りんごの外側にカビが発生!食べるのは危険?カビの内部浸透と安全な対処法
「一日一個のりんごは医者を遠ざける」と言いますが、もしそのりんごにカビが生えていたら…? 表面に現れたカビは、内部にまで深く浸透している可能性があります。この記事では、りんごにカビが発生した場合の危険性、カビが内部にどれだけ浸透しているかの目安、そして安全な対処法を解説します。大切な健康を守るために、ぜひ最後までお読みください。

カビが生えた食品は危険?見えない菌糸の脅威

「カビが生えた部分を取り除けば食べられる」と考えていませんか? 実は、目に見えるカビの裏には、深くまで根を張ったカビ菌が潜んでいる可能性があります。エフコープ商品検査センター「りんご館」の調査で、その危険性が明らかになりました。実験では、直径5mmのカビが生えた餅(約50g)を使い、カビ付きのままのものと、丁寧に取り除いたもので菌の数を比較しました。すると、カビを取り除いた餅からも、驚くほど多くのカビ菌が検出されたのです。これは、カビが表面だけでなく、内部にも菌糸を伸ばしている証拠です。みかんを使った同様の検査でも、危険な結果が出ています。以下の3つの状態のみかんについて、菌数を計測しました。1. 一部カビが発生した実からカビを取り除いたもの。2. 皮のみにカビが生えたもの。3. カビが生えたみかんに接していたもの。カビを取り除いたみかんからは、測定不能なほどのカビ菌が検出されました。皮のみにカビが生えたもの、隣接していたものからも少量のカビ菌が見つかり、カビ菌が外側から内部へ侵入する可能性を示唆しています。つまり、皮だけにカビが生えていても、食べるのは避けるべきです。カビは目に見えない胞子をまき散らしながら増殖するため、表面を取り除いても、内部に菌糸が残っている可能性が高いのです。食中毒を防ぐため、カビが生えた食品は廃棄し、口にしないことが大切です。

カビ毒の脅威:加熱しても消えない有害物質

カビ菌は加熱で死滅しますが、カビが繁殖した食品には「カビ毒」という有害物質が残る可能性があります。カビ毒は、加熱しても分解されないという厄介な性質を持っています。例えば、加熱調理する餅でも、カビが生えた場合はカビ毒が残り、中毒症状を引き起こす危険性があるため、食べるのは避けるべきです。カビ毒は、カビが作り出す代謝産物の総称で、300種類以上も存在します。その種類や影響は、カビの種類、環境条件、汚染される食品によって大きく異なります。そのため、食品の安全性を守るためには、カビ毒に対する継続的な監視と管理が欠かせません。カビ毒は目に見えないため、「加熱すれば大丈夫」という考えは危険です。

リンゴを汚染するカビ毒「パツリン」

リンゴ製品を汚染するカビ毒として、特に注意が必要なのが「パツリン」です。パツリンは、土壌に存在するペニシリウム属のカビなどが生成するカビ毒の一種です。1942年に発見された当初は、抗菌作用から抗生物質としての利用が期待されましたが、毒性が強いため断念されました。現在では、リンゴジュースなどのリンゴ製品を汚染する主要なカビ毒として、国際的に管理されています。パツリンは、消化管の充血や出血、潰瘍などを引き起こす可能性があります。特に、リンゴジュースを多く摂取する子供への影響が懸念されています。そのため、各国の食品安全機関では、子供の健康保護の観点からパツリンの管理を重視し、厳格な基準を設けています。

