蓮根とは?知っておきたい基礎知識:特徴・栄養・調理法

独特の食感と、穴の空いたユニークな見た目が特徴の蓮根。お正月のおせち料理など、縁起物としても親しまれています。この記事では、そんな蓮根の基礎知識を徹底解説。蓮根とは一体どんな野菜なのか、その特徴や栄養価、そして美味しい調理法まで、幅広くご紹介します。蓮根の魅力を再発見して、日々の食卓に取り入れてみませんか?

歴史

蓮根の歴史は古く、アメリカ、ヨーロッパ、日本などの地層から化石が発見されており、更新世には北半球に広く分布していたと考えられています。原産地は中国、インド、エジプトなど諸説ありますが、特定されていません。食用としての歴史は、アジア地域、特にインドや中国が起源であるという説が有力です。日本では、行田古代蓮や大賀蓮などから、弥生時代にはすでにハスが存在していたと考えられていますが、当時の地下茎は現在ほど肥大していなかったようです。文献では、『古事記』(712年)、『日本書紀』(713年)、『万葉集』に、観賞用や食用としてのハスに関する記述が見られます。食用としてのハスは、仏教伝来とともに中国から伝わったと考えられています。平安時代から鎌倉時代にかけて、中国から食用蓮が持ち込まれ、日本に定着し在来種となりました。現在流通している蓮根の品種は、明治時代以降に中国から導入された品種を改良したものがほとんどで、食味の良い蓮根が広く普及しました。

旬・産地

蓮根は一年を通して手に入りますが、旬は10月から翌年3月頃です。特にこの時期は、お正月料理に欠かせない縁起物として需要が高まります。夏に出回る新蓮根は6月から9月頃が旬で、みずみずしい風味とシャキシャキした食感が特徴です。蓮根は水生植物であるハスの地下茎なので、一般的な畑ではなく水田(蓮田)で栽培されるため、生産できる県は限られています。日本国内の蓮根の最大の産地は茨城県で、作付面積・収穫量ともに全国一位を誇り、2020年度には全国シェアの過半数を占めています。次いで徳島県、佐賀県、山口県などが主要な産地として知られています。かつては茨城県・徳島県・愛知県が三大産地でしたが、現在では上位5県に岡山県を加えた6県が主要な産地とされています。

産地と食感の違い

蓮根の食感は、産地や品種によって異なると言われています。例えば、茨城県産の蓮根はシャキシャキとした食感が特徴で、きんぴらや炒め物に適しています。一方、徳島県産の蓮根はホクホクとした柔らかい食感で、煮物や揚げ物に向いているとされています。

主な種類

国内で親しまれているレンコンは、大きく二つのルーツに分けられます。一つは、シャキシャキとした食感が特徴的な「在来種系」です。もう一つは、肉厚でずんぐりとしたフォルムの「中国種(通称:シナバス)系」です。地域ごとの栽培傾向を見ると、西日本では食べ応えのある中国種が多く、東日本では繊細な在来種が好まれる傾向にあります。ただし、現在市場に出回っているレンコンの大部分は中国種を改良したもので、昔ながらの在来種は希少となっています。そのため、現代のレンコンは、肉厚で様々な料理に活用しやすいのが特徴です。国内で栽培されているレンコンの種類は、各産地で独自に進化していますが、一般消費者が品種を意識して購入する機会は少ないかもしれません。

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栽培

レンコンは、主に泥田や水田(レンコン田)で栽培されます。質の高いレンコンを育てるには、堆肥などで土壌の栄養分と柔らかさを豊かにすることが重要であり、それによって見た目も良く、市場価値の高いレンコンが育ちます。従来の栽培方法では、春の終わりに種となるレンコン(種レンコン)を植え、秋から翌春にかけて収穫していましたが、近年では早生品種も増え、様々な時期に収穫できるようになりました。収穫方法には大きく分けて二通りあります。一つは、鍬などで手作業で掘り起こす「手掘り」と呼ばれる方法です。もう一つは、高圧水流で泥を洗い流しながら収穫する「水圧掘り」と呼ばれる方法です。水圧掘りは、効率的ですが、収穫時期に十分な水が必要で、砂地の土壌ではレンコンを傷つける可能性があります。一方、手掘りは、一部を収穫せずに翌年の種レンコンとして残せる利点がありますが、粘土質の土壌では作業が難しく、乾燥しすぎると病気が発生しやすいという難点があります。産地別に見ると、茨城県や岡山県では水圧掘りが多く、山口県や愛知県では手掘りが主流です。収穫されたレンコンは、酸化による変色や乾燥を防ぐため、泥付きで出荷されることが多いです。手掘りの地域では、泥付きで出荷することで生産者の負担を軽減する意味合いもありますが、水圧掘りの地域では泥を落として出荷することが多いものの、あえて泥を付けて出荷するケースもあります。

