知ってるようで知らない?バナナの種類を徹底解説!
毎日食べる身近なフルーツ、バナナ。手軽で美味しいだけでなく栄養も満点ですが、私たちが普段口にしているのは、世界に1,000種類以上あると言われるバナナのほんの一握りに過ぎません。この記事では、バナナの植物学的な分類から、生食用・調理用の違い、そして国内外の珍しい品種まで、その奥深い世界を徹底解説します。

バナナの多様性:品種数、植物分類、生食用と調理用の違い

手軽に食べられて栄養満点なバナナは、朝食やおやつとして、私たちの生活に欠かせない果物です。普段、何気なく食べているバナナですが、一体「何種類あるのだろう?」と疑問に思ったことはありませんか?バナナの世界は非常に奥深く、この記事では、バナナの種類、品種、そして主な産地について詳しく解説します。バナナは一見すると木のように見えますが、実は多年生の草本植物であり、長い栽培の歴史の中で1000種以上もの品種が生まれたと言われています。世界中で確認されているだけでも300種類以上の品種が存在し、「生食用バナナ」と「調理用バナナ」に大別されるなど、その多様性は植物学的な視点からも非常に興味深いものです。同じバナナでも、地域によって異なる名前で呼ばれたり、逆に異なるバナナが同じ名前で呼ばれたりすることもありますが、ここでは複雑になりすぎる話は割愛します。

バナナの植物学的起源と分類:草本植物としての特徴

バナナは一般的に木だと思われがちですが、実は多年生の草本植物です。その植物学的な分類は非常に興味深く、イネなどと同じ単子葉植物であるバショウ科バショウ属に分類され、食用バナナのほとんどはEumusa section(ユームサ・セクション)に属します。現在栽培されているバナナの多くはムサ・パラディシアカ(Musa×paradisiaca)とされ、これはマレー半島原産のムサ・アクミナータ(Musa acuminata)と、インド東部から太平洋諸島原産のムサ・バルビシアナ(Musa balbisiana)が交配してできたものと考えられています。特にムサ・アクミナータの遺伝子は、ほとんどすべての食用バナナに受け継がれており、バナナの分類で用いられるAABやAAAといった記号は、これらの遺伝子の組み合わせを表しています。3つの文字が並んでいるのは、バナナが3倍体であるためです。植物分類学的には、バショウ属には約90種が存在し、すべてが食用になるわけではありませんが、観賞用とされるバショウ(Musa basjoo)の果実も食べられるという報告もあります(清水, 2009)。また、ニューギニアを中心にポリネシアやメラネシアにかけては、ムサ・フェイ(Musa fehi)という別セクションに属する食用バナナもありますが、日本ではほとんど見かけることはありません。

生食用バナナと調理用バナナの違い

日本で一般的に食べられているバナナは、そのままフルーツとして食べる「生食用バナナ」が主流ですが、世界には「調理用バナナ」も存在します。調理用バナナとは、食事の材料として利用され、加熱調理して食べるバナナのことです。これらのバナナは、ジャガイモのようにデンプン質が豊富で、加熱することで本来の美味しさが引き出されます。煮込み料理や揚げ物、焼き料理など、様々な形で各地域の食文化に根付いており、生食用バナナとは異なる風味や食感が楽しめます。

日本で最も流通しているバナナ品種:キャベンディッシュ系

日本のスーパーなどで一般的に販売されているバナナのほとんどは、「キャベンディッシュ」系に属します。キャベンディッシュ・バナナの起源は、1830年にモーリシャスからイギリスのチャッツワース・ハウスに導入されたドワーフ・キャベンディッシュに遡ります。チャッツワースはキャベンディッシュ家の所有であったため、このバナナは「キャベンディッシュ」と名付けられ、そこから世界中に広まりました。この系統のバナナは、株分けなどの栄養繁殖の過程で、親株とは異なる形質を持つ変異種が出現することがあります。その中でも特に優れたものが、新たな品種として選抜・栽培されてきました。大きく育つ系統はジャイアントと呼ばれ、成株の高さや果実の形状によっていくつかの系統が存在します。なお、「種」「品種」「系統」といった分類に関する用語は、ここでは厳密な植物分類学的な用法に従っているわけではない点にご留意ください。

