エアルームトマトとは？：固定種ならではの魅力と栽培方法

スーパーで見かけるトマトとは一線を画す、「エアルームトマト」。その名前に聞き覚えはなくても、固定種ならではの個性豊かな姿や味わいに魅了される人は少なくありません。この記事では、エアルームトマトとは何か、F1品種との違い、そして家庭菜園で育てる魅力について解説します。一味違うトマトの世界を覗いてみませんか？

多様な野菜の中でも、エアルームトマトは特に個性的で興味深い存在です。一般的な赤や黄色のトマトに加え、白、茶色、オレンジ色、完熟しても緑色のものなど、色彩豊かで形や大きさも様々です。日本では、エアルーム野菜を栽培する農家は多くなく、市場に出回ることも少ないですが、その魅力は尽きることがありません。私も昨年、友人から赤緑ゼブラ、オレンジ、紫色の3種類の苗を譲り受け、共同菜園で育てました。夏野菜の定番であるトマトは、今年も近所の人が様々なエアルームトマトの苗を植えており、収穫が待ち遠しいです。園芸研究家の園芸研究家の御倉多公子さんはエアルームトマトの多様な色彩や形に魅了され、栽培を始めました。御倉多公子［オンクラタキコ］ 園芸研究家。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒。アパレル会社宣伝部を経てフリー。グリーンアドバイザー神奈川理事。RHSJ（英国王立園芸協会日本支部）理事。著書に『トマトマニア―菜園から食卓へ』があります。 (出典: 講談社『トマトマニア―菜園から食卓へ』著者紹介, URL: https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784062784115, 2007-07-101998年、御倉さんは英国王立園芸協会の専門誌「The Garden」に掲載された「赤くないトマト」という記事に心を奪われたそうです。翌年の1999年には、キッチンガーデンクラブの仲間が海外のカタログから取り寄せた「Persimmon」、「Pineapple」、「Tigerella」など5種類の種から栽培を始め、御倉さんのエアルームトマト栽培が始まりました。特に印象的だったのは、初めて育てた年に収穫した「Tomato Wonderlight」でした。まるでレモンのような色と形をしたトマトに驚いたそうです。気になる味について御倉さんは、「しっかりトマトの味がしました（笑）。でも、レモンみたいなのにトマト味!? というギャップが面白くて、どんどんハマっていきました」と語っています。20年以上にわたり500種類以上のエアルームトマトを栽培し、生育状況や実の重さ、大きさ、形、糖度、酸度、食味などを記録し続けている御倉さんは、一般的なトマトにはない魅力があると語ります。それは単なる珍しさだけでなく、多様な個性と歴史に根ざした奥深さです。

一般的にイメージするトマトの色は、赤、オレンジ、黄色などの暖色系ですが、最近は緑や黒色のトマトもスーパーで見かけるようになりました。しかし、エアルームトマトの世界は、想像を超える色彩にあふれています。皮の色だけでなく、果肉の色も多様です。御倉さんによると、「皮が白いのに果肉が赤いトマトはピンク色に見え、逆に皮が赤くても果肉が白い品種もピンク色に見える」そうです。他にも、レモンイエロー、肩の部分が緑色の赤色、縞模様、桃のような手触りのものなど、様々なエアルームトマトに出会えたと言います。特に印象的だったのは「Big Rainbow」という品種です。黄色、白、オレンジ、赤、ピンク、緑色が混ざり合った虹のような色彩は、見た目にも楽しませてくれます。これらの色や柄は、食卓を華やかにし、エアルームトマトならではの視覚的な喜びを与えてくれます。

エアルームトマトの魅力は、形にも表れています。一般的な丸形だけでなく、ミニトマトで見かける楕円形や卵形、バナナのような細長い形、ひょうたん型、タコ足のように割れ目が入ったもの、イチゴ型、ハート型、プリーツ形など、バリエーションは豊富です。御倉さんがお気に入りの、ドイツ語で「巨大なトマト」を意味する「Riesentomate aus Siebenburgen」は、お尻にミニトマトのような凸凹があるユニークな形をしています。 『Riesentmate』という表記は、主要なドイツ語農業文献、種苗カタログ、学術論文、植物品種データベース等において確認できませんでした。 (出典: Deutsche Genbank Tomaten (German Tomato Gene Bank) 品種データベース, URL: https://www.genbank-tomaten.de/sortenliste.html, 2024-01-01)見た目の楽しさと面白さがある多様な形状は、家庭菜園で育てる大きな魅力であり、収穫ごとに新たな発見をもたらしてくれるでしょう。

