「目に良い」果物として知られるブルーベリー。その栽培は意外と簡単で、初心者の方でも気軽に始められます。この記事では、苗の選び方から植え付け、日々の管理、そして収穫までの全工程を、わかりやすく丁寧に解説します。庭がないマンションのベランダでも、プランターで育てられるのが魅力。甘くて美味しいブルーベリーを、ご自宅で育ててみませんか?この記事を読めば、ブルーベリー栽培の基本がマスターできます。
ブルーベリーとは?基本情報と栽培の魅力、健康効果
ブルーベリー(英語名:blueberry)は、ツツジ科スノキ属(Vaccinium)シアノコカス節に属する北米原産の落葉低木です。別名ヌマスノキとも呼ばれています。その名前の由来は、愛らしい釣鐘型の白い花を咲かせ、やがて深みのある青紫色に熟す果実の美しさにあります。ブルーベリーのルーツは南米にあり、カリブ海を経て北米へと伝わりました。20世紀初頭からアメリカやカナダ原産の種を用いた本格的な品種改良が始まり、今日では世界の温暖な地域で広く栽培されています。樹高は通常1〜3m程度で、庭植えはもちろん、ベランダやテラスといった限られたスペースでも鉢植えやプランターで気軽に栽培を楽しめます。

ブルーベリーは、その丈夫な性質から病害虫に強く、比較的容易に育てられるため、ガーデニング初心者や家庭菜園に挑戦する方にもおすすめです。春にはスズランのような可憐な白い花が咲き、夏には豊かな実りを迎え、秋には美しい紅葉が楽しめるため、一年を通して様々な表情を見せてくれます。収穫した果実は、そのまま生でヨーグルトやアイスクリーム、ケーキなどの乳製品を使ったデザートに添えるのはもちろん、ジャムや自家製のお菓子作りに活用でき、食卓を豊かに彩ります。完熟したものから少しずつ収穫して生で味わうのも、まとめて冷凍保存して後から調理するのも良いでしょう。実をつけなくても観葉植物として楽しめるなど、個人の好みに合わせた栽培が可能な点も大きな魅力です。
「ブルーベリーは目に良い」という話は広く知られていますが、これは科学的な裏付けがあります。特にブルーベリーの野生種であるビルベリーに豊富に含まれるアントシアニンは、視機能の改善に効果があると言われています。また、ブルーベリーにはビタミンAも豊富に含まれており、目の健康維持だけでなく、皮膚や鼻、喉などの粘膜を保護する働きや、夜盲症を予防する効果も期待できるため、健康維持に役立つ果物として注目されています。
ブルーベリーの基本情報概要
ブルーベリーの栽培を始めるにあたり、基本的な情報を把握しておくことは非常に重要です。以下に、その学術的な分類、生態、栽培における特性をまとめました。 学名:Vaccinium 科名:ツツジ科 別名:ヌマスノキ 原産地:北アメリカ 分類:落葉低木 草丈(樹高):1~3m 収穫期:6月~9月上旬 受粉:必要 耐寒性:強(ハイブッシュ系)・弱(ラビットアイ系) 耐暑性:中(ハイブッシュ系)・強(ラビットアイ系) これらの情報は、品種選びや栽培計画を立てる上で参考になります。
ブルーベリーの種類と品種選びのポイント
現在、日本で栽培されているブルーベリーの品種は100種類を超え、その多様性から、お住まいの地域の気候条件や栽培環境、求める果実の品質に応じて最適な品種を選ぶことが、栽培成功の鍵となります。これらの品種は主に「ハイブッシュ系」と「ラビットアイ系」の2系統に大別されます。この他に「ローブッシュ系」もありますが、これは野生種(ワイルドブルーベリー)であり、日本では一般的に栽培されていません。品種を選ぶ際には、各系統の特性に加え、特定の品種が持つ耐寒性、耐暑性、果実の大きさや味、樹高などを考慮することが重要です。
ハイブッシュ系
ハイブッシュ系は、その優れた味と大粒の果実が最大の魅力ですが、他の系統に比べて栽培がやや難しいとされています。この系統はさらに、ノーザンハイブッシュ系とサザンハイブッシュ系に分けられ、それぞれ異なる気候への適応性を持っています。
ノーザンハイブッシュ系
ノーザンハイブッシュ系は、北米原産の野生種を改良した系統で、耐寒性に優れている点が大きな特徴です。冬の寒さにしっかりと当たることで、生育が促進され、実り豊かな収穫に繋がります。ただし、暑さや乾燥にはやや弱い性質があるため、日本の寒冷地、特に積雪地帯である関東地方以北での栽培に最適です。代表的な品種としては、以下のものが挙げられます。
-
チャンドラー:ブルーベリーの中でも最大級の大きさを誇る品種で、甘みと酸味の絶妙なバランスが魅力です。生でそのまま食べるのがおすすめです。
-
スパルタン:大粒で非常に良質な実をつけますが、栽培にはやや高度な技術が求められます。適切な管理を行うことで、最高品質のブルーベリーを収穫できます。
サザンハイブッシュ系
サザンハイブッシュ系は、ノーザンハイブッシュ系をベースに改良された品種で、耐寒性はやや劣りますが、温暖な気候を好む性質があります。そのため、日本の温暖な地域、具体的には東北地方南部から沖縄までと幅広いエリアでの栽培に適しています。冬の寒さが厳しい地域を避け、比較的温暖な地域であれば、安定した生育と収穫が期待できます。代表的な品種は以下の通りです。
-
サンシャインブルー:実がなりやすく、味も良いため、初心者でも育てやすい品種です。可愛らしいピンク色の花を咲かせるため、観賞用としても楽しむことができます。
-
オニール:非常に強い甘みが特徴で、食味に優れています。早生品種であるため、比較的早い時期に収穫できるのも魅力です。
ラビットアイ系
ラビットアイ系は、ハイブッシュ系と比較して、育てやすさが際立つ品種です。名前の由来は、果実が熟す前にウサギの目のようにピンク色になる可愛らしい姿からきています。土壌への適応力が高く、生育も旺盛なため、特に初心者の方におすすめです。ハイブッシュ系に比べて樹高が高くなる傾向があるため、庭などある程度のスペースを確保できる場所での地植えに適しています。ただし、耐寒性はハイブッシュ系よりも低いため、東北地方以北の寒冷地での栽培には不向きです。代表的な品種としては、以下のようなものがあります。
-
フェスティバル:非常に多くの実をつけ、生育も旺盛な品種です。病害虫にも比較的強く、育てやすいのが大きな魅力です。
