晩秋の11月は、一年の締めくくりを感じさせるとともに、豊かな味覚の宝庫でもあります。澄んだ空気と穏やかな日差しの中で育った果物たちは、まさに自然からの贈り物。一年を通して太陽の恵みを蓄え、芳醇な香りと凝縮された甘み、そして滋養たっぷりの栄養を私たちに届けてくれます。さあ、深まる秋を感じながら、旬を迎えたフルーツを心ゆくまで堪能しましょう。
11月に味わう旬のフルーツ
秋が深まる11月は、様々な果物が最も美味しい時期を迎えます。秋の太陽をたっぷり浴びて育った果実は、味も香りも栄養も満点。晩秋の食卓を豊かにする旬の果物を、心ゆくまで堪能しましょう。
旬を理解する:始まりから終わりまで
果物には旬があり、その旬は「走り」「盛り」「名残」という3つの段階に分けられます。「走り」は旬の始まりを告げる初物。「盛り」は最も市場に出回り、味が充実する時期。そして「名残」は旬の終わり頃で、徐々に姿を消していく時期を意味します。これらの時期を知ることで、果物の味の違いや個性をより深く味わうことができます。
11月に「走り」を迎える果物:冬の気配を感じて
11月は、冬の果物の先駆けとなる品種が登場し始める時期です。早生温州みかんや、カリン、黄柚子などがその代表格と言えるでしょう。
温州みかん:甘さと酸味の絶妙なハーモニー
日本で最も親しまれている柑橘類である温州みかんは、9月頃から極早生品種が出回りますが、11月からは甘味と酸味のバランスが取れた早生品種が旬を迎えます。近年、骨の健康をサポートするβ-クリプトキサンチンや、血管を丈夫にするビタミンPなどの栄養素が注目を集めています。そのまま食べるのはもちろん、フレッシュジュースやミカンティー、白菜とのサラダなど、様々なアレンジも楽しめます。保存する際は、直射日光を避け、風通しの良い場所を選びましょう。
黄ユズ:芳醇な香りの柑橘
黄ユズは、その強い酸味と際立つ香りが持ち味の柑橘類です。8月から9月にかけて市場に出回る青ユズに続き、11月になると熟した黄ユズが旬を迎えます。ビタミンCが豊富で、果皮には抗酸化作用が期待できるため、積極的に食卓に取り入れたい食材です。ユズピールやユズ大根(お漬物)、ユズみそなど、幅広い料理に活用できます。保存方法としては、ビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室で保管するのがおすすめです。
カリン:喉をいたわる優しい香り
カリンは、秋に熟して美しい黄色に変わる果実で、その甘く優雅な香りが特徴です。果肉は硬く、渋みがあるため、生のまま食べるのには適していませんが、果実酒やジャム、シロップなどに加工して楽しむことができます。せきを鎮める効果があると言われており、喉に優しい果実として知られています。カリンには、炭水化物や有機酸、ペクチン、タンニン、サポニンなど、体に嬉しい栄養素が含まれています。カリンのはちみつ漬けやコンポート、ゼリーなどは、喉を優しくいたわるデザートとしておすすめです。保存する際は、新聞紙などで包んで風通しの良い冷暗所で保管し、まだ熟していない場合は追熟させると良いでしょう。
11月に「盛り」を迎える果物:バラエティ豊かな旬の味覚を堪能
11月は、多くの果物が最も美味しくなる季節です。種類も豊富に揃い、色々な味を試せる絶好の機会です。国産キウイフルーツも旬のピークを迎えます。
カキ:日本の秋を彩る代表的な味
海外でも「kaki」という名前で親しまれている柿は、日本を代表する果物の一つです。11月には、「富有」や「太秋」、「太天」といった晩生種の甘柿や、「西条」などの渋柿が出揃います。ビタミンCやカロテン、食物繊維が豊富に含まれています。柿の天ぷらや柿とほうれん草の白和え、焼き柿など、様々な調理法でその美味しさを堪能できます。保存する際は、ビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室で保管し、熟成を遅らせるためには、湿らせたキッチンペーパーをヘタに当てて下向きに保存するのが効果的です。熟しすぎた場合は冷凍してシャーベットとして楽しむのも良いでしょう。
リンゴ:豊富な品種と優れた栄養バランス
日本国内で品種登録されているリンゴは260種類を超えます。その中でも生産量が多い「ふじ」は、11月上旬頃から市場に出回ります。甘さと酸味の調和がとれており、果汁が多くて香り高いのが特徴です。その他、黄色の果皮を持つ「シナノゴールド」「王林」「金星」なども11月が旬を迎えます。有機酸、ポリフェノール、食物繊維などを豊富に含み、栄養価が高いことから、「1日1個のリンゴは健康に良い」と言われるほどです。リンゴとレーズンのコンポートや、リンゴとサツマイモを組み合わせたレモン煮、リンゴを使った豚肉巻きソテーなど、幅広い料理に利用できます。保存する際は、ビニール袋に入れて冷暗所に置き、長期保存する場合は冷蔵庫で保管するのがおすすめです。
西洋ナシ:豊かな香りととろける食感
