カシスの実(黒房すぐり)は、深い紫色と爽やかな酸味が特徴の果実です。リキュールやデザートで知られる一方、ビタミンCやアントシアニンを豊富に含み、健康面でも注目されています。この記事では、カシスの実の特徴や栄養価、歴史、活用法までをわかりやすく解説。日常に取り入れる魅力を探ります。
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カシスとは?基本情報と特徴

カシスは、ユキノシタ科スグリ属の落葉低木で、成長すると高さ1~2m程度になります。果実は直径約1cmの赤黒い球状のベリーで、その色合いと独特な風味が魅力です。フランス語起源の「カシス」という名前で知られていますが、日本では「黒房すぐり」や「黒すぐり」、英語圏では「ブラックカラント」とも呼ばれています。そのさわやかな酸味と豊かな香りは、特に日本ではリキュールの原料やデザートの香りづけとして広く用いられ、多くの人に愛されています。
カシスの果実はベリー類に属し、外見はブルーベリーやサンタベリーに似た小さく丸い形をしています。しかし、植物分類上は大きく異なり、カシスがユキノシタ科スグリ属に分類されるのに対し、ブルーベリーはツツジ科スノキ属に分類されるため、種類が異なります。カシスの木は最大で約1.5~2.0mの高さまで成長し、特にニュージーランドは、高品質なカシスの産地として世界的に知られています。ニュージーランドの清らかな空気と強い紫外線は、カシスが豊富な栄養を蓄えるのに適した環境を提供しています。
カシスの果実を詳しく見てみると、その構造と高い栄養価が際立ちます。果実全体は球状で、特徴的な黒い果皮に覆われています。この果皮には、抗酸化作用で知られるアントシアニンが豊富に含まれています。果実を割ると、中には薄緑色の果肉があり、甘酸っぱい風味が楽しめます。そして、カシスの特徴的な要素の一つが種です。ブドウの種のように果実に対して比較的大きく、たくさん詰まっています。この種にも、オレイン酸やリノール酸といった良質な脂肪酸をはじめ、豊富な栄養素が含まれており、果実全体が高い栄養価を持つ理由となっています。
カシスの栄養成分と注目される特性
カシス(黒すぐり)は、古くから食用や健康に関心をもたれてきた果実で、現代においてもその栄養成分が研究対象となっています。果実にはビタミンCをはじめ、カリウムやカルシウム、マグネシウムなどのミネラルが含まれており、日常の食生活を彩る食材として利用されています。特にビタミンCの含有量は比較的多いとされ、ヨーロッパでは歴史的に壊血病対策の一助として扱われた例もあります。また、ニュージーランドでは果実だけでなく、葉や樹皮の利用についても報告があり、食文化や民間利用の多様性を示しています。
アントシアニンの豊富さと環境による違い
カシスの特徴として特に注目されるのが、果皮に含まれる天然色素アントシアニンです。この成分は紫外線から果実を守る働きを持つとされ、そのため生育環境によって含有量が変動します。ニュージーランド産の「ベン・アード」種では比較的高いアントシアニン含有が報告されており、100gあたり数百mgを超える場合もあるといわれます。これは他地域で生産されるカシスより高い数値を示すことが多く、注目されています。
現代の研究と活用の広がり
近年の研究では、カシスに含まれるアントシアニンやビタミンCが目のピント調節機能や一時的な疲労感の軽減に役立つ可能性が示唆されており、サプリメントや健康食品の原料として活用される事例も見られます。また、運動後の回復サポートといったテーマでも研究が進められています。
このように、カシスは単なる果実としてだけでなく、栄養価と研究的な注目の両面から価値を持つ食品といえるでしょう。
カシスの歴史と日本への伝来
カシスは、日本ではカクテルやデザートのリキュールとしてよく知られていますが、その歴史は古く、古代ヨーロッパ時代から山奥に自生していたとされています。しかし、カシスが食用として利用された古い記録はほとんどありません。初めて食用として紹介されたのは、ルネサンス時代の植物学者、ガスパール・ポアンによるものでした。その後、カシスの驚くべき効能が広く知られるようになったきっかけは、1712年にフランスのモンタラン神父が出版した「’Les Proprietes Admirables du Cassis’ (カシスの驚異)」という本です。この本の中で、モンタラン神父は『カシスの絞り汁は万病に効く秘薬であり、若返りにも効果がある』と記述し、当時の人々に向けてカシスの価値を伝えたとされています。こうした活動を通じて、カシスは薬用植物として注目されるようになりました。現在でもフランスでは、乾燥させたカシスの葉がリウマチに良いとされ、薬草店で販売されているなど、薬用としての伝統が受け継がれています。
日本にカシスが導入されたのは、比較的最近のことで、1868年(明治元年)にドイツから伝わったのが最初とされています。しかし、当時の日本では生食には適さないとされ、加工技術も十分でなかったため、カシスは一般的には普及しませんでした。そのため、主に寒冷地の庭先でわずかに栽培される程度でした。しかし近年、状況は大きく変化しています。黒色種であるカシスに含まれる豊富なアントシアニン色素が、その健康効果とともに注目されるようになり、栽培への関心が高まりました。現在では、青森市を中心に全国各地でカシスが積極的に栽培され、ジャム、ジュース、アイスクリームなど、様々な加工品として利用され、家庭の味として子供から大人まで広く親しまれています。このように、カシスは長い歴史の中でその価値が再評価され、現代の食生活や健康維持に欠かせない存在としてその地位を確立しています。