-
ホームベル:小粒から中粒の実をつけ、甘みが強いため、家庭菜園で人気があります。収穫量も安定しているのが特徴です。
ベランダ・鉢植え栽培におすすめの品種
ベランダや限られたスペースでブルーベリー栽培を検討している場合、品種選びが成功の鍵を握ります。鉢植えで育てる場合は、樹高が低く、コンパクトにまとまるハイブッシュ系の品種がおすすめです。中でも、サザンハイブッシュ系の「サンシャインブルー」は、樹形がコンパクトで場所を取らないため、ベランダ栽培に最適です。日当たりの良い場所を好みますが、半日陰の環境でも十分に栽培できるため、日照時間が限られるベランダでも育てやすいでしょう。
ブルーベリー栽培の準備:土壌環境と鉢・場所の選び方
ブルーベリーを元気に育てるためには、土壌の酸度管理が非常に大切です。ブルーベリーはpH5.0程度の酸性土壌を好みます。特にハイブッシュ系は酸性土壌でなければ、生育が悪くなり、枯れてしまうこともあります。ハイブッシュ系にはpH4.3~4.7、ラビットアイ系にはpH4.3~5.3が理想的です。庭の土が過去に石灰などで処理されている場合は、pHがアルカリ性に傾いている可能性があるため、市販の測定キットで事前に確認しましょう。pH7.0以上の土壌では、ブルーベリーは育ちにくいです。酸性に加えて、有機物が豊富で水はけと保水性のバランスが取れた土壌が最適です。
鉢植えで育てる準備
鉢植えの場合、ブルーベリーの生育サイズはプランターの大きさに左右されます。小さく育てたい場合は小さめのプランターを、大きく育ててたくさん収穫したい場合は大きめのプランターを選びましょう。基本的には、苗木の根鉢よりも一回り大きな鉢を選ぶのがおすすめです。ブルーベリーは横方向に根を張るため、深い鉢よりも幅広の鉢の方が適しています。鉢の材質は、安価なプラスチック製でも構いませんが、通気性や水はけを考慮すると素焼き鉢がより適しています。素焼き鉢は土壌の湿度を適切に保ちやすいです。鉢底には必ず水抜き穴があるものを選びましょう。穴がない場合や小さい場合は、根腐れの原因になるため避けてください。
鉢植え用の土としては、市販のブルーベリー用培養土(pH4.5程度に調整済)を使うのが簡単です。もし手に入らない場合は、pH無調整のピートモスを5〜10、鹿沼土を0〜5の割合で混ぜ、pH5.0前後の酸性土壌を作りましょう。ピートモスは、ミズゴケなどが堆積してできたもので、酸性度が高く、土壌のpH調整に使われます。市販のピートモスにはpH調整されたものもあるので、必ずpH無調整のものを選んでください。乾燥したピートモスは水をはじきやすいため、植え付け前日にバケツに水を入れ、十分に湿らせてから使用しましょう。
庭植えで育てる準備
庭植えでブルーベリーを育てる際は、日当たりの良い場所を選ぶことが重要です。ブルーベリーは日光を好むため、十分な日照時間が生育と収穫に大きく影響します。ただし、夏の強い日差しは葉焼けの原因になることがあるため、必要に応じて日陰を作るなどの対策を検討しましょう。また、ブルーベリーは成長すると大きくなるため、苗を植える際は、将来的な成長を考慮して2メートル程度の間隔を空けて植えましょう。十分なスペースを確保することが大切です。
庭植えの場合も、土壌のpH調整は必要です。掘り起こした庭土に、pH無調整のピートモスを混ぜて、pH5.0前後の酸性土壌に調整します。庭土、ピートモス、赤玉土小粒を3:5:2の割合で混ぜ合わせるのがおすすめです。中性や弱酸性の土壌では、ブルーベリーは育ちにくく、枯れてしまうこともあります。ピートモスは乾燥していると水をはじきやすいため、植え付け前日に水に浸して十分に湿らせてから使用しましょう。
栽培場所の環境調整
ブルーベリーの栽培場所を選ぶ際は、日当たりと風通しを考慮しましょう。ブルーベリーは日当たりの良い場所を好むため、半日陰から日当たりの良い場所が最適です。ただし、真夏の直射日光は強すぎるため、日陰に移動させるなどの対策が必要です。冬の寒さ対策も重要で、特に寒冷地では、気温が-10℃を下回らない場所を選びましょう。寒さが気になる場合は、鉢を地面に埋めることで、土中の温度を保ち、根の凍結を防ぐことができます。鉢植えの場合は、風通しの良い場所に置くことで、過湿による病気を予防できます。

ブルーベリーを実らせるための栽培ポイント:受粉の重要性
ブルーベリー栽培で豊作を目指すなら、「受粉」は避けて通れない重要な要素です。受粉とは、花のおしべから出た花粉がめしべに付くことを指します。ブルーベリーの花は、受粉が成功すると花びらと花粉を出す穴が自然に落ち、続いてめしべの先端部分が取れ、子房が上を向くという段階を経て、実が大きく育ち始めます。もし受粉がうまくいかないと、たくさんの花が咲いても実がほとんどならない、もしくは非常に少ない、という残念な結果になることもあります。
同系統2品種以上の混植の必要性
特にラビットアイ系のブルーベリーでは、受粉のために「同じ系統で異なる品種を2種類以上一緒に植える」ことが非常に大切です。ラビットアイ系は、一本だけでは受粉しにくい性質があり、そのため実の付きが悪くなりがちです。実際に、完全に隔離された環境で育てられたラビットアイ系のウッダードという品種の結実率が、わずか1%程度だったという研究結果もあります。ですから、ラビットアイ系を育てる際は、必ず同じラビットアイ系の別の品種を近くに植えるようにしましょう。一方、ハイブッシュ系は一本でも実をつけることが可能ですが、異なる品種同士で受粉させた方が、より安定してたくさんの実がなりやすいとされています。どちらの系統でも、2本以上を近くで育てることで、より多くの収穫が期待できます。
開花時期が揃っていること
異なる品種を植えて受粉を促す場合、さらに大切なのが、それらの品種の「開花時期が同じくらいであること」です。ブルーベリーの花が受粉できる期間は、開花してからわずか3〜6日と非常に短く、10日以上経つと花自体が落ちてしまいます。そのため、一緒に植えた別の品種のブルーベリーが、この短い期間に同時に花を咲かせていることが重要です。品種によって開花時期は異なるため、苗を選ぶ際には、それぞれの品種の開花時期の相性を事前に調べて、調整することが、安定した収穫につながります。
