「紅秀峰」は、佐藤錦と天香錦を交配して誕生した比較的新しいさくらんぼの品種です。1991年に品種登録され、まさに平成時代の新星と言える存在です。この品種は、佐藤錦の優れた食感を受け継ぎながらも、その上を行く大粒で甘みが強い特性を持っています。酸味が少なく、食感はしっかりとしています。また、晩生種であるため、収穫は6月下旬から始まり、長く楽しめるのが特徴です。現在では、その希少性と美味しさから人気が急上昇しています。

「紅秀峰」の最大の魅力は、その粒の大きさです。一般的なさくらんぼが6～8グラム程度であるのに対し、「紅秀峰」は8～9グラムに達することができます。特に2Lサイズ以上になることも珍しくなく、一粒でしっかりとした満足感があります。また、甘みが非常に強く、酸味が少ないのも特徴です。平均的なさくらんぼの糖度が16～18度であるのに対し、「紅秀峰」は20度前後にも達します。さらに、果実が固く、日持ちしやすいことも大きな利点です。高温にも耐性があり、樹上で完熟させるのにも適しています。そのため、品質の良いさくらんぼを提供するためには、手間を惜しまない栽培が求められます。

「紅秀峰」は霜に弱く、特に4月初旬の遅霜の影響を受けやすいため、朝晩の気温差には注意が必要です。また、着果しやすい品種であるため、摘果作業が重要です。摘果を怠ると、実が密集し、小さく甘みが薄くなる恐れがあります。適切な摘果と葉の除去が、美味しい「紅秀峰」を作るためには欠かせません。手間はかかりますが、その努力が高品質な果実を生む鍵となります。

「紅秀峰」の生産量は、佐藤錦の約10分の1と少なく、一般的な果物店で見かけることは稀です。さらに、旬が短いため、出荷時期は6月末から7月初旬と限られています。これにより、購入のタイミングを逃すと、その年の「紅秀峰」を手に入れるのが難しくなることもあります。

山梨県は桃やぶどうの名産地として知られ、さくらんぼの栽培にも適した地域です。「紅秀峰」もここで栽培されています。山梨県はさくらんぼ栽培の南限に位置し、温暖な気候と果物栽培に適した土壌が整っています。そのため、さくらんぼの出荷時期が他地域よりも早く、品質が高いことでプロの間でも評価されています。山梨の寒暖差を利用した栽培が、糖度の高いさくらんぼを生み出す要因となっています。

紅秀峰は酸味が少なく、甘みが強いという特性を持っています。糖度が高いため、甘さを求める人にとっては理想的な選択肢と言えるでしょう。紅秀峰は、その大きさ、甘さ、そして高品質な味わいから、さくらんぼ愛好家にとって魅力的な選択肢として注目されており、その一口を味わうと、その魅力に魅了されることでしょう。