秋の味覚として人気のさつまいも。焼き芋やスイーツなど、様々な料理で楽しめますよね。ところで、さつまいもが一体何科の植物かご存知でしょうか?実は、あの美しいアサガオと同じ「ヒルガオ科」なんです!一見、繋がりがないように思える二つの植物ですが、意外な共通点があるのです。この記事では、さつまいもがアサガオと同じヒルガオ科である点を解説し、よく似た『いも』として知られるジャガイモとの違いを、分類、歴史、食べる部位など様々な角度からご紹介します。
分類の違い:ジャガイモはナス科、サツマイモはヒルガオ科
ジャガイモとサツマイモは、名前の響きから「イモの仲間」というイメージを持たれがちですが、植物学上は全く異なる科に属する野菜です。ジャガイモはナス科ナス属であり、トマトやピーマン、ナスといった「ナスの仲間」です。それに対して、サツマイモはヒルガオ科サツマイモ属に分類され、「アサガオの仲間」にあたります。この分類の差は、植物の花の形や全体の構造、そして収穫される部分にも影響を与えているのです。
ヒルガオ科はナス目に含まれるグループで、ヒルガオ、アサガオ、そしてサツマイモなどが含まれます。約50属1500種もの多様な種類があり、主に熱帯や亜熱帯地域に広く分布しています。日本には約5属10種が存在し、多くがアサガオやヒルガオのように美しい花を咲かせます。しかし、ヒルガオ科で食用となる野菜は限られており、代表的なものとして「サツマイモ」と「空心菜」が挙げられます。アサガオやヒルガオは、葉の形やツルの伸び方でサツマイモと共通点が見られますが、空心菜は細長い葉を持ち、見た目は異なります。中華料理で炒め物として使われる空心菜が同じヒルガオ科であることは、意外に感じる人もいるかもしれません。
ジャガイモの花はナスの花に似ており、サツマイモの花はアサガオに似た形をしています。しかし、日本ではサツマイモの花を見る機会はほとんどなく、珍しい花として知られています。サツマイモは「短日植物」であり、日照時間が短くならないと花芽が作られず、開花しません。日本のサツマイモ栽培地域では、夏の日照時間が長いため、花が咲く条件が整いにくいのです。沖縄など一部地域では開花例がありますが、他の地域では非常に稀です。アサガオやヒルガオが日本中で咲くのに対し、サツマイモが開花しにくいのは、サツマイモが「鈍感な短日植物」であるため、日本の環境では開花反応が起こりにくいからです。
原産地と日本への伝来の違い
ジャガイモとサツマイモは、原産地と日本への伝来の経緯も大きく異なります。これらの歴史的背景を知ることは、それぞれの野菜が持つ文化的な側面や、育つ場所の特性を理解する上で重要です。
ジャガイモの原産地と伝来
ジャガイモの原産地は、中南米から南米にかけてのアンデス山脈の高地です。この地域では、数千年前から先住民が栽培し、重要な食料として利用してきました。15世紀末に探検家によってヨーロッパに持ち込まれましたが、当初は毒性があると思われたり、調理法が確立されていなかったため、すぐに広まることはありませんでした。ヨーロッパでジャガイモが食用として広く受け入れられ、食卓に並ぶようになったのは、伝来から遅れた18世紀のことです。飢饉の際に栄養価の高さと栽培の容易さが認識され、ヨーロッパ全土に普及しました。
サツマイモの原産地と伝来
サツマイモの原産地は中央アメリカのメキシコ中央部からグアテマラにかけての地域であるとされ、紀元前3000年以前にはすでにこの地域で栽培されていたと考えられています。また、紀元前800~1000年頃には中央アンデス地方(現在のペルー北海岸など)でも栽培されていたことが考古学的証拠からわかっています。古代ペルーの遺跡からは、サツマイモの葉や花、根を描いた土器や綿布も発見されており、その時代から重要な作物として利用されていました。ジャガイモと同様にヨーロッパにも伝わりましたが、サツマイモは温暖な気候を好むため、涼しいヨーロッパでは栽培に適さず、あまり普及しませんでした。しかし、熱帯・亜熱帯地域への適応力が高く、アフリカ、インド、東南アジアの植民地に持ち込まれることで、世界中に広がりました。日本へは、1600年ごろに中国から琉球(現在の沖縄県)を経由して伝来したとされています。飢饉の際の救荒作物として重要視され、特に江戸時代には全国各地に広がり、人々の生活を支える作物となりました。
名前の由来は?