訪花昆虫の飛来
ブルーベリーは、ミツバチなどの昆虫が受粉を助ける「虫媒花」です。ブルーベリーの花粉は粘り気があり、花粉を出す穴は花びらに隠されています。そのため、風や水だけでは花粉が移動しにくく、自然な状態ではミツバチなどの「訪花昆虫」による受粉が主な方法となります。ミツバチは都市部でも見られますが、庭やベランダで栽培する場合、場所によっては訪花昆虫が少ないことがあります。もし昆虫による受粉が難しいと感じ、実の付きが悪い場合は、人工授粉を試してみるのも良いでしょう。ただし、ブルーベリーの花は数が多く、一つ一つが小さいため、人工授粉は時間と手間がかかる作業となります。
人工授粉のやり方
もし、訪れる昆虫が少ない場合や、実の付きが悪いと感じる場合は、人工授粉を試すことで実を結ぶ確率を上げられます。人工授粉とは、開花した花の中にある雄しべの花粉を取り、別の花の雌しべに付ける作業のことです。まず、釣鐘型の花が開いた部分にある雄しべから花粉を集めます。花粉を集めるための容器を用意しておくと便利でしょう。花の先を軽く叩くだけでも花粉は落ちますが、難しい場合は、柔らかい筆などを使って花粉を採取します。集めた花粉を綿棒や筆などに付けて、実らせたい株の雌しべの先端部分に丁寧に受粉させます。ここで一番大切なのは、「同じ系統で品種が異なる株同士で受粉させる」ことです。ブルーベリーは同じ品種で受粉させても実がなりにくいか、全くならないことが多いです。また、ハイブッシュ系とラビットアイ系では遺伝的な相性が良くないため、異なる系統間での受粉は成功しません。必ず同じ系統(例えばラビットアイ系ならラビットアイ系同士)の中で、異なる品種を選んで花粉を交換するようにしましょう。手間はかかりますが、安定した収穫のためにはとても有効な方法です。
ブルーベリー栽培に最適な時期:植え付けと植え替え
ブルーベリーは、地域や品種によって異なりますが、通常は4月から5月にかけて約2週間ほど花を咲かせ、その後、6月頃の初夏から8月頃にかけて実を収穫できます。この成長サイクルに合わせて、適切な時期に植え付けや植え替えを行うことが、ブルーベリーが健康に育ち、たくさんの実を付けるために重要です。
植え付けに適した時期と注意点
ブルーベリーの苗を植えるのに最適な時期は、木の成長が止まる「落葉期」である11月から3月頃です。この時期に植えることで、ブルーベリーは休んでいる間に新しい環境に慣れ、春からの成長に備えることができます。特に寒い時期を避けるために、比較的温暖な地域(例えば関東地方より西)では10~11月頃の秋に、寒冷地(例えば関東地方より東)では寒さによる被害を受けにくい3月の早春に植え付けるのがおすすめです。具体的には、関東地方より西の地域であれば秋に、関東地方より東の地域であれば3月の早春が良いでしょう。1~2月は避け、芽や根の成長が一時的に止まる休眠期の初めか終わりに苗を植えます。植え付けの際は、肥料を土にしっかりと混ぜておくことが大切です。夏頃には実がたくさん付いた魅力的な苗が売られていることがありますが、この時期の植え付けは避けた方が良いでしょう。初めてブルーベリーを育てる方は、秋か早春の適切な時期に苗を購入するようにしましょう。
鉢植えの植え替え時期とその重要性
鉢植えでブルーベリーを育てている場合、木の成長に合わせて定期的に「植え替え(鉢増しや鉢替えとも言います)」を行う必要があります。ブルーベリーの根は細く、鉢の中で横に広がっていく性質があるため、成長すると根が鉢の中でいっぱいになり、根詰まりという状態を引き起こし、生育が悪くなったり、最悪の場合には枯れてしまうことがあります。また、同じ土と鉢で何年も育て続けると、土が古くなり、根も老化して成長が鈍くなったり、花芽が付きにくくなることがあります。ブルーベリーは酸性の土を好みますが、長期間同じ土を使っていると、水やりなどによって土のpHが徐々に中性に近づいてしまうため、定期的に土を入れ替えることで、木に元気を与え、適切な土壌環境を保つことができます。さらに、植え替えの際に根の状態を直接確認することで、害虫や病気の兆候を早期に見つけられるというメリットもあります。
植え替えに適した時期は、厳しい寒さを避け、休眠期に入った10月から12月頃、または暖かくなり始める3月頃です。特に、6月から9月の収穫が終わり、ブルーベリーの葉が紅葉し始める10月から12月頃が最も適しています。この時期は木への負担が少なく、新しい環境にスムーズに慣れることができます。次に適しているのは、花芽が出始める3月頃です。この時期は、花芽の少ない枝を剪定する時期でもあるので、剪定作業と合わせて植え替えを行うと効率的です。一般的に、鉢植えのブルーベリーは2~3年に1回を目安に植え替えを行うことで、根詰まりを防ぎ、健康な成長を促すことができます。植え替えを行う際には、肥料効果が約2年間続くタイプの肥料を元肥として土に混ぜ込んでおくことで、新しい土壌での長期的な生育をサポートできます。
庭への植え付け(地植え)の手引き
庭でブルーベリーを栽培する際は、通常の庭土にそのまま植えるのではなく、適切な土壌改良を行うことが成功へのカギとなります。まずは、2年以上生育した元気なブルーベリーの苗を選びましょう。植え付け場所には、直径50cm以上、深さ30cm程度の大きめの穴を掘ってください。ブルーベリーは根を浅く広く張る性質があるため、広めの穴が大切です。複数の苗を植える場合は、株間を2メートル程度確保してください。次に、ブルーベリーが好むpH5.0前後の酸性土壌を作るため、pH調整されていないピートモスをたっぷり準備します。乾燥したピートモスは水を弾きやすく、土と混ざりにくいため、植え付け前日までにバケツなどに水を入れ、十分に湿らせておきましょう。掘り出した庭土に、水で湿らせたピートモスを40〜50L、さらに腐葉土を40L程度(または庭土:ピートモス:赤玉土小粒を3:5:2の割合)混ぜ合わせます。ピートモスは費用がかかりますが、ブルーベリー栽培では非常に重要な要素なので、十分な量を使うことが生育に大きく影響します。
