和菓子の世界に足を踏み入れると、必ず出会う「白あん」。その純白の色合いと、口の中でふわりと広がる上品な甘さは、和菓子の繊細な美しさを引き立てる立役者です。インゲン豆や白小豆など、選び抜かれた豆から丁寧に作られる白あんは、まさに職人の技と情熱の結晶。この記事では、白あんの奥深い魅力に迫り、その製法から、和菓子にもたらす無限の可能性までを紐解きます。白あんを知れば、和菓子の世界がさらに広がるはずです。

白餡の基本定義と用途
白餡とは、主に白いんげん豆、手亡豆、あるいは白小豆といった白い豆類を丁寧に煮て、なめらかになるまで潰し、砂糖を加えて甘みをつけた、淡い色合いの餡を指します。和菓子の世界では欠かせない存在であり、その上品な甘さと繊細な色合いから、練り切り、焼き菓子、上生菓子など、様々な種類の和菓子に使用されています。特に、白餡はその「白」という色味から、着色料を用いることで多彩な色を表現できるため、和菓子のデザインに季節感や華やかさを添える役割も担っています。
白餡が彩る現代和菓子:フルーツ大福と一心堂の革新
1980年代に登場し、瞬く間に和菓子の定番となった「いちご大福」。その中でも、白餡を効果的に使用した現代的な和菓子として、大阪府堺市に本店を構える「一心堂」のフルーツ大福が注目を集めています。一心堂は、昭和30年創業の地域に根ざした和菓子店でしたが、二代目が京都で修行を積んだ後、フルーツ大福を主力商品とする大胆な転換を図りました。その結果、現在では阪急うめだ店や神戸阪急店などにも店舗を構える人気店となり、メディアでも頻繁に取り上げられるようになりました。一心堂のフルーツ大福は、季節限定品を含めると10種類以上ものバラエティ豊かなラインナップを誇り、中でも「完熟いちご大福」は看板商品として知られています。このいちご大福には、白餡、ミルク餡など数種類の餡が使われており、白餡を使用したものは、朝摘みの完熟いちご(特に旬の時期には「あまおう」)、北海道産の手亡豆を使用したなめらかな白餡、そして柔らかいお餅が見事に調和しています。糖度の高いあまおうとの相性は抜群で、一般的な赤餡(大納言使用)のいちご大福と比較しても、白餡ならではのすっきりとした後味とみずみずしさが際立ち、北海道産手亡豆を使用した白餡の方が評価が高い傾向にあります。一心堂の餡作りへのこだわりとして、基本の砂糖には「グーニュー糖」を使用し、さらに商品によって数種類の砂糖を使い分けることで、上品で優しい甘さを実現しています。また、すべてのフルーツ大福を一つ一つ丁寧に手作りしている点も、品質を支える重要な要素です。価格は1個あたり約400円(税込)とやや高めですが、その品質と手間を考慮すれば納得できるでしょう。お取り寄せでは「フルーツ大福4種お試しセット」(合計2500円、消費税・送料込み)も用意されており、クール便で届けられるため、消費期限が当日中という生菓子ならではのこだわりが、全国の消費者に感動を与えています。

いちご大福の他にも、白餡の特性を活かした様々なフルーツ大福が提供されています。例えば、「パイナップル大福」は、いちご大福よりも少し大きく、約110グラムとボリュームがあります。中には、フィリピン産のハニーパイナップルが贅沢に使われており、そのジューシーで甘い味わいが楽しめます。ただし、パイナップルの風味が強く、白餡の繊細な風味がやや感じにくいという声もあります。また、「栗大福」も人気があり、渋皮ごと蜜煮した国産栗が丸ごと一個包まれており、その周りを栗餡と生クリームが優しく包み込んでいます。栗好きにはたまらない一品ですが、他のフルーツ大福と比べるとやや地味な印象を受けるかもしれません。しかし、その控えめな魅力が、逆に落ち着いた味わいを好む人々を惹きつけているとも言えます。これらの製品は、白餡が単なる甘味料ではなく、フルーツや他の素材の風味を引き立て、和菓子全体のクオリティを高める上で重要な役割を果たしていることを示しています。現代和菓子における白餡の多様な可能性を感じさせる例と言えるでしょう。