収穫量

近年、国内のレンコン収穫量は減少傾向にあります。1973年には104,000トンだった収穫量は、その後徐々に減少しています。都道府県別に見ると、茨城県が長年にわたり作付面積・収穫量ともにトップを維持しています。2位から5位は、徳島県、佐賀県、山口県、愛知県、岡山県などが変動しながら名を連ねています。全国的に収穫量が減少する中、茨城県のみが増加傾向にあり、2020年には全国シェアの半分以上を占めるほどの生産量を誇っています。かつては、茨城県、徳島県、愛知県が三大産地でしたが、現在では上位5県に岡山県を加えた6県が主要産地と認識されています。市町村別の最新データは公表されていませんが、2006年の出荷量データでは、茨城県が7,060トン、愛知県が2,725トン、徳島県が2,489トン、佐賀県が1,440トン、山口県が1,350トン、岡山県が992トンでした。世界的なレンコンの収穫量に関する統計は少ないですが、2018年にFAOが発表した「その他芋類」(レンコンを含む)の生産量を見ると、中国が315万トンで1位、インドが165万トンで2位、韓国が110万トンで3位、エジプトが52万トンで4位、ミャンマーが47万トンで5位となっており、日本の生産量は58,300トンとされています。

栄養素

レンコンは、穴の多い見た目から「見通しが良い」縁起物として親しまれるだけでなく、栄養価も高い野菜です。可食部100gあたりのエネルギー量は74kcalで、野菜の中では糖質が多く、エネルギー源にもなります。可食部(生の状態からの廃棄率は約20%)の約81%は水分、約16%は炭水化物、約2%はタンパク質、約1%は灰分などです。ビタミンC、パントテン酸、カリウムなどのビタミン・ミネラルが豊富に含まれており、特にビタミンCは果物に匹敵するほど多く含まれています。レンコンのビタミンCは、でんぷん質に守られているため、加熱しても壊れにくいのが特徴です。茹でたり煮たりしてもビタミンCの損失を最小限に抑え、効率的に摂取できます。また、ポリフェノールの一種であるタンニンも含まれており、これがレンコンを切った際に変色する原因となります。さらに、不溶性食物繊維も豊富で、整腸作用や便秘改善に効果が期待できます。以前は粘り成分が「ムチン」とされていましたが、近年の研究でムチンは動物性の成分であり、植物には含まれないことが判明しました。現在では、レンコンの粘り成分は植物性の多糖類である「ムチレージ」であると考えられています。ムチレージやタンニンなどの抗酸化成分を含むレンコンは、体内の酸化ストレスを軽減する効果も期待されています。

選び方

美味しいレンコンを選ぶことは、その独特な風味と食感を堪能するための最初のステップです。良質なレンコンを選ぶには、いくつかの重要な点に注意する必要があります。まず、太く、形が真っ直ぐで、手に持った時にずっしりとした重みを感じるものを選びましょう。このようなレンコンは、順調に生育し、身がしっかりと詰まっている証拠です。また、表面の皮に傷やへこみがなく、全体的に自然なツヤがあるものが、品質が高いと判断されます。泥付きのレンコンの場合、表面の皮が赤茶色を帯びていることがありますが、これは土壌中の鉄分によるもので、品質や味に影響を与えるものではないため、心配する必要はありません。断面に見られる穴が比較的小さいものは、一般的に身が締まっている傾向があり、良質なレンコンの目安となります。一方で、避けるべきレンコンの特徴もあります。穴の内側が黒く変色しているものは、鮮度が低下している可能性が高いです。また、切り口に傷があったり、色ムラが見られるものは、劣化が進んでいる可能性があるため、避けた方が良いでしょう。これらのポイントを踏まえて、新鮮で美味しいレンコンを選びましょう。