日本市場で主流のジャイアント・キャベンディッシュ:特徴と生産地

日本で最も普及しているバナナの種類は、「ジャイアント・キャベンディッシュ」です。これは一般的に「キャベンディッシュ」として知られています。キャベンディッシュバナナは、世界のバナナ生産量の約半分を占める、非常に一般的な品種です。主な産地はフィリピン、エクアドル、ペルーに加え、メキシコ、グアテマラ、コスタリカなどです。日本市場では約8割のシェアを誇ると言われています。この品種は1970年代から日本に流通し始めましたが、輸入元の変化や、輸入業者が差別化を図るために新しい品種を求める傾向があるため、現在の市場シェアは常に変動しています。ジャイアント・キャベンディッシュは皮が厚く、日持ちが良いのが特徴で、味はさっぱりとしています。また、標高400mから1000mの高地で栽培されたものは「高地栽培バナナ」としてブランド化され、独自のブランド名で販売されています。これらの高品質バナナは、消費者から高い評価を受けています。

チキータでおなじみ「グラネイン」の魅力

「Grand Nain(グラネイン)」はキャベンディッシュ系の一種で、日本市場で広く販売されています。特にチキータブランドのバナナとして知られ、南米やインドなどが主な産地です。グラネインは濃厚な甘さとコクが特徴で、その美味しさから多くの人に好まれています。味だけでなく、栽培面での利点も大きく、成長が早く、風に強いという特性は、生産者にとっても魅力的な点です。

世界と日本の珍しいバナナ品種

世界には、普段私たちの食卓で見かけることが少ない、珍しいバナナがたくさんあります。日本国内でも、特定の地域では、独自の気候条件に適応した希少な在来種のバナナが栽培されており、特別な存在として注目されています。ここでは、日本で手に入れることができる、特徴的なバナナの種類を紹介します。

沖縄・鹿児島で育つ「島バナナ」:濃厚な甘みと酸味

沖縄県や鹿児島県の島々で栽培されている「島バナナ(AAB)」は、その希少性と独特の風味で知られています。一般的なバナナ(ジャイアント・キャベンディッシュ)よりも小ぶりなのが特徴です。しかし、小さいながらも、甘みと酸味が非常に強く、他にない濃厚な味わいを持っています。島バナナは希少価値が高く、一般的に一房1000円を超える価格で販売されていることが多いようです。島バナナは、1888年頃に小笠原から沖縄に持ち込まれた品種とされています。遺伝子型を調べたところ、フィリピンのラツンダンバナナと同じ種類であることが分かりました。沖縄では、島で栽培されたものを「島バナナ」、フィリピンから輸入したものを「モンキーバナナ」として販売していたそうで、県民の間では同じものとして認識されていたようですが、現在もそうであるかは定かではありません。【参考】上地玄作(2003)沖縄の島バナナとフィリピンのラツンダンバナナ、熱帯動植物友の会会報、No.118。島バナナを甘く追熟させるには25℃以上の高温が必要で、美味しく食べるには、やはり現地で味わうのが一番かもしれません。【参考】清水秀男(2003)ラツンダンの試食に挑戦、同上

台湾バナナ(北蕉)

台湾では多種多様なバナナが栽培されていますが、その代表格とも言えるのが「北蕉(ほくしょう)」です。北蕉(AAA)はキャベンディッシュ種に分類される由緒ある品種で、約260年前に中国南部から台湾に持ち込まれたと伝えられています。これは、キャベンディッシュ種のルーツを辿る上で重要な示唆を与えます。台湾北部を中心に広く栽培されてきたため、「北蕉」という名が付けられました。北蕉は台湾バナナの主要品種であり、一般的なバナナ(ジャイアントキャベンディッシュ)よりも小ぶりで、全体的に丸みを帯びた形状をしています。濃厚な甘みと、きめ細かい果肉が特徴で、主な産地は台湾です。

モンキーバナナ(オリート)

「モンキーバナナ(オリート、AA、2倍体)」は、長さ約7cmほどの可愛らしい小型バナナです。一般的なキャベンディッシュバナナよりもずっと小さく、やや細長い形をしています。フィリピン産は「セニョリータ」、エクアドル産は「ボニータ」というブランド名で親しまれており、主な産地はフィリピンやエクアドルなどです。その愛らしいサイズ感と優しい甘さから、お子様のおやつや、ちょっとしたお菓子作りに最適です。ちなみに、沖縄ではラツンダンバナナがモンキーバナナと呼ばれることがあるそうです。

ラカタン

「ラカタン(Lacatan、AA、2倍体)」は、主にフィリピンで栽培されているバナナです。外見は一般的なバナナ(ジャイアントキャベンディッシュ)に似ていますが、やや小ぶりで、果皮の色が鮮やかな黄金色をしているのが特徴です。クエン酸を豊富に含んでいるため、爽やかな酸味とすっきりとした甘さが楽しめます。ここで少し注意が必要なのは、ラテンアメリカ諸国で「ラカタン」と呼ばれているバナナは、実はキャベンディッシュ系の別品種(AAA)であるという点です。これらのラテンアメリカ産のラカタンが日本に輸入されている可能性もありますが、今回は詳細な情報を確認できませんでした。

