ベーキングパウダーの添加物:知っておきたい成分と歴史

ベーキングパウダーは、焼き菓子作りには欠かせない存在ですが、その成分や歴史について詳しく知っている方は少ないかもしれません。この記事では、ベーキングパウダーの主要な成分、意外と知られていない添加物の役割、そしてその誕生から現代に至るまでの歴史を紐解きます。より安全で美味しいお菓子作りのために、ベーキングパウダーの知識を深めていきましょう。

ベーキングパウダーとは?その歴史と役割について

ベーキングパウダーは、焼き菓子をふっくらと仕上げるための膨張剤です。かつて、パン作りにはイースト菌が不可欠でしたが、扱いが難しいという側面がありました。そこで、ヨーロッパのパン職人たちは、より手軽な方法を模索し、ベーキングソーダ(重炭酸ナトリウム)と酒石酸水素カリウム(クレームタータ)を混ぜ合わせることで、二酸化炭素が発生し、生地が膨らむことを発見しました。これがベーキングパウダーの始まりです。しかし、当時はクレームタータの安定的な製造が難しく、代わりに重過リン酸石灰が使用され、アルカリ性を中和するためにアルミニウムが加えられました。この画期的なベーキングパウダーは、昭和初期に日本へ伝わり、クッキーやホットケーキ、蒸しパンなど、様々な焼き菓子に利用されるようになりました。

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ベーキングパウダーの成分構成と種類

ベーキングパウダーは、主に以下の3つの要素で構成されています。

  • ガス発生剤:重炭酸ナトリウム(重曹)
  • 酸性剤:硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、グルコノデルタラクトン、ピロリン酸ナトリウム、リン酸一カルシウム、酒石酸水素カリウムなど
  • 遮断剤:コーンスターチ

これらのうち、重炭酸ナトリウムと硫酸アルミニウムカリウムは、食品添加物として分類されます。また、ベーキングパウダーには、アルミニウムを含むものと、アルミニウムを含まないもの(アルミフリー)の2種類があります。

重曹(炭酸水素ナトリウム)の役割と安全性

重炭酸ナトリウムは、ベーキングパウダーにおいて、ガスを発生させるという重要な役割を担っています。加熱されると炭酸ガスを放出し、生地を膨らませる効果を発揮します。また、ふくらし粉としての機能だけでなく、アク抜きや食材を柔らかくする効果も持ち合わせています。例えば、重曹は肉のタンパク質を分解して柔らかくしたり、山菜のアク抜きに使用されたりします。炭酸水素ナトリウムは自然界にも存在する物質であり、水で洗い流しても環境への影響は少ないとされています。人体への悪影響も特に報告されていません。

硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)の役割と注意点

硫酸アルミニウムカリウムは、ベーキングパウダーに含まれる酸性剤の一種で、ガスの発生を持続させる働きがあります。重曹(炭酸水素ナトリウム)だけを使用した場合に生じる独特の苦味や、生地が黄色っぽくなる現象を、酸性の硫酸アルミニウムカリウムを加えることで緩和する役割も担っています。しかし、アルミニウムの過剰な摂取は、健康に悪影響を及ぼす可能性が指摘されており、特に小さなお子様は摂取量に注意が必要です。アルミニウムは自然界にも広く存在し、水や空気、植物などにも含まれていますが、お菓子やパンなどに含まれる微量のアルミニウムであっても、日常的に摂取する場合は注意が必要です。2006年には、FAO/WHO合同専門家会議(JECF)において、アルミニウムが従来の摂取量よりも少ない場合でも、生殖機能や発達神経系に影響を与える可能性があると発表され、許容摂取量が引き下げられました。

アルミフリーベーキングパウダーとは?選び方のポイント

アルミフリーベーキングパウダーとは、ミョウバンとして知られる硫酸アルミニウムカリウムを使用していない製品のことです。アルミニウムの摂取をできるだけ避けたいと考える場合は、アルミフリーのベーキングパウダーを選択することが大切です。製品を選ぶ際には、パッケージに「アルミフリー」と明記されているかを確認しましょう。もし表示がない場合は、原材料表示を詳しく確認し、アルミニウムに関する成分の記載がないかを確認してください。アルミニウムを含む製品には、以下のような成分名が記載されていることがあります。