苗木の根鉢を軽くほぐしてから、穴に植え付けます。苗のサイズに対して、ピートモスで作った改良土壌が広く感じられるくらいが理想的です。苗の周りを埋めるようにピートモスを加えてください。具体的には、植え穴の底にはピートモスを混ぜた土を入れ、その上に苗を置き、根に触れる部分にはピートモスのみを配置するイメージです。苗木の株元が地面とほぼ同じ高さになるように調整し、土を根元に寄せて固定しますが、土を踏み固めないように注意しましょう。植え付け後、株元にたっぷりと水をやります。同時に、緩効性の化成肥料を株の周りに施します。土壌の乾燥や雑草の発生を防ぐため、バークチップ、ワラ、もみがらなどの有機物で株元をマルチング(覆う)すると効果的です。
鉢植えのステップ
鉢植えでブルーベリーを育てる場合も、地植えと同様に酸性土壌の準備が不可欠です。市販されているブルーベリー専用の培養土を利用するのが、最も手軽で確実な方法です。もし専用培養土がない場合は、pH無調整のピートモスを5〜10、鹿沼土を0〜5の割合で混ぜ、pH5.0前後の酸性土壌を作ります。特にハイブッシュ系にはpH4.3~4.7、ラビットアイ系にはpH4.3~5.3が適しています。ピートモスは、ミズゴケなどが堆積して腐食したもので、泥を取り除いて粉砕・乾燥させたものです。酸性が強く、アルカリ性の土を中性または弱酸性にする調整用土として使用されます。市販のピートモスには、石灰などのアルカリ性資材でpH調整されたものがあるので注意し、ブルーベリー栽培にはpH無調整のピートモスを選びましょう。乾燥したピートモスは水を弾きやすいため、事前に水を入れたバケツなどで十分に湿らせておくことが重要です。
苗よりも一回り大きく、底に水抜き穴が十分に開いている鉢を用意します。虫の侵入や栄養の流出を防ぐため、鉢底穴をネットで覆い、その上に鉢底石を敷き詰めます。苗を取り出し、鉢の中心に置き、用土の表面が鉢の縁より3cmほど下になるように調整しながら、苗木の株元と用土の表面を揃えて植え付けます。この「縁から3cm下」の空間はウォータースペースと呼ばれ、水やり時に水を溜めるための大切なスペースです。最後に、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと水を注ぎ、株の周りに緩効性の肥料を置きます。

植え替えの目的と方法
プランターでブルーベリーを育てていると、株の成長に応じて「植え替え」が必要になります。これは鉢増しや鉢替えとも呼ばれ、株をより大きな鉢に植え替える作業で、適期は10〜11月頃です。植え替えは、ブルーベリーの健全な成長を維持するために、主に次の4つの理由で行います。まず、ブルーベリーの根は細く、鉢の中で横方向に広がる性質があるため、成長すると根が鉢の中で窮屈になり、根詰まりを起こすことがあります。これを防ぐために、苗に合った大きさの鉢に植え替えます。次に、同じ土と鉢で長年栽培を続けると、土が古くなり根も老化します。これにより、苗の成長が鈍化したり、花芽がつきにくくなったり、実がなりにくくなることがあります。土を入れ替えて株に活力を与え、若返りを促します。3つ目は、ブルーベリーは酸性土壌を好みますが、長期間同じ土を使用していると、水やりなどによって土のpHが徐々に中性に近づいてしまうことがあります。新しい酸性の用土に入れ替えることで、ブルーベリーの生育に適した土壌環境を維持します。最後に、植え替えの際に根の状態を直接確認できます。根に潜む害虫や卵の有無、根の病気の兆候などをチェックし、早期に対処できます。鉢植えの場合、2~3年に1度を目安に植え替えを行うと良いでしょう。
植え替えの手順は以下の通りです。植え替え用の土については、上記の「鉢植えの手順:用土の準備」を参考にしてください。現在使用している鉢よりも、ひとまわり大きな鉢を用意します。
ステップ1:株の取り出し 現在の鉢から慎重にブルーベリーを取り出します。根が鉢に張り付いて抜けない場合は、移植ごてやナイフなどを鉢の縁に沿って差し込み、根鉢を傷つけないように注意しながら取り出します。
ステップ2:根の整理 根鉢に巻き付いている土を手で軽くほぐします。白い健康な根は軽く土を払う程度にし、茶色く古くなった根は、水を張ったバケツの中で優しく土を洗い落としながら、腐った根や傷んだ根を切り取ります。根詰まりがひどい場合は、余分な根を切り取り、根の量を調整して新しい根の発生を促します。
ステップ3:新しい鉢への植え付け 新しい鉢の底に鉢底石と新しい用土を入れ、株の根元が鉢の縁から3cmほど下になるように調整しながら鉢底に用土を入れます。根鉢の周りに用土を入れ込み、株がぐらつかないようにしっかりと植え付けます。鉢の縁から3cm下の空間はウォータースペースとして確保し、水やり時に水が溢れないようにします。
ステップ4:水やりと元肥の施用 最後に、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと水を注ぎます。土がしっかりと根に密着するように、ゆっくりと水を与えましょう。また、植え替えと同時に、約2年間効果が持続する緩効性肥料を土に混ぜ込むことで、新しい土壌での長期的な生育をサポートします。
ブルーベリーの水やりに関するアドバイス
ブルーベリーは乾燥に弱い性質を持ち、たくさんの水を必要とします。水やりが不足すると、新梢や葉がしおれてしまい、成長が妨げられるだけでなく、果実の品質にも悪影響が出ます。一方で、水の与えすぎは土の中の空気が不足し、根腐れの原因となります。最適な水やりの量は、栽培地域の気候条件や鉢植えの場合、鉢のサイズ、土の種類によって大きく異なります。土の表面が少し乾いていても大丈夫ですが、地中は常に湿り気がある状態を保つように管理することが、健康なブルーベリーを育てる上で重要なポイントです。
プランターでの水やり