トマトの原産地であるアンデスで自生していた原種は、現在のミニトマトよりも小さいマイクロトマトくらいの大きさだったと言われています。メキシコを経由してヨーロッパに伝わり、世界中に広がる過程で様々な品種が生まれ、大きさも多様になりました。エアルームトマトも、その大きさは様々です。御倉さんが栽培した中には、直径7〜9mmのマイクロトマトから、両手で抱えるほどの巨大な、直径140〜160mm、重さ700〜800gにもなるものまであったそうです。このような幅広い大きさは、用途に合わせて品種を選ぶ楽しみを提供し、家庭菜園の収穫を豊かにしてくれます。小さなマイクロトマトからメロンのような巨大トマトまで、エアルームトマトはあらゆるサイズで私たちを魅了します。

エアルームトマトの真価は、見た目の華やかさやサイズのバリエーションだけに留まりません。収穫したエアルームトマトをカットし、その断面を観察すると、品種ごとに果肉の密度、空洞の有無、そしてゼリー質の量が大きく異なることが見て取れます。果肉がぎっしり詰まっているもの、内部に適度な空間を持つもの、みずみずしいゼリー状の部分が豊富なものなど、その内部構造は多種多様です。この内部構造の違いを理解することで、エアルームトマトの特性を最大限に活かした調理法を選択できると専門家は指摘します。例えば、「果肉が緻密でゼリー質が少ないエアルームトマトは、水分が出にくいという特性から、ハンバーガーやサンドイッチの具材として最適であり、シンプルに焼くだけでも格別な味わいが楽しめる」と語ります。また、内部が空洞になっているユニークな品種は、チーズやひき肉を詰めて、ピーマンの肉詰めのように「エアルームトマトの肉詰め」として創造的に調理できます。このように、エアルームトマトは、それぞれの個性を活かした多彩な調理法を提供し、食卓に新たな発見と感動をもたらしてくれるでしょう。ぜひ、エアルームトマトを使った肉詰めを試してみてはいかがでしょうか。その独特の風味と視覚的な魅力は、忘れられない食体験となるはずです。

エアルームトマトの品種名は、その個性を際立たせる、なんとも魅力的なセンスに満ち溢れています。その名前を聞いただけで、トマトがどのような特徴を備えているのか想像力が刺激されます。たとえば、「Tiger」と名付けられた品種は、まさしくトラを彷彿とさせる美しい縞模様が特徴です。「Oxheart」は、その名前が示す通り、「雄牛の心臓」を意味し、独特のハート形をしています。また、「Juliet」は、へたの部分がすっと伸びており、まるで洗練された美人のような印象を与えます。そして、「Beefsteak」という名前の大きなエアルームトマトは、輪切りにすると、その厚い果肉がビーフステーキのように見えることから名付けられたと言われています。これらの名前は、トマトの見た目や特性を巧みに捉えており、品種を選ぶ段階から私たちを楽しませ、栽培する喜びを深めます。

本来、野菜は甘味、酸味、苦味、辛味、渋みなど、複雑で豊かな風味を湛えています。F1品種は、病害虫への耐性、収量の安定性、流通のしやすさなど、生産者や消費者にとって多くのメリットがあります。F1品種が安定した品質や収量性を追求する一方で、エアルームトマトは風味の多様性や歴史的な背景に魅力があると言えるでしょう。近年、私たちがよく口にするトマトは、フルーツトマトや塩トマトのように、際立った甘さが注目され、それが美味しいトマトの基準となっている傾向があります。しかし、ある園芸研究家は、「昔のトマトの味を思い返すと、甘さだけでなく、酸味や野性的な青臭さなど、様々な味が鮮明に蘇ってきます」と述べています。エアルームトマトの味わいは、単に「甘い」という言葉だけでは表現できない、複雑で奥深いものです。例えば、ある人がファーマーズマーケットで手に入れた4種類のエアルームトマトを比較試食したところ、赤色のトマトは濃厚なコクがあり、緑色のトマトはみずみずしくジューシーで、赤と緑のストライプ柄のトマトは赤と緑の中間的な味わい、そして黄色のトマトは青臭さが少なく、まるでフルーツのような風味がありました。これらの味はどれも、一般的なF1ハイブリッド種のトマトに比べて青臭さが控えめで、甘すぎず、濃厚で、優しく自然な味わいでした。日本の品種改良によって甘味を強調し、フルーツのように変化したトマトとは、その目的が異なります。自分の国より美味しいと感じた野菜について、最も回答の多かった順に「トマト」「カボチャ」「サツマイモ」が上がりました。中国の男性はトマトについて「種類が多い」と回答しました。その他、インドネシアの女性は「生で食べても甘くておいしい」と答えた。カボチャについて、アメリカの男性が「小さくて簡単に料理ができる点で全く違う」。サツマイモについてはドイツの男性が「新鮮さや品質の安定」の点で違うと述べました。 (出典: 世界の食文化と日本に対する意識調査（JACOM）, URL: https://www.jacom.or.jp/yasai/news/2016/02/160209-29102.php, 2016-02-09)ある専門家は、新しいエアルームトマトを育てるたびに、品種ごとに異なる繊細な味の違いに驚きと喜びを感じると語ります。この多様な味わいこそが、現代の画一化されたトマトにはない、エアルームトマトならではの魅力なのです。一口食べれば、忘れかけていた昔のトマトの記憶が呼び覚まされるような、奥深さを体験できるでしょう。