カシスと他のベリーとの違い
カシスはベリー類の一つですが、一般的に見かける他のベリーとは、植物学的な分類や特性において明確な違いがあります。例えば、見た目が似ているために混同されやすいブルーベリーとは、全く異なる植物に分類されます。カシスがユキノシタ科スグリ属に属するのに対し、ブルーベリーはツツジ科スノキ属に分類されます。ブルーベリー(学名: Vaccinium corymbosum)は、春に白い花を咲かせた後、0.5〜1.5cmほどの青紫色の小果実をつけます。北アメリカでは古くから食用とされてきましたが、20世紀に入り果樹としての品種改良が大きく進展しました。その結果、ハイブッシュ系、ラビットアイ系、ハーフハイブッシュ系、ローブッシュ系など、様々な系統の交配により、現在では世界中に約150種類もの品種が存在しています。
また、サンタベリー(学名: Vaccinium vitis-idaea)もツツジ科スノキ属に分類され、ブルーベリーやカシスと同様に丸い果実をつけますが、その色は鮮やかな赤色です。サンタベリーには、ポリフェノールの一種であるレスベラトロールが豊富に含まれているほか、アントシアニンも含有しています。主な産地はフィンランドなどの北欧地域ですが、カナダや日本でも自生しています。一方、クラウドベリー(学名: Rubus chamaemorus)はバラ科キイチゴ属に分類される、全く異なる種類のベリーです。クラウドベリーは6月頃に花を咲かせ、果実は成熟するにつれて緑がかった黄色から赤色へと変化し、完熟する頃には美しい琥珀色になります。このベリーにはビタミンCが豊富に含まれているだけでなく、種子にはビタミンEも多く含まれています。さらに、食物繊維やポリフェノール、エラジタンニンといった健康成分も豊富で、特に美肌に良い果実として注目されています。これらの比較から、カシスが独自の植物学的特徴と栄養成分を持つ、ユニークなベリーであることがわかります。

まとめ
カシスの実(黒房すぐり)は、鮮やかな紫色と酸味が特徴の果実で、古くから食用や薬用に利用されてきました。現代では、ビタミンCやアントシアニンをはじめとする栄養成分が注目され、ジャムやジュース、リキュール、サプリメントなど幅広い形で親しまれています。特にアントシアニンを多く含むニュージーランド産品種は研究対象にもなっており、健康志向の食生活に取り入れる果実として人気が高まっています。
彩りと栄養を兼ね備えたカシスの実を、ぜひ日々の暮らしに取り入れてみませんか?
カシスとは具体的にどのような果物ですか?
カシスは、ユキノシタ科スグリ属の落葉低木に実る、直径約1cmほどの濃い赤紫色の果実です。その魅力は、爽やかな酸味と独特の香りにあり、日本では主にリキュールやデザートの材料として用いられます。
カシスはブルーベリーとどう違うのですか?
カシスとブルーベリーは、見た目が似ているものの、植物分類学上は異なる種類に属します。カシスはユキノシタ科スグリ属である一方、ブルーベリーはツツジ科スノキ属に分類されます。カシスは特にアントシアニンやポリフェノールの含有量が多いことで知られていますが、ブルーベリーもまた多様な品種が存在し、それぞれ異なる栄養特性を有しています。
カシスにはどのような栄養成分が含まれていますか?
カシスには、ビタミンC、ビタミンA、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、ビタミンB1をはじめとする、多種多様な栄養成分が含まれています。中でも特に注目されるのは、強力な抗酸化作用を持つアントシアニンが非常に豊富に含まれている点で、目の健康維持や炎症抑制効果に貢献すると考えられています。また、種子にはオレイン酸やリノール酸などの良質な脂質も含まれています。
カシスのアントシアニンは本当に目に良い効果があるのですか?
その通りです。カシスに豊富に含まれるアントシアニンは、目の健康をサポートする成分として知られています。特に、ピント調節機能の維持に役立つとされており、近くの物を長時間見ることによって生じる目の疲れや不快感の軽減に効果を発揮することが研究で示されています。
ニュージーランド産のカシスが特別に良いとされるのは何故ですか?
ニュージーランドは、空気の清浄さに加え、日本よりも紫外線が強いという特徴があります。そのため、ニュージーランドで栽培されるベン・アード種のカシスは、強い紫外線から実を守るため、他の品種に比べて非常に多くのアントシアニンを生成します。生の果実100gあたり700mgを超えるアントシアニンを含むものもあり、これはヨーロッパ産のカシスと比較して、3~4倍以上の含有量に相当します。
日本では、カシスはどのように活用されてきたのでしょうか?
日本にカシスが導入されたのは1868年(明治元年)のことですが、当初は生で食べたり、加工する技術が十分に発達していなかったため、広く普及するには至らず、主に寒冷地の家庭で栽培される果実として細々と育てられていました。しかし、近年になり、アントシアニンの健康効果が注目を集めるようになり、青森市を中心に日本各地で栽培が盛んになり、ジャムやジュース、アイスクリーム、サプリメントなど、様々な食品や製品に利用されています。