保存方法・期間

レンコンをできるだけ長く、新鮮な状態を保つためには、適切な保存方法を理解しておくことが大切です。保存する状態によって、最適な方法が異なります。

丸のままのレンコンを保存したい場合

泥がついたままの丸ごとレンコンは、湿らせた新聞紙などで丁寧に包み込み、風通しの良い冷暗所に置いて保存することで、約1週間程度は日持ちします。泥はレンコンの乾燥を防ぐとともに、酸化による変色を抑制する効果があります。泥を洗い流していない状態であれば、冷蔵庫に入れなくても比較的長期間の保存が可能です。

カットされたレンコンや泥を落としたレンコンを冷蔵庫で保存したい場合

泥を洗い落としたレンコンや、既にカットされているレンコンは、空気に触れると酸化が進み、変色しやすくなります。これを防ぐためには、切り口にラップをぴったりと密着させるように包み、冷蔵庫の野菜室で保存するのが基本です。さらに長持ちさせたい場合は、保存容器にレンコンを入れ、レンコンが完全に浸るくらいの水(必要に応じて、少量の酢を加えた酢水)を加えて蓋をします。この方法により、レンコンが空気に触れるのを遮断し、変色を抑えることができます。この方法での保存期間は、カットされたレンコンで2~3日、水に浸した状態であれば約1週間が目安となります。

冷凍庫で保存したい場合

長期保存を希望する場合は、冷凍がおすすめです。冷凍する際は、まずレンコンの皮を剥き、変色を防ぐため酢水に浸した後、しっかりと水分を拭き取ります。次に、用途に合わせてカット(薄切りや乱切りなど)し、重ならないように冷凍用保存袋に入れ、空気を抜いて密封し冷凍します。この方法で、およそ1ヶ月を目安に使い切るようにしてください。冷凍したレンコンは、解凍せずにそのまま調理に使用可能です。

下ごしらえと調理法

レンコンは、独特の食感と味わいで、煮物、焼き物、炒め物、蒸し料理、揚げ物など、様々な調理法で親しまれています。切り方や加熱時間によって、食感が大きく変わるのも魅力です。

下ごしらえの基本とアク抜き

レンコンにはタンニンなどのポリフェノール類が含まれており、皮を剥いたりカットしたりすると、すぐに表面が黒ずんでしまいます。この変色を防ぎ、美しく仕上げるためには、カット後すぐに水に浸けることが重要です。より効果的な方法として、酢水(水1カップに対し酢小さじ1/2程度)に4~5分浸すことが挙げられます。酢水に浸すことでアクが抜けやすくなるだけでなく、レンコンの色を白く保ち、粘り成分であるムチレージが酢の酸によって分解され、よりシャキシャキとした食感になる効果も期待できます。

多様な調理法と食感の変化

レンコンは、加熱方法や切り方次第で様々な食感を楽しめる食材です。短時間で加熱すると、デンプン質が糖化する前の状態を保ち、シャキシャキとした歯ごたえが楽しめます。一方、加熱時間を長くすると、デンプン質が糖化してほのかな甘みが増し、もっちりとしたり、ホクホクとした食感に変化します。例えば、大きめに切って煮物にするとホクホクとした食感になり、薄切りにして炒め物、サラダ、酢の物などにするとシャキシャキとした食感を楽しめます。グリルでじっくりと焼けば、レンコン本来の自然な甘みを最大限に引き出すことができます。夏に出回る新レンコンは、色が白く、水分を多く含んでいるため、みずみずしくサクサクとした食感が特徴です。その風味を生かし、生のままサラダや和え物として食べるのがおすすめです。冬に収穫されるレンコンは、風味が濃厚でホクホクとした食感を味わえるため、煮物や揚げ物、汁物など、じっくりと火を通す料理に適しています。