パツリン汚染のメカニズムと規制基準

パツリンによる食品汚染は、リンゴが傷ついた際に発生しやすくなります。台風や雹害、収穫や輸送時の衝撃などでリンゴに傷がつくと、土壌中のペニシリウム属のカビが侵入し、パツリンを生成します。特に、地面に落下して傷つき、土に触れたリンゴは汚染リスクが高くなります。カビは湿度が高ければ低温でもパツリンを生成するため、日本の気候でも汚染が発生する可能性があります。そのため、リンゴジュースはパツリン汚染のリスクが高い食品の一つとされています。消費者の安全を守るため、日本を含む各国でパツリンに関する規制基準が設けられています。日本では、リンゴジュースのパツリン規格値は0.050ppm(0.050mg/kg)と定められています。国際的には、コーデックス委員会がリンゴ果汁のパツリン汚染防止のための行動規範を採択し、最大基準値を50μg/kg(0.050mg/kg)と設定しています。

カビ毒検査と適切な食品保管の重要性

カビ毒は、パツリンを代表とする目に見えない脅威であり、カビを取り除いても安心はできません。既に生成されたカビ毒は食品全体に広がっている可能性があり、厄介なことに、加熱しても分解されない性質を持っています。食品の安全を守るためには、カビの発生を根本から防ぐ生産管理と、購入後の適切な保管が不可欠です。特にリンゴジュースなどの加工品は、製造過程でのカビ毒混入を見抜くのが難しいため、LC/MS/MSのような高度な分析機器によるパツリン検査が重要になります。これにより、消費者が安心して口にできる製品を提供するための厳格な品質管理が実現します。家庭での食品保管も同様に重要です。カビは、10℃~30℃の気温と70%以上の湿度を好みます。カビ汚染のリスクを減らすには、食品を涼しく、湿度の低い場所に保管することが大切です。冷蔵・冷凍保存を適切に利用したり、開封後の食品は密閉容器に入れたりして、空気中のカビ胞子から食品を守りましょう。食品を早めに消費することも、カビ対策として有効です。

まとめ

食品にカビを見つけたら、見える部分だけを取り除いても安心できません。内部にはカビ菌が深く入り込んでおり、食中毒の危険があります。特にカビ毒は加熱しても分解されないため、カビが生えた食品は迷わず捨てるのが賢明です。リンゴ製品に含まれるパツリンは、消化器系に悪影響を及ぼす可能性があり、特に子供の健康への影響が懸念されています。パツリンは、傷ついたリンゴが不適切な環境で保管され、カビが増殖することで発生し、リンゴジュースが主な原因となることがあります。国内外で厳しい基準が設けられており、カビ毒検査は品質管理の重要な一部です。家庭では、カビが好む10~30℃、湿度70%以上の環境を避け、適切な食品保管を心がけることが、カビの発生を抑え、食品の安全を守るために非常に重要です。カビに関する正しい知識を身につけ、日々の食品管理に役立て、見えない危険から身を守りましょう。

質問:リンゴにカビが生えたら、そこだけ切って食べても大丈夫ですか?

回答:いいえ、表面にカビが見える場合でも、カビの菌糸は内部に深く広がっている可能性が高いです。さらに、カビが毒素を生成している場合、加熱しても除去できません。食中毒のリスクを避けるため、カビが生えたリンゴは食べずに廃棄することをおすすめします。

質問:カビ毒って何ですか?加熱すれば安全ですか?

回答:カビ毒は、カビが作り出す有害な物質の総称で、人や動物に悪影響を及ぼします。カビ菌自体は加熱で死滅しますが、カビ毒は熱に強く、通常の調理では分解されません。したがって、カビが生えた食品は、加熱してもカビ毒による健康被害のリスクがあるため、摂取を避けるべきです。

疑問:リンゴジュースに含まれる「パツリン」とは、どのようなカビ由来の有害物質ですか?

解説:パツリンは、主にペニシリウムという種類のカビによって作られるカビ毒の一種です。土壌中に存在するこれらのカビが、特にリンゴやリンゴジュースを汚染することが知られています。摂取すると消化器系に悪影響を及ぼす可能性があり、特に子供の健康への影響が懸念されるため、国際的にも規制の対象となっている重要な毒素です。リンゴに傷がついた箇所からカビが侵入し、保管状態が悪いと発生しやすくなります。
りんごカビ