中華料理でおなじみのきくらげは、独特のコリコリとした食感が人気の食材です。クラゲに似た見た目から名付けられましたが、実はきのこの一種です。日本にも自生していますが、現在流通しているのはほとんどが栽培されたものです。食物繊維、ビタミンD、カリウムなどの栄養が豊富で、健康効果も期待されています。この記事では、きくらげの基本情報から、様々な種類、生・乾燥・白きくらげの栄養と効能、下処理と保存方法まで、きくらげに関するあらゆる情報を詳しく解説します。きくらげの魅力を深く理解し、その可能性を最大限に引き出すための知識とアイデアを、ぜひこの記事で手に入れてください。
きくらげとは?基本情報と魅力を解説
きくらげはきのこの一種で、独特のコリコリとした食感が特徴です。名前は木に生える姿と食感がクラゲに似ていることに由来し、漢字では「木耳」と書き、人の耳の形に似ていることに由来すると言われています。日本にも自生していますが、食用として販売されているもののほとんどは栽培されたものです。
栽培方法には、原木栽培と菌床栽培の2種類があります。原木栽培は、広葉樹の原木に種菌を植え付け、自然に近い環境で時間をかけて育てる方法です。一方、菌床栽培は、おがくずと米ぬかなどを混ぜた菌床に種菌を植え付けて栽培する方法で、温度や湿度を管理しやすい施設内で効率的に生産できるため、現在一般的な栽培方法となっています。
きくらげの旬は6月から9月頃ですが、菌床栽培の技術が進んだことで、現在では一年を通して生または乾燥のきくらげが手に入ります。特に乾燥きくらげは通年入手可能で、手軽に利用できる食材として人気です。日本で流通しているきくらげの多くは中国からの輸入品ですが、近年では国内でも生産が盛んになり、新鮮な「生きくらげ」を見かける機会も増えてきました。
生きくらげの主な産地は、岐阜県、茨城県、新潟県などです。乾燥きくらげの主な国内産地は、北海道、鳥取県、鹿児島県など多岐にわたります。味や香りがほとんどないため、和食、洋食、中華など様々な料理に合わせやすく、独特の食感が料理に深みと楽しさを加える万能食材として、幅広い料理で活用されています。
きくらげの種類と特徴:食用から薬膳まで
きくらげにはいくつかの種類があり、それぞれ見た目、生息環境、食感、用途が異なります。一般的に「きくらげ」として知られているものから、珍しいもの、薬膳食材として使われるものまで、その多様な種類を見ていきましょう。
あらげきくらげ
あらげきくらげは、キクラゲ科キクラゲ属に分類されるきのこで、現在日本国内で栽培・流通している食用きくらげのほとんどがこの「あらげきくらげ」です。名前の通り、表面に白い短い毛が密集して生えていることから「荒毛木耳」と表記されます。主に南方系の品種で、温暖な気候を好みます。見た目は円盤状や耳状で、肉厚でゼラチン質が豊富です。生の時点では茶色っぽい色をしていますが、乾燥させると水分が抜けて黒色に変化します。あらげきくらげは味がなく、独特のコリコリとした食感が特徴で、炒め物、和え物、スープなど、様々な中華料理によく使われます。主な産地は、岐阜県や茨城県などです。
きくらげ
きくらげは、あらげきくらげと同様にキクラゲ科キクラゲ属に属するきのこですが、より小型で、表面の毛は目立ちにくいのが特徴です。主に北方系の品種として知られ、あらげきくらげよりも低い温度で生育し、湿度が高い環境を好みます。色は濃い褐色で、味や香りはありませんが、コリコリとした食感があります。乾燥させると著しく小さくなるため、乾燥品としての流通はあまり一般的ではありません。そのため、生の状態で販売されていることが多い種類です。
白きくらげ(銀耳)
白きくらげは、シロキクラゲ科シロキクラゲ属に分類される、きくらげとは異なる種類のきのこです。中国ではその美しい見た目から「銀耳」と呼ばれ、古くから薬膳料理や美容食として重宝されてきました。かの有名な楊貴妃も愛用したとされ、歴史のある高級食材です。日本で流通している白きくらげは、ほとんどが中国からの輸入品で、乾燥した状態で販売されています。見た目は半透明で、花びらが集まったような独特の形状をしており、その見た目の華やかさが特徴です。味や香りはほとんどありませんが、柔らかく、それでいてコリコリとした独特の食感が楽しめます。主に台湾スイーツの豆花や、甘味のあるデザート、美容効果を期待した薬膳スープなどに用いられることが多いです。
ひめきくらげ
