和梨の新品種「ほしまる」は、黒星病に強く、栽培しやすい期待の星です。この記事では、「ほしまる」の特性、開発ストーリー、栽培方法、選果の最前線までを詳しく解説します。梨農家の方はもちろん、美味しい梨を求める全ての方に、ぜひ参考にしてください。
「ほしまる」とは?中生で黒星病に強い赤ナシの新たな希望
「ほしまる」は、和梨の新しい品種であり、これまでの品種が抱えていた問題を解決し、より少ない労力で高品質な果実を育てられるように開発された、期待される品種です。特に、黒星病への抵抗力を持ちながら、味も良いという特長を持っています。収穫時期は「幸水」と「豊水」の間である8月下旬から9月上旬で、中生の赤ナシです。シールディング・マルチ栽培導入の初年度から、高品質果実の基準となる糖度12度を実現。岩崎研究員の実験では5年連続で12度を下回ったことはありません。(出典: 農林水産省『aff』2022年9月号, URL: https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2209/pdf/aff2209-all.pdf, 2022-09-01)味も優れており、見た目も良いため、全国的に広まることが期待されています。

黒星病対策の現状と「ほしまる」開発の背景
和梨の栽培において、黒星病は大きな問題であり、防ぐために何度も薬剤を散布する必要がありました。これにより、作業負担や生産コストが増え、薬剤に強い菌の出現や気候変動の影響も加わり、黒星病の発生は深刻になっています。このような状況から、黒星病に強い品種の開発が強く求められていました。過去には「ほしあかり」という抵抗性品種も開発されましたが、木の勢いが弱く、果実の見た目に課題があり、普及しませんでした。「ほしまる」は、これらの問題を克服し、味が良く見た目も良い黒星病抵抗性品種として開発されました。
「ほしまる」の開発ストーリー:交配から選抜、試験栽培を経て
「ほしまる」は、2006年に中生の青ナシ「秋麗」と、黒星病と黒斑病の両方に抵抗性を持つ赤ナシ「ほしあかり」を掛け合わせて開発されました。2007年には黒星病の感染テストと、黒星病抵抗性に関連するDNAマーカーによる選抜を行い、抵抗性のある幼い苗を選びました。2009年に選抜用の畑に植え、黒星病抵抗性と果実の品質の高さから2014年に一次選抜されました。その後、2015年から「ナシ筑波62号」として系統適応性検定試験に提供され、特性が調査された結果、2021年度に新品種候補となり、品種登録迅速化総合電子化システム(農林水産省)によると、「ほしまる」(出願番号:第18350号)は2022年6月15日に出願され、2022年9月29日に出願公表されています。現時点(2025年7月12日)で「登録完了」や「登録年月日」の記載はなく、品種登録は完了していません。(出典: 品種登録迅速化総合電子化システム(農林水産省), URL: https://www.hinshu2.maff.go.jp/vips/cmm/apCMM112.aspx?TOUROKU_NO=18350&LANGUAGE=Japanese, 2022-09-29)
「ほしまる」の特性:育てやすさと品質の高さ
「ほしまる」は、木の勢いが"中"程度で、枝の発生は"やや多"いです。短い枝への実の付き方は"少"ないですが、えき花芽(葉の付け根にできる花芽)の付き方は多いという特徴があります。育成地である茨城県つくば市での開花時期は「幸水」と「豊水」の間で、収穫時期は8月下旬~9月上旬、「幸水」の一週間後くらいです。最も重要な特性として、黒星病に対して"抵抗性"を持つことが挙げられます。さらに、「幸水」や「豊水」と同様に黒斑病にも抵抗性があります。果物の形は"扁円"で、筋の発生は見られず、整った見た目の赤ナシであるため、市場で高く売れることが期待できます。7年生の木における1本の木あたりの収穫量は、「幸水」や「豊水」よりやや少ない傾向にあります。果実の大きさは408gで、「幸水」より少し大きく、「豊水」より小さいです。果肉の硬さは「幸水」より低く、「豊水」と同程度で、果肉は柔らかいです。果汁の糖度は13.3%と「幸水」や「豊水」よりも高く、pH5.00で味はほとんど酸味を感じることなく、美味しいです。岡山県のモモ栽培における気象変動が生理障害発生に及ぼす影響についての調査では、心腐れや赤肉症などの内部障害について、果肉の1~2割程度の発生を「軽度」とし、発生率が高い場合には収量性が著しく低下するなど生産者にとって重要な問題となると報告されている。発生率の具体的な数値や頻度については、園地や樹齢、気象条件によって大きく異なるが、一定の被害報告は継続的に存在している。(出典: 岡山県『岡山県のモモ栽培における気象変動が生理障害発生に及ぼす影響の調査報告』, URL: https://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/778042_7231789_misc.pdf, 2022-03)

「ほしまる」の農薬削減効果と今後の展望
品種「ほしまる」は、黒星病への優れた抵抗性を持つため、様々な環境下での試験においても病気の発生は見られず、農薬の使用量削減に貢献すると期待されています。これにより、栽培農家の作業負担軽減やコスト削減に繋がります。また、遺伝子型はS3S5であり、「豊水」とは相性が悪いものの、「幸水」や「新高」、「二十世紀」、「あきづき」などの主要品種とは交配可能です。現在、全国各地で試験栽培が進められており、多くの地域で良好な結果が得られています。「ほしまる」は、全国への普及が見込まれ、今後の梨栽培に大きな影響を与える可能性があります。苗木の販売は、供給体制が整い次第、開始される予定です。
まとめ
新品種「ほしまる」の誕生は、日本の梨栽培に新たな可能性をもたらします。黒星病への抵抗力は農薬削減に貢献し、環境負荷の軽減にもつながります。その美味しさと美しい外観は、消費者にも喜ばれるでしょう。今後の「ほしまる」の普及が、日本の梨産業の発展に寄与することを期待します。
梨の新品種「ほしまる」は、どこで手に入りますか?
「ほしまる」の苗は、準備が整い次第、販売が始まる予定です。詳しい情報や販売時期については、各苗木を販売している業者にお問い合わせください。
「ほしまる」には、どんな良いところがありますか?
「ほしまる」は、黒星病に強く、甘みが豊かで美味しい赤梨です。収穫時期は8月の終わりから9月の初めで、「幸水」と「豊水」の間くらいです。形は平たく丸みを帯びており、見た目も美しいのが特徴です。
梨栽培における黒星病対策:効果的な予防策とは?
黒星病から梨を守るためには、計画的な薬剤散布が不可欠です。加えて、日光が十分に当たり、風通しを良くする剪定作業や、黒星病への抵抗力を持つ品種を選ぶことも有効な手段となります。例えば、「ほしまる」のように黒星病に強い品種を選ぶことは、農薬の使用量を減らすことにつながり、環境への負荷を軽減できます。