  • ミョウバン(明礬)
  • 硫酸アルミニウムカリウム
  • 硫酸アルミニウムアンモニウム

ベーキングパウダーを食品に使用する目的

ベーキングパウダーは、お菓子作りやパン作りにおいて、様々な重要な役割を果たします。

  • 生地をふっくらと膨らませ、軽い食感にする:加熱によって炭酸ガスが発生し、生地全体が均一に膨らみます。
  • 生地を長時間発酵させる手間を省く:生地が水分と反応してすぐに膨張するため、短時間で焼き上げることができます。
  • 油っぽさを軽減する:生地が軽くなり、油分を吸収しにくくなるため、べたつきを抑えます。
  • 焼き縮みを防ぐ:均一な気泡を生成し、焼き上がった食品の美しい形状を維持します。
  • 焼き色を美しくする:アルカリ性の炭酸水素ナトリウムが、焼き色を均一で魅力的に仕上げます。
  • サクサクとした食感を出す:生地の中に無数の気泡を作り出し、軽快な食感を生み出します。

ベーキングパウダーの代用品

食品添加物の使用を避けたい場合は、以下のものがベーキングパウダーの代替品として利用できます。

  • 重曹と酢、またはレモン果汁
  • 重曹とヨーグルト
  • 卵白を泡立てたメレンゲ
  • 炭酸水

重曹を使用する際は、苦味が出やすいという性質があるため、酸性の材料と組み合わせて使用することをおすすめします。もしベーキングパウダーも重曹もない場合は、生地に炭酸水を加えることで、わずかながら膨張効果を期待することができます。

食品添加物の危険性に関する誤解と真実

ベーキングパウダーに含まれる食品添加物について、健康への影響を懸念する声があることは事実ですが、過度に心配する必要はありません。世界保健機関(WHO)などの国際的な機関は、アルミニウムの摂取量に関する基準値を定めており、通常の食生活で摂取する範囲内であれば、健康に悪影響を及ぼす可能性は低いとされています。しかしながら、アルミニウムを多く含む食品を日常的に摂取する小さな子供は、許容される摂取量を超えるリスクがあるため、注意が必要です。アルミニウムの摂取量が気になる場合は、アルミフリーのベーキングパウダーを選ぶ、またはアルミニウム含有量が少ない食品を選択するなどの対策を講じると良いでしょう。

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まとめ

ベーキングパウダーはお菓子作りやパン作りにおいて非常に便利な材料ですが、その成分や安全性について正確な知識を持つことが重要です。 特にアルミニウムの摂取量が気になる場合は、アルミニウムフリーのベーキングパウダーを選択したり、使用量を控えたりするなどの対策を検討することをおすすめします。 この記事が、ベーキングパウダーに関する疑問を解消し、安心・安全な食生活を送るための一助となれば幸いです。

ベーキングパウダーは食品添加物にあたりますか?

ベーキングパウダー全体が食品添加物というわけではありません。 ベーキングパウダーを構成する成分のうち、炭酸水素ナトリウムや硫酸アルミニウムカリウムなどが食品添加物に分類されます。 また、ベーキングパウダーに含まれるコーンスターチは、とうもろこしを原料とするデンプンであり、食品として扱われます。

ベーキングパウダーは体に悪い影響がありますか?

アルミニウムを多く含む食品を大量に摂取すると、お子様の場合、許容摂取量を超えてしまう懸念があるため注意が必要です。 アルミニウムの過剰摂取が気になる方は、食品の原材料表示を注意深く確認し、アルミニウムフリーの製品を選ぶように心がけましょう。

ベーキングパウダー使用時の留意点

ベーキングパウダーは、効果を最大限に発揮させるため、湿気を避け、冷暗所で保管することが重要です。水分に触れると炭酸ガスが発生する性質があるため、湿度の高い場所での保管は、膨張力の低下につながる可能性があります。

ベーキングパウダー