ジャガイモとサツマイモ。その名前には、それぞれの伝来の歴史が色濃く反映されています。名前のルーツを知ることは、それぞれの背景をより深く理解する上で役立ちます。
ジャガイモの名前の由来
ジャガイモという名前は、日本への伝来元に由来すると言われています。17世紀初頭、ジャガイモはインドネシアのジャカルタから日本に伝わりました。当時、人々はこの新しい芋を「ジャカルタからの芋」という意味合いで「ジャガタライモ」と呼んでいました。この「ジャガタライモ」という呼び方が時を経て変化し、「ジャガイモ」という現在の名称になったとされています。伝来地の名前がそのまま野菜の名前になった好例と言えるでしょう。
サツマイモの名前の由来
サツマイモの名前もまた、日本への伝来ルートと深く結びついています。1600年頃、サツマイモは中国から琉球(現在の沖縄県)を経由して日本へ伝わりました。その後、琉球から薩摩地方(現在の鹿児島県)へと運ばれ、この地で本格的な栽培が開始されました。薩摩地方はサツマイモ栽培の中心地となり、その地名がそのまま野菜の名前として定着し、「サツマイモ」と呼ばれるようになったと考えられています。現在も鹿児島県はサツマイモの主要な産地であり、その名前は地域の歴史と農業の発展を象徴するものとなっています。
収穫する部位は根っこ?茎?
ジャガイモとサツマイモは、どちらも土の中で育つ「芋」ですが、植物学的には、食用とする部分が大きく異なります。この違いは、それぞれの生育形態に深く関係しています。
サツマイモで食用とする部分は、「根」が肥大化したものです。具体的には、サツマイモは根が養分を蓄えて膨らんだ「塊根」と呼ばれる器官を食します。土の中で育つ野菜は根が大きくなった「根菜」というイメージがありますが、サツマイモはその代表例と言えます。根が大きくなる野菜としては、ニンジン、ゴボウ、カブなどが挙げられます。これらの野菜は、地中深くに根を張り、その根に栄養を蓄えることで成長します。
一方、ジャガイモは「茎」が肥大化したものを食用としています。ジャガイモは、地下茎と呼ばれる茎の一部が養分を蓄えて膨らんだ「塊茎」という器官です。地表に出ている茎とは異なり、土の中で成長するため、根と間違われやすいのですが、植物学上は茎の一部です。茎が大きくなる野菜としては、ジャガイモの他に、サトイモ(これも塊茎)、アスパラガス(地下茎が変化したもの)などがあります。同じ「芋」という名前でも、実際に食べている部分が「根」なのか「茎」なのかという点で大きく異なるのは、意外かもしれません。
まとめ
じゃがいもとさつまいもは、どちらも食卓でおなじみの「いも」ですが、この記事を通して、植物学的な分類、原産地、日本への伝来、食用とする部位、そして意外な特徴など、多くの点で異なる個性豊かな野菜であることをご理解いただけたかと思います。このように、「いも」という共通点を持つじゃがいもとさつまいもですが、植物としては全く異なる種類であり、それぞれ独自の歴史と特徴を持っています。料理に合わせて品種を選んだり、知られざる特性に注目したりすることで、これらの素晴らしい野菜をより深く、より美味しく味わうことができるでしょう。さつまいもが持つ「植物としての面白さ」や、美しい花を咲かせる可能性に期待を寄せながら、これからも様々な角度からじゃがいもとさつまいもの魅力を探求していきたいと思います。
ジャガイモとサツマイモは同じ「イモ」の仲間?
いいえ、植物としては全く別の種類です。ジャガイモはナス科ナス属で、ナスやトマトと同じ仲間。それに対し、サツマイモはヒルガオ科サツマイモ属で、アサガオに近い植物です。名前は似ていますが、植物分類学上は共通点があまりありません。
ジャガイモとサツマイモ、食べる部分はどこが違う?
ジャガイモとサツマイモでは、食用とする部分が異なります。ジャガイモは、地中の「茎」が大きくなった塊茎という部分を食べます。一方、サツマイモは「根」が肥大した塊根という部分を食用としています。どちらも土の中で育ちますが、植物学的な部位は違うのです。
サツマイモは日本で花を見られる?
サツマイモも花を咲かせますが、日本では気候条件から開花は非常にまれです。サツマイモは短日植物であり、日照時間が短くならないと花芽ができません。日本の夏は日照時間が長いため、花を咲かせるのが難しいのです。沖縄など一部地域では見られることもありますが、その他の地域では大変珍しいです。
サツマイモの花言葉ってどんなもの?
サツマイモには、「乙女の愛情」や「幸運」という花言葉があります。力強いイメージとは異なり、可愛らしい印象を与える言葉が選ばれています。日本で花を見る機会が少ないため、花言葉も神秘的に感じられるかもしれません。
さつまいもの芋以外の部分も食せる?
はい、さつまいもは一般的に食される根の部分(芋)の他に、蔓や葉も食べられます。お店ではあまり目にすることがないかもしれませんが、蔓は炒め物やきんぴらに、葉はおひたしや揚げ物、炒め物などにして美味しく食べられます。さつまいもは根、蔓、葉と全てを食せる、とても価値のある野菜と言えるでしょう。