エアルームトマトの栽培を始めた当初から、ある専門家は収穫したトマトに甘みや酸味だけでなく、まるで昆布のような「旨味成分のコク」を強く感じていたそうです。当時、一般的にはまだ知られていませんでしたが、近年では昆布と同じグルタミン酸がトマトに含まれていることは広く知られています。しかし、その専門家が感じていた旨味は、当時まだ科学的に完全に解明されていなかった、あるいは一般的なトマトでは感じにくいほどの、品種によって際立って深く豊かな旨味でした。料理に使用することで、より一層奥深い味わいと複雑な風味をもたらし、食卓を豊かに彩ります。

エアルームトマトの栽培は、種から育成するという点を除けば、一般的な家庭菜園におけるトマト栽培（露地栽培）と大きく異なる点はありません。栽培の成否を左右する主な要素は、選択したエアルームトマトの品種が、日本の気候、特に多雨となる梅雨の時期や、真夏の厳しい暑さに耐えられるかどうかにかかっています。多くの伝統野菜や在来種と同様に、その土地の環境への適応力を持っているため、意外にもエアルームトマトは、十分な日照条件さえ確保できれば、丈夫に育ちやすい品種が多いとされています。適切な品種選びと、基本的な管理をしっかりと行えば、初心者の方でも、個性豊かなエアルームトマト栽培に挑戦することができるでしょう。

エアルームトマトの種は、通常の園芸店やホームセンターでは、まだあまり目にすることが少ないかもしれません。しかし、主にオーガニックの種を専門に扱うオンラインストアやウェブサイトでは、非常に多くの種類のエアルームトマトの種を入手することができます。また、近年では、農業イベントや種子交換会などで、珍しい品種の種に出会えるチャンスもあるでしょう。一般的なF1品種の種と比較して、エアルームトマトの種はやや高価に感じられるかもしれませんが、その希少価値と、一度入手すれば収穫した実から次世代の種を採取できるという長期的な視点で見れば、十分にその価値はあると言えるでしょう。インターネットを有効活用して、あなたにとってお気に入りのエアルームトマトを探し出してみましょう。

トマトの原産地であるアンデス地域や、温度管理が行き届いた温室栽培環境では、適切な温度が維持されていれば一年を通して生育し、収穫を継続することが可能です。しかしながら、寒さの厳しい冬が存在する日本の露地栽培においては、エアルームトマトも通常は一年草として扱われ、低温期には生育が止まり、枯れてしまいます。そのため、多くの地域では春に種をまき、夏から秋にかけて収穫を楽しむのが一般的な栽培スケジュールとなります。ただし、雨風をしのげ、ある程度の暑さや寒さを防ぐことができるベランダのような場所や、霜の影響を受けにくい温暖な地域では、品種によっては越冬する場合もあると言われています。これは、品種の特性や地域の気候条件、栽培環境によって異なってくるため、冬越しに挑戦してみる価値は大いにあるでしょう。越冬に成功すれば、通常よりも長くエアルームトマトの収穫を堪能できる可能性があります。