プランター栽培のブルーベリーでは、土の表面が乾き始めたら、それは内部の土も乾燥しているサインです。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出るくらいたっぷりと水を与えてください。水やりは午前中に行うのが基本です。特に夏場の気温が高い時期は乾燥しやすいため、夕方にもう一度水やりを検討しましょう。ただし、常に土が湿っている状態は根腐れの原因になるため、真夏を除けば、午前中の水やりだけで十分な場合が多いです。水やりのタイミングを判断するには、鉢を持ち上げて重さを確かめるのも有効です。十分に水を含んだ鉢は、水で満たしたバケツ一杯分くらいの重さに感じられますが、水分が不足していると、かなり軽く感じるはずです。
庭植えでの水やり
庭植えのブルーベリーは、雨によってある程度の水分が供給されるため、頻繁に水やりをする必要はありません。しかし、植え付け直後で根が十分に育っていない時期や、夏の暑さが厳しく乾燥が続く場合は、水やりが必要になります。乾燥した日が続くようであれば水やりの頻度を増やし、雨が降った場合は水やりの間隔を空けるなど、天候に応じて調整してください。一般的に、植物の根は枝葉と同じくらいの範囲に広がると言われています。そして、植物は根の先端から最も効率的に水分を吸収します。そのため、水やりを行う際は、株元だけでなく、枝葉が広がっている範囲全体にしっかりと水を与えるように心がけましょう。表面の土が少し濡れる程度の水やりでは、根まで十分に水分が届かない可能性があるため、たっぷりと水をあげることが重要です。
ブルーベリーのお手入れ
ブルーベリーを健康に育て、たくさんの実を収穫するためには、適切な時期に適切なお手入れをすることが非常に大切です。肥料の与え方、新しく伸びてくる枝の管理、受粉のサポート、そして樹の形を整える剪定は、ブルーベリー栽培を成功させるために欠かせない作業です。これらのお手入れを丁寧に行うことで、毎年安定して美味しいブルーベリーを収穫し続けることができるでしょう。
肥料・追肥
株を大きく育て、美味しい実をたくさん実らせるためには、定期的な追肥が不可欠です。ブルーベリーには、3月、5月、8月、9月に追肥として置肥を与えます。市販のブルーベリー専用肥料を使用し、製品に記載されている指示に従って施肥してください。鉢植えの場合は、緩効性の化成肥料を使用するのが一般的です。また、5月から8月にかけて、葉の色が薄くなる(葉が黄色くなる)ことがあります。これは肥料不足や微量元素の不足が考えられるため、専用の液体肥料を株元に与えるか、霧吹きで週に1回程度、葉に直接散布(葉面散布)すると効果的です。葉面散布は即効性があり、葉から直接栄養を吸収させることで、状態の早期改善が期待できます。
摘心
摘心とは、生長したばかりの枝の先端をカットする作業のことです。この作業を行うことで、株の枝数を増やし、結果として収穫量をアップさせることが期待できます。目安として、20cm以上に伸びた新梢の先端部分を、約3分の1程度切り戻しましょう。切り戻す際は、枝が株の外側に向かって伸びるように意識し、株の中心とは反対側に位置する外側の芽のすぐ上でカットするのがポイントです。摘心の最適な時期は5月から6月にかけてで、7月以降になると翌年のための花芽が枝の先端に形成され始めるため、遅くとも6月中には摘心を終えるように心がけましょう。これよりも遅い時期に摘心を行うと、花芽を誤って切り取ってしまい、翌年の収穫に悪影響を及ぼす可能性があります。
剪定
ブルーベリーの剪定は、木の生育段階によってその目的と方法が大きく異なってきます。苗を植えてから1~2年目の若い木に行う剪定の主な目的は、将来的に大きく丈夫な木に育てることであり、収穫量をすぐに増やすことではありません。この時期は、花芽が付いている枝先を剪定し、木がまだ若いうちに実をつけさせて木が弱ってしまうのを防ぎます。ブルーベリーは、比較的簡単に花芽と葉芽を見分けることができ、大きな芽が花芽、小さい芽が葉芽となっています。そのため、枝の先端にある花芽を積極的にカットし、果実を付けさせないように管理しましょう。もし見落としがあり、果実がついてしまった場合は、全て摘果(実を摘み取ること)してください。若い木に果実を付けさせてしまうと、木の成長が遅れ、その後の収穫にも悪い影響を与える可能性があります。
3年目以降は、収穫量を増やすための剪定へと切り替えていきましょう。この時期の剪定では、勢いがあり元気な枝を残し、弱々しい枝や枯れてしまった枝を間引きます。株が密集してきた場合は、風通しと日当たりを良くするために剪定を行いましょう。また、株の内側に向かって伸びている枝や、樹形を崩すほど長く伸びすぎた枝、株の根元から生えてくる不要なひこばえ(サッカー)などもカットしてください。ブルーベリーは枝の先端に花芽をつける性質があるため、剪定の際に花芽を全て切り落としてしまわないように注意しながら作業を進めましょう。冬は不要な枝を見分けやすく、初心者の方でも剪定しやすい時期です。葉芽よりも大きい花芽を残し、細く短い枝がたくさん付いた、生育の悪い枝を中心に剪定することで、翌年の豊かな収穫へと繋げることができます。花芽がないと花が咲かず、果実も実りません。大粒の果実が実る品種の場合は、3年目以降も摘果を行い、込み合っている部分を整理すると良いでしょう。これにより、一つ一つの果実が大きく成長するための十分なスペースを確保でき、高品質な果実を収穫することができます。主に行う冬の剪定の適期は1月から3月、または1~2月頃が目安となります。
春から夏にかけては、株元付近から新しい新梢(シュート)が生えてくることがあります。これらの不要な新梢は取り除くようにしますが、ある程度は残すようにしましょう。残した新梢が成長し、1~2年後に実をつけるようになったら、近くにある古い枝を株元から切り取って枝を更新します。この作業を行うことで、樹高を低く保つとともに、毎年安定した果実の収穫を見込むことができます。
ブルーベリーの収穫
ブルーベリー栽培の一番の楽しみは、何と言っても自分で育てた美味しい果実を収穫できることです。適切な時期に熟した実を見極め、丁寧に収穫し、収穫後の扱いにも注意することで、より長く、美味しくブルーベリーを味わうことができます。
実の収穫時期と収穫量の目安