モラード(レッドバナナ)

「モラード(Morado、レッドバナナ、AAA)」は、フィリピンや中南米で栽培されている、鮮やかな赤い皮を持つバナナです。「Morado」はスペイン語で赤紫を意味します。別名レッドバナナとも呼ばれ、日本ではまだ珍しい品種として知られています。赤い皮とは対照的に、果肉は一般的なバナナ(ジャイアントキャベンディッシュ)と同様に黄色みを帯びており、甘さは控えめです。しかし、十分に熟すと、独特の芳醇な香りを放つと言われています。【参考】上地玄作(2003)フィリピン特産のバナナの味について、熱帯動植物友の会会報、No.119

銀バナナ

「銀バナナ」(学名:Musa 'Namwa Nuan')は、比較的近年の2010年頃から沖縄県で栽培が始まった比較的新しい品種です。特徴的なのは、未熟な状態の果皮が青みを帯びており、その表面に白い粉をまとったような独特の見た目が、まるで銀白色に見えることからその名が付けられました。形状は島バナナよりもさらに肉厚で、濃厚な甘みと風味が魅力です。

アイスクリームブルーバナナ

「アイスクリームブルーバナナ」は、Blue Java(ブルー・ジャバ、学名:Musa acuminata × Musa balbisiana ABB Group)という品種に属し、熟す前の果皮が青みがかった銀色に見える、非常に珍しいバナナです。他の熱帯植物と比較して耐寒性がある点が特徴的です。大きさは一般的なバナナ(ジャイアント・キャベンディッシュ種)よりも小ぶりで、ずんぐりとした形状をしています。特筆すべきはその独特な風味で、「バニラカスタード」のような甘い香りと、とろけるように柔らかい食感が楽しめます。

キウイーナ

「キウイーナ」は、フィリピンに拠点を置くスミフルバナナ研究所が、長年の品種改良の末に開発したバナナです。一般的なバナナに比べて酸味が際立っており、「まるでキウイフルーツのような」爽やかで清涼感のある味わいが特徴です。

グロスミシェル

「グロスミシェル」(学名:Musa acuminata 'Gros Michel' AAA Group)は、かつて1950年代まで世界のバナナ市場を席巻した主要品種でしたが、パナマ病の蔓延により壊滅的な被害を受けました。その後、より耐病性のあるキャベンディッシュ種が主流となり、その座を譲ることとなりました。記録によれば、1830年代にフランス人植物学者Jean Pouyat氏がカリブ海のマルティニーク島で発見したとされていますが、その起源については、マルティニーク島で自然発生的に変異したのか、それ以前にどこからか持ち込まれたものなのか、今回の調査では特定できませんでした。現在では、細々と栽培が続けられており、ミャンマーではThihmwe、マレーシアではPisang Ambon、キューバではJohnson、ハワイではBluefieldsなど、地域によって異なる名称で呼ばれています。東南アジア地域には、マルティニーク島に渡る以前の原種に近いグロスミシェルが残存している可能性も考えられます。近年、沖縄県産以外の国産バナナとして注目を集めている品種の中には、グロスミシェルを日本の技術で改良し、耐寒性を向上させたものが存在し、海外にも紹介されています。

主な調理用バナナ品種とその特徴

バナナには、そのまま食される一般的な品種の他に、加熱して食べることを前提とした「調理用バナナ」が存在します。ここでは、世界中で食されている代表的な調理用バナナの品種と、その特徴を詳しく解説します。

プランテイン(プランテン)

「プランテイン」は特定の品種名ではなく、調理用バナナのグループを指す言葉として使われることが一般的です。主成分はデンプンで、調理法はジャガイモと似ており、様々な料理に使われます。熟すと甘みが増し、生で食べることもできます。日本でよく見かけるのはフィリピン産のプランテインです。

サババナナ

「サババナナ(Saba、BBB)」は、フィリピンをはじめ、インドネシア、マレーシア、シンガポールなど東南アジア地域で栽培されている調理用バナナです。生食も可能ですが、現地では加熱調理によく使われます。日本で販売されているバナナチップの多くはサババナナが原料で、カルダバ種よりも少し柔らかく、軽い食感が特徴です。フィリピンでは、バナナケチャップという調味料の原料としても使われています。サババナナは、一般的なバナナ(ジャイアント・キャベンディッシュ)に比べて小ぶりで太く、断面が四角形または五角形に近い形をしています。

