いちじく何科

いちじく何科

いちじく(無花果、映日果、一熟、学名:Ficus carica)は、クワ科いちじく属の落葉高木、またはその果実のことです。イチジクの原産地は,小アジアもしくはアラビア半島南部の乾燥した半砂漠地帯である。特徴的なのは、小さな花が多数入った花嚢をつけることです。雌株の花嚢が肥大化して果嚢となり、これが一般的にいちじくの果実として食用にされています。

いちじくの名称と歴史

「無花果」という字は、花を咲かせずに実をつけるように見えることに由来します。これは中国で名付けられたもので、日本語では「いちじく」という呼称が与えられました。中国では他に「映日果」(インリークオ)という別名もあります。「映日果」は、中国へのイチジクの伝来は、8 世紀の頃ペルシアからという説があり、「無花果」という文字は14 世紀末に現れているという。中世ペルシャ語の「アンジール」(anjīr)を当時の中国語で音写した「映日」に「果」を補足したものです。日本へは江戸時代初期にペルシャから中国を経て、長崎に伝わりました。
日本へはいちじくは江戸時代初期に中国経由などで伝来し、薬用から食用へと用途が変化し、栽培が容易なため家庭でも栽培されるようになりました。いちじくは旧約聖書にも登場するほど歴史が古く、原産地はアラビア南部や南西アジアとされています。2006年、イスラエルのギラッド・アサフらの研究チームが、ヨルダン渓谷のギラル・エル・アフマール遺跡で約11,400年前(紀元前9400年頃)の炭化したイチジクの実を発見し、これが人類による最古の栽培植物の一つである可能性を示しました。

いちじくの形態と生態

いちじくはクワ科の落葉高木で、日本では低木として見られることが多いですが、生育条件によっては高木にもなります。乾燥に強く、根を深く張って水を探すことができます。幹は灰色で滑らか、枝は横に広がります。花期は夏で、特徴的な花嚢の中に無数の花をつけ、この花のつき方を隠頭花序といいます。いちじく属には両性花をつける種と雌雄異株の種があります。

いちじくの系統と受粉のメカニズム

栽培いちじくは、原産地近辺では雌雄両株が必要な品種が栽培されてきましたが、受粉しなくても肥大化する品種が日本などで普及しています。いちじくは6月から9月に開花し、新しい枝の葉の付け根に花嚢が形成され、その内壁に無数の小花が密集して咲きます。いちじくにはスミルナ系、カプリ系、普通系があり、スミルナ系は雌花のみで受粉にいちじくコバチが必要です。カプリ系は雄花と雌花が咲き、いちじくコバチの繁殖場所となります。普通系は単為結実が可能で、受粉なしで実がなります。いちじくコバチはカプリ系の雄花で孵化し、受粉のためにスミルナ系の花嚢に花粉を運びますが、産卵はできません。スミルナ系の種子はコウモリや鳥、人間によって散布されます。いちじくには夏果専用種、秋果専用種、夏秋兼用種などの品種があります。

いちじくの品種

日本で一般的に栽培されているのは、秋果専用種または夏秋兼用種です。関東地方以北での栽培には、比較的耐寒性のある品種を選ぶと良いでしょう。
夏果専用種:主に6月下旬から7月下旬にかけて収穫できる品種です。梅雨の時期と重なるため、果実が傷みやすいという特徴があります。例として、ビオレドーフィンが挙げられます。
秋果専用種:8月下旬から10月下旬に成熟期を迎える品種です。蓬莱柿(ほうらいし)やビオレーソリエスなどが代表的です。
夏秋兼用種:夏と秋の二つの時期に収穫できる品種です。桝井ドーフィンやブラウンターキーなどが知られています。

いちじくの旬な時期

いちじくの旬は年に2回あり、6月頃~11月頃まで楽しめます。夏に旬を迎える夏果専用種は、6月頃~8月頃が旬で、秋果専用種よりも大きいのが特徴です。秋に旬を迎える秋果専用種は、8月頃~11月頃が旬で、夏果専用種よりも甘みがあります。

美味しいいちじくの選び方

美味しいいちじくを選ぶためには、いくつかのポイントがあります。
果実にハリがあり、傷がないものを選びましょう。皮にツヤがあり、色が濃く、しなびていないものが新鮮です。良い香りがするものは熟している証拠ですが、柔らかすぎるものは熟しすぎている可能性があるので注意が必要です。しっかりと色づき、実が柔らかく、お尻の部分が開いているものは完熟しているサインです。

いちじくの栄養と効能

古代中国では健康や長寿への願いを込めて『不老不死の果実』と呼ばれていたという逸話があります。近年ではポリフェノール・カロテノイドを豊富に含む抗酸化フルーツとして注目されています。ドライフルーツとしてもお馴染みのイチジク。古くから健康によい果物として珍重され、『不老不死の果物』と称されることもありました。伝統的に薬用として利用されてきた歴史もあります。人が栽培した最も古い果樹という説もあります。文部科学省『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』によると、100gあたりのカロリーおよび糖質量は以下の通りです。りんご(生、皮なし):54kcal、糖質13.1g。ぶどう(生):59kcal、糖質15.2g。いちじく(生):54kcal、糖質12.3g。これらのデータは品種による差異があるものの、一般的な可食部100gあたりの標準値です。
いちじくには、食物繊維、鉄分、カリウム、カルシウムなどの栄養素が含まれています。

いちじくの保存方法

冷蔵保存

いちじくを1個ずつ丁寧にキッチンペーパーやラップで包み、ビニール袋に入れて冷蔵庫で保存します。いちじく同士が重ならないように注意しましょう。保存期間の目安は2~3日です。

