ビーントゥーバーとは - スイーツモール

ビーントゥーバーとは

ビーントゥーバーとは

ビーン・トゥ・バーは、チョコレートの製造プロセスにおいて、カカオ豆から板チョコレートに至るまでのすべての工程を一貫して担当する製造方法を指します。この手法では、製造者が原料のカカオ豆の段階から従事し、独自の工程や配合を用いて、最終的な板チョコレートの品質や風味を徹底的にコントロールします。従来の製造方法と比べて、より直接的でトレーサビリティが高い製品が生み出されることが特長です。今回はビーン・トゥ・バーについてご紹介します。

Bean to Barとは

ビーン・トゥ・バーという名前からわかるように、チョコレートがカカオ豆(ビーン)から板チョコレート(バー)に仕上がるまでの一連のプロセスを一手に引き受ける製造方法のことを指します。
まず初めに、「一社で全工程を行うなんて、あたりまえのことでは?」と感じる方もいるかもしれません。しかし、これは実はチョコレート業界において非常に革新的な取り組みなのです。
従来のチョコレート製造は、カカオ豆の生成地、製菓用チョコレートの一次加工メーカー、最終製品を完成させる製菓メーカーと、それぞれに役割が分かれていました。これはチョコレートの工業化が進むにつれて、大量生産に対応する形で発展した仕組みであり、その結果として低価格で一定の品質のチョコレートを提供することができました。
しかし、その一方で、チョコレートの風味は一次加工メーカーが提供する製菓用チョコレート(クーベルチュールとも呼ばれる)に大きく依存することとなり、結果として市場に並ぶチョコレートの味は大差なくなってしまいました。
ビーン・トゥ・バー製法は、これに対して素材の風味を最大限に活かし、各製品に個性を持たせることを求めます。近年、特にチョコレート専門店などで話題となり、その結果として多くの独自の風味と香りを持つチョコレートが誕生しています。

Bean to Barの起源

一時代を築いた安価で均質化された量産チョコレートは、確かにその利便性と普遍性において利点を持つものでした。しかし、21世紀に入り、これまでのチョコレートのスタイルに新しい風が吹き始めました。それが、「Bean to Bar」の精神をもつ、個性豊かな第3のチョコレートです。
このムーブメントの始まりは19世紀中頃のヨーロッパに遡ることができますが、現代における「Bean to Bar」の発展には、1990年代後半のアメリカが大いに関与しています。サンフランシスコのパイオニア企業シャーフェンバーガーが、チョコレート製造工程の再評価を行い、ビーンからバーまでを一貫して手掛ける新しい形を確立しました。
さらに、2007年にブルックリンで「マストブラザーズ・チョコレート」がオープンし、「Bean to Bar」の理念を広めるきっかけを作りました。この時点で、アメリカ西海岸だけでなく、ヨーロッパでも「Bean to Bar」の哲学が浸透し始め、新たなチョコレートのムーブメントが始まったのです。
現在、「Bean to Bar」は、大量生産と高級チョコレートといった既存のスタイルから一線を画し、チョコレート本来の個性を尊重し、新風を吹き込むための運動となっています。これは、ますます多様化し細分化するニーズに対応する新たなチョコレート制作の風土を象徴しています。

Bean to Barの製造工程

 'Bean to Bar' チョコレートの製造プロセスは、根底に二つの主要なステップが存在します。それが、カカオ豆の収穫地(Bean)からチョコレートの製造工房(Bar)への移行です。その工程を詳しくご説明いたします。

まず始まるのがカカオ豆の栽培と加工です。カカオは赤道直下、北緯と南緯の20度以内の環境で育てられます。カカオ農家はカカオを収穫し、果実の中からカカオ豆と周りのパルプを取り出し「発酵」作業を進めます。これがチョコレート製造の中でも最初の重要な工程であり、チョコレートの特徴的な香りと味わいを生み出す要素です。

発酵と言えば、チーズやワイン、また日本の伝統食品である味噌や醤油、日本酒など、我々の喜びにつながる多くの商品に関わるプロセスです。そして、チョコレートもまた、そうした発酵食品の一つなのです。

'Bean to Bar' の製法においては、チョコレート製造者が直接、農家と連携可能な特徴があります。日本の伝統的な発酵知識と技術を駆使し、Minimalでは生産者と協力して何年もの発酵や共同開発に取り組み、最高品質のカカオ豆を追求しています。豆の品質重視の際は、生産者との密接な関係性が決して避けては通れない道となります。

発酵が終了した後は、カカオ豆を乾燥させ、日本への移送が行われます。

ビーントゥーバーとは

チョコレート工房 | カカオ豆からチョコレートの製造

チョコレート作りは、カカオ豆が工房に届いた瞬間から始まります。まずは、豆の品質を確認し、状態の良いものを選別します。


その後、カカオ豆の殻(カカオハスク)を取り除く「粉砕」の工程を経て、チョコレート作りでも特に重要とされる「焙煎」へと進みます。焙煎では、カカオ豆の特徴を引き出すために、温度や時間を細かく調整しながら丁寧に火入れを行います。