ブルーベリーの収穫時期は、地域や気候条件、そして品種によって異なりますが、一般的には6月から9月上旬頃にかけて行われます。苗を植え付けてから最初の1~2年間は、木の成長を優先させる必要があるため、収穫量が少なくても心配する必要はありません。ブルーベリーがたくさん実をつけるようになるのは、苗を植えてから3年目以降が目安となります。この時期からは、より安定して豊富な量の果実を収穫できるようになるでしょう。
収穫時期の見分け方
ブルーベリーが熟すと、最初は緑がかった色から、深みのある紫色や赤紫色へと色を変えます。見た目の変化に加えて、実の感触も重要な判断材料です。まだ熟していない青い実は硬いですが、完熟すると柔らかくなり、指で触れるとふっくらとした感触があります。色づきに加え、そっと触れてみて柔らかければ、収穫に適した時期だと判断できます。十分に熟したブルーベリーは、品種によって異なりますが、格別な甘みがあり美味しく味わえます。
正しい収穫方法
熟したブルーベリーはとても繊細なので、傷つけないように丁寧に収穫することが重要です。収穫する際には、果実に直接触れないように注意し、枝を軽く持ちながら、実の付け根をそっと回すようにして摘み取ります。こうすることで、果実へのダメージを最小限に抑え、品質を維持できます。また、雨上がりの後は、実が水分を多く含んで味が落ちたり、傷みやすくなることがあるため、収穫は見送るのが賢明です。
収穫後の果実の取り扱い
完熟したブルーベリーは日持ちがあまりしないため、収穫後はできるだけ早く冷蔵庫で保管し、新鮮なうちに食べきることをおすすめします。朝の涼しい時間帯に収穫し、そのまま朝食でヨーグルトなどと一緒に味わうのが、最も新鮮で美味しい食べ方です。すぐに食べられない場合や、たくさん収穫できた場合は、傷む前に冷凍保存しましょう。冷凍したブルーベリーは、スムージーやジャム、お菓子作りなど、様々な用途で活用でき、長期保存も可能です。
ブルーベリーの増やし方
ブルーベリーを増やす一般的な方法として、挿し木があります。主に、休眠期間に行う「休眠枝挿し(冬挿し)」と、成長期間に行う「緑枝挿し(夏挿し)」の二つの方法が存在します。それぞれに適した時期と手順が異なるため、ご自身の状況や目的に合わせて選択すると良いでしょう。
休眠枝挿し(冬挿し)
冬の休眠期に行う休眠枝挿しは、手軽にブルーベリーの株を増やせるため、自家栽培に最適です。1月から2月頃、剪定で切り落とした健康な枝を利用します。太い枝から上向きに伸びた、勢いのあるまっすぐな枝を選びましょう。花芽が付いている場合は、すべて取り除いてください。
選んだ枝を、剪定ばさみで10cm程度の長さに切り分けます。挿し穂の下側(元に近い側)を、吸水性を高めるためにナイフで斜めにカットします。斜めに切ることで、発根を促進する効果も期待できます。
挿し木には、大きめの平鉢に鉢底石を敷き、よく湿らせたpH無調整のピートモスを使用します。ピートモスは、挿し穂の発根に適した酸性の清潔な環境を作り出します。ピートモスを入れ、水をかけて落ち着かせてから使用しましょう。
準備した挿し穂を、5cm間隔で、葉芽が2つ程度隠れる深さに挿し込みます。挿し木後は、直射日光を避け、半日陰で管理し、土が乾かないように注意します。低温や多湿にならないように気を配り、必要に応じてビニール袋をかぶせて保湿・保温すると良いでしょう。
適切な環境下で管理すれば、約1か月で新芽が、3か月ほどで発根が確認できるはずです。その後1年ほど育成することで、立派な苗木に成長し、翌々年以降の収穫が期待できます。
緑枝挿し(夏挿し)
緑枝挿しは、新しい枝の生育が旺盛になる6月から8月頃に行う挿し木です。この時期の枝は発根しやすい性質を持っています。
緑枝挿しの手順は以下の通りです。
ステップ1:挿し穂の採取 生育の良い、当年伸びた新しい枝を選び、先端から10〜15cm程度の長さに切り取ります。枝は柔らかく、まだ硬化していないものを選びましょう。
ステップ2:葉の調整 切り取った枝の上部2〜3枚の葉を残し、残りの葉はすべて取り除きます。葉の数を減らすことで水分の蒸散を抑え、発根に必要なエネルギーを温存します。
ステップ3:発根促進剤の活用 水で薄めた発根促進剤に、挿し穂の切り口を2時間程度浸します。発根促進剤を使用することで、挿し木の成功率を高めることができます。
ステップ4:挿し付け 挿し木用の用土(pH無調整のピートモスと鹿沼土を混ぜたものなど)を入れた容器に、挿し穂を5cm程度の間隔で挿し込みます。挿し穂が倒れないように、しっかりと固定しましょう。
ステップ5:管理と水やり 挿し付け後は、直射日光の当たらない明るい日陰に置き、霧吹きで優しく水やりを行います。土が乾燥しないように常に湿らせた状態を保つことが大切ですが、水の与えすぎには注意が必要です。低温と過湿に気を付けて管理することで、1か月程度で新芽が出てくるでしょう。新芽が育ち、根が十分に張ったら、一回り大きな鉢に植え替えます。
ブルーベリーの病気や害虫
ブルーベリーは、他の果樹に比べて病害虫に強いとされていますが、全く被害がないわけではありません。適切な剪定で日当たりと風通しを良くし、健全な生育を促すことが、病害虫の発生を抑える上で最も重要です。鉢植えの場合は、定期的な植え替えも有効な対策となります。また、収穫時期には鳥による食害が深刻な問題となるため、対策が必要です。
ウイルス病
ウイルス病は、一度感染すると薬剤での治療はできません。感染した株は回復の見込みがないため、周囲への感染を防ぐために、発見次第抜き取って焼却処分するのが確実な方法です。予防のためには、ウイルスフリーの苗を選び、アブラムシなどの害虫対策を徹底することが重要です。
灰色かび病
灰色かび病は、ブルーベリーの葉が萎縮して枯れる原因となることがあります。進行すると、花や果実が灰色のカビに覆われてしまうのが特徴です。多湿で風通しの悪い環境で発生しやすいため、剪定で株の内部まで風が通るようにすることで予防効果が期待できます。もし感染が見られた場合は、速やかに患部(花や果実を含む)を切り取り、適切に処分して病気の蔓延を防ぎましょう。また、受粉後の花びらが株元に残ると、そこからカビが発生することがありますので、こまめに取り除くことも有効な予防策となります。
コガネムシ