レンコンの切り方と活用法

レンコンは、料理に合わせて切り方を変えることで、食感や見た目の印象を大きく変化させることができます。

  • 縦切り(薄切り・細切り):シャキシャキ感を際立たせたい場合に適しており、きんぴらや炒め物、和え物などに活用できます。
  • 乱切り:表面積が増えるため味が染み込みやすく、煮崩れしにくいのが特徴です。煮物や豚汁などの汁物に最適です。
  • 輪切り(厚め):独特の穴の形状を活かし、ホクホクとした食感を楽しめます。煮物、ソテー、天ぷらなどの揚げ物に適しています。
  • 輪切り(薄め):シャキシャキとした食感と見た目の美しさを両立でき、サラダや酢の物、チップスなどに適しています。

調理上の注意点

レンコンは低脂質であるため、油を使った調理法との相性が抜群です。油で炒めたり揚げたりすることで、風味やコクをプラスできます。ただし、レンコンに含まれるポリフェノールの一種、タンニンは鉄と反応すると変色してしまうため、鉄製の調理器具を使うと黒ずんでしまうことがあります。見た目を美しく仕上げたい場合は、ステンレスやホーロー製の鍋やフライパンを使用するのがおすすめです。

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まとめ

レンコンは、「見通しが良い」縁起物として親しまれ、日本の食文化に深く根付いています。その魅力は、切り方や加熱方法によって変わる食感のバリエーションと、豊富な栄養価にあります。ビタミンC(でんぷんに守られ、加熱にも強い)、食物繊維、ポリフェノールなどを豊富に含んでいます。旬は秋から冬ですが、夏にはみずみずしい新レンコンを楽しむことができます。茨城県をはじめとする全国各地で栽培されており、その歴史は奈良時代にまで遡ると言われています。この記事でご紹介した選び方、保存方法、下処理、調理のコツを参考に、レンコンをより美味しく、健康的に食卓に取り入れてみてください。和食はもちろん、炒め物やサラダ、揚げ物など、様々な料理に活用できるレンコンの可能性を、ぜひご家庭で体験してみてください。

レンコンの穴は必ず10個?

レンコンの穴の数には若干の個体差が見られますが、中心に小さな穴が一つ、その周りを囲むように九つの穴が開いているものが一般的です。つまり、合計で十個の穴があることが多いです。これらの穴は、水中で育つレンコンが水面に伸びる葉と繋がり、酸素の少ない泥の中でも呼吸できるよう、空気の通り道としての役割を果たしています。

レンコンを切ると黒くなるのはなぜ?

レンコンを切った際に切り口が黒ずんでしまうのは、レンコンに含まれるポリフェノールの一種であるタンニンが、空気中の酸素と反応して酸化するためです。変色を防ぐには、切った直後に水や酢水に浸すのが効果的です。特に酢水に浸すと、変色を抑えるだけでなく、より白く美しい状態に保つことができます。

レンコンの美味しい時期は?

レンコンは一年を通して手に入りますが、特に美味しい旬の時期は、10月から翌年の3月頃とされています。この時期のレンコンは、風味豊かで、ほっくりとした食感が楽しめます。また、6月から9月頃には「新レンコン」が出回り、こちらは色白で、水分が多く、シャキシャキとした食感が特徴です。

レンコンのネバネバは何?

以前はレンコンの粘り気のある成分は「ムチン」だと考えられていましたが、最近の研究で、ムチンは動物性の成分であり、植物には含まれていないことが分かりました。現在では、レンコンの粘り成分は、植物性の多糖類である「ムチレージ」であるとされています。このムチレージは、食物繊維の一種としても知られています。

レンコンの調理法で食感はどのように変化しますか?

レンコンは、加熱の度合いやカットの方法によって、その食感が大きく変わる野菜です。軽く加熱すると、シャキシャキした心地よい歯ごたえが楽しめますが、じっくりと時間をかけて加熱すると、デンプンが変化して甘みが増し、もちもち、あるいはほっくりとした食感に変わります。薄くスライスして炒め物やサラダに使うとシャキシャキ感が際立ち、大きめにカットして煮物にすると、ほっくりとした食感を堪能できます。

レンコンの主な産地はどこですか?

日本で最もレンコンの生産が盛んなのは茨城県です。作付面積と収穫量において長年日本一であり、全国の半分以上を占めることもあります。その次に、徳島県、佐賀県、山口県、愛知県、岡山県などが主要な産地として挙げられます。これらの地域では、それぞれ独自の品種や栽培方法を用いてレンコンを育てており、それによって食感の違いが生まれることもあります。

れんこん