ひめきくらげ(Tremella fuciformis)は中国で古くから食用および薬用に利用されており、乾燥品を水戻ししてスープ、デザートなどの料理に用いるほか、伝統漢方・薬膳の素材としても広く使われています。ゼラチン質で、大小さまざまな球が集まったような不規則な形状をしており、表面には多数の突起が見られます。乾燥すると海苔のように薄くパリパリになりますが、水分を含むと元のゼラチン質に戻ります。色は茶色で、味や香りはありません。口に入れるとすぐにバラバラになってしまうため、食感を楽しむことは難しく、食用として利用されることはほとんどありません。
きくらげの豊富な栄養と健康メリット
きくらげは、独特の食感に加え、豊富な栄養素を含んでいることで広く知られています。特に乾燥きくらげは、生のきくらげに比べて栄養成分が凝縮されており、様々な健康効果が期待されています。ここでは、きくらげ(生)、きくらげ(乾燥)、白きくらげ(乾燥)に含まれる主要な栄養素を比較し、それぞれの効能について詳しく解説していきます。
全体的な栄養価の概要
きくらげは、カロリーが低い一方で、良質なタンパク質、脂質、そして豊富な食物繊維を含む炭水化物を含有する食材です。
- 生きくらげ(100gあたり):エネルギー14kcal、タンパク質0.7g、脂質0.1g、炭水化物5.4g
- 乾燥きくらげ(100gあたり):エネルギー184kcal、タンパク質6.9g、脂質0.7g、炭水化物77.0g
- 乾燥白きくらげ(100gあたり):エネルギー170kcal、タンパク質4.9g、脂質0.7g、炭水化物74.5g
上記のデータから、乾燥きくらげは乾燥白きくらげに比べて、カロリー、炭水化物、タンパク質の含有量が多く、脂質はほぼ同等であることが分かります。調理方法や摂取量を検討する際には、これらの栄養価の違いを考慮に入れることが推奨されます。
カリウム:体内の水分バランスを調整
カリウムは、体内の水分量を適切に保つために不可欠なミネラルです。特に、ナトリウム(塩分)の排泄を促す作用があり、過剰な塩分摂取による体内のバランスを調整する上で重要な役割を果たします。この働きにより、むくみの軽減にも貢献する栄養素として広く知られています。
きくらげ100gあたりのカリウム含有量
- 生きくらげ:59mg
- 乾燥きくらげ:630mg
- 乾燥白きくらげ:1400mg
乾燥白きくらげが最も高いカリウム含有量を誇り、乾燥きくらげも生きくらげに比べて約10倍のカリウムを含んでいます。

ビタミンD:骨の健康と免疫機能の調整
ビタミンDは、カルシウムの吸収を助け、骨の成長を促進する上で不可欠な脂溶性ビタミンです。健康な骨と歯を維持するために重要な役割を担っており、特に高齢者の骨の健康維持や成長期の子どもの骨の発達をサポートします。近年、ビタミンDが免疫機能の維持に関与すると言われ、健康な体づくりに欠かせない栄養素です。
きくらげ100gあたりのビタミンD含有量
- 生きくらげ:0.1μg
- 乾燥きくらげ:130.0μg
- 乾燥白きくらげ:15.0μg
乾燥きくらげは、他の種類と比較して圧倒的に多くのビタミンDを含んでいます。ビタミンDは脂溶性であるため、脂質と一緒に摂取することで吸収率が向上します。きくらげを摂取する際は、油を使った調理法を取り入れることで、より効率的にビタミンDを体内に取り込むことができます。例えば、オリーブオイルやごま油で炒めるなどの工夫が効果的です。
食物繊維:腸内環境の改善と「第6の栄養素」
食物繊維は、食品に含まれる成分であり、人間の消化酵素では分解できない特性を持っています。以前は不要なものと考えられていましたが、その整腸作用をはじめとする健康効果が注目され、近年では「第6の栄養素」とも呼ばれるようになりました。便秘の解消、血糖値の上昇抑制、コレステロール値の低下など、多岐にわたる健康効果が期待されています。
きくらげ100gあたりの食物繊維含有量
- 生きくらげ:5.6g
- 乾燥きくらげ:79.5g
- 乾燥白きくらげ:68.7g
乾燥きくらげは、非常に豊富な食物繊維を含んでおり、その含有量は他の多くの食品と比較しても際立っています。特に不溶性食物繊維が多く、腸の運動を活発にし、便通を促進する効果が期待できます。
※上記のきくらげの栄養価は、主にあらげきくらげの数値を基にしています。
生きくらげと乾燥きくらげ:それぞれの特徴と扱い方
きくらげには、生の状態と乾燥させた状態で販売されているものがあります。見た目や食感はもちろん、下ごしらえや保存方法も異なり、それぞれの特性を理解することで、きくらげをより一層美味しく料理に活用できます。
食感の違い
生きくらげと乾燥きくらげの一番の違いは、なんといってもその食感です。
- 生きくらげ:水分をたっぷり含んでおり、ぷりぷりとした独特の弾力が魅力です。加熱してもこの食感は失われにくく、お刺身や和え物など、フレッシュな食感を活かした料理にぴったりです。