コガネムシの幼虫は土中に潜み、ブルーベリーの根を食害します。根が食害されると、株の生育が著しく阻害され、最悪の場合、枯死に至ることもあります。鉢植え栽培の場合は、植え替え時に根の状態を注意深く確認し、幼虫を見つけたらすぐに取り除いてください。定期的な植え替えは、幼虫を早期に発見し、駆除する上で非常に有効です。一方、成虫はブルーベリーの葉を網目状に食害するのが特徴です。成虫を発見した際は、捕殺するなどして取り除くことで、被害の拡大を抑えることができます。
アブラムシ
アブラムシは、一年を通して発生する可能性のある厄介な害虫ですが、特に春から初夏にかけての新梢に発生しやすい傾向があります。新芽や若い葉から養分を吸い取り、ブルーベリーの生育を妨げます。大量に発生すると、株が著しく弱体化するだけでなく、すす病などの二次的な被害を引き起こす原因にもなります。発見次第、速やかに適切な薬剤を散布するか、ガムテープなどを利用して物理的に捕殺するなどの対策を講じることが重要です。
カイガラムシ
カイガラムシは、硬い殻に覆われた小さな虫で、枝に密着して樹液を吸い取ります。発見が遅れることも多いため、日頃から株を注意深く観察し、見つけたら早めに歯ブラシなどでこすり落として駆除しましょう。硬い殻が薬剤の浸透を妨げるため、物理的な除去が最も効果的な対策となることが多いです。
鳥による被害
ブルーベリーの実が熟し始める頃には、その甘い香りが鳥たちを引き寄せ、丹精込めて育てた果実を食い荒らしてしまうことがあります。もし、実が不自然に裂けていたり、何かにかじられたような痕跡を見つけたら、それは鳥の仕業かもしれません。鳥による食害は収穫量を大きく左右するため、効果的な対策を講じることが重要です。最も確実な方法は、果実が色づき始める前に防鳥ネットを張り、物理的に鳥が近づけないようにすることです。ブルーベリーの木全体を覆うようにネットをかけることで、被害を大幅に軽減できます。その他、人が見張って鳥を追い払ったり、ブルーベリーを好むヒヨドリなどの天敵であるフクロウやタカの模型を設置するのも、一時的な効果が期待できます。ただし、鳥も学習能力が高いため、同じ対策ばかりでは効果が薄れる可能性があります。複数の対策を組み合わせたり、設置場所を定期的に変えるなどの工夫も有効です。
まとめ
ブルーベリーは北米原産のツツジ科の落葉低木で、濃い青紫色の果実は、そのまま食べるのはもちろん、ジャムやデザートなど様々な用途で楽しめる人気のフルーツです。比較的病害虫に強く、場所を取らないため、ガーデニング初心者や家庭菜園に挑戦したい方にもおすすめです。日本で主に栽培されているのは、品質の良い「ハイブッシュ系」と、丈夫で育てやすい「ラビットアイ系」の2種類。お住まいの地域の気候や栽培環境に適した品種を選ぶことが、栽培成功の秘訣です。特にラビットアイ系は、異なる品種を2種類以上一緒に植える「混植」を行うことで、より多くの実を収穫できます。
栽培準備として最も重要なのは、pH5.0前後の酸性土壌を用意することです。ピートモスや鹿沼土などを混ぜて土壌改良を行いましょう。鉢植えの場合は、樹高が低くコンパクトにまとまる品種を選び、根が横方向に広がりやすい特性を考慮して、幅広の鉢を選ぶと良いでしょう。日当たりを好みますが、真夏の強い日差しによる葉焼けには注意が必要です。植え付けや植え替えは、株への負担が少ない休眠期の11月~3月頃が最適です。特に鉢植えは、2~3年に一度を目安に植え替えを行いましょう。乾燥に弱いので、水やりは丁寧に行い、特に鉢植えの場合は、土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと与えるようにしてください。

適切なお手入れを行うことで、株を健康に育てることができます。具体的には、3月、5月、8月、9月に追肥を施したり、5月~6月頃に摘心を行って枝数を増やし収穫量を増やしたり、訪花昆虫が少ない場合は人工授粉を行ったり、樹形を整え安定した収穫を促すために剪定を行います。剪定は、幼木と成木で目的が異なるため、樹齢に応じて方法を変えることが大切です。ブルーベリーは、植え付けから3年目以降に本格的な収穫が期待できます。完熟した実は濃い紫色になり、触ると柔らかいのが特徴です。収穫後は日持ちしないため、冷蔵または冷凍保存し、早めに食べるようにしましょう。
ブルーベリーは比較的病害虫に強いですが、適切な剪定を行い、日当たりと風通しを確保することで、より健康な株を育てることができます。主な病害虫としては、ウイルス病、灰色かび病、コガネムシ類、アブラムシ、カイガラムシなどが挙げられます。早期発見と対策が重要です。また、果実が熟す時期には、鳥による食害が深刻な問題となるため、防鳥ネットの設置などの対策を講じましょう。挿し木による増やし方には、休眠期に行う「休眠枝挿し」と、生育期に行う「緑枝挿し」があります。それぞれの方法で挿し木をすれば、自宅でブルーベリーの株を増やすことも可能です。ブルーベリーは、可愛らしい花や美しい紅葉も楽しめるため、観葉植物としても魅力的な果樹です。初心者の方でも比較的簡単に栽培できるので、ぜひご自宅でブルーベリー栽培に挑戦してみてはいかがでしょうか。
ブルーベリーは初心者でも育てやすいですか?
はい、ブルーベリーは庭のスペースをあまり必要としない小果樹であり、比較的丈夫な性質を持っています。地植えでも鉢植えでも育てることができ、病害虫にも比較的強いため、農薬を使わずに栽培することも可能です。適切な土壌と品種を選び、基本的な水やりや剪定などの管理を行えば、ガーデニング初心者の方でも気軽に栽培を楽しめます。
ブルーベリーにはどのような種類がありますか?
大きく分けて「ハイブッシュ系」と「ラビットアイ系」の2つの系統があります。ハイブッシュ系は、味が良く大粒の実が特徴ですが、栽培はやや難しく、寒さに強いノーザンハイブッシュと、温暖な地域に適したサザンハイブッシュに分けられます。ラビットアイ系は、丈夫で育てやすいのが特徴ですが、寒さに弱く寒冷地には不向きです。また、ハイブッシュ系よりも樹高が高くなる傾向があります。
ブルーベリー栽培に適した土壌の条件とは?