焙煎が終わると、豆をさらに細かく砕いて「カカオマス」と呼ばれるペースト状の状態にします。ここに砂糖を加えて混ぜ合わせることで、風味が整えられていきます。


次に行うのは「精錬」と呼ばれる工程で、チョコレートの粒子の細かさやなめらかさを調整します。そして「テンパリング(調温)」という温度管理の作業を通じて、光沢やパリッとした食感を生み出します。


最後に、型に流し込んで冷やし固めることで、チョコレートが完成します。こうして一粒一粒、丁寧に手間をかけたチョコレートが工房で生まれていくのです。

Bean to Barの基本用語集

このビーントゥバーに関わる基本的な専門用語を解説します。


エイジング(Aging)

カカオ豆を一定期間寝かせて風味を引き出す工程。発酵や乾燥を経た豆を保管し、時間とともに風味がまろやかになる場合もあり、製造者によってさまざまな方法がとられます。


ビーン・トゥ・バー(Bean to Bar)

カカオ豆の選別からチョコレートになるまでの全工程を一貫して行う製造スタイル。原材料や工程にこだわり、作り手の個性が反映されやすいのが特徴です。


ブロンドチョコレート(Blond Chocolate)

ホワイトチョコレートをじっくり加熱してキャラメル化したもの。香ばしい甘さとビスケットのような風味があり、「第4のチョコレート」とも呼ばれています。


カカオパルプ(Cacao Pulp)

カカオの実の中にある白い果肉部分。発酵に必要な糖分や水分が含まれ、フルーティーな甘みがあります。生産地ではジュースやおやつとしても利用されています。


カカオハスク(Cacao Husk)

カカオ豆の外皮で、粉砕時に取り除かれます。通常は廃棄されることが多いですが、お茶や農業用素材として活用されることもあります。


カカオニブ(Cacao Nibs)

焙煎したカカオ豆の外皮を取り除き、細かく砕いたもの。チョコレートの原材料であるだけでなく、そのままスナックやトッピングとしても食べられます。


ダイレクトトレード(Direct Trade)

チョコレートメーカーが農家から直接カカオ豆を購入する取引方法。品質や栽培方法に関して密な協力関係を築けるため、持続可能な生産に貢献します。


ダークチョコレート(Dark Chocolate)

カカオ含有量が高く、乳成分を含まないチョコレート。一般的に甘さ控えめで、カカオ本来の味わいを楽しむことができます。


フェアトレード(Fairtrade)

途上国の生産者と公正な価格で取引を行う仕組み。カカオ農家の経済的自立や持続可能な農業の実現を目的としています。


ハイカカオ(High Cacao)

カカオ分70%以上のチョコレートを指します。ポリフェノールや食物繊維が豊富で、健康志向の人々にも人気があります。


ミルクチョコレート(Milk Chocolate)

カカオに加えて、ミルクやクリームなど乳製品を加えたチョコレート。甘みが強く、まろやかな口当たりが特徴です。


レシピ情報(Recipe Information)

製品によってはカカオ濃度や焙煎度、粒度などの製造情報を公開していることがあります。味や食感の違いの背景がわかる参考になります。


カカオ濃度(CACAO RATIO):数値が高いほど苦味とコクが増し、甘さは控えめになります。


粒度(TEXTURE):粗さにより舌触りや風味が変化します。


焙煎度(ROAST):浅煎りは酸味、深煎りは苦味やコクが強調されます。


シングルオリジン(Single Origin)

一つの国や地域で収穫されたカカオ豆だけを使って作られたチョコレート。その土地ならではの風味がダイレクトに表れます。


スモールバッチ(Small Batch)

少量生産を基本とした製造方式。品質管理がしやすく、こだわりのある製品づくりが可能です。


トレーサビリティ(Traceability)

カカオ豆の生産から製品化までの履歴を追跡できること。食品の安全性や倫理的な製造への関心の高まりから重視されています。


ホワイトチョコレート(White Chocolate)

カカオマスを使用せず、ココアバター、乳製品、砂糖などで作られるチョコレート。色は白っぽく、甘さが際立ちます。

まとめ

ビーン・トゥ・バー製法は、チョコレート製造において独自性と品質への追求が際立つ手法であり、原材料のカカオ豆から始まり、製品化までのすべての過程が一貫して管理されます。このアプローチは、製品に独自の風味や特徴を与え、消費者により深いチョコレートの味わいを提供することを可能にしています。ビーン・トゥ・バーは、持続可能性や生産者との公正な取引にも焦点を当て、高品質なチョコレートを求める市場で注目を集めています。