ゆず湯 飲み物
ゆずはミカン科ミカン属の柑橘類の一種で、みかんやレモン、スダチ、カボスなどの仲間です。原産地は中国とされ、日本でも古くから栽培されています。特有の爽やかな香りと強い酸味が特徴で、果汁は少なく、主に果皮を日本料理の香りづけに使います。酸味が強く、皮も固いため、みかんのようにそのまま食べることは一般的ではありませんが、果汁や皮、実そのものを様々な料理に活用できます。
ゆずの名称と歴史
日本では古くから「柚」「由」「柚仔」といった表記や、「いず」「ゆのす」といった呼び名がありました。『和名抄』(932年ころ)には、漢名で「柚」、和名も「由」として表されています。別名をユノスとも言い、酸っぱいことから「柚酸(ゆず)」と書かれ、「柚ノ酸」の別名が生まれました。古い時代にはゆずに近い大型柑橘類も「柚(ゆ)」と呼ばれていましたが、近世になり区別されるようになり、ブンタンなどが伝わると、それらも「柚」の一種として認識されました。
ゆずの原産地と分布
ゆずは、中国の揚子江上流が原産であると言われています。日本へは平安時代初期に伝わったとみられ、各地に広まって栽培されています。現在では日本(南部以南)、に分布しています。生産量は日本が世界一であり、全国で広く栽培されますが、主な産地として高知県、徳島県がよく知られています。海外では、中国や、最南部のなど、一部地域でのみ栽培されています。
ゆずの形態と生態
ゆずはの小高木で、高さは4mほどになり、樹勢が強く直立して大木になります。にがあり、に翼があります。葉柄の翼によって、ゆずの葉は小さな葉と大きな葉が連なって、関節があるように見えます。ゆずはとされるが、への進化の途中が現れた姿だと考えられており、これを植物学では「単身複葉」とよんでいます。花期は初夏(5 - 6月ごろ)で、のわきに径1 - 2cmほどの白い5弁のを咲かせます。果期は9 - 12月で、秋には球形のを結びます。果実は直径4 - 8 cm、重さ約110gになり、の表面はでこぼこしています。の多いものが多い。は強く、独特の爽やかな芳香を放ちます。の中でもっともが強く、年平均気温12度から15度の涼しい気候を適地とします。柑橘類に多い、への耐久があるため、ほとんどの必要がなく、他の柑橘類より手が掛からないこと、が比較的簡単にできることも特徴のひとつです。
ゆずの栽培方法と系統
現在の日本で栽培されるゆずには主に3系統あり、本ゆずとして「木頭系」・早期結実品種として「山根系」・無核(種無し)ゆずとして「多田錦」があります。「多田錦」は本ゆずと比較して果実がやや小さく、香りが僅かに劣るとされていますが、トゲが少なくて種もほとんどなく、果汁が多いので、本ゆずよりも多田錦の方が栽培しやすい面があります(長いトゲは強風で果実を傷つけ、商品価値を下げてしまうため)。また、収穫時にその実をすべて収穫しないの「木守柿」の風習と同様に、ゆずにも「木守柚」という風習がある地方もあります(相模原市沢井地区など)。
ゆずの主な産地と生産量
農林水産省の統計によると昭和40年代まではが主な産地であったが、1970年以降は、などが主要な産地となっています。特に1990年以後から大幅に収穫量が伸びており、今日では四国地方(高知県、徳島県、愛媛県)の3県で国産ゆずの8割近くを占めます。また、四国山地を初め、九州山地、中国山地、紀伊山地といった山間部に産地が集中していますが、これは1965年頃から、それまでの主産業であった農耕馬生産、林業、木炭製造、和紙原料栽培の衰退やそれに伴う過疎化に対し、活性化策として産地形成されたものが多いためです。西日本の産地が大規模化する一方で、東日本の産地は相対的に規模縮小しており、関東地方全都県を合わせても300トン程度(鹿児島県の半分未満)に過ぎません。東北地方では宮城県の気仙沼市で1990年代から北限のゆずとして栽培が始まりました。現在ではさらに北の岩手県陸前高田市でも栽培が始まり、『北限のゆず』としてブランド化を目指しています。
ゆずの種類:本ゆず、花柚、種無しゆず
ゆずにはいくつかの種類があります。一般的に「ゆず」と言われるのは本ゆずです。その他に、花ゆず、種無しゆずがあります。
本ゆず