冷凍保存

いちじくを洗い、水分をしっかり拭き取った後、1個ずつキッチンペーパーやラップで包み、ビニール袋に入れて冷凍庫で保存します。冷凍すれば1~2ヶ月保存可能です。食べる際は、常温で5分程度置くか、流水で解凍します。半解凍でシャーベットのような食感も楽しめます。

乾燥させる

いちじくは乾燥させることで甘みや栄養価がアップします。天気の良い日に4、5日天日干しするか、オーブンで低温でじっくり焼いて作ります。乾燥させることで1週間程保存可能です。

ジャムとして楽しむ

ジャムにすることで長期間保存することができます。殺菌や消毒に注意して作れば半年~1年楽しむ事ができます。

いちじくの皮の剥き方

手で剥く方法

まず、いちじくを丁寧に水洗いします。いちじくの軸(ヘタ)をゆっくりと下方向に引っ張りながら、皮を剥いていきます。もし、綺麗に剥ききれなかった部分があれば、包丁で薄く削ぎ落とすように取り除いてください。

ナイフを使った皮むき

まず、いちじくを丁寧に水洗いします。次に、いちじくの軸の根元部分を切り取ります。いちじくを放射状にカットします。果肉に沿ってナイフを入れ、皮を剥いていきます。

いちじくの育て方:庭植えと鉢植え

いちじくの植え付けは、12~3月の休眠期が適しています。寒冷地では、芽が動き出す直前の春植えが良いでしょう。植え付け場所は、水はけと保水性がともによい肥沃な土壌が適しています。やや木陰ができる程度の日なたが最適です。

庭植え

直径と深さが共に約50cmの穴を掘ります。掘り出した土に、腐葉土3、赤玉土小粒2、粒状肥料(1株あたり約200g)を混ぜ合わせ、穴の半分から3分の2程度を埋め戻します。苗木の根についた土を軽くほぐし、根を広げて苗を置き、残りの土を入れます。苗木を約50cmの高さで剪定し、支柱を立てます。最後にたっぷりと水をあげてください。

鉢植え

水やり

いちじくは過湿に弱いところがあり、水やりは土の表面が乾いたらたっぷりと与える程度で十分です。鉢植えの場合は特に、夏の水切れに注意しましょう。

肥料

新梢を伸ばしながら果実がつくため、他の果樹と比較しても肥料吸収の多い果樹です。12月に寒肥として油かすなどの有機質肥料、または粒状肥料を1株あたり200g程度を施し、2月と10月に粒状肥料を1株あたり50g程度施します。

剪定

花芽分化を促進させるために、8月には新梢の伸びが止まるようにしましょう。
品種によって果実のつき方が違うので、剪定方法を変える必要があります。秋果専用種は、その年の春に伸びた新梢の葉腋に果実がつき、8月下旬ごろに成熟します。夏秋兼用種は、夏果が前年伸びた枝の先端付近に翌年の果実をつけ、越冬して6月ごろに成熟し、さらに秋果専用種と同様に秋果もつけます。それで、果実のつきに応じて剪定を行います。

収穫

夏果は6月下旬から、秋果は8月下旬から収穫できます。果実の先端が割れてきたら、成熟した目印です。いちじくの果実を早く成熟させたい時には、「オイリング」というユニークな方法があります。果頂部が少し赤くなってきたら、果実の先端のすきまに植物油(オリーブ油、ゴマ油など)を1~2滴たらすと、熟期を7~10日早める効果があります。細いストロー、またはスポイトなどを使うと上手くできます。早生品種の果実を早く収穫したいときには、最適な方法です。

いちじくの病害虫とその対策

いちじく栽培で注意すべき害虫や病気と、その対策について説明します。

害虫

イラガ、カミキリムシなどが考えられます。見つけ次第捕殺するか、必要に応じて、対象の病害虫に登録のある農薬を使用します。農薬を使用する際は、必ずラベルや説明書をよく読み、記載された使用基準(対象作物、使用時期、回数、濃度など)を守ってください。

病気

疫病、葉枯病、さび病などが考えられます。薬剤を散布し、被害の拡大を防ぎましょう。

いちじくにまつわる文化と逸話

いちじくは聖書にも登場し、旧約聖書の創世記ではアダムとイブが裸であることに気づき、いちじくの葉で腰を隠したとされています。このエピソードから転じて、英語などで「fig leaf」(いちじくの葉)が「隠したいことを覆い隠すもの」という比喩表現として用いられることがあります。また、古代ローマでは、いちじくは豊穣の象徴とされていました。

まとめ

いちじくは、クワ科いちじく属に分類される落葉高木です。原産はアラビア半島とされており、世界各地で栽培されています。果実として広く親しまれている部分は、正確には花嚢と呼ばれるもので、内部に多数の花をつけ、それが肥大化したものです。

よくある質問

質問1:いちじくが最も美味しくなる時期はいつですか?

回答1:いちじくの旬は年に2回あり、6月頃~8月頃(夏果)と8月頃~11月頃(秋果)です。

質問2:いちじくは皮をむかずにそのまま食べても大丈夫ですか?

回答2:はい、完熟したいちじくは皮ごと食べられます。気になる場合は、皮をむいてお召し上がりください。

質問3:いちじくはどのように保存するのが良いですか?

回答3:冷蔵保存する際は、いちじくを一つずつラップで丁寧に包み、2~3日を目安にお召し上がりください。長期保存をご希望の場合は、冷凍保存や乾燥いちじく、ジャムなどに加工するのがおすすめです。
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