和菓子 練り切り

日本の伝統菓子には、様々な種類と長い歴史があります。その中でも、「練り切り」は代表的な和菓子の一つです。練り切りは、小麦粉に砂糖や水あめなどを加えて練り上げた生地を、型抜きなどで様々な形に整え、焼いて作られる菓子です。可愛らしい形や色彩豊かな姿から、古くから親しまれてきました。季節や行事に合わせた形や模様が施され、日本人の心意気を映し出す上品な味わいがあります。

練りきりとはどのような和菓子?

練りきりは、季節の風物などを写しとって作られる芸術的な和菓子です。白あんとつなぎを混ぜ合わせた練りきり生地から作られ、生菓子に分類される伝統の技が光る上品な味と形が魅力的な和菓子です。 水分を多く含む生菓子の中でも、芸術性が高い上生菓子とされる代表的なお菓子が練りきりです。お祝いの席や特別なおもてなしのほか、お茶席の濃茶に合わせて、季節に合わせた練りきりが振舞われます。 練りきり生地は、白のこしあんをベースに求肥などのつなぎを加え、木べらでよく練って作られます。地方や和菓子店によって、つなぎに使われる素材に特色があります。練った生地は裏ごしして滑らかにし、空気を含ませるため小さくちぎって練り直す作業を繰り返します。これにより、黄色がかった白あんの色から白い練りきり生地へと変化します。 完成した練りきり生地に色粉で色を付け、四季折々の形が作られるのが練りきりの魅力です。色合いの美しさは、白く仕上げられた生地から生まれます。似た菓子にこなしがありますが、弾力とあっさり風味が特徴的です。 和菓子を購入する際、生地と餡の種類が表記されていることがあります。これらを見ることで、お菓子の想像がつき、より一層和菓子を楽しめるでしょう。

季節を彩るために練りきりに欠かせない道具

春の訪れとともに、色鮮やかな練り切り細工が街に彩りを添えます。桜の花びらや菜の花、ひよこなどの愛らしい動植物のモチーフが、家庭や店舗の生け花や料理を華やかに飾ります。この伝統工芸品には、特別な道具が欠かせません。 練り切りのデザインには定番の形もありますが、基本的に決まりはありません。植物や動物、季節の風景など、自然をモチーフに写実的に表現したり、抽象的に形づくられたりと、職人の創造性が発揮されます。豊かな色彩も練り切りの魅力のひとつです。 色付けから形作りに至るまで、職人の卓越した技が光ります。練り切り生地に絶妙な色合いを付け、さまざまな道具を使い分けて繊細な造形を生み出します。まずは、生地を混ぜ合わせる「臼(うす)」と「杵(きね)」が用いられます。臼には上質な木の実から採れた木の粉が使われ、杵との馴染みが良くなるよう、何年も使い込まれています。次に、生地を延ばす際に使う「のし板」は、滑らかな表面処理がされており、生地が付着しにくくなっています。 練り切りの線を描く際に欠かせない道具が、三角べらです。三角柱形の木製のへらで、それぞれの辺を押し付けることで線を付けます。3つの辺は角度が異なり、太さの違う線や2重線が描けるのが特徴です。細い線を均一に入れたい場合は、千筋板と呼ばれる平行な線が彫られた板を使います。練り切り生地をこの板に押し付けて、繊細な筋模様を表現するのです。 さらに、彫刻入りの木型で美しい形を抜いたり、ステンレス製などの抜き型を使って花びらや葉の形を切り抜いたりと、様々な技法が用いられています。色付けには植物由来の自然な色素が使われ、季節の移り変わりとともに、喜びと癒しをもたらす練り切りが生み出されているのです。

練りきりを食べる時に用意したい菓子楊枝

和菓子を優雅に味わう上で、菓子楊枝は欠かせない存在です。練りきりは、滑らかな白あんや小豆あんが練り込まれた上品な味わいが魅力で、一口サイズの可愛らしい形状も楽しみの一つです。このような繊細な和菓子を食べる際、ただ手で触れるのではなく、菓子楊枝を使うことで、味わいをより一層引き立てることができます。 菓子楊枝の代表格は「黒文字(くろもじ)」です。クスノキ科の黒文字という木を削り、スティック状にしたものです。香りが良く、削りたての黒文字は上質品とされます。また、水に浸すことで香りが際立ち、あんこや皮の付着も防げます。 お客様をおもてなしする際には、練りきりの器に黒文字以外の木製や竹製、銀製などの菓子楊枝を添えるのがおすすめです。そして、練りきりを食べる時は菓子楊枝で一口大に切り分け、そのまま口に運びます。 美しい形をした練りきりは、味だけでなく目でも楽しめる職人技の光る和菓子です。最近では、練りきりを含む和菓子と日本茶や紅茶を合わせた「和フタヌーンティー」も人気を集めています。季節を感じながら、菓子楊枝を使って優雅に和菓子を味わう、そんな上質な体験をお楽しみください。

まとめ

近年では、練り切りを手作りで楽しむ人も増え、伝統工芸品としての価値が見直されています。季節の移り変わりを感じさせる味わい深い練り切りは、日本人の心を癒やし、大切な習わしとして次世代に引き継がれていくことでしょう。和菓子の代表格である練り切りの魅力は、日本文化の粋を体現しているからこそ、いつの時代も変わらず愛されているのです。

和菓子練り切り