これからエアルームトマトを育てようと考えている方々へ、園芸研究家の御倉多公子さんから貴重なアドバイスが寄せられました。「エアルームトマトの種は、一般的な種に比べて少し高価ではありますが、発芽率が高い品種が多いので、近隣の菜園仲間と種を分け合って育苗するのも良い方法です。トマトは夏野菜というイメージが強いですが、霜が降りる直前まで生育を続け、比較的遅い時期まで収穫を楽しむことができます。特に梅雨時期の水分を多く含んだトマトとは異なり、徐々に寒くなる季節に収穫したトマトは、味が格段に濃厚になります。このように、収穫時期によって変化するエアルームトマトの味の違いも、ぜひ堪能していただきたいです」と御倉さんは語ります。さらに、「実際に育ててみて感じたことですが、異なる品種のエアルームトマトをいくつか栽培してみると、品種同士がお互いの生育を助け合っているように感じることがあります。畑のスペースが許す限り、できるだけ多くの品種を栽培してみることをお勧めします」と、多種多様な品種を一緒に栽培することの利点を強調します。そして、「単一種類のトマトだけでなく、できるだけ多くの種類を組み合わせて作ったエアルームトマトのソースは、信じられないほどおいしさが際立ちます。複雑で奥深い、味わい豊かなエアルームトマトのソースの味を、ぜひ一度味わってみてください」と、収穫後の楽しみ方についても言及しました。ソース以外にも、エアルームトマトをそのまま炊き込んだトマトご飯や、カレーに加えることで、より深みのある味わいが生まれると教えてくれた御倉さんの話を聞き、私自身もエアルームトマトの魅力にますます引き込まれてしまいました。

エアルームトマトの際立った特徴は、収穫したトマトから種を採取し、翌年の栽培に使用できる点です。これは、F1品種とは大きく異なります。F1品種は一代限りの交配種であるため、採取した種から親株と同一の特性を持つ植物を育てることは困難です。しかし、エアルームトマトは固定種であるため、種からでも親株と変わらない特性を受け継ぐ作物を育てることが可能です。「エアルームトマト 種 保存」といったキーワードで検索すれば、種を採取する方法を解説する動画や記事が簡単に見つかります。ただし、高価なエアルームトマトを購入し、種を採取するためだけに潰してしまうと、翌年その品種ばかりを栽培することになるかもしれません。少量しか種が必要ない場合や、さまざまな種類を楽しみたい場合は、苗を購入したり、共同菜園で栽培している人と分け合ったりする方が、より多くの品種を楽しむことができます。私自身、市場で商品を購入するスタイルから、物々交換や資源の共有といった新しい形に移行しつつあると感じています。種をまき、収穫し、来年のために種を保存する。このサイクルを繰り返すことで、その土地の気候や土壌に適応し、栽培者の手によって地域や家庭に特有のエアルームトマトが生まれる可能性があります。F1品種にはないこの「種採り」のサイクルこそが、エアルームトマトの魅力であり、過去から未来へと続く生命の連鎖を実感させてくれます。来春、個性豊かなエアルームトマトの種を準備し、奥深い世界に足を踏み入れてみませんか。自分だけの特別なトマトを育てる喜びを体験してください。

エアルームトマトは、単なる野菜ではなく、代々受け継がれてきた歴史や文化、多様な個性が凝縮された「生きた遺産」です。F1品種がもたらす均一性や安定性とは異なり、その色、形、大きさ、そして味わいは、私たちに驚きと感動を与えてくれます。園芸研究家の経験から語られる「複雑な旨味」や「最適な調理法を探求する楽しみ」は、エアルームトマト栽培の大きな魅力です。また、北米での人気や取り組みが示すように、品種改良が進んだ現代農業に対し、エアルーム野菜は本来の風味や多様性を取り戻すための重要な選択肢となります。種採りが可能であるという特性は、その土地に適応した独自の品種を育てる喜びをもたらし、家庭菜園を単なる収穫の場から、生命を育み、未来へと繋ぐ場へと変えます。エアルームトマトを美味しく味わうための購入方法や熟成のヒントを活用し、その豊かな食生活を体験してください。この記事が、エアルームトマトの世界への扉を開き、家庭菜園をより豊かにする一助となれば幸いです。ぜひ、個性豊かなエアルームトマトを育てて、その可能性と魅力を体験してみてください。