- 乾燥きくらげ:水分が取り除かれているため、水で戻すと生きくらげよりも肉厚になり、コリコリとした歯ごたえが際立ちます。炒め物やスープなど、しっかりとした食感をアクセントに加えたい時に最適です。
乾燥きくらげの戻し方と下処理
乾燥きくらげを使う際は、調理の前に水で戻す作業が欠かせません。水で戻す方法と、お湯で戻す方法の2種類があります。
- 水で戻す方法:ボウルに乾燥きくらげを入れ、たっぷりの水を注ぎ、きくらげ全体が水に浸るようにします。常温でじっくり時間をかけて(6~8時間、一晩程度)戻すと、きくらげが水分をゆっくりと吸収し、肉厚で弾力のある食感に仕上がります。時間はかかりますが、きくらげ本来の風味を損なわずに戻せるのがメリットです。
- お湯で戻す方法:時間がない時は、耐熱容器に乾燥きくらげと熱湯をひたひたに入れ、10分ほど浸しておくと、比較的早く戻すことができます。さらに、電子レンジを使う場合は、耐熱容器にきくらげとひたひたの水を入れ、ラップをして600Wで2~3分加熱すると、より時短になります。ただし、お湯や電子レンジで戻すと、きくらげが柔らかくなりすぎたり、風味が損なわれる可能性があるので注意が必要です。十分に膨らんだら、しっかりと水気を絞ります。次に、きくらげの根元にある硬い石づきを、キッチンバサミや包丁で切り落とします。石づきは硬くて食べられないので、必ず取り除いてください。その後、料理に合わせて千切りや薄切りなど、食べやすい大きさにカットします。
生きくらげの下処理
生きくらげは、乾燥きくらげのように長時間水に浸す必要はありません。調理前に軽く水洗いして汚れを落とし、必要に応じて石づきを取り除きます。生のまま、またはそれに近い状態で食べる場合は、必ずさっと湯通し(熱湯に数十秒くぐらせる)してから使うと、より安全で美味しくいただけます。湯通し後は冷水にさらし、水気をしっかり切ってから調理してください。
きくらげの保存方法
きくらげの美味しさを長持ちさせるためには、適切な保存方法が不可欠です。鮮度を保ち、最後まで美味しくいただくためのコツをご紹介します。
- 生きくらげの保存方法:生のきくらげは傷みやすいので、乾燥きくらげよりも保存期間が短いです。冷蔵保存する際は、水気を軽く拭き取り、キッチンペーパーで包んでから密閉できる容器か保存袋に入れ、冷蔵庫の野菜室で保管してください。できるだけ2~3日を目安に使い切るようにしましょう。長く保存したい場合は、軽く茹でてから冷まし、しっかりと水気を絞って小分けにし、冷凍保存がおすすめです。冷凍したきくらげは、解凍せずにそのまま調理に使用できます。
- 乾燥きくらげの保存方法:乾燥きくらげは、湿気を避けて保存することで長期間保存することができます(数ヶ月~約1年)。密閉できる容器やジッパー付きの保存袋などに入れ、直射日光を避けた涼しい場所に保管してください。湿気を吸うとカビが生える原因となるため、開封後は特に注意が必要です。
まとめ
この記事では、きくらげの基礎知識から始まり、あらげきくらげ、きくらげ、白きくらげ、ひめきくらげといった様々な種類、それぞれの栄養価と期待できる効果、そして生と乾燥きくらげの正しい下処理方法、保存のポイントまで、きくらげに関する幅広い情報をお届けしました。 その多様な魅力と健康効果を実感し、料理のバリエーションをさらに広げることができるでしょう。
きくらげはきのこの仲間ですか、それともクラゲの仲間ですか?
きくらげという名前には「クラゲ」という言葉が入っていますが、実際にはきのこの一種です。木に生える姿と、あの独特のコリコリとした食感がクラゲに似ていることから、「木に生えるクラゲ」という意味で「きくらげ」と呼ばれるようになりました。漢字では「木耳」と書き、これは人の耳の形に似ていることに由来すると言われています。
きくらげにはどのような栄養素が豊富に含まれていますか?
きくらげは、特に食物繊維、ビタミンD、カリウムが豊富に含まれています。食物繊維は腸内環境を改善し、便秘解消に役立ちます。ビタミンDは、カルシウムの吸収を助け、骨や歯を丈夫にするだけでなく、免疫機能の調整にも関わっています。カリウムは、体内の過剰なナトリウムを排出し、むくみの予防や血圧の調整に効果があります。特に乾燥きくらげは、これらの栄養素が凝縮されています。
生きくらげと乾燥きくらげ、栄養や食感の違いは?
はい、栄養と食感に違いが見られます。栄養面では、乾燥きくらげは水分が抜けることで栄養が凝縮され、食物繊維、ビタミンD、カリウムなどの含有量が、生きくらげと比較して大幅に増加します。食感は、生きくらげがプリプリとした弾力であるのに対し、乾燥きくらげを戻したものは、コリコリとした強い歯ごたえが際立ちます。