西洋ナシは、特有の芳醇な香りと、きめ細かく柔らかい、とろけるような口当たりが魅力です。代表的な品種である「ラ・フランス」は、11月が出荷のピークを迎えます。「ル・レクチェ」も同じ時期に旬を迎えます。水分と食物繊維に加え、喉の炎症を和らげると言われるソルビトールや、疲労回復を助けるアスパラギン酸を含んでいます。洋ナシとカブのサラダ、生ハムで巻いた洋ナシ、洋ナシとジャガイモを使ったポタージュなど、多彩な料理でその風味を楽しむことができます。保存する際は、新聞紙などで包んでからビニール袋に入れ冷蔵庫で保存し、まだ熟していない場合は常温で追熟させるのが良いでしょう。
キウイフルーツ:国産の旬を堪能する
キウイフルーツは、ニュージーランドで品種改良された果物で、日本での本格的な生産は1970年代に始まりました。輸入物は一年を通して手に入りますが、国産のキウイフルーツは11月が収穫の最盛期となります。果肉の色によって、グリーンキウイ、ゴールドキウイ、レインボーレッドといった品種が存在します。ビタミンCやビタミンEを豊富に含み、肉を柔らかくする効果のあるタンパク質分解酵素も含まれています。キウイフルーツビネガーや、キウイを入れたグリーンサラダ、豚肉をキウイソースに漬け込んで焼いた料理など、様々な料理に活用できます。まだ熟していないキウイフルーツは常温で保存し、完熟したものはビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室で1週間ほど保存できます。
11月が「終盤」の果物:凝縮された風味を味わう
11月は、旬の終わりを迎える果物も見られます。水分が少なく味が凝縮されているのが特徴で、イチジクや栗などがその代表例です。
イチジク:濃厚な甘み
イチジクは夏に実るものと秋に実るものがあり、11月は秋に収穫される品種のシーズン終盤です。秋のイチジクは夏のイチジクに比べて水分が少なく小ぶりですが、その分味が凝縮されており、とろりとした食感が楽しめます。食物繊維であるペクチンが豊富に含まれており、タンパク質を分解する酵素も有しています。冷凍イチジクを使ったコンポート、スムージー、ドライイチジクにチョコレートをかけたものなど、色々なレシピで味わえます。もし食べきれない場合は、皮ごとラップで包んで冷凍保存したり、乾燥させてドライフルーツにするのも良いでしょう。
クリ:秋の恵みを保存して長く味わう
栗が最も美味しい時期は9月から10月ですが、11月頃まで市場に出回ります。ビタミンCやB1、カルシウムを含み、消化しやすいのが特徴です。鬼皮(外側の硬い皮)がついたまま冷凍保存することで、長く楽しむことができます。冷凍ゆで栗を使ったスープ、冷凍ゆで栗で作る茶巾絞り(栗きんとん)、冷凍の生栗を使った渋皮煮など、様々な料理で楽しめます。
晩秋の味覚:11月が旬を迎えるその他の果物
11月には、上記以外にも多種多様な果物が旬を迎えます。これらの果物も、晩秋ならではの味覚として堪能してみてはいかがでしょうか。
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温州みかん
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新興梨
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愛宕梨
まとめ:旬の果物を様々な方法で堪能しよう
11月は、温州ミカンや柿、リンゴなど、おなじみの果物が豊富な種類で店頭に並ぶ時期です。洋ナシや国産キウイも食べ頃を迎えます。まずはそのまま旬の味を楽しみ、料理の素材としていつもと違う味わいを発見するのもおすすめです。ドライフルーツやジャムに加工したり、シロップやビネガーに漬けたり、冷凍保存をすることで、晩秋の味覚をより長く味わうことができます。旬の果物を積極的に食生活に取り入れることは、健康維持にもつながります。ぜひ、この時期ならではの旬の果物を存分にご賞味ください。
11月に旬を迎える果物は何がありますか?
11月に旬を迎える果物としては、代表的なものに温州みかん、甘柿、リンゴ、西洋ナシ(ラ・フランス)、キウイフルーツ、秋の味覚であるイチジク、そして栗などが挙げられます。
旬の果物をより美味しく味わうには?
旬の果物は、フレッシュな状態でそのまま味わうのが一番ですが、自家製ジャムやコンポートに加工したり、お菓子作りや料理の素材として活用するのもおすすめです。また、冷凍保存や乾燥させてドライフルーツにすることで、旬の味を長く楽しむことも可能です。
果物の「走り」「盛り」「名残」とは?
「走り」とは、その果物が市場に出回り始める時期のこと。「盛り」は、最も多く収穫され、味が充実する最盛期を指します。そして「名残」は、旬が終わりに近づき、徐々に市場から姿を消していく時期のことです。これらの時期を意識することで、果物の味わいの変化やそれぞれの個性をより深く味わうことができるでしょう。