爽やかな酸味と香りが特徴のレモン。その原産地をご存じですか?実はレモンは、インドのヒマラヤ山麓がルーツとされ、古代から地中海沿岸を経て世界中に広がりました。日本には明治時代に伝わり、現在では広島県や愛媛県などで盛んに栽培されています。本記事では、レモンの原産地や日本への伝来、栽培の広がりについて詳しくご紹介します。
レモンの原産地はインドのヒマラヤ山麓
レモンの原産地は、現在のインド北部からミャンマーにかけてのヒマラヤ山麓と考えられています。レモンはミカン科ミカン属に属する果樹で、その起源は他の柑橘類と同様にアジアの熱帯・亜熱帯地域にあります。レモンの直接の祖先とされるのは、「シトロン(ブンタン)」や「オレンジ」など、複数の柑橘類が自然交配した結果、誕生したと考えられています。
古代から存在していた柑橘類
紀元前3000年頃には、シトロンがすでにインドや中国で栽培されていたという記録があります。レモンはこれらの柑橘類が長い年月をかけて交雑する中で誕生し、その後、人々の暮らしの中に少しずつ取り入れられていきました。
ヨーロッパから世界へ広がったレモン

レモンが世界中に広まるきっかけとなったのは、地中海沿岸地域への伝播です。紀元1世紀ごろにはローマ帝国にも伝わっていたとされ、装飾品や香料、さらには薬用植物として用いられていました。その後、十字軍遠征やイスラム文化の影響を受けてヨーロッパ各地へと広がり、商業的な価値を持つ果物として栽培されるようになります。
地中海からアメリカへ
中世ヨーロッパでは、レモンは貴重な薬用果実として扱われていました。特にビタミンCを豊富に含むことから、壊血病の予防にも効果があると信じられ、航海時の重要な食材となっていきます。15世紀以降の大航海時代には、スペインやポルトガルの探検家たちによって南アメリカや北アメリカへ持ち込まれ、現在のカリフォルニア州やフロリダ州などで大規模な栽培が始まりました。
日本に伝わったのは明治時代
レモンが日本に伝わったのは明治時代とされ、1873年(明治6年)には、静岡県熱海の旅館で外国人がレモンの種を植えたという記録が残っています。この出来事は、日本におけるレモン栽培の最初期の事例とされています。
その後、1898年(明治31年)にアメリカ・カリフォルニアから輸入された苗木が、和歌山県を経由して広島県の芸予諸島に導入されました。特に大長(おおちょう)地区では、この苗木を基に本格的な栽培が始まり、日本のレモン産業の礎が築かれたとされています。
(出典: 『レモンの経済・流通・文化的価値に関する研究』(川窪一志著), URL: https://www.kokudo.or.jp/grant/pdf/h29/kawakubo.pdf, 最終更新日: 2017年3月)
日本におけるレモンの主な産地
現在、日本におけるレモンの主要産地は、広島県と愛媛県です。中でも広島県は全国生産量の50%以上を占めており、瀬戸内海に浮かぶ生口島や大崎上島、大三島などの島嶼部での栽培が盛んです。これらの地域は、温暖で日照時間が長く、台風や霜害の影響を受けにくいという気候条件に恵まれています。
広島県尾道市の瀬戸田町は「レモン谷」とも呼ばれる一大産地であり、国産レモンのブランドとして高い評価を受けています。また、愛媛県今治市の大三島では「神の島レモン」として地域ブランド化が進んでおり、観光資源としても活用されています。
(出典: 『国産レモンの栽培と地域活性化の可能性』(川窪一志著), URL: https://www.kokudo.or.jp/grant/pdf/h29/kawakubo.pdf, 最終更新日: 2017年3月)
輸入レモンとの違いと国産レモンの魅力
スーパーに並ぶレモンには、海外から輸入されたものと、日本国内で栽培された国産レモンがあります。それぞれに特徴があり、用途や好みによって選び分けることができます。
輸入レモンは、長距離輸送に耐えるために収穫後に防かび剤やワックス処理が施されることが多く、日持ちはするものの、皮ごと使う際には注意が必要です。一方、国産レモンは収穫から出荷までの時間が短いため、保存処理を最低限に抑えられる傾向があります。農薬やワックスの使用が少ない商品が多く、皮まで安心して使える点が魅力です。
また、国産レモンは収穫時期が限られるため、旬の時期に出回るフレッシュな香りと風味も特徴的です。瀬戸内海沿岸などの温暖な地域で育てられたレモンは、日照時間や海風の恩恵を受け、香り高く仕上がると言われています。
まとめ|レモンの起源を知るともっとおいしくなる
レモンのルーツはインド北部のヒマラヤ山麓とされ、そこから中東やヨーロッパ、そして世界各地へと広がっていきました。日本には明治時代に伝わり、広島県や愛媛県などで本格的な栽培が始まりました。
現在では、国産レモンの品質の高さや安心感が見直され、多くの家庭で皮ごと料理に活用されています。レモンの歴史や産地の背景を知ることで、日々の食卓にのぼる一片のレモンも、より身近で価値ある存在に感じられるのではないでしょうか。

レモンの原産地はなぜインドのヒマラヤ山麓とされているのですか?
レモンは、シトロンや他の柑橘類との自然交配によって誕生したと考えられており、その祖先植物がインド北部からヒマラヤ山麓周辺に分布していたことから、原産地とされています。遺伝子解析の研究でもこの地域が起源の一つと示されています。
レモンが日本に伝わったのはいつですか?
日本にレモンが伝わったのは明治時代で、1870年代には外国人が持ち込んだとされる記録があります。1898年頃にはアメリカから苗木が導入され、広島県などで本格的な栽培が始まりました。
なぜ広島県がレモンの一大産地になったのですか?
広島県の瀬戸内海沿岸や島嶼部は、温暖で日照時間が長く、冬の寒さも穏やかな気候に恵まれています。こうした気象条件がレモン栽培に適しており、さらに急傾斜の畑や水はけのよい土壌なども栽培に向いていたため、広島県は日本一のレモン産地となりました。
国産レモンと輸入レモンの違いは何ですか?
輸入レモンは、長期間の輸送に耐えるため、防かび剤やワックス処理が施されることが一般的です。一方、国産レモンは収穫後すぐに市場に出回るため、保存処理を最低限に抑えられ、皮ごと安心して使えるのが特徴です。また、香りや鮮度の点でも優れています。
国産レモンの旬の時期はいつですか?
国産レモンの収穫時期は主に秋から冬にかけてで、10月頃から翌年の3月〜4月頃までが旬とされています。この時期には、香り高くみずみずしいレモンが多く出回ります。