ツンドク

「ツンドク(Tindok、AAB)」は、主にフィリピンで栽培されている調理用バナナの一種です。一般的なバナナ(ジャイアント・キャベンディッシュ)よりも大きく、緑色の果皮が特徴です。形が牛の角に似ていることから、「ホーンバナナ」や「牛角バナナ」とも呼ばれます。甘みは少なく、渋みが強いため、加熱調理に適しています。

リンキッドバナナ

「リンキッドバナナ(Lingkit)」は、主にインドネシアなどで栽培されている、独特な形状を持つ調理用バナナです。その最大の特徴は、隣り合うバナナ同士が密着していることで、房全体がまるで手袋のような形に見える点です。この個性的な外観から、食卓を華やかにするアクセントとしても親しまれています。

カルダババナナ

「カルダババナナ(Cardaba、BBB)」は、リョウキュウバショウとマレーヤマバショウの交配によって生まれた、フィリピン原産の三倍体バナナです。一般的なバナナ(ジャイアント・キャベンディッシュ)と比較して、やや短く太い形状をしています。フィリピンをはじめとする東南アジア地域で広く栽培されており、その高い栄養価から、主食として、またはバナナチップスなどの軽食として親しまれています。調理法も多彩で、煮込み料理や揚げ物、焼き物など、様々な料理に活用されます。カルダバのバナナチップスは、独特の歯ごたえが特徴です。主な産地は、フィリピンや東南アジア諸国です。

まとめ

この記事では、バナナの多様な種類と品種について、植物学的な分類から、日本でよく見かける品種、さらに希少価値の高い国内外の珍しいバナナ、そして世界各地の食文化に深く根ざした調理用バナナまで、幅広くご紹介しました。世界には、私たちが普段目にすることのないバナナが数多く存在することがお分かりいただけたかと思います。近年、日本でも一部のスーパーマーケットや専門店などで、これまで見たことのないようなユニークなバナナに出会える機会が増えてきました。また、バナナの栽培が盛んな海外を訪れた際には、日本ではなかなか体験できないバナナの食べ方や、地元特有の品種を試してみるのも良いでしょう。それは、その土地の文化に触れる、忘れられない思い出となるはずです。バナナの奥深い世界を知ることで、いつもの食事がさらに豊かなものになることを願っています。


バナナは何種類くらい存在しますか?

バナナは、長い栽培の歴史の中で、世界中で1000種類以上も存在すると言われています。確認されているだけでも300種類を超える品種があり、大きく「生食用(Table Banana)」と「調理用(Plantain)」に分類され、それぞれの地域で様々な品種が栽培されています。

日本で一番よく見かけるバナナの種類は何ですか?

国内で最も多く出回っているバナナは、「ジャイアントキャベンディッシュ」という品種です。世界中で栽培されているバナナの約半分を占めており、フィリピン、エクアドル、ペルーといった国々からの輸入品が中心です。日本で販売されているバナナの約8割がこの品種で、果皮が丈夫で保存性に優れており、あっさりとした甘さが特徴です。

「島バナナ」にはどのような特徴がありますか?

「島バナナ」は、主に沖縄や鹿児島などの島しょ部で栽培されている珍しい品種です。一般的なバナナに比べて小ぶりですが、強い甘みと酸味が凝縮された濃厚な味わいが楽しめます。希少価値が高く、比較的高価で販売されています。追熟させるには25℃以上の温度が必要とされます。遺伝子レベルでは、フィリピンのラツンダンバナナと近い種類であると考えられています。

調理用バナナとは、どのようなバナナですか?普通のバナナと何が違うのですか?

調理用バナナ(プランテン)とは、加熱して食べることを前提としたバナナの総称です。普段私たちが生で食べるバナナ(生食用バナナ)とは異なり、デンプンを豊富に含んでいます。そのため、焼いたり揚げたり煮込んだりといった調理をすることで、より美味しくなります。世界各地で様々な料理に使われ、食文化に深く結びついています。

「グロスミシェル」というバナナは、今でも食べられますか?

かつて主流だった「グロスミシェル」は、1950年代にパナマ病によって大きな被害を受けました。しかし、わずかながら生き残ったものが栽培されており、ミャンマーのThihmweやハワイのBluefieldsといった名前で販売されています。また、日本の技術によって耐寒性を高めた改良品種も開発され、国産バナナとして注目を集めています。そのため、現在でも「グロスミシェル」を食べることが可能です。

リンキッドバナナ:その独特な姿と特徴

リンキッドバナナは、主にインドネシアなどの地域で栽培されている、料理に使われるバナナの一種です。その際立った特徴は、房の中で隣り合うバナナ同士がまるで手袋のように密着している点にあります。この他に類を見ない外観から、珍しい品種として関心を集めています。

バナナバナナ 種類