アボカドの種 癌
アボカドは、その栄養価の高さから「森のバター」とも称される体に優しい食材です。そのアボカドが現代社会が直面している重大な健康課題の一つ、癌の予防に有効である可能性が出てきました。今回の記事では、アボカドが癌予防・治療にどのように寄与できるのか詳しく解説します。
抗がん剤の効果を高めることができる理由とは?
特定の食物ががんの治療に役立つという話は、信じられないかもしれません。しかし、アボカド由来の成分が新しい抗がん剤治療を後押しする可能性があることがわかってきました。
順天堂大学大学院医学研究科臨床病態検査医学の田部陽子特任教授らの研究グループは、米国MDアンダーソンがんセンターのマリナ・コノプレバ教授、カナダのゲルフ大学のポール・スパヌオロ博士らとの共同研究において、アボカドから抽出した成分の脂肪酸であるアボカチンB(avocatin B)が白血病がん細胞の脂肪酸代謝を阻害し、がん細胞の増殖を抑制することを発見しました。
さらに、白血病化学療法薬(抗がん剤)との併用により、抗がん効果が高まることも確認されました。抗がん剤の適用が難しかった高齢者の白血病治療において、アボカチンBを活用できる可能性を示しています。
癌予防に適したアボカドの食べ方とは?
ガン予防に効果的な食物はいくつかありますが、その食品を大量に摂取したとしても、ガン予防効果が大幅に向上するわけではありません。例えば、魚に多く含まれているEPAやDHAを大量に摂取したところで、大腸がんのリスクが下がるわけではないのです。
つまり、ある種の食物を入手して食べ続けるよりも、それらの食物をバランスよく食生活に組み込むことが大切なのです。
アボカドは温めても美味しいですが、熱すぎる飲食物は食道がんや食道炎のリスクを増加させる可能性がありますので、食べ方に工夫が必要です。アボカドの皮と種を取り除けば、生で食べることができます。これがガン予防に推奨される食べ方です。
また、アボカドは醤油と相性が良いですが、塩分の摂り過ぎは胃がんのリスクを高めます。そこで、レモンやライムを搾って調味料代わりに利用することをおすすめします。これらの柑橘類に含まれるビタミンCは活性酸素を抑制する抗酸化ビタミンとして知られており、ガン・老化・免疫機能の低下の予防が期待できます。さらに、アボカドの変色防止にもなるため、目で見ても美味しい食事になります。
アボカドには癌予防以外の予防が存在する?
アボカドは多くの栄養素を含んでおり、その健康効果は多岐にわたります。では、アボカドを食べることで予防が期待される疾患にはどのようなものがあるのでしょうか。
糖尿病は、7大生活習慣病のひとつであり、摂取する脂肪酸の種類によっても発症リスクが変わると言われています。脂肪酸は、肉・魚・野菜などに含まれる脂質(脂肪)で、食生活によって摂取する脂肪酸の種類が異なります。日本は元々魚中心の食生活でしたが、食生活の欧米化により肉中心となり、生活習慣病の割合が高くなってきました。
そこで注目されているのが植物由来の脂肪酸です。オリーブオイルが代表的な例ですが、アボカドにも多くの脂肪酸が含まれています。アボカドには、一価不飽和脂肪酸やn-6系多価不飽和脂肪酸が豊富に含まれており、これらの脂肪酸が糖尿病予防に役立つと期待されています。
糖尿病は糖の代謝異常が原因の生活習慣病であり、n-6系脂肪酸、オレイン酸、リノール酸の摂取量が多い人は糖代謝異常を起こす割合が低いという研究結果もあります。これらの脂肪酸はアボカドに多く含まれているため、食事メニューにアボカドを加えることで摂取量を増やすことができます。ただし、アボカドを大量に食べるだけで糖尿病を予防できるわけではなく、バランスの取れた摂取が重要です。
私たちの生活にはPCやスマホなど目を酷使するアイテムが溢れています。眼精疲労の回復にはアボカドに含まれるルテインが期待されています。ルテインは網膜の色素維持に欠かせない栄養素であり、抗酸化作用もあるため目の老化を改善する効果も期待できます。目に良いとされるブルーベリーよりもアボカドの方がルテイン含有量が多いため、積極的に摂取することがおすすめです。
風邪をひきにくい体質を目指すためにもアボカドはおすすめです。アボカドにはビタミンEがバランスよく含まれており、ビタミンEは免疫力を高め、体内に侵入する細菌やウイルスを撃退するのに必要な栄養素です。風邪予防のためにアボカドを取り入れることも効果的です。
まとめ
アボカドから抽出された成分アボカチンB(avocatin B)が白血病がん細胞の脂肪酸代謝を阻害し、がん細胞の増殖を抑制することが発見されました。さらに、白血病化学療法薬との併用により抗がん効果が高まることが確認されました。癌予防だけでなく、健康増進に役立つアボカド。その力を活用して、充実した食生活を送りましょう。