを庭に植えてはいけない」という話は本当?

地域によっては「ビワを庭に植えると良くない」という言い伝えがありますが、実際には迷信に過ぎません。根が家を壊す、日陰で家が暗くなる、病人が集まるなどと言われますが、科学的な根拠はありません。適切に管理すれば、庭木や目隠しとして楽しむことができます。

ビワのアミグダリンは本当に癌に効果があるの?

ビワの種に含まれるアミグダリン(別名ビタミンB17)に癌への効果があるという話を聞くことがありますが、科学的には全くの誤りです。信頼できる研究によって、アミグダリンは癌の治療、改善、延命に効果がないばかりか、シアン化水素中毒を引き起こす危険性があることが示されています。アメリカ食品医薬品局(FDA)も、アミグダリンを含む製品の販売を禁止し、その危険性と効果の無さを警告しています。

ビワの美味しい食べ方、皮ごと食べるメリットって何?

ビワは水洗いした後、手で皮をむいてそのまま食べるのが一般的です。お尻の方からむくと、きれいに皮を剥けます。また、皮ごと食べることも可能です。皮には、血糖値の上昇を抑えたり、老化を防ぐ効果が期待できるクロロゲン酸という抗酸化物質が含まれているため、栄養面でおすすめです。ビワの果実に農薬が使われることは少ないですが、気になる場合は丁寧に水洗いしてから食べましょう。

ビワを冷蔵庫に入れるのはNG?

ビワは冷えに弱い果物なので、冷蔵庫での長期間の保存はおすすめできません。風味を損なわずに味わうには、召し上がる直前の2~3時間ほど冷蔵庫で軽く冷やすのがベストです。どうしても長期保存したい場合は、水洗いして丁寧に水気を拭き取った後、キッチンペーパーで包み、ジップ付きの保存袋に入れて冷凍保存することで、およそ1ヶ月程度は品質を維持できます。
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