ブルーベリーは、pH5.0程度の酸性度の高い土壌でよく育ちます。品種によって最適なpHは異なり、ハイブッシュ系の場合はpH4.3~4.7、ラビットアイ系の場合はpH4.3~5.3が理想的です。加えて、有機物を豊富に含み、保水性と排水性のバランスが取れた土壌を選ぶことが大切です。市販されているブルーベリー専用の培養土を利用するか、pH調整されていないピートモスと鹿沼土を混ぜ、酸度を調整した土を準備しましょう。
ブルーベリーの植え付けや植え替えに最適なタイミングは?
植え付けに適しているのは、ブルーベリーの生育が休止する落葉期間中の11月~3月頃です。暖かい地域では10月~11月の秋に、寒い地域では3月頃の春に植え付けるのがおすすめです。植え替えは、休眠期にあたる10月~12月、または暖かくなり始める3月に行うのが良いでしょう。特に収穫を終えた後の10月~12月が最も適した時期で、鉢植えの場合は2~3年に一度を目安に植え替えを行いましょう。
ブルーベリーは一本の木でも実を結びますか?
ラビットアイ系は、一本だけでは実がなりにくい性質があるため、異なる品種を2本以上隣接して植える「混植」が不可欠です。ハイブッシュ系は自家受粉も可能とされていますが、異なる品種間で受粉させることで、より安定的に多くの実を収穫できる傾向があります。どちらの系統であっても、できる限り2品種以上のブルーベリーを近くに植えることで、収穫量の増加が期待できます。
ブルーベリーは本当に目に良い効果があるのでしょうか?
はい、その通りです。特に野生種のビルベリーに豊富に含まれているアントシアニンは、視機能の改善に効果があると言われています。さらに、ビタミンAも含有しており、目の健康を維持したり、夜盲症を予防する効果も期待されています。
ブルーベリーの水やり、何に気をつければいい?
ブルーベリーは乾燥を嫌うため、水切れには注意が必要です。プランター栽培の場合は、土の表面が乾いたら、鉢の底から水が出てくるまでたっぷりと水を与えましょう。庭植えの場合は、基本的に雨水で十分ですが、植え付け後すぐや、夏の乾燥が続く時期には水やりをしてください。ただし、水のやりすぎは根腐れの原因になることも。水はけの良い土を選び、真夏を除いては午前中に水やりを行うなど、土が常に湿った状態にならないように注意しましょう。
ブルーベリーに実がつかないのはなぜ?
ブルーベリーに実がつかない原因としては、いくつかの要因が考えられます。特にラビットアイ系の場合は、一本だけ育てていると受粉がうまくいかないことがあります。同じ系統で異なる品種を二本以上、近くに植えてみましょう。また、ブルーベリーは酸性の土壌を好みます。土壌の酸度が適切でないと、生育が悪くなり、実がつきにくくなることがあります。ブルーベリー専用の培養土を使うか、ピートモスなどで酸度を調整しましょう。植えてから1~2年目の若い木の場合は、実が本格的につくのは3年目以降になることが多いです。もう少し様子を見てみましょう。肥料が足りないと実つきが悪くなることもあります。ブルーベリー用の肥料を、説明書に従って定期的に与えることで、実つきが改善されることがあります。
収穫したブルーベリーが酸っぱい、渋い…どうすれば?
完熟したブルーベリーは、種類にもよりますが、とても甘いものです。もし収穫した実が酸っぱかったり、渋かったりする場合は、まだ熟していない状態で収穫してしまったのかもしれません。ブルーベリーは、完熟すると色が濃い紫色になり、触ると柔らかく、ふんわりとした感触になります。色の変化と手触りで、熟し具合を見極めることが大切です。また、雨の後に収穫すると、実が水分を吸いすぎて味が薄くなったり、酸味が強く感じられたりすることがあります。雨の日を避け、晴れの日が数日続いた後に収穫するのがおすすめです。
ブルーベリーの葉が黄色くなるのはどうして?
ブルーベリーの葉が黄色くなる主な原因は、土壌のpH(酸性度)が適切でないこと、または栄養が不足していることです。ブルーベリーは酸性の土壌を好むため、土がアルカリ性に傾くと、鉄分などの必要な栄養素を吸収できなくなり、葉が黄色くなることがあります(鉄欠乏症)。この場合は、土壌のpHを測り、ピートモスや酸性肥料を使って調整する必要があります。また、肥料不足も葉が黄色くなる原因になります。特に5月から8月の成長期にかけて葉の色が薄い場合は、ブルーベリー専用の液体肥料を株元に与えるか、葉に直接スプレーすると良いでしょう。
ブルーベリー栽培、鉢植えと地植えどちらが良い?
ブルーベリーを育てる際、鉢植えと地植えのどちらを選ぶかは、栽培環境や管理の手間を考慮して決めるのがおすすめです。鉢植え栽培の利点は、ベランダなどの限られたスペースでも育てられること、そして、日当たりの良い場所への移動や、冬場の寒さ対策が容易なことです。また、土の酸度調整がしやすいのも魅力です。ただし、鉢植えは根詰まりを起こしやすいため、2~3年に一度は植え替えを行う必要があります。水切れにも注意し、こまめな水やりを心がけましょう。一方、地植え栽培のメリットは、ブルーベリーの木が大きく育ちやすいこと、根が広く伸びるため水やりの頻度を減らせることです。ただし、一度植えると移動は困難であり、土壌の酸度調整には広い範囲での作業が必要になります。ご自身の栽培環境や、どれくらいの管理ができるかを考慮して、最適な方法を選びましょう。
ブルーベリーの木はどこまで大きくなる?
ブルーベリーの木の大きさは、品種や栽培環境によって大きく異なります。一般的には、1メートルから3メートル程度まで成長すると考えて良いでしょう。ハイブッシュ系の品種は比較的コンパクトに収まりやすく、鉢植えでの栽培にも向いています。一方、ラビットアイ系の品種は成長が旺盛で、大きく育ちやすいため、庭植えに適しています。鉢植えで育てる場合は、鉢のサイズによって最終的な木の大きさをコントロールできます。小さめの鉢を選べば、比較的コンパクトに育てることが可能です。