私たちは日頃から飲食物の衛生に気を付けていますが、時として気付かないうちに腐敗した食品を口にしてしまうことがあります。特に牛乳は腐敗しやすく、誤って腐った牛乳を飲んでしまうと健康被害が心配されます。そのような事態に遭遇した際の適切な対処法を理解しておくことが重要です。
腐った牛乳を飲んだらどうなる?何時間後に腹痛や下痢の症状が
腐った牛乳を飲んでも、必ずしも即座に症状が出るわけではありません。しかし、黄色ブドウ球菌などの食中毒菌が混入していた場合、平均約3時間程度(30分~6時間)で腹痛や嘔吐、下痢などの症状を引き起こす可能性があります。*1) 黄色ブドウ球菌は、傷口や鼻水、ニキビ、水虫、ホコリなど、身近な場所に存在する菌です。開封時に手で触れたり、直接口をつけて飲んだりすると、食中毒菌が入り込み、増殖して食中毒を引き起こすリスクがあります。 また、黄色ブドウ球菌が作るエンテロトキシンという毒素は、熱に強いため、菌に侵された牛乳を加熱しても毒素は残ります。腐敗したからといって必ずしも食中毒につながるわけではありませんが、開封時期がわからない牛乳は処分するのが賢明です。 一方、食中毒とは異なり、単に腐敗した場合は、微生物の増殖により食べ物の成分が変質し、タンパク質が分解されて有害な物質が生成された状態を指します。腐敗した牛乳を飲んでも、必ずしも症状が出るわけではありませんが、腹痛などの体調不良を招く可能性があります。 また、個人的な体質によっては、新鮮な牛乳でも乳糖不耐症による腹痛やゴロゴロ、下痢などの症状が出ることもあります。その場合は、温めた牛乳を少しずつ飲んだり、乳糖を分解した製品を利用したり、ヨーグルトやチーズにするなどの工夫が必要です。
*1)東京都保健医療局 食中毒を起こす微生物「黄色ブドウ球菌」
腐った牛乳を飲んでしまったときの対処法|下痢止めは飲まない
腐った牛乳を飲んでしまった場合、体は病原菌を排出しようと下痢や嘔吐などの防御反応を示します。この防御反応を抑える下痢止めの服用は避け、体の自然な排出プロセスを妨げないことが重要です。下痢や嘔吐は脱水症状を引き起こすため、経口補水液などで水分と電解質を適切に補給することが大切になります。 症状が重い場合は医療機関への受診を検討しましょう。一方、軽症であれば自宅療養で対処可能です。消化に優しい流動食から始め、乳製品や脂っこい食べ物は避けましょう。手洗いの徹底と十分な休息により、体調を整えていきます。 腐った牛乳の見分け方としては、加熱する方法が有効です。牛乳を90度前後に加熱すると、腐敗している場合は固まりや分離が生じます。ただし、加熱時に表面に現れる薄い膜は問題ありません。臭いや味、色の変化にも注意を払いましょう。少しでも異常を感じたら、潔く処分するのが賢明でしょう。期限切れの牛乳も飲用は避けた方が安全です。
牛乳の消費期限・賞味期限切れは飲めるのか|未開封に限る
牛乳の殺菌方法と期限の種類 牛乳には、殺菌方法と期限の種類によって日持ち期間が異なります。「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」では、複数の製法と消費期限・賞味期限が定められています。 低温殺菌牛乳は消費期限が約5〜6日で、要冷蔵保存です。開封後は2〜3日以内に消費する必要があります。一方、超高温瞬間殺菌牛乳は賞味期限が約2週間で、常温保存が可能です。また、超高温滅菌法により製造されたロングライフ牛乳は、賞味期限が約60〜100日と長期保存が可能です。 いずれの場合も、牛乳は開封後は要冷蔵となり、保存温度は10℃以下が推奨されています。栄養価が高く菌の繁殖しやすい食品なので、購入後は温度管理に気をつけ、直接口をつけずにコップに注いだ後はすぐに冷蔵庫に戻しましょう。
結論|腐った牛乳で食中毒の場合は平均約3時間後に症状が出る
牛乳は栄養価が高い一方で、さまざまな微生物の繁殖に適した環境です。不衛生な取り扱いをすると、容易に腐敗し、食中毒の原因となる危険性があります。腐敗した牛乳を飲んでしまうと、吐き気、腹痛、下痢などの胃腸炎症状が現れることがあり、重症化すると脱水症状にもなりかねません。 腐敗の兆候として、固まりや分離、異臭などがある場合は注意が必要です。 牛乳は購入後、適切な温度管理が重要です。直接口をつけたり、保存状態が悪いと食中毒菌が増殖しやすくなります。そのため、コップを使って注ぐなど衛生的に取り扱い、注いだ後は速やかに冷蔵庫に戻して2~3日以内に飲み切るよう心がけましょう。万が一、腹痛や下痢などの症状が現れた場合は、適切な対処が必要となります。
まとめ
幸いにも腐った牛乳を少量飲んだ程度であれば、大きな健康被害は免れる可能性があります。しかし、下痢や吐き気などの症状が出た場合は、すぐに医師に相談することをお勧めします。腐敗した食品を口にした際は、水分を十分に取り、体内から毒素を排出することが大切です。また、今後は賞味期限を確認するなど、食品の衛生管理に細心の注意を払うことが肝心です。