本ゆずは、ゆずの代表的な品種です。栽培の歴史が古く、産地によって多くの系統があります。実の大きさは110~130gほどで、約8cm程度です。早生種や種なし種、枝のトゲが少ないものなどがあり、強い香りと酸味が特徴で、香味料やマーマレード、お菓子の材料などとして料理に最適です。果汁は酸味が強く、生育する地域によって「〇〇系」と多くの種類に分かれます。
花柚(ハナユ)について
花ゆずは、「花ゆず(はなゆず)」や「一才ゆず」とも呼ばれます。正確にはゆずとは別の品種ですが、ゆずと香りがよく似ており、料理に使われるためゆずとして販売されています。果実は40~50g程度で本ゆずよりも小さく、香りも本ゆずより弱いため、お吸い物や料理の香り付けなどに用いられます。果実だけではなく花の香りもよいため、ともに料理の香り付けなどに使われます。
種無しゆずの特徴
種無しゆずは、種がない品種として、ゆずを輪切りで使った料理やドリンクの飾りつけに使用できます。本ゆずほど酸味も強くなく、ジャムなどの甘いデザートレシピなどに使用される方もいらっしゃいます。重さは1個あたり、80g~100g程で本ゆずよりも小ぶりな実がなります。
その他のゆずの仲間
ゆずと同属の柑橘類の自然交配によって生まれたユコウ(柚香・柚柑)や、名前に「ゆず」とは付きますが、ゆずではなくブンタンの仲間であるシシゆず(獅子ゆず)・オニゆず(鬼ゆず)なども存在します。
ゆずの旬な時期とシーズン
ゆずの本格的なシーズンは11月~1月です。毎年1月から堆肥をゆず畑に入れ土づくりがスタートし、2月~3月には枝の剪定をします。5月にはゆずの花が咲きます。1年間、手間暇をかけて栽培され、10月に入るとゆずが黄色く色づき始めます。そして10月末~11月初旬に毎年青果の収穫がスタートします。特に11月~12月にかけての時期が収穫の最盛期になりゆずが最も旬な季節です。8月~9月の夏の時期には青玉とよばれる熟す前の緑色の実が収穫され、これがゆず胡椒などに利用されます。この段階では果汁は少なめです。一部の産地や販売店では、夏に収穫される青玉も取り扱っています。黄ゆずよりもスッキリとした風味が特徴です。
ゆずの選び方と保存方法
果皮はきれいに色付き、皮は固くハリのあるものを選びましょう。また、ヘタが枯れたように茶色くなっていないものが新鮮な証しです。手に持って重みを感じるものや香りのよさも、状態のよいゆずを選ぶポイントとなります。冷蔵保存する場合は、丸ごとでもカットした場合でもラップで包み保存袋に入れます。また、常温で保存する場合はなるべく風通しのよい冷暗所(日の当たらない涼しい場所)で保管しましょう。どちらの場合も保存期間の目安は2週間です。
ゆずの栄養と効能
ゆずにはビタミンCやビタミンB群のパントテン酸、カリウムなどが豊富に含まれています。特にゆず全体のビタミンC含有量は日本の柑橘類の中でNo.1といわれています。果皮には特にビタミンCをはじめ、多くの栄養素が含まれています。ゆず果汁には、、約9%が含まれています。果実は、口内やのどの渇きを癒やす清涼止渇作用があり、果汁液にやに対する制菌作用が報告されています。果皮にはが豊富に含まれ、との比較で約4倍量(約150)あります。
ゆずの成分
ゆず全体:ビタミンC有機酸(クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等)ミネラル類(カリウム、カルシウム等)ヘスペリジンリモネンβ-カロテン
種:リモノイドペクチン質
果皮:リモネンβ-カロテンヘスペリジンペクチン質(食物繊維)ビタミンC
種:リモノイド、ペクチン質
ゆずの様々な使われ方
ゆずは、その香りと酸味の強さから、様々な方法で利用されています。
食材としての利用
ゆずの果汁や皮は、等において、香味・酸味を加えるために使われます。また、果肉部分だけでなく皮もに加えられるなど、・として使用されます。いずれも、青い状態・熟れた状態の両方とも用いられます。九州地方では、と呼ばれる調味料としても使用されます。これはゆずの皮に、皮が青い時は青、黄色く熟している時は赤唐辛子とを混ぜて作るもので、緑色または赤色をしています。にも用いられます。熟したゆずでも酸味が非常に強いため、普通は直接食用とすることはない。薬味としてではなくゆず自体を味わう調理例としては、保存食としてのの他、ののように果皮ごと薄く輪切りにしてやに漬け込む方法などがあります。ゆずの果汁を砂糖と無発泡水で割ったのような飲み物もあります。果汁は等にも用いられ、ゆずから作られたもあります。ゆずの果実のうち果肉の部分をくりぬいて器状にしたものは「ゆず釜」と呼ばれ、料理の盛りつけなどに用いられます。近年、海外の著名なシェフたちが日本のゆずに注目し、その影響で欧米のレストランでもゆずが使われる機会が増えています。