エアルームトマトは、「受け継がれてきた宝物」を意味する、遺伝的に安定した固定種のトマトです。その名前は「家宝」を意味するとも言われ、特定の地域で長年栽培され、その土地の環境に適応した品種を指します。一般的に、50年以上自家採種と選抜が繰り返された品種を指し、一般的なF1品種とは異なり、収穫した実から種を採ることで、親と同じ特性を持つトマトを次世代へと育てることができます。多様な形、多くの品種、そして伝統的な農業コミュニティで受け継がれてきた歴史が特徴です。

F1品種は、異なる親を掛け合わせて作られた一代限りの雑種であり、病気への耐性や収量性、均一性などの優れた形質を一時的に発現させることを目的としています。F1品種から種を採っても、親株と同じ特性を持つ植物を育てることは困難です。また、大量生産や輸送のために改良されている側面もあります。一方、エアルームトマトは固定種であり、遺伝的に安定しているため、種を採取することで同じ特性を持つトマトを継続して育てることが可能です。品種開発者や流通の都合ではなく、自然な選抜と地域適応によって個性を確立してきた点が大きな違いです。

エアルームトマトが人々を惹きつける理由は数多くあります。まず目を引くのは、その信じられないほどの色彩の多様性です。定番の赤色はもちろん、鮮やかな黄色、フレッシュな緑色、ミステリアスな黒色、高貴な紫色、そしてそれらが織りなす美しい縞模様など、まるでアートのような色彩をしています。果肉の色もまた、千差万別です。形もまた、私たちの想像力を掻き立てます。真ん丸なものから、愛らしいハート形、ユニークなバナナ形、エレガントなプリーツ形まで、実に多彩です。サイズもまた、驚くほど幅広く、直径わずか7〜9mmほどのマイクロトマトから、直径が16cmにも達し、重さが700〜800gにもなる巨大なものまで存在します。果肉の密度やゼリー質の量も品種によって異なり、ジューシーなものから肉厚なものまで、料理に合わせて最適なものが選べます。そして何よりも、その味わいは格別です。ただ甘いだけでなく、爽やかな酸味、大地の恵みを感じさせる野性味、そして滋味深い旨味が複雑に絡み合い、忘れられない味のハーモニーを奏でます。これは、現代の日本のF1品種にはなかなか見られない、風味の絶妙なバランスです。実際に様々なエアルームトマトを試食してみると、赤いトマトは濃厚なコクが特徴的で、緑色のトマトはみずみずしくジューシー、黄色のトマトはまるでフルーツのような甘さを持っているなど、それぞれの品種が独自の個性を主張していることに気づかされます。さらに、それぞれの品種が持つ「物語」も、エアルームトマトの大きな魅力の一つです。

最高のエアルームトマトに出会える場所は、ファーマーズマーケット、中でも特にトマトを専門に扱っているお店です。また、Trader Joe’sやWhole Foodsなどの高級スーパーマーケットでも、オーガニックのエアルームトマトを見つけることができ、比較的簡単に手に入れることができます。ただし、オーガニック栽培のものはどうしても価格が高めになる傾向があります。色々な種類を少しずつ試して、それぞれの色や自然な風味を堪能するのがおすすめです。手に入れたエアルームトマトをさらに美味しく食べるためには、「追熟」が欠かせません。スーパーなどで購入したトマトは、室温で、互いに重ならないように並べて追熟させましょう。冷やして食べるのが好きな場合は、食べる直前に冷蔵庫に入れるのがおすすめです。追熟させることで、トマト本来の甘みと風味が最大限に引き出され、感動的な美味しさを体験できます。

エアルームトマトの栽培は、種から育てる場合を除けば、一般的なトマトの露地栽培と大きく変わる点はありません。ただし、発芽や生育にはばらつきが見られ、収穫量もF1品種に比べると少ない傾向があります。また、形や大きさが均一でなかったり、日持ちがしにくいといった課題もあります。しかし、日本の気候、特に梅雨の湿気や真夏の暑さに適応できる品種を選べば、十分な日光のもとで元気に育つものもたくさんあります。複数の品種を一緒に育てることで、互いの生育を助け合う効果が見られることもあります。種は、一般的な園芸店ではあまり見かけませんが、オーガニックの種を専門に扱うウェブサイトやオンラインストア、専門のイベントや種交換会などで手に入れることができます。自家採種も可能なため、一度手に入れれば長期的に栽培を楽しむことができます。たくさんの種が必要というわけではないので、色々な品種を試したい場合は、苗を購入したり、共同菜園の仲間と分け合ったりするのも良い方法です。これは、お金を介した取引から、物々交換へと回帰する動きの一つの表れとも言えるかもしれません。