調味料としての利用
ゆず胡椒、ゆず茶、ゆず塩、ゆずジャムといった調味料をゆずから作ることができます。香りと酸味が良いアクセントになります。
食用以外の利用
ゆずは、その香りの魅力から香水やアロマオイル、化粧品などにも使用されています。果皮を圧搾することによって、精油を採油しています。また、12月の冬至にはゆず湯に入るという日本の習慣があります。江戸時代に始まったとされるゆず湯は「邪気を祓い、融通良く生きられる」「ゆず湯に入ると風邪 をひかない」といった言い伝えや、ゆずが持つ効果効能から、多くの人に愛されています。
精油としての利用
独特の爽やかな香りのため、様々なに使用されています。日本の植物からを精製する日本国内メーカーが増えており、果皮を圧搾することにより精油を採油しています。その他、多彩な方法で利用されています。果汁搾汁後の残滓に含まれる精油が残滓をにする時のを低下させる要因になっていることから、精油を商品価値のある状態で取り除く方法として、超音波減圧水蒸気蒸留法が開発されています。
薬用としての利用
果実は橙子(とうし)、果皮は橙子皮(とうしひ)と称して薬用にする。、、、魚やカニのに薬効があるとされ、果実を11 - 12月に採集して冷暗所に保存するか、輪切りに切って天日乾燥して用いる。として、乾燥果実1日量2 - 3を400の水で煎じて3回に分けて服用する用法が知られる。また、風邪の初期に、就寝前に生の果皮を削ったものを小さじ半分量か、果実1個分の果汁を搾り、砂糖か蜂蜜を適宜加えて熱湯を注いだ「ポン酢湯」を飲んですぐに就寝すると、咳も和らげて効果が期待できる。疲労回復、などには果実が青い未熟果を切って焼酎に漬けたゆず酒を、就寝前に盃1 - 2杯ほど飲むとよく、飲みにくいときは蜂蜜で甘く味付けしたり、水や湯で割ると良い。ゆず酒は、35度の1に対して未熟果2個の割合で浸して、密封した上で冷暗所に3か月保存してから中の果実を除いて作る。その他果汁には、顔や手足にすり込むと肌荒れや予防に役立つとされる。ゆずの油には、の生成抑制やの症状緩和の効果があるとする研究報告もなされている。
ゆず湯としての利用
収穫時期の冬場に、果実全体または果皮を布袋にいれて、としてに浮かべる。薬効の成分は特定されていないが、を促進させることによりを上昇させ、を引きにくくさせる効果があるとされている。、、、、などに良いとされる。京都市右京区嵯峨では、ゆずの栽培農家9軒が、ゆず風呂付きで鶏料理を提供している。
文化としてのゆず
ゆずは生長が遅く、種子から育ってから結実するまでには長い年月を要する樹種で知られます。などと呼ばれ、ゆずは18年のほか、9年、16年、30年などと言い伝えられる地方があります。ゆずのは、「健康美」「恋のため息」とされる。 ゆずの花はやにも詠まれ、「柚の花」とよばれて優美さが賞賛されてきました。においてはゆずの果実は秋の、花は夏の季語になります。また、ゆず湯は冬の季語となります。のゆず湯は、日本の家庭に今も残る冬の季節の風習です。
まとめ
ゆずは、その独特の香りと風味、そして豊富な栄養価で、日本の食文化や美容、健康に深く根ざした柑橘類です。この記事を通して、ゆずの魅力を再発見し、日々の生活に取り入れていただければ幸いです。様々な形でゆずを楽しみ、その恩恵を最大限に活かしましょう。
よくある質問
質問1:ゆずを生で食べることはできますか?
ゆずは酸味が非常に強いため、そのまま食べることは一般的ではありません。しかし、皮を砂糖漬けにしたり、蜂蜜に漬けたりすることで、美味しく食べることができます。
質問2:ゆずはどれくらいの期間保存できますか?
ゆずの保存期間の目安は、冷蔵庫で約2週間、常温で約1週間です。冷蔵保存する際は、乾燥しないようにラップで包み、保存用の袋に入れておくのが良いでしょう。
質問3:ゆずの栄養成分で特に注目すべき点は何ですか?
ゆずはビタミンCを豊富に含んでおり、その他にもカリウムやヘスペリジンなどの栄養素が含まれています。これらの栄養素は、美しい肌を保つ効果や免疫力を高める効果、血圧を下げる効果などが期待されています。